その32[2]・パラレル劇場スタート/^^;



-イメージ画です。お話の内容と違ってるところが多々?/^^;-

 「・・・・ミ・・ルフィー・・・。」
「セイタ!」

ラードとカルロスは、水龍の神殿へ立ち寄った後、最期の1つ、毒沼と化した湖底に無惨な姿で沈んでしまっている地龍の神殿へと来ていた。
が、仮にも神龍の神殿。湖底にあるとはいえ、奥までは水も侵入していない。
すっかり泥水に支配され、朽ち果てているのは、入口付近のみ。地底深くへと続いた洞窟の先にある奥神殿は外の様子などまるっきり感知せずといった様相で静まり返っていた。
が・・・そこに神龍もそして仕える巫女たち神官もいない。
し〜〜んと静まり返った闇の中。神龍の聖杯のある奥祭室。
2人はその聖杯の前に、互いの想い人の姿を見つけて思わず呟く。

−ふっ!−
が、光に引かれる昆虫のように無意識に聖杯に向かって2,3歩進んだ2人の目から、その姿はかき消えるようになくなった。

(ミルフィー?)
(ミルフィー?・・セイタ?)
思わず周囲の暗闇を見渡すラードとカルロス。淡く灯った期待が悲しみを伴って消え失せる。
思わず松明を翳して周囲を調べてみる。が・・そこにミルフィーの姿もセイタの姿もなかった。
(幻だったのか・・・・・)
周囲を覆う闇のベールが心まで覆いつくすようだと2人は同時に感じる。
が、こんな事を感じるのもあと少し。金龍の元へ行けばミルフィーにもセイタにも会える、と2人は気を取り直す。
生きている彼女たちに会えるという希望は、必ず叶うと2人は、お互い自分自身に言い聞かせていた。

そして・・・・


「ラード!」
「セイタ!!」
金龍の存在空間・・いや、世界とその身を貸した金龍が、その具象体を象ることのできる神秘な空間、無の空間ではあるが、形というものがあった方がいいだろうとそこに金龍自身が象った神殿内で、ラードは遠くに見えたセイタの姿に走り寄っていた。

「セイタ!」
「ラード!」
地龍の神殿でのこともあった。近づくと消えてしまわないかという不安は、温かいセイタの身体に触れることでようやくラードの中から消え去り、安心感がどっとわき上がる。
「っと・・・あ、あれ?セイタ、ミルフィー・・は?ミルフィーは一緒じゃないのか?」
喜びでいっぱいだったラードはふとミルフィーの事を思い出してセイタに聞く。
喜び合ってるラードとセイタの後方には、不安げな表情のままのカルロスがゆっくりと歩み寄ってきつつあった。
「だーれ?」
そのカルロスの姿を見つけ、セイタがラードに聞く。
「あ、ああ・・・彼がカルロスだ。」
「カルロスって・・ミルお姉ちゃんが言ってた?」
「そうだ。」
「そう・・・こんな遠くまで、異世界までもお姉ちゃんを捜して?」
セイタの質問にカルロスは不安を殺した表情でゆっくりと頷いた。


「あたしが説明するより、金龍からの方がいいわよね。」
「金龍からって?セイタ、ミルフィーは?お前と一緒じゃなかったのか?」
「一緒だったんだけど・・・ううん・・・ミルお姉ちゃんがいなかったら、あたしもこうしてラードと会えることはなかったわ。そして・・他の守護騎士たちも。」
「他の守護騎士たちも?」
ラードとカルロスが周囲に視線を流すと同時に、2人の周りにはゆっくりと数人の剣士の姿が現れた。
「ジャミン!ファンガス!ラルフ!」
再会を喜び合うラードと彼ら。ミルフィーのことはひとまず横に置いて、まるで自分のことのようにその再会シーンに頬を緩ませて見つめていたカルロスの視野が不意にぼんやりしてきた。
「なんだ?」


『カルロスよ・・』
「ん?・・・・」
そして、暗闇に覆われたカルロスの脳裏に、厳かな声が響いた。
『遠くの地からよくぞ参った。』
「・・・金龍・・・?」
『そうじゃ。我は金龍。この世界の礎、この地にて生きとし生きるものの大地。世界そのもの。』
「ミルフィー・・・は?」
神龍にひれ伏すより先に、カルロスの口からはその言葉が出ていた。
『ミルフィーか・・・・彼女はすばらしい剣士じゃった。』
金龍の言葉がカルロスの心に鋭く刺さる。
『かの地を支える・・いや、ちょうど我がこの地の母体であると同じように、彼女はかの地、その世界を支える3人の巫女のうちの1人の血を引く逸材じゃった。』 (参:青空エピローグ2の(巫女姫の)世界観・世界を支える巫女)
「は?」
『じゃからこそ、守護騎士たちは消滅せずにすんだ。彼らの肉体だけでなく魂をも無に帰すところを、彼女の中に流れる聖なる巫女の血、世界を創造しうるその血が救ってくれた。』
「それはどういう?」
カルロスには金龍が何を言おうとしているのか全く分からず、ただ呆然と聞き返すばかり。
『故に、我は我とそして銀龍の持てる力の全てで、彼女の願いを叶える事とした。』
「ミルフィーの・・・願い?」
『そうじゃ。』

