緑ぷよグリリの大冒険  


●● その4・脱出!恐怖の鬼屋敷 ●●


 「あ・・あれ?こ、ここは?」
グリリが気づいたのは、りっぱな大理石のテーブルの上。
「どこかのお屋敷みたい・・・ぷよ?」
きょろきょろ辺りを見渡してみた。そういえば、気づいた時から何やら騒がしい。
グリリの乗っているテーブルを挟んで、何やら言い合っている。
一人は、緑色のサラサラヘアと二本の太くてねじれた角のある男。
そしてもう一人は、茶色の髪を頭の上で束ねた元気一杯という感じのちょっとかわいい女の子。
「だからぁ、いくらなんでも、壁を突き破るほどの勢いでぷよを飛ばさないでくれる?おかげでおかあさんのお気に入りの鏡が割れちゃったじゃない!弁償してよね、サタン!」
「だから、ちょっと待ってくれって言ってるではないか、アルル?私にはそんな覚えは・」
「『ない』なんて言わせないよ!だいたい、こんな事するのはサタンくらいしかいないんだから!」
どうやらアルルと呼ばれた女の子の方が断然優勢みたいだ。
「ぐう!」
その女の子に味方するように、肩に乗っている黄色い生き物も断言する!
−ダン!−
グリリの乗っているテーブルを両手で叩き、サタンを睨むアルル。
何が何だかさっぱり訳が分からないグリリはアルルとサタンを交互に見つづける。
「何度言ったら分かるんだ!私ではないと言ったら、ないんだ!」
−ドン!−
サタンもまたアルルを睨んだ。
「むむむむむ・・・」
「ぐぐぐぐぐ・・・」
−バチバチバチ!−
 火花散る睨み合いが続く中、グリリははっと思い出した。ドラコより凶悪な『鬼』として教科書に載っていた、この二人を!
・・・ど、ど、ど、どうしよう?ボ、ボク消されちゃうよぉ!・・・
−ガタガタ、ブルブル・・・−
体はこうちゃく状態、頭の中は真っ白。
でもそんなグリリの頭に、村長のそして村のみんなの顔が浮かんだ。そして、思い出した!全てはグリリの肩(どこ?)にかかっているということを!
「こ、こんな弱気じゃいけないぷよ!」
グリリは自分を奮い立たせると、そっと抜け出し始めた。
「抜き足、差し足、忍び足っと・・・・見つかりませんように・・・」

 そぉっと、そぉっと、グリリは運良く二人に気づかれないようになんとかその部屋を出ることができた。
「ふう・・・」
ほっと一息、廊下でため息をつくグリリの目の前に何やら影が写った。
「ぷよ?」
視線を上げると、いつの間に付けてきたのかそこには、アルルの肩に乗っていた黄色い生き物が立っていた。
「ぐうっ!」
グリリを襲う真っ赤な舌!あわや、巻き込まれる寸前、グリリはその舌を避け、きびすを返して逃げ始める。
−ピョンピョンピョン!−

