遙かなる旅路
〜[クレール in Brandish1] Brandishストーリー〜

(23)[FORTRESS 2F]

〜 記憶焼却?熱視線攻撃 〜

 −ブン!−
次のエリアへの通路の手前に転移したアレスは目の前にぽっかりと口を開けている細い通路へと足を踏み入れる。そして、広いところへ出た途端、アレスの前方にまたしても倒れたクレールの胸に嬉々として大鎌を振り下ろそうとしていた魔物の姿があった。
(またか・・・)
そうは思いながらもアレスは瞬時にしてその場へ移動する。
−ドスッ!−
(死神か・・・。)
アレスは倒したドクロ顔の黒装束を見下ろす。その手にはまさに死神の大鎌というものを持っていた。
(で、このお嬢さんが倒れているということは、魔法は効かないのだろうな。)
そう判断しながら、アレスはクレールを抱き上げ安全地帯まで下がろうとした。が、同じ様な死神がぞろぞろと奥から姿を現してくる。


−ガキッ!ドシュッ!・・ズバッ!−
目覚めたクレールの目に写ったのは、自分を守って死神と戦い続けているアレスの姿。
「アレスさん!」
慌てて加勢しようと駆け寄ったクレールに、アレスは来るな!とガンを飛ばす。前髪で目はみえないが、その意思表示は十分伝わった。
(そ、そうだたわ。魔法はぜんぜん効かないんだった。)
なぜ自分が倒れていたのか思い出したクレールは、青くなって棒立ちになっていた。
(アレスさんばっかりに苦労させてて・・・・)
申し訳なさで頭が下がる思いのクレール。が、そのクレールに名誉回復のチャンスは与えられた。

「ああっ!アイアンゴレム!」
次から次へと現れる死神と剣を交えているアレスの横に物質攻撃の効かないアイアンゴレムが近づいてきていた。
「ファイヤーボール!」
アレスに近づくことは、戦いの邪魔になる。クレールは距離と位置を見計らってアイアンゴレムを攻撃した。
「あ!後ろにも!」

魔法が全くだめな魔物とその逆の魔物の混合部隊?で占められているらしいそのエリアは、その数の多さにもクレールは驚いていた。
倒しても倒しても次から次へと出てくるのである。
「い、いったい、どれだけ倒せばいいの?」

魔法力が尽きかけたその時、通路はようやくし〜〜んと静まり返った。
「よ、よかった・・・これ以上出たらどうしようかと思っちゃったわ。」
少し休んでから進もう、そう思ってそこへ座り込んだクレールは、アレスが先に進むのを見て慌てて立ち上がる。
「あ!アレスさんっ!」
が、慌てて追いかけようとしたクレールは目眩を覚えてその場に再び座り込む。
「ア、アレスさん・・・・待っ・・・・・」
そのわずかな時間で、アレスの後ろ姿はクレールの視野から消えていた。


「行っちゃたのね、アレスさん・・・・」
不安を覚えながらクレールはしばらくそこで休憩をとっていた。無理は禁物なのである。特に一人になった今は。


そして、探索を始めたが・・・・小部屋がいくつかあるのか、あちこち開かないドアによって遮られていた。
「でも、慣れないわね、このドア。」
ちょうど舌が食道への道をふさいでいる。そんな感じのドアであり、できれば触りたくない気もしていた。だが、そうは言ってはいられない。

「あ!もしかしたらこのカギで開く?」
エリア内、開かないドアの内、カギ穴のあるものが2つ。エリアのどこかにそのカギがあると思い、隅から隅まで探しようやくカギを見つける。
「でも・・・・床から沸き立つ酸の泡の真ん中・・・・。」
しばらく眺めていたが、カギが歩いてきてくれるわけでも、遠隔操作ができるわけでもない。クレールは防御魔法と自動回復を唱えてその泡たつ床に足を踏み入れる。
−ゴポポポポ・・−
「うっ・・・」
足の先からじゅわっと溶けていくような感覚。そして、鼻につーーんとくる酸の臭い。
それでもダメージを受けると同時に自分にかけた術により、すぐさま回復していく。これで痛みを感じなければ、もっといい、と思いながらクレールは足早に落ちているカギを拾うとすぐさまその場所を離れた。
「ふ〜〜・・・・・でも、これで開かなかったドアを開けることができるのね。」