しばらく時が止まっていた。闇の中、カルロスはひたすらじっと金龍の次の言葉を待った。

『半身である銀龍と絶たれ、悲しみのあまり虚無に身を任し、無に帰してしまわんと思うていた我を、再び銀龍と出会わせてくれ、希望を、心に光を与えてくれ、危機に陥っていたこの世界を救ってくれしミルフィー。偶然とはいえ、単に腕のたつ剣士だけではなかったことに、我は感謝しておる。偶然というのは不思議なもの・・・異なる世界も、そうしてどこかで繋がり、なにがしかの形で影響しあっておるのじゃろう。』
「・・・ミルフィー・・は?」
なかなか本筋に入ろうとしない金龍に苛立ちを感じ、が、仮にも1つの世界である神龍故に、カルロスは遠慮がちに小声で今一度催促する。

『異なる世界のここまで追いかけてきたお主のことじゃ、ミルフィーの事はよーく知っておろう。』
「もちろんだ!」
カルロスは何がいいたいのか、と思いつつも、その事ははっきりと断言する。
世界を云々の巫女の話は知らないが、ミルフィーのことはよく知っている。
『呪われし運命を担っていた双子の兄妹・・・』
はっとしてカルロスは声の響いてきた方向に顔をあげる。
『その母親であるかの地の世界を支える藍の巫女は、その呪われし運命から愛し子を守りたいがため、一つの魂と肉体を二つに割った。己自身の命と引き替えに。』
その運命から見事脱出した2人は、双子の兄であるミルフィーと妹のミルフィアは、魂と肉体を1つに戻し、現在のミルフィーとなったことをカルロスは改めて思い出していた。
『彼女は迷っていた。今ある自分はなんなのか、と。』
「なんなのか?」
『記憶も経験も全ては双子の兄妹のもの。それが彼女自身だといえばそうなのだが・・・彼女にはそれが完全には受け入れられなかったらしい。』
「受け入れられなかった?」
『彼女の願い。それは彼女が彼女としての人生を生きること。確かに自分自身の生だと実感でき、そして、それを踏みしめていけること。』
「あ・・し、しかし・・・?」
ミルフィー(兄)とミルフィアがそうなのだ、とカルロスは思わず心の中で答えていた。
『我とそして銀龍は、彼女の願いを叶えることにした。たとえそれに費やすエネルギーの為に、この世界の回復が多少遅れようとも。』
「遅れる?・・い、いいのか?」
『闇龍の危機は去った。何も心配はない。世界の回復のスピードがゆうるりとしたものになるだけじゃ。たとえ闇による影響を色濃く残したところがあっても守護騎士たちがおる。そして、我が子神龍たちは回復の為眠りについておっても、彼らとの交流は可能じゃ。神龍は守護騎士たちと共にある。』
「で?」
『肉体を離れた彼女の魂の中に、心は3つ存在しておった。そのうちの2つは無の状態でもあったが、確かに存在しておった。』
「3つ・・・」
カルロスの脳裏に、双子の兄妹とそしてミルフィーの顔が浮かび上がっていた。
『世界を、いや、我の心を救ってくれしミルフィーの願い。これを聞き届けず何が神龍ぞ?』
「願い・・・とは?」
なぜだか不安にかられながら、そして、その不安が徐々に大きくなってきているのを感じつつ、カルロスは小さく言葉にした。

