緑ぷよグリリの大冒険  


●● その2・コカトリスのお母さん ●●

 「ええっ?なんでぼくがぁ?」
いきなり校長室に呼び出され、突拍子もない事を言われて叫ぶグリリ。
そして、数十分後には、ひたすら当惑するグリリの心配など無視され、あれよ、あれよという間に、万歳三唱で村の門から送り出されてしまっていた。
心配してくれていいはずのグリリの母親は、息子が選ばれたってことで、もう有頂天!勇者の母気分!

 「ふう・・・ダメだぷよ、はっきり断れない性格がしっかり出ちゃったぷよ・・・。」
村の外は、グリリたち知性派のぷよ以外の野生ぷよなどもいる。
「それに、聞いたところでは、ぼくたちぷよを消すのが生き甲斐の人間や魔物がいるっていう話だし・・・ああ、どうすれば?」
不安いっぱいのグリリは、それでも、もはや村へ帰るわけにもいかない。とにかく、コカトリスに逢ってみたらどうだという村長の言葉に従って、村の北東にあるの山へ向かった。

コカトリスとぷよりん村の間には、随分前から友好条約が結ばれていた。でも、初めてコカトリスに逢うグリリにとっては、恐怖だ。
普通の鶏でさえぷよであるグリリにとっては大きくて怖いのに、それよりもうーんとでっかいコカトリスなんて・・・
北東の山に入ってからも、その巣に着くまでグリリはできるなら逃げ出したい気分でいっぱい!
・・・だけど、ここで逃げ出したら・・ひ弱なみどりぷよっていうイメージからいつまでたっても抜け出せない!頑張らなくっちゃぷよ!
そうは思っても身体はぶるぶる震えてた。
それでもなんとか巣のある岩棚の真下まで来たグリリ。
頭上の巣を見上げると大きくため息をつく。
「ふぅぅぅ・・・・あそこまで岩づたいに行くのかぁ・・・」
よいしょ、ぴょん!よいしょ、ぴよん!と岩登りが始まり、疲れもピークになった頃、ようやく到着。
「あっ!ぷよだっ!」
グリリがひょこっと巣の縁に乗っかると同時だった。巣の中にいたコカトリスの雛の一羽が目敏く見つけると叫んだ!
「えっ?ぷよ?」
他の雛が一斉にグリリを見る。雛と言っても大きい、普通の鶏くらい。
「わぁぁい!ぷよだ!ぷよだ!」
「えっ?!ち、ち、ちょっと・・・?」
グリリがあたふたしているうちに、その中の一羽がヒョイとグリリをくわえると、ポーンと空高く投げた!
「ヒ、ヒェェェー!目、目が回るぷよぉ・・か、かあさん、助けてぇぷよぉ・・・」
哀れ、グリリは母コカトリスが帰って来るまで、五羽の雛のおもちゃにされていたのだった。

 「ごめんなさいねぇ・・私の帰りが遅いので、すっかり退屈しちゃってたらしいのよ。そこにあなたでしょう?てっきり私がぷよりん村に依頼した遊び相手と思ってしまったみたいなの。本当にごめんなさいね。びっくりしたでしょう?」
ボールにされ、次から次へと放り投げ続けられているうちに、いつの間にか気を失っていたグリリが気づいた時、目の前には、母コカトリスの姿があった。
「あっ・・・い、いえ、別にボク、気にしてないっぷよ・・・・」
巨大なその全身を目前に、グリリは少し震えた口調。
ヒョイと母コカトリスはグリリをやさしくくわえると、ちょうど視線の高さにある小枝に乗せた。
「それで、わざわざ私の巣までみえたのは何かご用でも?また卵の殻で新しい家でも、どなたか造られるんですの?一応、この子たちの時の殻は奥に取ってありますけど。」
「い、いえ、そうじゃないぷよ。じ、実は・・・」
グリリは彼女に魔導石盗難事件について話した。
「まーあ・・そうなの。それは大変ですわ。あの石がないとぷよのみなさん、困ってしまいますものねぇ・・ちょっと待って。えーと・・昨夜から明け方にかけての事よねぇ・・・あの高さからみて、空から盗むより方法はないはずよねぇ・・」
しばらく彼女は目を閉じ、何か考え事をしているようだったが、いきなり目を開けると右の羽根を口にあて笑った。
「ほっほっほ!私としたことが、真剣に考え込んだりして・・鳥目の私に夜の事が見えるわけないじゃないの!」
・・・ あぁ・・そうか・・・
グリリも納得。
「かあさん、かあさん、ボク見たよ。」
じっと話を聞いていた雛鳥の一羽が、とっとっとっと近寄ってきた。
「えっ?見たって何を?そんな夜中に何を見たって言うの?」
「うん。お外の様子は見えないけどね。お月様をバックにしてたから見えたんだ。はっきりとは分かんないけど、翼としっぽがあった人間みたいだったよ。前、かあさんから聞いたみたいに二本の腕と足があったもん。」
「翼としっぽのある人間?」
首を傾げる母コカトリス。
「・・黒く見えただけだから、よく分かんないけど・・。」
「じゃ、そ、そいつが魔導石を?」
さっぱり検討がつかないけど、一応分かりそうだと思ったグリリの目が輝く。
「でも、それだけじゃねぇ・・翼としっぽの生えたっていうんなら、人間じゃなくって、そうね、この辺りでいくと、ドラコさんかしら?でも、あの子はそんな悪いことはしないはずだし。(ぷよは消しても、と心の中で思う母コカトリス)でも、もし夜のお散歩をしてたのなら、何か見てるかもしれないわね?」
「ドラコさん?」
「そうよ。ドラコケンタウロスのドラコさんよ。」
グリリはその瞬間、教科書に載っていたぷよを消すのが生き甲斐の代表的な『鬼』リストの中に、その名前があったことを思い出した。
−ブルルッ!−
その姿を思い出し、思わず、武者震い?する。
「そうね、行ってみる価値はあるわね。」
「で、でも・・ボ、ボク・・・」
震えるグリリを見て、その事を察する彼女。
「いいわ、私がついていってあげるわ。そうすれば彼女も何もしないでしょうし。」
「わーい!ありがとぷよ!」
ほっと胸をなで下ろし、単純に喜ぶグリリ。
「子供達と遊んで下さったお礼よ。」
にこっと笑いかけると、グリリに自分の頭を差し出す。
「私の頭の上に乗って、いい?しっかりとさかに掴まってるのよ!」
母コカトリスは、グリリがしっかりと彼女のとさかにしがみついてるのを確認すると、大きく羽ばたき始めた。
また遊んでね!という雛たちに頷きながら、でも本心はもう二度としない!と思いつつ、グリリは巣を後にすることとなった。

ワクワク、ドキドキ。グリリにとっては、初めての空の旅。
・・・空を飛ぶって、きっと気持ちいいだろうなぁ。と思いながら、母コカトリスが飛び立つのを心待ちにしていた。




●● つ づ く ●●



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