その28・風龍の神殿



- お絵描きソフトで描いたものです。一応テキストの指導に沿って/^^;- 
まだまだこんなものしか描けなくてごめんなさい

 

 −ザザーーン・・ドドーーン−
「ラードや。」
「長老・・」
荒ぶる波と絶壁、そして霧と強風が守るその地で、ラードは原住民であるホビットたちの集落地跡から一番近い海岸で海を眺めていた。
勿論、そこも断崖絶壁、とてもではないが海に降りる道もなく、海も来る者を拒んでいるかのように荒れ狂う波頭を岸壁に打ち付けていた。
その絶壁の手前で一人たたずむラードに、ホビット族の長老キシュロが声をかけた。この地に住み、先祖代々、風龍の神殿を守り続けているホビット族もそのキシュロ一家だけとなっていた。

「あの時、ミルフィーもそうしてここから海を眺めていた。」
「ミルフィーも?」
呼びかけられ、一旦は長老に向けた視線を再び荒ぶる波頭に向けたラードの背に、キシュロは静かに話しかけた。
振り返ることもなくつぶやくように、そして、その言葉をかみしめるように言ったラードにキシュロはゆっくりとうなずき、ラードの横に立つ。
「今思えば、あの時彼女はすでにこの結末を悟っていたのかもしれん。」
「・・・・・・そう・・かもな。」
「荒ぶる波に、己の荒れた心を・・不安や憤り・・不満・・いろいろあったじゃろう・・それを波に乗せ、持ち去ってもらおうとしていたようにも思える。いや、流そうとしていたのかもしれん。」
「・・・・」
「今思えば、なのじゃがの。」
「・・・だよな・・・」
たとえ金龍の守護騎士といえど、一人の人間である。不安がないわけではない。全てを悟っているわけでもない。ましてミルフィーはまだ年若い女性。世界のため全てを割り切れと言われても簡単にできるわけでもない。己の先を知った・・悟った時、彼女はいったいどんな心境で、どんなことを考えていたのか、ラードとキシュロは、しばし無言で海を見つめていた。
そして、ラードの思考はミルフィーからセイタへと移っていく。セイタはミルフィーよりそしてラードよりまた一段と若い。その彼女もいつからかは判断できなかったが、自分の運命を受け入れていた。
ふ〜〜・・・・ラードは大きくため息をついた。
(結局、オレだけが何もわかっちゃいなかった?)
ふと腰の剣に視線が止まった。それは、黄金龍と会う前、砂漠の地下に広がっていた洞窟、遙か昔の町の跡だろうと思われた遺跡で見つけた銀龍の剣。
(こいつを手にした時、銀騎士として認められたという思いで舞い上がってたっけ・・・だけど、これじゃオレだけ・・・オレも龍騎士じゃないのか?)
哀しみと苛立ちがこもった手で、ラードは剣の柄をぐっと握った。
(そういえば、銀色に輝く剣を手に入れたっていうだけで、銀龍からのコンタクトがあったわけじゃないし。)
「いや、銀騎士と認めたからこそ、お前さんに一番大切な、そして最も困難でつらい事を任せたんじゃ。」
「長老・・」
ラードの心情を読み取ったようにキシュロが落ち着いた声で言った。
「倒したとはいえ、完全には消滅させることができなかったのじゃ。その上、こうしてばらばらにして龍玉に封じ、持ち主である神龍の元に保管する。それは、とりもなおさず闇龍の力がどれほど強大なものなのかを語っておるのじゃが・・・その龍玉は、常人では持つことはできないはずなんじゃ。」
「そうなのか?」
こくんと頷いたキシュロの瞳は、ラードが事実銀騎士であることを力強く語っていた。
「龍玉をそれぞれの神龍の元に預け、お前さんも金龍の元へ行ってしまう・・・おそらくその時がわしらこの世界で息をする住人と創世の神々との最後の別れなのじゃろう。」
「別れ?」
「そうじゃ、神話時代は終わり、わしたちはようやく一人歩きし始めるんじゃ。再び神龍が姿を現すとすれば、それは、破滅の時・・・になるんじゃろうか?」
「破滅のとき・・・」
「まー、そうならぬように祈るだけだが・・・最後の絆であるお前さんがこの世界を離れれば、神の世界とは完全に寸断される。もはや神龍が我らの言葉に耳を傾けることも、そして、道を指し示すこともない。人は人の未来を自分の力で切り開いていくんじゃ。自分自身で選んだ道をな。」
「オレが行かなかったら?」
ふとラードは思いついた事を口にする。
「行かなかったら・・か、それでも、同じ状態なんじゃろう。神龍たちは深い眠りに入っておる。わしらの呼びかけに答えることは、二度とないじゃろう。」
「だけど・・・」
「いいかげん乳離れしなくてはいかんのじゃろ、わしらも。・・・もっともわしもそう先は長くないんでの。未来がどうなるか・・・気にしてても始まらんというか・・・ふぉっふぉっふぉ・・」