『再生には・・今少し時を要する。』
「今少し?・・・では、生き返ることは確かだということでいいのか?」
相手が神龍であることも忘れ、カルロスは言う。
『そうじゃ、生き返る。彼女の希望通りに。』
「希望どおり・・・」
その言葉をかみしめ、それが何か整理をつけようと考え混むカルロスの脳裏に金龍の言葉は続いた。
『かの地で双子の兄妹はそれぞれ目覚め、そして、ここでミルフィーは新しく生まれるのじゃ。』
「は?」
『分からぬか?双子の兄妹は、その当初の目的を果たし兄は兄として、妹は妹として、かの地で目覚める。』
「かの地で・・・ミルフィーとミルフィアとして?で、では・・ミルフィーは?この地を救った彼女は・・・?」
『彼女の願い・・・カルロスよ、選ぶがよい。己の本当の心で。』
「本当の・・・心?」
『かの地へ戻り、双子の妹ミルフィアを選ぶか、あるいは、この地に新しい命として芽生える幼子を選ぶか?』
「は?」
『ここまで追ってきたその気持ちに免じて特別大サービスじゃ。幼子とではあまりにもお主が気の毒じゃからのぉ・・ミルフィアでなくミルフィーを選ぶというのであれば、お主と釣り合いのとれる時代へと送ってやろうぞ。そうじゃな・・・お主が彼女と出会った年齢に育った時代でどうじゃ?もちろん、外見は今と同じぢゃ。』
「ち、ちょっと待て・・・いくらオレでも急にあれこれ言われて、訳が・・・」
『それもそうじゃろう。ゆっくりと考えるがよい。時はいくらでもある。』
「つまり、ミルフィアとミルフィーの生まれ変わりとのどちらかを選べ・・ということ・・・か・・?」
金龍への問いかけではなくカルロスは自分自身への言葉のように呟いていた。
『そうじゃ。』
「しかし、生まれ変わりでは今までの記憶は無いんだろう。それでは、ミルフィーと言えるかどうか・・・」
『要は魂を求めるかどうかなのじゃが・・・それもまた事実。今の彼女は過去の記憶と経験で形成されておる。その記憶がなければ他人だという事も否めん。・・・そうじゃな、それでは、これも特別大サービスじゃ。お主と出会ってから、何かのきっかけで思い出させてやってもよいぞ?』
「あ、いや・・それでは、オレはまた・・・」
異性としては嫌われているかもしれない今、記憶がない方がひょっとしたらうまくいくかもしれない、とカルロスは思わず算盤をはじき出していた。
『ともかく考えるがよい。ミルフィアか、ミルフィーの魂を持つ彼女の生まれ変わりか。・・記憶云々は後者を選んだ時改めて決めるとしようぞ。』

カルロスを取り巻いていた金龍の神気はそこから消え失せた。
「ミルフィア・・・と・・ミルフィー・・・?」
けなげに運命に立ち向かったミルフィア、生涯守ると誓った少女。そして、その彼女が成長して今のミルフィーになったのだと、カルロスは己の心を整理していたのだが・・それが別々の人物となるとなると・・・・・。


思案していた・・混乱と思案と計算(笑)・・・・カルロスはその場に座り込んで深く深く考え込んでいた。己と向き合って。

(腕の中に包み込むには素直で少しはかなげであり、いかにも少女らしいミルフィアの方が守り甲斐がある。そして、何よりも、彼女はオレに惚れ始めていてくれていた。・・・だが・・・ミルフィーのあのくったくのない明るさ、爽やかな笑顔とほれぼれするような剣の腕・・も捨てがたいというか・・・そこにも惚れている事も確かだ。・・・・しかし、生まれ変わりとなると剣の腕はどうなのか?イヤ、その前に剣など手にするのだろうか?平和となったこの世界で?・・・いや、血がそうさせるというのなら、剣を持つように、冒険を求めるようになるかもしれない。ゆっくりと回復に向かっていくこの世界では、まだまだ魔物が世界のあちこちに徘徊しているだろうから、冒険家という職業はまだ当分は成り立っていきそうだ。だが、果たしてオレに惚れてくれるのか、というギャンブル性もある・・・か?・・いや、その場合でも絶対惚れさせてみせるが。・・・・)


「どうすりゃいいんだ?どっちと言われても・・・どっち・・・ちょっと待ってくれ・・・2人は同一人物のはずなんだぞ?」
カルロスの脳裏には天秤が写っていた。その片方の天秤には、少女らしい笑顔ではにかんだミルフィア、もう片方の天秤には、明るく朗らかに笑っているミルフィー。手を伸ばすと腰の剣で斬られるかもしれない緊迫感もただよっている。あるいは、外見はミルフィーでも見ず知らずの少女?
考える度に右が下がったり左が下がったり・・・・・。

「オ、オレは・・・・・・・」
まさかこんな展開になるとは、露たりとも思わなかった
(管理人もです。/^^;)カルロスは、いっそのことこの混乱が催す狂気に支配されて、我を失っしてしまいたいと思っていた。

明るい未来に包まれた神龍の世界。
が、カルロスがこの苦悩から脱出するのは?果たしてどちらを選ぶ事がカルロスにとって正解なのか?
カルロスの未来はミルフィアとミルフィー、どっちに繋がっている?非情なまでの選択・・・カルロスの中で、狂ってしまいそうなほど心が悲鳴をあげていた。考えれば考えるほど分からなくなってくる。簡単に決められるわけはない。
・・が、それでもいつかは道を定めなければならない。ミルフィアとの道かミルフィーとの道か・・あるいは、まるっきり2人とは別の道・・・・。
「どうすりゃいいんだ?」
微動だにせず、じっと座りこんでいるカルロスの困惑の叫びが聞こえてくるようだった。


 


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