遙かなる旅路
〜[クレール in Brandish1] Brandishストーリー〜

(21)[DARKZONE 1、2F]

〜 カジノで楽しくツーショット? 〜

 「え?ここって・・・・・」
恐い赤ずきんちゃんが死守していたドア。それを開け、階段を上ったところは、一寸先も見えない暗闇。

「こ、困ったわ、ランプもないし、ライトの魔法って知らないし。」
道具屋や魔法屋にもランプやたいまつなどは売ってなかったとクレールは思う。
「暗闇の中を手探りで進むしかないのかしら?」
そう思って壁を伝って歩くクレール。が、そこはちょうどそのエリアの中心。ぐるっと回ってにゃんこの目。壁づたいではいつまでたっても同じところを回るのみ。というか、床に気をつけていないと落とし穴がある。
しかもそれは、階下まで続いている穴ではなく、れっきとした(?)落とし穴。矢尻などはなかったが、その深さからダメージを受けてしまう。

「ああ・・なぜ灯りがないのかしら?・・・・あ、あら?あれは?」

赤い光を見つけ、クレールは思わず駆け寄っていた。
が・・・・
−ズシャッ!−
「え?・・・・」
目の前の赤い光は灯火でもランプでもなく、そのエリアに潜む魔物の放つ瞳の輝きだった。しかもその一撃はクレールにとって致命傷的なまでのもの。
「ど、どうして?・・・鎧は着られないけど、魔法屋さんで買った特注のローブ着ているのに。」
それは、鎧と同様の強度、つまり防御力を持つマジックアイテム。鎧を身に付けることができないクレールだけの特別注文の品。
防御力は確かなはずなのに、まるでそんなものはつけていないようなダメージ。
「あ・・・・・」
ざっくり割れた脇腹からドクドクと流れ落ちる血、そして、痛みも感じないほどのスピードで気が遠くなっていく。
「た、倒れてしまったら・・・・」
赤い瞳の魔物は嬉しそうにとどめの一太刀をクレールにおみまいしようとしていた。

−スバッ!−
「え?」
もうダメだと思ったとき、霞んでいくその視野の片隅に、床に倒れていく魔物の黒い姿と、そのすぐ横に剣を持ったアレスの姿が見えた。


「大丈夫か?」
「あ・・・アレス・・さん。」
クレールが目を開けたとき、アレスの顔がそこにあった。
「ここ・・は?」
「ダークゾーンのすぐ下の階だ。」
慌てて上体を起こし、周囲を見回すクレールにアレスは静かに答える。
「これを着ていくんだな。」
「え?で、でも、これ?」
そう言ってアレスが差し出したのは、クモ女のいた牢屋の奥にあった宝箱に入っていた金縛りの鎧。
「あそこならこれが守ってくれる。」
アレスのその言葉に、『ダークゾーン・悪魔の助けを得られる空間』と書かれたプレートをクレールは思い出していた。
「で、でも・・あたし、鎧は・・。」
「ダークゾーンでなら、形はどうとでもなる。それに身に付けていないように軽い。」
「でも、アレスさんが・・・」
「大丈夫だ。悪魔の剣と盾がある。」
躊躇しているクレールに、アレスはゆっくりと続けた。
鎧だけでなく、剣での攻撃も、そして盾も効果はないダークゾーン。唯一それまでに手に入れた悪魔シリーズが役に立つとアレスはクレールに教えた。
そして、魔法なら攻撃は可能だということも。
「そ、そうだったんですか。」
必要な説明を終えると、最後に笑みをみせ、アレスは階段を上がっていった。
(オレとしたことが・・・あまりにも魔物ばかりで人恋しかったとでもいうのだろうか?)
それは、珍しくあれこれ話してしまった自分への嘲笑だったかもしれない。
「・・・アレスさん・・・・・・」
クレールはアレスに感謝しながら、今しばらく休んだあと、その鎧を手に持って階段を上がっていった。