 屋敷の中をあっちへ行ったりこっちへ行っりし、なんとか巻くことができたグリリは、いつの間にか裏口から屋敷の外に出ていた。
「ふう・・・もう大丈夫ぷよ?」
植木の影で、きょろきょろと周囲を見渡し、誰もいないのを確認すると、ようやく人(ぷよ?)心地ついたグリリ。
と、あまり離れていないところに人の気配を感じ、そぉっとその気配がする方へ行ってみた。
「ほぇほぇほぇ〜〜・・」
建物の影でドラコケンタウロスのドラコが倒れている。
「ぷよ?」
恐る恐るそぉっと近づいて、顔を覗いてみる。
「あ!探してたドラコさんだ!」
ラッキー!と喜ぶグリリ。でも、ドラコは熱があるのか真っ赤な顔。
・・・熱でもあるのかな?ボクが額に乗ると下がるかなぁ・・確か、コカトリスの雛たちが熱を出した時、青ぷよくんたちが行って熱を下げてあげるって聞いたことがあるけど、・・ボクでもいいのかな?
恐いことには違いない。でも、運良くドラコと会えたのだ。グリリは勇気を奮い起こして彼女の額に乗った。
−ヒ〜ンヤリ・・・−
火照った顔が少しずつ冷めてきたようだ。
そして・・・
「あ・・あれ?治っちゃった?・・な、何?・・・ぷよ?」
頭痛が去り、楽になったドラコは、その上体を起こすと額の上にいたグリリを手のひらに乗せ、不思議そうに見つめる。
「こ、こんにちは。ボク、グリリぷよ。」
少し震えながら、挨拶をしてみる。
「あたし、ドラコ。そっか、あんたが熱を下げてくれたんだ!」
「あ、あのぉ・・ドラコさん・・・」
危険は承知。でも、他にどうしていいか分からないので、とにかくぷよりん村の事は伏せて、石の事を聞いてみた。
「ふ〜ん・・虹色に輝く石?コカトリスの巣の付近を夜の散歩?・・あたし昨日の晩は、どっこも出なかったよ。」
「そ、そうぷよ・・。」
がくっ・・期待が外れ、ショックでペシャンコになるグリリ。
「うーん・・他に翼としっぽを持った奴というと、・・そうだ!デビルくんだ!あいつならきっと魔導力を持った石って聞けば、欲しがるだろうから!まぁ、もう一人力を欲してるって奴もいるけど、シェゾは翼なんてないしね。しっぽも。」
ドラコのその言葉でぽん!と元に戻るグリリ。
「ふ、ふーん・・デビルくん?」
教科書のブラックリストに載っていたかどうか、しきりに自分の記憶を検索するグリリ。
・・・確か載ってなかったような?・・・
「それで、そのデビルくんって、どこにいるぷよ?」
「デビルくん?さあ、どこだろう?よく悪さしにここへは来るけどさ。だいたいサタンにお灸を据えられて地下牢に閉じ込められるってのがいつものパターン。でも、今はいないみたいだよ。」
そう言ってから視線をグリリに移すと、にやっと何やら含み笑いをするドラコ。
「ねぇ、それよりもさぁ・・・」
−ギク、ギクッ!−
その笑顔を見て、ぷよの本能が危険を察知したのか、グリリの背筋を寒気が走った!
「あたしさぁ、さっき、アルルに負けちゃったんだよね。もっと修行が必要かな?なんて思っちゃたりして・・でさぁ・・実は、今あたしん家の庭にぷよの山があるわけなんだよねぇ。さっきまで練習してたんだけどさ・・あのね、あと、緑ぷよ一個で、十九連鎖するんだよぉ・・・・・」
同時に、グリリの身体をしっか!と持つドラコ。
彼女の笑顔は不気味なほど美しい。(?)
−ギク、ギク、ギクッ!−
グリリの脳裏に友達の赤ぷよくんたちが一瞬にして消滅した時の光景が浮かんだ!
「だからさぁ、助けついでに、それも・・。」
言い終わるが早いか、ドラコは家に向けてダァーッシュ!
しっかりと握られているグリリは、逃げられそうにもない!必死でもがいてもびくともしない!
・・・こ、ここでボクが消えちゃっては!
「ぷよよぉぉぉぉぉぉぉ!」
・・・なんて災難なんだ!旅に出てから一つとしていい事がないぷよ!災厄日?天中殺?ボクなんにも悪いことしてないのに、どうして?・・・
心の中で嘆くグリリ。
・・・ああ、今度こそ、もうだめぷよ?と、森へ入った時だった。
−スッテーン!−
木の根っこにドラコが躓いた!
−コロン−
その拍子にグリリを握る手の力が抜け、彼の身体はそこから転がり出た。
「や、やったぷよ!ラッキーぷよ!」
「あっ!ち、ちょっと待ってっ!」
待ってと言われて待つバカはいない!
まだ立ち上がっていないドラコを後目に、グリリは一目散に逃げ始めた。
−ピ、ピューーーーン!−
運動会の徒競走のごとく、グリリは必死に飛び跳ねる。
・・・こうみえてもボクはクラスリレーの選手なんだぷよ!
−ピョン、ピョーン、ピョン、ピヨーン!−


●● つ づ く ●●



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