緑ぷよグリリの大冒険  


●● その6・必殺の大逆転! ●●


部屋は全部で五つあったが、どこにも石は見当たらなかった。
でも、カギがかかってるドアを一つ見つけた。どうやら、地下へ続いてるらしい。
「カギがなくっちゃどうしようもないぷよ。話して開けてもらうわけにもいかないぷよ。
」グリリは思案していた。
と、その時、背後に気配が!
「なーんだ、誰かと思ったらぷよか。」
そこにはさっきのデビルがいた。
・・・しまった!みつかったぷよ!
万事休す!グリリはその妖し気に光る視線に身動きが取れなくなっていた。真っ赤な血の色をした三つの目。
「オレはてっきり石の事でもかぎつけたあのアホ魔導師がうろちょろかぎ回ってるのかと思ったんだけどな。」
にやっと口許を上げる、デビルはグリリをあざ笑う。
「い、石?石ってやっぱり魔導石のことぷよ?やっぱり、お前が犯人ぷよ?」
恐くないと言えば大嘘になる。でも、ここで黙っていては、男が廃る!
グリリは赤ぷよのごとく顔つきで怒った。
「ああそうだよ。あれだけの力を持つ石だ。お前たちぷよなんかにゃ勿体ない。でも、まぁ、わざわざ遠くからここまで来たんだ。見納めに見せてやるよ。」
デビルが手を胸に合わせ、目を瞑って何やら呪文を唱えると、びくともしなかったドアがすっと開く。
「見、見納めぷよ?」
「そうさ、今晩は満月。石の魔導力は満月の夜、最大となる。そして、その時こそ、その魔導力をオレのものにするんだ。」
「そんな事させないぷよ!あれはボクたちぷよの守り神ぷよ!渡せないぷよ!」
デビルがゆっくりとドアの先の階段を下りるのと相反して、グリリは一気に飛び降りる。
「そんな急ぐことないのに。あはははは。」
余裕たっぷりのデビルは、小馬鹿にしてグリリを笑った。
 地下室は一つ。何もないがら〜んとした薄暗い部屋のみ。
床には結界の魔法陣が描かれている。
そして、その部屋の中央にある台座、そこに魔導石は置かれていた。
淡い虹色の光。グリリは、その光がひどくなつかしいような気がした。

そして、その前でデビルとグリリの睨み合いがしばらく続く。といっても睨んでいるのはグリリのみ。デビルは完全にグリリを馬鹿にして嘲笑顔だ。
「そうだな、君のその意気込みに免じて、オレに勝ったら、魔導石を返してもいいかな?何、魔法とかいうんじゃないさ。それじゃ、やる前から結果は見えてるからね。ぷよぷよでいいんだよ。君たち、ぷよぷよを消す勝負でさ。でもこれでやっても、君が勝つなんてこと、万が一にもあり得ないだろうけどさ。」
腕を組み、自信満々に言うデビル。
−にやり−
グリリは心の中でほくそ笑んだ。
あーっはっはっは!と高笑いするデビルにグリリは、きっぱりと言い放つ。
「よし!その勝負受けたぷよ!」
「よーし、後悔しないな?!」
「しないっぷよ!」
「よし!ゲームスタートだ!」
どこかからか大きな石盤が召喚される。
二つのマスに区切られたその石盤の上から、グリリの仲間達、ぷよぷよが降ってき始めた。
「よーし!回転!右へ2、左に1!」
連鎖を予想し、計画的に次々と命令てして、ぷよを積み上げていくデビル。
そのデビルを見、そして、視線を魔導石に移すグリリ。
「おい、早くしないと連鎖しちまうぞ。それとも何か?仲間を消すのができないってか?今更後悔しても遅いよ、みどぷよくん!」
「えーと右、いや左、・・うーんと・・回転かな?・・じゃなくってぇ、そのまま・・」
グリリは、ゆっくりと命令していた。
「はっはっは!この勝負あったな!しかし、オレは何事でも全力でいく主義だからな、完璧にやっつけてやるよ!」
「ち、ちょっと待ってぷよ・・え、、えっとぉ・・・」
グリリはわざと焦っている振りをする。本当は、笑いを堪えているのがやっとなんだけど。
デビルは、魔導石が魔力を持つ石であることは知っていても、それがぷよにとってどういう力を発しているか全く知らない。
そして、それこそ、グリリにとっては、ありがたい神様のご加護。反対に、デビルにとっては決定的なミス!