−ビュオッ!−
不意に一陣の突風がラードの横をかすめていった。まるで、いつまでも何を女々しくしんみりしているんだ?とあざ笑い叱咤するかのように。
「どうやら神殿への風の道が開いたようじゃな?」
「そうだな。じゃ、また後で。」
「ああ。」
キシュロは、土煙を上げ小さくつむじを作りながら移動していく突風を追いかけていくラードの後ろ姿を、見えなくなるまで見送っていた。


「え〜〜と、確か風の門を通ったら、左に曲がって・・・落とし穴に気を付けながら突き当たりまで進んで、・・それから壁の仕掛け扉を開けてっと・・・大広間のスイッチは、左巻きのつむじになるように中央から踏んでいくんだったよな?」
以前来たときは、ミルフィーが先頭に立っていた。ラードは今一度キシュロに教えてもらになおした道順を思い出しながら奥祭室へ向かって狭い通路を進んでいた。
「でー・・・床一面魔法陣のここは・・・とにかく転移しても他の魔法陣へは移動しないで、その場でジャンプするんだったよな?・・・で、それを繰り返してれば、そのうち次のエリアへ転移するっと・・・・」
独り言を呟きながら、ラードは、神殿内を奥へ、奥へと進んでいった。

「やー・・・・ようやく頂上近くかー・・・・ここは相変わらず景色がいいな。」
トラップエリアがようやく終わったそこは、高くそびえ立った神殿、いや、塔と言った方がいいのだが、その小窓から見える青空と雲を見つめつつ、ラードは、大きく深呼吸して、新鮮な空気を吸い込んだ。景色がいいといっても、青空と窓の少し下に広がっている雲海しかみえない。

COSMOSさんからいただきました。
ありがとうございました。m(__)m


「この雲海の上で、風龍の騎士のラルフと戦ったんだったな・・・ここへ来るまでで手に入れた物質硬化剤で雲を固めて・・・・時間切れで、ラルフにはなんとか勝ったものの・・・元に戻った雲海を突き抜けて落っこちたっけ・・オレ、あの時はもうダメだと思ったもんな。ファンガスを乗せた赤龍がタイミング良く戻って来なかったら地面に激突しておだぶつだったよな?」
まるで遠い昔のようなそして、つい今し方の出来事のようにも感じられたその時の光景は、そして、その時の戦いの激しさ、苦しさ、落ちていくとき感じた死への恐怖など、はっきりと脳裏に映っていた。
「そして、ミルフィーを庇い、風龍の風の刃を全身に受けてファンガスが死んだのも・・・ここから繋がっているかの地の雲海の上・・・。いや、ファンガスに向けられた風神刃を阻止しようとあいつの前に踊り出たミルフィーを・・・自分の代わりにその刃を受けるところだったミルフィーに体当たりして、ミルフィーが受けるその寸前で自分の身に受けた・・・んだったよな・・。」
ファンガスの場合もジャミンの場合同様、主である神龍の元で回復を待っていると聞かされていた。そして、仲間となった風龍の騎士、ラルフは、闇龍の騎士との戦いで傷つき、やはり、同じ事をラード達は聞かされていた。
「あれもこれもみ〜〜んな嘘っぱちばっかじゃねーか?」
あれこれ思い出せば思い出すほど、ラードは怒りを覚えずにはいられなかった。が・・・今更怒ってみても仕方がないことも確か。
人々の信仰心を糧に強大な存在へと膨れ上がっていた闇龍。その闇龍と戦うには、肉体という殻の中にいては、守護騎士本来の力は出し切れなかったのだろう、とラードは、キシュロから聞いた。だから、「死」という関門をくぐり抜け、精神体となる必要があったのだ、と。
「で、最後のトドメ用にオレだけ仲間はずれってか?」
頭では納得していたが、感情はそうもいかない、簡単に割り切れるものではなかった。