アレスの好意のおかげで敵モンスターからのダメージも軽減され、ぐっと探索がラクになった。とはいっても、暗闇の中を1歩1歩、目の前の床を確認しながら進まなければならないことは同じである。そう、落とし穴が至る所にあったからである。
1歩先もほとんど見えないその暗闇の中、赤く怪しく光る魔物の瞳。そして、まるで誘っているかのような床の上のアイテム。

が、急がば回れ。アイテムを見つけた嬉しさで駆け寄っていけば、必ずと言っていいほど、その周囲の四方どこかは落とし穴なのである。
当然、魔物に襲われたときもそうである。慌てて逃げては敵の思うつぼなのである。
『石橋を叩いて渡れ』プレートにそうあったように、クレールは1歩1歩目を凝らして床を見つめて進んだ。そんなこと言われなくてもそうせざるを得ないといったところなのである。
もちろん、そうしている時も魔物は遠慮なしに襲ってくる。

では、どうやってその危険極まりないダークゾーンを進んだか。答えは簡単である。サンダーの魔法の連発なのである。そして、それを発動しているその瞬間、一瞬ではあるが周囲がほんの少しよく見える。クレールは一石二鳥と言うにはあまりにも頼りないおまけだが、サンダーの魔法を使いつつ、落とし穴と闇の魔物であるタツジンの接近に特に気をつけて進んできた。

悪魔の鎧で守っているとはいえ、彼らの攻撃は半端じゃなかった。
浮遊ダークモンスター、オクトパシー(タコのような魔物)の魔法攻撃ならまだしもタツジンやムックの攻撃は恐かった。従って、彼らの攻撃範囲に入らないよう、その前にサンダーで倒す必要があったのである。

確かに視界もゼロにちかく、今まで以上に恐いエリアだったが、それでもクレールは隅から隅までエリアを探索した。穴の向こうは床がある。そう思ってジャンプした先は、また穴が空いていたなどというオチもあったが、それでもダークエリアの最後まで辿り着いていた。


そして・・・・
「きゃああああ♪スペシャルモードよっ♪」
数時間後、そのダークゾーンの奥まったところ、ドアの向こうから場違いと思われる賑やかな音楽。そしてそれと一緒に聞こてくるクレールの嬉しそうな声が暗闇の通路に響いていた。
そこは、ダークエリアから出る階段の手前、穴の向こうに続いていた細長い通路の先で見つけたカジノなのである。

−チャチャチャチャララン、チャララララ〜ラ・・・−
軽快なBGMにのり、クレールはスロットマシーンにコインを投入してスイッチを押していく。リズムに合わせて止めると、どういうわけか結構当たる。

そして、疲れたせいで、コインを入れては自然と止まるまで眺めていたクレールは、ある一つの大発見をした。
3?回それを続けると、必ず『777』が並び、スペシャルモード突入となるのである。
そうなったらもうこっちのもの。縦横斜めどれでもいい、ともかく2枚同じものが1組みでも並べばコインは15枚出てくる。[ゲーム上の事実です。でも、TOWNSだけ?初期版だけだったりして?]

「きゃあ♪今度は60枚っ♪」
「32回だったか?」
「え?・・・ア、アレスさん?」
不意に男の声と共に、クレールの座っているスロットマシーンのコインボックスに延ばされた手があった。横を見上げるとそこに立っていたのは、アレス。
アレスは驚いたようなクレールを無視し、勝手にコインを一掴みすると、横に座った。
−カシャカシャカシャ!−
そしてそのスロットマシーンにクレールのコインを投入してスタート!

「ア、アレス・・・さん?」
まさかアレスがカジノで、スロットマシーンで遊ぶとは思ってもいなかった。
目の前のアレスの姿が信じられず、思わず目を丸くして見つめていたが、スペシャルモード中だったことを思い出し、クレールは自分のマシーンへ視線を戻す。

そして、探索などどこへやら。ようやくダークゾーンも終わる。そこまで感じ続けてきた暗闇の重圧感を吹き飛ばすかのように、クレールとアレスは、しばしカジノで大いに(?)心地よいコインの音を楽しんでいた。

** to be continued **


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