え?アレスはこの間何をしていたかって?勿論、次々とどこからともなく現れてくる死神やアイアンゴレムと、エリアのあちこちで戦っているのである。決して探索をクレールに押しつけ昼寝をしているわけでもない。クレールがアレスに魔物との戦いを任せきってしまっているわけではないのと同様である。


「きゃあああ!!!!目、目のおばけ〜〜〜・・・」
−ビィィィィィィィ・・・・!!!−
カギでドアを開け、その内部の壁にあった碧眼のスイッチを触れたクレールは、その瞬間に現れた巨大な目の魔物に驚いていた。
『碧眼の壁に触れし者、全ての扉を開く。封印された魔眼をも解放するなり』
そのスイッチの横には、そう書かれたプレートがあった。
「あ、あれが封印された魔眼という魔物なのね?」

雲をうっすらと周囲に纏った巨大な目。そして彼(彼女)が放つ視線は100万ボルト?
不意に現れたため驚いたこととその視線を見つめてしまい、攻撃することを忘れてしまっていたクレールの髪の毛は、彼の光線のおかげでちりちりになっていた。
「ああーっ!どうしてくれるの?私のさらさらヘアー!!!」
クレール、大ショ〜っク!が、怒りがメラメラと燃え上がる。
「髪は女の命ってこと知らないの?」
怒りに燃えたその瞳は魔眼の熱視線より熱く燃え上がる。

「・・・ゆ、許さないんだから!」
(解放してあげたんだから、普通なら解放した者の言うことを聞かなくちゃいけないのよ?)
と、勝手なことを思いつつ、クレールは魔眼を追いかけ始める。

そして・・・
「え?ち、ちょっと待ちなさいよっ!こ、こらっ!」
エリアは迷路のようにところどころ区切られている。その先にいると気配で分かっていても、そこへはなかなかたどり着けない。かといえば、すぐ手の届くところにいるのに、死神やアイアンゴレムが行く手を遮って通してくれない。戦っているうちに魔眼はどこかへ移動していってしまうのである。

「卑怯者っ!堂々と勝負なさいっ!」
が・・・その魔眼も魔法は一切効かないのである。結局、全部で3匹いた魔眼はアレスが倒したことになった。

「はーはーはー・・・つ、疲れちゃった・・・・」
魔眼を追って迷路の中を時には遠回りしながら(それでないと道がない)走り回ったクレールは、アレスによってそのエリアから魔眼の気配が消えると同時に、へたへたと床に座り込んだ。

「お、おににごっこなんて・・・何年ぶりかしら?」
もう一つカギのかかったドアのもの、次のエリアへの通路につながるドアのものであろうと思われるカギを入ってきたすぐの小部屋で見つけていたクレールは、呼吸を整えてからそのドアへと向かった。

「え?ち、ちょっと待って・・・魔眼を倒した(してくれた)のはいいけど、カギのかかったドアがどこだったか覚えてないわー。」
同じ通路が続くそのエリア。魔眼を追いかけあまりにも走り回ったことにより、それまでの記憶はクレールの頭から消えてしまっていた。真っ白く塗りつぶされたように。
「これって、あの熱視線のせい?」
ほとんど回ったと思ったそのエリア。クレールはため息をつきながら、おぼろげだが、かすかに残っている記憶を頼りに、次のエリアへのドアを探し始めた。


(ゲームでは、オートマップ上の魔眼の通ったところがどんどん消されていくんですよねー。倒すのが遅ければ遅いほど、せっかく出来てたマップも真っ白に塗りつぶされていく・・・魔眼の居場所を確認できるのはいいけど・・・。)

** to be continued **


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