『まー、そうぼやくなラードよ。』
「へ?」
不意に頭の中へ響いた風龍の声に、ラードは現実に引き戻される。
−ヒュゥゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜−
やさしい風がラードを取り巻き、吹き上げる。ラードの視界は一瞬風によって閉ざされ、そして、次の瞬間、かの地、風龍のエリアであるどこまでも続く雲海と青空を映し出す。もちろん、目の前には半透明の身体の緑龍の姿がある。
「ね、寝ているのか?」
目を閉じたままの風龍からは、寝息も聞こえてきていた。
『さよう。私は今、深い眠りの底からお主に話しかけておる。』
「へーへー・・さいでっか。」
『そうふてるなラード。』
「足下にある台座の上へ置けばいいんだよな?」
風龍には答えず、ラードは龍玉を袋から取り出してそこに置く。

「ラードったら遅いじゃないのぉ?」
「あん?その声は・・・その声って・・・ミ、ミルフィーか?・・・」
ラードの顔が輝く。
「し、しかたねーだろ?この大陸に来るだけでもどれだけ苦労したか・・・分かってるだろ?前来た時みたいに赤龍もいなけりゃ、風に乗ってってわけにもいかないんだぜ?」
「そ、そう言われればそうね。神龍たちも力は無くしてるから。」
「ったく・・・」
文句を言いつつ、ラードの中では嬉しさがこみあげてきていた。そう、夢とも思えた地龍の神殿でのミルフィーとセイタとの会話。が、ミルフィーの声が聞こえたということは、それが事実だった証拠である。
「ラード?・・どうしたの?どこか怪我でもしてるの?」
龍玉を台座の上に置いたままそこへ座り込み頭を下げたままのラードを不思議に思ったミルフィーの声が響く。
「い、いや・・怪我は・・ないけど・・」
その事実に、思わずうれし涙がラードの瞳から沸きこぼれてきていた。それに気づかれたくなくてラードはうつむいたままだったのである。
ぐいっとその涙を袖で拭いてラードは勢い良く頭を上げる。
「ラード?」
「あ、いや、ちょっと風と一緒にほこりが目に入っちまって・・・はは・・・・」
「ラードったら・・・」
ごまかし笑いしたラードだったが、ミルフィーには分かっていた。
「ラード、全部の龍玉を神龍の元へ預けたら、カシモフ村へ行ってあるものをもらってきてくれない?」
「カシモフ村って・・・あんたが初めてこの地へ来たっていう?」
「そう。あなたとセイタちゃんに会った森の家から西の方角にある小さな村。」
「何かあるのか?」
「うん。そこにね、多分、そこのお社に奉納されてるんじゃないかな?と思うんだけど、この世界へ来る為にもらった銀龍の爪があるはずなの。」
「銀龍の爪?」
「そう。それを返してもらってからこっちに来て。」
「返してって・・・あんたじゃないのに返してくれるのか?」
「あら、だって今はラードが銀龍の騎士じゃない。銀龍の剣でも抜いて一振りすれば返してくれるわよ、きっと。」
「きっとって・・・相変わらず強引っていうか無茶苦茶っていうか・・。」
「別に危害を加える訳じゃないからいいでしょ。ね、ちょっと遠回りになるけどお願いね。」
「お願いって・・・何に使うんだ?必要なのか、それ?ひょっとして金龍と銀龍とのコンタクトに必要だったとか?」
「それは、こっちへ来てからのお楽しみ♪あ!それから、少しの間、私も神龍を通して話すことはできなくなるから。」
「は?・・な、なんだよ、それ?」
「だから、炎龍のとこでも水龍のところでも話はできないけど、大丈夫だから心配しないで。」
「しないでって言ったって・・・・説明してくれないと心配にもなるだろ?」
「うーーん・・・確約はできないから、ちょっと・・言いにくいっていうか・・」
「は〜?いいかげんにしろよな?オレ、今回のことでは頭にきてんだぜ?」
「そうカッカしないで、ラード。悪いことじゃないから。でも、必ずそうなるって保証もできないから、今言うわけには・・・・」
「だから、それはなんなんだって聞いてんだろぉ?銀龍の爪を持ってくと何か起こるのか?何がどうなってどうなるんだよ?」
「・・・・・」
「ミルフィー?!」
『すまぬ、ラード。もはや彼女と意思を通ずる事も限界だ。』
「なんだよ・・・・もう少しふんばれないのかよ?案外だらしないんだな、神龍も?」
『何か言ったか?』
「あ、いえ、何も。」

