遙かなる旅路
〜[クレール in Brandish1] Brandishストーリー〜

(17)[CAVE 5、4F]

〜 地獄のトラップと復活の指輪 〜

 『ここは地獄なり』
覚悟してその通路を進んだクレールだが、後悔していた。
「ア、アレスさんかドーラお姉さまが通られたあとにすればよかったかも?」
だが、トラップが作動してからでは遅い。
背後には巨大な岩。そして、前面には行く手を横切るように右や左から岩が転がってくる。どれも通路一杯で避けられそうもない。
「ま、間に合わないっ!」
目の前を横切る岩を焦りながら見つめていたクレールはすぐ後ろに迫った岩の恐怖に生きた心地がしない。
「もうだめっ!」
そう思ってその場に伏した。
「ぎゃああっ!」

「あ、あら?」
確かに巨大な岩につぶされたはずだった。が、気が付くと、あちこちにある岩は全て移動した後、そして、行き止まりだったクレールをつぶした岩で大きな穴が空いている。
−ヒラリ・・ヒラ、ヒラ・・・−
「え?こ、これ・・・?」
ヒラヒラと舞い落ちてきた一片のピンクの花びらをクレールは手に取った。
「これって・・確か復活の指輪についていた花びら・・・・じ、じゃー・・本当に復活の?あたし、死んで生き返ったの?」
信じられなかった。例え命を絶たれてもそれを身に付けていると数瞬後には復活するという代物。宝箱で見つけ、魔法屋のおばーさんにそう聞いたものの、全く信用していなかった。が・・・・確かについ今し方岩につぶされた・・・なんともいえない感覚がある。恐怖と痛み・・・一瞬すぎて痛みよりつぶされると言う思いから来る恐怖の方が強かった。

「ふ〜〜ん・・・・」
バラバラに散ってしまった復活の花、砕けている輪。それは岩に押しつぶされた自分の姿のようで、思わずクレールはぞっとした。
果たしてここで使ってしまってよかったのか、と思いながらも、使ってしまったあとでは仕方ない、と、クレールは先へ進んだ。
「済んでしまったことをいつまでもクヨクヨするのは良くないわ。それに・・・死んでしまったんじゃ何にもならないから。」


「う〜〜ん・・・・・」
そして、CAVE4、浮島?浮床のような場所に出たクレールは、倒したスケルトンの上に乗り、飛来する大コウモリを杖で払いながら考えていた。
上下へに階段が背中合わせにあるそこは、その階段をぐるっと回るくらいのスペースしかない不思議な空間だった。
目の前は真っ暗である。道はどこにもなかった。その暗闇の先に果たして人が通れる道があるのかなんなのかも分からない。
上への道があるから、上から落ちてくればこの階の他の場所にも行くことができるのか?とも考えたが・・・このまま上へ上がるのはなんとなく悔しかったクレールはジャンプすることにした。

「でも・・もしもジャンプして底なしだったらどうしよう?」
真下は真っ暗で何も見えない。が、それまでも広さは違ってもぽっかりと口を開けた真っ暗な穴は目にしてきたし、落ちてきていた。どこでもその1つ下の階に着地した。1フロアくらいの穴に落ちるのなんてもう慣れっこのクレール。着地も上手なんてものではない。
ということで、・・・
「えええ〜〜い!」
思い切ってジャ〜〜〜ンプ!
が・・・・」
「・・・え?や、やっぱりだめ〜〜〜〜?」
ひゅ〜〜〜〜・・・・ストっと、クレールは1つ下の階に着地していた。
「うーーん・・でもねーーーー」

クセというものの恐ろしさ。無視して上への階段を上ればいいのに、クレールはそのジャンプを試し続ける。

「そうだ!ワープ魔法!!」
ダダダダダッ!とこういう時の為に貯めに貯めておいた金塊の量を確認するとクレールは下へと駆け下りていく。
そして、ワープ呪文の巻物を購入した。

「今度こそ!」
意気込んでそこに来たのはいいのだが・・・・そのワープの呪文で移動できる範囲は、自分が知っているところしか行けない。
「そ、そんな〜〜〜・・・・金塊ほとんど使い果たしちゃったのにぃ〜〜・・・」

が、正確にはその移動範囲は、自分が実際歩いたところより1歩おまけがついている事に気付く。
「よ〜〜し!」
クレールは数回ワープを繰り返した。それは1歩ずつではあったが、確実に穴に阻まれて行くことができなかった向こう側に近づいていった。

「やったわっ!」
そして、ついにその先に着地した。

喜びに沸くクレール。が・・・・その後クレールは知る。素直に上への階段を登り、そこから下りる道があったことに。

「い、いいのよ・・・・だって、そのエリアクリアしないと気がすまないんですもん。・・・た、たとえ、ワープで全魔法力使い切ってしまうせいで、その都度、安全地帯のスケルトンの上で寝て回復を待ったことくらい・・・・。あ、あたしは、あたしの進みたいように進むのよっ!」

負け惜しみなのかなんなのか、下へのその道を見つけたとき、クレールは拳に力を込めて自分に言い聞かせていた。

「あ、あそこで死んだと思えば多少の苦労なんてどうってことないわ。お金だって・・・ワープ魔法はこの先必要になるかもしれないし。無駄使いじゃなかったはずよ。絶対に!」

どこかで聞いた話。死んで復活した後は全財産が半分に減っているとか、いやいや、それだけではなく、武器や防具を全部ロストしてるとかいう噂話を思い出したクレールは、そうではなかったことに、胸をなで下ろしていた。

「そう!ここから出発したって思えばいいのよ!」
なくなった(?)のは金塊だけ。刃こぼれする剣や消耗品などは売ってワープの呪文の足しにしてしまったが、まだまだ他のものは2つの四次元箱の中にほぼぎっしり詰まっている。

クレールは気持ちを入れ替え、購入したおかげで空になってしまった3つ目の四次元箱の蓋をため息をつきながら閉じてから、ガッツポーズと共に上へと向かった。(笑)

** to be continued **



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