「あっはっは!最後だよ、グリリくん!オレの予定した通り、次のぷよを起爆に使えば、連鎖が始まる。君はなんだ、真ん中まで積んだのはいいけど、それじゃ連鎖しないよ。やっぱり仲間を消すなんてこと、良心の呵責に悩まされてできないんだね。はっはっは!ホラ、お次が落ちてきたよ。悪いね、モタモタしてる君がいけないんだよ。はっはっは!」
グリリは、じっとデビルのマスを見つめた。
「よーし、そのまま下降だ!」
既に勝利を確信して満足げに叫ぶデビル。
が・・・・
四つ揃ってもぷよは消えない・・・。
「な・・何?消えない?」
現状の把握ができず、パニック状態になるデビル。
「な・・んなバカな!どうして?」
さきほどまでの余裕はどこへやら、大口を開けてアホ面のデビル。
そうしているうちにも後から後からぷよは降り続け、デビルがそのことに気づいた時は、既に手遅れ。
『ゲームオーバー!』
『勝者、グリリ』
とどこからかアナウンスが!!
「んなバカなぁ・・・」
−ドデッ!−
デビルは、ショックでその場に倒れ込んでしまった。
「やったね!じゃ、約束どおり石は返して貰うよ。」
気絶しているデビルに一応、そう断ると、グリリは、ぱくっと自分の身体の大きさの魔導石を飲み込み(これしか持ち運び方法がない)重くなった身体を一生懸命弾ませて(引きずって)地下室を後にした。
そして、うんしょ、うんしょと玄関のドアを開けた。
「ああ、もう朝ぷよぉ・・」
ここまで来るだけでも随分時間がかかったようだ。辺りはもう明るくなっている。
さて、これからどうするぷよ?と思いながら外へ出た。

「わあっ!」
一斉に人々の歓声が沸き上がる。
「えっ?えっ?また追いかけられるぷよ?」
ギクッとしたグリリ。が、一瞬後、誰かの手のひらの上に置かれていた。
グリリは恐る恐るその手の持ち主の顔を見上げる。もう逃げ出す元気はない。
そこには、かあさんを思い出させるやさしい女の人の顔があった。
「あんたがわしたちをデビルの呪いから解放して下さったんじゃの?」
反対方向から老人の声がした。
グリリが振り向くと、にこにこと微笑む年老いた男の顔があった。
「わしはこの村の村長じゃ。村人全員を代表してお礼を言いますじゃ。」
「あ、あの、ボ、ボク・・・」
予想だにしなかったこの展開に、グリリは戸惑ってしまった。
グリリがきょろきょろしている間に、周りは村人の顔、顔、顔。ぐるっと幾重かに囲まれていた。
「あ、あの・・呪いって?」
「この屋敷に住んでいたデビルですじゃ。奴の言うことを聞かなんだので、わしら全員、石にされてしまってたんじゃ。」
グリリはこの村に入った時のことを思い出していた。
・・・そうか、ただの石像じゃなくって村の人たちがデビルくんの魔法で石化してたぷよ。
今更ながら、勝負がぷよぷよでよかったと思ったグリリだった。

デビルが倒れているはずの地下室のドアは、いつの間にか消えていて、村人も一安心。
そして、村ではすっかりグリリをぷよ神様扱い。
グリリは、御輿に乗せられ村中を練り歩いたり、広場で飲めや歌えの大騒ぎ。
「ぷよ!ぷよ〜!」
グリリも自分がなんの為にここにいたのか、すっかり忘れ、もう大はしゃぎ!

「い、いけない!ボ、ボク・・!」
お祭り騒ぎがようやく一段落した三日後、どうもお腹が重いと、感じたグリリはようやく自分の使命を思い出した。
そして、社と住居を建てるから、村の守り神としてずっといてくれという村人の言葉を丁重に断ると、グリリはとにかく、その辺りで一番高いはげ山の頂上に連れてきてもらっていた。



●● つ づ く ●●



♪Thankyouforreading!(^-^)♪


前ページへ 目次へ 次ページへ