『太陽神ラーゼスが世を嘆き、全てを無に帰さんとせし時、
その武具、闇に染まりし者の手に移らん。
世界は、白龍から黒龍の手に落ち、人の世は、ここに終わらん。』
「ひ、姫巫女様・・?!・・そ、それは?」
月神殿の奥まった祭室、瞑想中の姫巫女から漏れた言葉・・
それは、明らかに人の世の終焉を語っていた。
ただ1人傍に控えていた、魔技であり姫巫女の乳母でもあるロアノは、己の耳を疑い目を見張る。
・・・そして、悟った。それが避けることができえないものであろうということを。
数日後、月の女神ディーゼに仕える最後の姫巫女であった彼女が、ひっそりとその息を引き取る。
もはやこの世界の創世神である太陽神ラーゼスと月神ディーゼは、人々から忘れ去られようとしていた。
参拝する信者が途絶えてから久しく、他に仕えるべき巫女もいなくなっていたディーゼ神殿。
姫巫女の乳母ロアノは、ただ1人で埋葬を終えると、一族の先祖が今の地へ移り住む前の、廃墟と化した住居跡へと足を向ける。
姫巫女への最後の務めを果たすために・・・。 |