ミルフィーが何を言いたかったのか、銀龍の爪を持っていくと何が起こるのか、何のためにそれが必要なのか、ラードにはさっぱり分からなかったが、ともかくラードは最初の予定にカシモフ村行きを付け加えた。というか、付け加えないわけはないが。


「さーて、後は風向きと・・・幸運を祈る!」
「特大の幸運を祈っててくれよ。」
この大陸へ来たときと真反対の東の海岸。その絶壁にラードは翼龍よろしく、手製の翼を着けて立っていた。
それは、キシュロの発案に添って彼の妻と娘2人がここ1ヶ月夜を徹して紙を梳き、縫い合わせた手製の翼。樹齢1000年の木とカンシーラと呼ばれる荒海であるこの近海に住む鯨の仲間に分類される魚の髭とで作ったものである。風や水に強い丈夫さとしなやかさは抜群である。もちろん、荒海に漁へ出るなどということはできない。ちょうど浜に打ち上げられたというか・・そんな浜もないので、大嵐のとき、岸壁を乗り越えてきた波によって陸に打ち上げられて死んだカンシーラから取ったもの。
ここへは舟で来たラード。多少でも穏やかになる季節と時間を見計らい、荒海の中、死ぬ思いで梶をとり、岸壁近くで舟を捨ててなんとか岩場に泳ぎつき、そこから決死のロッククライミングをしてきたのである。もちろん、舟は粉々になってしまっている。帰りはどうしようか、と思案していたところに、提案したキシュロの計画にとびついたのである。


−ビューーーーーー!・・・バサッ!−
追い風に乗り、ラードは岸壁から舞い上がった。
「げーーーーー・・・・・」
と思ったら、一気に海面めがけて落下しはじめる。
「ひぇ〜〜・・・・・・・・・」
−ふわっ−
「あ、あれ・・・」
このまま海面に激突?と焦り青ざめたラードの身体は、斜め下から吹き上げてきた向かい風によってふわっと浮き上がった。

「た、助かったぜ〜〜・・・ったく、冷や冷やさせやがって・・・・」


−ヒューーーーーーーーーー・・・−
つい今し方の恐怖もどこへやら、ラードは上機嫌で空の旅を楽しんでいた。
「ひゃっほ〜〜〜・・・・楽ちん♪楽ちん♪鳥になった気分〜〜〜♪」


上機嫌のラードが、降りる方法を考えてなかった事に気づき再び青くなるのは、もう少し先のことだった。


 

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