***チェイサー・ドーラの呟き***
   

 参:今回のお話は、「おしゃべりアレス#29〜31」の時のドーラバージョンです

●裏追跡簿[12] ドーラはアレスの弱点?

 「はっ!」
魔法陣の上の堂々巡り?自分が誤ってスイッチを踏んでしまったとはいえ、そこであろうことか、アレスの目の前で気絶したことをドーラは気づくと同時に思い出す。
「あ・・んのぉ〜〜・・・・・わざと加速装置を作動させたうえ・・・こんなところに女一人、放って置いたっていうの?」
復活と同時に激怒する。
「な、ないわっ!あたしが手強い奴を倒して手に入れたカギがっ!」
そして、胸元に手をあてて、唖然とする。
「アレス・・・胸から抜き取っていったっていうの?・・・・気絶してる女の胸元から?・・・ま、まさかついでにおかしなこと・・・」
慌てて身体のあちこちを見てみるドーラ。が、どうやら何もされていないようだ。
「な、なんなのよ、あいつは?それでも男?」
塔の屋根での時と同じような事を思い、つぶやきながら、ドーラは周囲を見渡す。
もちろん、アレスの姿はどこにもない。
「あたしのカギを持って次のエリアに進んだのね?・・・・・・いっつもこうなんだから?ちゃっかりしてるっていうかなんていうか?」
−ダッ!−
ドーラはアレスが行ったと思われる方向へと勢い良く走り始めた。

迷路のような魔法陣エリアをなんとか抜け、ドーラはひたすら先を急ぐ。
「なによ、あんた?その程度の火炎であたしにはむかうつもり?」
ほうほうの体で逃げたにもかかわらず、集団で襲ってきた炎の魔神フレイガに啖呵をきり、底をつきかけていたポーションを手に入れるため毒キノコを倒して回ったりと、そのエリアを駆け回る。
「なによっ!あたしが欲しいのは回復ポーションなのよっ!自慢じゃないけど魔法力は底なしにあるのよ、あたしはっ!」
例のごとく勝手な事をぽんぽん放ちながら、ドーラは進む。

そして・・
「ないっ!ないわっ!この宝箱に回復の呪文書が入ってるって、下のスケルトン兵士から聞いてきたのにっ!」
そうその勢いで、ドーラはスケルトン兵士からその情報を仕入れて、そこへやってきたのである。
「アレスね・・・・カギだけじゃなく、あたしの呪文書まで持っていったわねっ?!」
そして、怒りで一層燃え上がる。

行く道、行く道、空っぽの宝箱。ドーラの怒りのメーターだけがぐんぐん上がる。

「あっ!アレス!!」
そしてアレスが監獄島へ強制転移されるその瞬間、ドーラはそこへ来ていた。
「ちょっと、あんた!」
そして、アレスに話しかけていた薄気味の悪い声に向かってドーラは叫ぶ。
「何すんのよ?!せっかく追いついたのに!アレスはあたしの獲物なのよ!いいこと?今ならまだ許してあげる。あたしの怒りが爆発しないうちにさっさと返しなさい!」
『・・・・・・・・』
「何よ、無視するつもり?」
が、声は・・つまり全てを制する力を手に入れたブンデビア国王(と思われる声の主)は、別に無視したわけではなかった。
ドーラの言葉に呆気にとられていただけなのである。
「そう。ならいいわ。あんたがそのつもりなら、こんな洞窟、あたしの魔法で・・・」
『まー、待て、女よ。』
「え?」
『アレスを追っておるのか?』
「そうよ!アレスはあたしの師匠の仇なのよ!やっと追いついたのに、それをあんたがどこかへ飛ばしちゃったから・・・責任とりなさいよっ!」
『責任か・・いいだろう。アレスの首をとるというのなら、それもまた余興。・・・もっともお前の腕では無理だとも思うが。』
「な、何よ?・・」
・・ばかにする気?、とドーラが続けようとしたその瞬間、彼女の周囲は変わっていた。


「おおーー!こりゃまたべっぴんなねーちゃんじゃねーか?」
「え?」
監獄島最下部の独房にいた男が、不意に現れたドーラに驚きながらもにやっと笑ってドーラを見つめる。
「うるさいわねっ!ここに男が・・・きゃあーーー!」
アレスの事を聞こうとしたのと同時、ゴゴゴゴゴと地鳴りがし、ドーラは口を開けた土の中へと落ちていった。


−スタッ!−
「ふん!このくらいの落下は慣れたものよ!アレスは・・・・あっちよね?」
落とし穴で落下には慣れているドーラ。すたっと着地するとアレスが進んだと思われる方向に向かって疾走する。


「なるほど、あの女がドーラ・ドロン・・・・アレスの弱点・・・。」
そんなドーラを物陰からじっと見つめる影が一つ。
そう、それまでの経緯から、魔物たちの間にはある噂が広まっていた。
それは、魔物でも人間でも、何人であれ、アレスに向かっていって倒されなかったものはいない、例外としてドーラ・ドロン以外はすべからくこの世から排除されているという点だった。
そして、ドーラがアレスにプラネット・バスターを要求していることも情報として入っていた。
噂の主は、情報屋をしているゾンビなのだが・・・アレスの情報欲しさにお金を払ったドーラが、ろくな情報がないことに腹をたて、アレスの悪態を散々ついた結果らしい。
「アレスは強敵だ。だが、あの女の姿でプラネット・バスターを渡すよう懇願すれば、いかにアレスでも言うとおりにするだろう。そして・・・武器がないアレスなど、もはや敵ではない。」
そのエリアを仕切っている巨大蜘蛛女は、にたりと不適な笑みを浮かべ、ドーラが闇の中へその姿を消すのを確認してから、変身の呪文を唱えた。
「確かアレスはまだここは通っていないはずだ。あの女はまっすぐ来たが、あいつは横道を入って行ったからな。」
地面に耳をあて、周囲の様子をさぐる。
「足音が1つ近づいてきている・・アレスだな。」
すっとそのまま地に伏せる。
「自分の女の手(偽物だが)にかかって死ぬのなら本望だろう、アレス?」
ドーラの姿に変身し倒れた姿勢をとった蜘蛛女は、まるっきり勘違いだとは思うはずもなく、勝利を確信し、不気味な笑顔を浮かべてアレスが近づくのを待ってた。


--参:おしゃべりアレス#31--

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