遙かなる旅路
〜[クレール in Brandish1] Brandishストーリー〜

(14)[CAVE 9F]

〜 目眩と骸骨さんとマジックポイズン 〜

 「もういや〜・・」
あたしは、はしたなくも座り込んでしまっていた。
だって、いきなり方角が変わってるんですもん。西を向いてたつもりが、歩いているうちに東へ向かっていたり・・・。ああ、もう目眩がして・・・この迷路はどうやって抜けたらいいのかしら?

「そうだわっ!」
何かにひらめいたクレールは、パン!と勢いよく手を叩き、来た道を戻る。
とは言ってもこのエリアの手前の泉に出るまでも散々迷った。が、今回は目ざすものがあり、それもさほど苦とは感じなかった。

「あっ!ラッキー!さっそくスケルトンさんが♪」
にこにこ顔で泉の飛び石を伝ってスケルトンのいる対岸へとクレールはジャンプしていく。

「うがっ?!」
いかにも嬉しそうに自分の目の前に来たクレールに、感情はないとされているスケルトンでも多少の驚きは感じたようだった。その瞬間小首を傾げてクレールを見たが、次の瞬間、早くも剣を振りかざす。
「ごめんなさいね、あたし、もう目眩と方向音痴(?)に苦しむのはいやなのよ。」
−パッコーーーン!−
スケルトンの振り下ろした剣をさっと避け、クレールはジャンプするようにして持っていた杖で思いっきり彼の頭を叩く。
−グシャッ!−
「今だわっ!」
地面にバラバラになって散っている骨の上に、取り出しやすいようにと腰袋に入れて置いたマジックポイズンを取り出す。
「これを骨の上に振りかけてっと・・・・。」
−チャプチャプチャプ−
「これでいいわ。」
そして、さらに数体同じ事をすると、サンタクロースよろしく大きな袋にその骨を一杯いれ、クレールは今し方まで苦労していたエリアへと進んだ。

「さてと・・今度は迷わないわよ。」
1歩1歩歩く毎に、クレールは袋の中からバラバラにした骨を取り出して置いていく。
「これで一度通ったところは一目瞭然ね。」
そう、クレールはスケルトンの骨を目印代わりに使用することを思い立ったのである。
が、単に倒しただけで運んでは、いつ合体して襲われるかわからない。ということで、クレールは泉の妖精、ニクシーからポイズンポーションを振りかけるとアンデッドである彼らは二度と立ち上がらないと聞いたのを思い出して実行したわけである。
(ゲーム上では、Mポイズンを置いた上におびき寄せて倒すと復活しない。ケチって倒した後、その骨の下から取ると復活してしまいます。v^^;)

「あっ!あったっ!スイッチだわっ!」
迷路のようなその先で見つけた開かない扉。その迷路のどこかにスイッチがあると思ったクレールは、それを捜していた。あちこちにあったスイッチを全部押すと、ガコンとドアの開いた音がした。クレールは、骨の目印のおかげで今回は同じ所をぐるぐる回ることもなく、ようやくその先へと進むことができる。

「スケルトンさん、ありがとう。ごめんなさいね、バラバラにしちゃって。」
そう心の中で詫びながら、開かなかったドアのところへ来て、開いた戸口から来た道を振り返ったクレールはぎょっとして目を丸くした。
「あ・・・・・・」
そして、真っ青になってその戸口へと飛び込んだ。

それは・・クレールが見たのは・・・・ポイズンポーションが乾き、復活した数体のスケルトンたちが大騒ぎしていた様子だったのである。
袋の中でごちゃごちゃに混ざったバラバラの骨。そして、クレールが適当に置いてきたため、いくら彼らでも、どれが自分の部品(笑)で、どれが他人のだか見ただけでは判断できなかったからである。

「おいっ!このあばら、オレんじゃねーぞ?」
「お、おいっ・・・オレって天井に立ってる?・・・じゃーねーか・・・頭が逆さまだったんだ・・・。」
「ああーーー!!手と足を逆につけちまったぞ?」
彼らの司令塔は頭蓋骨内にある。その司令塔に従って自分の身体をつなぎ合わせていくわけだが・・・・ポイズンポーションは乾ききって動けるようになったというものの、2日酔い的な症状が出ていた。
適当に合わせたその身体は、どうしてもあちこちちぐはぐで、片足が短いものだったり、手と足を反対にしたり、頭を逆さまにつけていたり、と、端で見るには面白い光景がクレールの目の前で繰り広げられていた。

そして、笑うのも忘れ呆然として見つめていたクレールに、彼らが気付く。
「む?」
「あ・・・・」
「ああーー!こ、こいつだっ!こいつがオレ達をこんな目に!!」
一人が叫ぶと同時に、へんてこな格好のまま彼らは全員クレールを睨んだ。
「あ、あの・・・ご、ごめんなさい。・・・・・まさかこんなことになるとは・・・・」
彼らの言葉は分からなかったが、何を言っているのか判断することは容易だった。
そして、あのままもう復活はしないだろうと思って安心して、適当にやりたい放題に散らかした(笑)クレールは焦った。
怒りに燃え、じりじりとクレールに迫るスケルトンら。
「あ、あの・・・・・」
慌ててドアを閉めようとした。が、スイッチを押して自動的に開いたそれは、閉めようとしても、当然びくともしない。
「あ・・え、えと・・・・・」
焦るクレール。迫るスケルトンら。

−ヒュン!スパッ!ズバッ!シュッ!−
「あ!アレスさん!」
あまりにものスケルトンたちの怒りに、戦うことも忘れ後ずさりしていたクレールの視界に、次々と彼らを倒すアレスの姿が入った。
彼らの背後から俊速でアレスはスケルトンを倒しつつクレールに近づいてくる。

「ありがとうございました、アレスさん。」
スケルトンを全て倒し、クレールのすぐ前にきたアレスに、彼女は深々とお辞儀をして礼を言った。
「え?あ、あら?」
が、いつものごとくアレスはそんなクレールも全く無視し、すっと彼女のすぐ横を通り過ぎ奥へと進んでいった。
「アレスさんらしいと言えばそうよね。」
足早に歩いていくアレスの後ろ姿が見えなくなり、クレールは呟きながら後ろを振り向いた。

「え?・・・な、なに・・・・も、もう復活して・・・・・しまわれたの?」
振り返ったすぐ目の前に、怒りで白い骨を真っ赤に染めたスケルトンたちが剣を片手にクレールを見据えていた。思わず敬語になるクレール。

「ア、アレスさあ〜〜ん!・・カムバ〜〜〜〜クッ!」

洞窟にクレールの声が響いていた。

** to be continued **



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