
その12・国都ガンデリア
わいわい、がやがや・・・・・
「そこなのよねー?」 まだまだ状況は把握できていない。闇龍が生まれ、世界を闇が覆い始めていることはわかったものの・・・そのくらいである。世界の崩壊につながらる闇龍に関連する秘密結社とでもいうべきものがあるらしいが、それがどこでどのように活動しているのか、そしてどういった人物によって動かされているのかは、さっぱりわからなかった。 「ずばり聞くわけにはいかないよな?」 「聞ければ苦労しないわよ?」 聞いて、もし相手がそうだったら、一気に危険にさらされることになる。水面下で活動しているらしいそれは、普通では耳にしないことでもあり、怪しまれるのがオチなのである。 「どこかやばそうな所の用心棒って手でいくのがてっとりばやいのかな?」 「そうね。そこが当たりとは限らないけど。」 「ラード、用心棒するの?」 「あ?ああ・・・なんだ、セイタ、起きちゃったのか?」 「うん。」 話し始めてから、いつのまにか夜半過ぎていた。先に寝たはずのセイタが眠い目をこすりながら起きてきた。 「セイタちゃん、ミルクでも飲む?」 「うん。」 テーブルに着き、グラスに注いだミルクをおいしそうに飲むセイタを見ながら、ミルフィーは小声で言う。 「セイタちゃんがいるから、用心棒として入り込むのは無理みたいね?」 ミルフィーにはすっかりなついていたセイタだが、やはりなんと言っても兄のように慕っているラードが一番なのである。両親もそして育ててくれた祖父も失くした今、セイタにとって心から頼りにしているのはラードなのである。肉親のように。 「あ、ああ・・・・」 そんなセイタを見、ラードはため息をついた。邪魔と感じるわけではないが、行動が制約されてしまうことは確かだった。小さな少女連れでは怪しげな酒場へ入ることも、用心棒を雇うような物騒なところに潜入することもできない。 もっとも宿で留守番させていればいいのだが、セイタは一人になることを非情にいやがった。そして、その心細さを十分理解していたラードとミルフィーは、そうさせることもできない。 私がやるから、というミルフィーを説き伏せ、そういった場所での情報収集は交代ですることにした。 が、相変わらず何を調べるのか不透明なままだった。情報はあまりにも少ない。いかにも怪しげな男に近づいてはそれとなく話かけてはみるのだが、聞きたいことが分からなければ確信に近づくこともできない。ラードの父とセイタの祖父のことをそれとなしに聞いてみるくらいである。 「とにかくデストローゼへ向かってみないか?」 情報がゼロのままでは不安もあったが、ともかくラードの父親とセイタの祖父の足取りを追ってみようとラードはミルフィーに提案した。 「そうね。」 そんなことを相談していた時、興行師ガナフォスから連絡が入った。 「王宮で?」 「ああ。週末毎に興行してただろ?絶世の美姫である歌姫の噂が国王の耳に入ったらしい。」 にやっと意味ありげな笑みをみせながら、ガナフォスはミルフィーにその招待状を差し出す。 国都ガンデリアはシゼリア大陸一の大きさを誇る湖、海とも見間違えるほどのその湖の畔にあった。そして、ガンデリアの西部、湖の片隅に浮かぶ小島に王城はあった。そこへは跳ね橋で渡ることができるのだが、出入り自由だったそこは、数ヶ月前から跳ね橋が上げられたままの状態となっていた。 なぜ道を寸断するようなことをするのか、街に駐屯している兵らに聞いても、答えは勿論返ってくるはずはない。 何かが起きている、それはミルフィーだけでなくラードもそしてガナフォスらも感じていたが、限られた者にしか、その跳ね橋は下りてこないため、調べることは不可能だった。 「ただ・・・」 「ただ?」 招待状を読んでいるミルフィーを横目に見ながらラードはガナフォスの言葉に不安を覚えながら聞いた。 「招待するのはミルフィー一人だけということなんだが・・」 「一人?」 「そうらしいわね。賓客として十分な待遇で迎えるから付き人は遠慮願う、って書いてあるわ。」 「そんなのって!」 差し出された招待状を奪うようにしてラードはそれを走り読む。 「い、いいのか?」 「いいのかって・・・・仕方ないでしょ?私なら大丈夫よ。」 不安そうなラードとため息はつくものの、平気な表情のミルフィー。 ガナフォスはミルフィーの座った肝っ玉ぶりに感心しながら言う。 「あんたの心意気はわかったが・・・心配なのはオレも同じだ。王侯貴族なんてものは一番信用おけないからな?それに、確かに今王城は普通じゃない。」 「親方・・」 何かある、怪しいと睨んでいた王城内の調査のチャンス。それを逃すことになるのか、と不安を覚えたミルフィーの目に、にやっと笑うガナフォスの不適な顔が写った。 「親方?」 「招待されたのはあんた一人だ。だが、歌姫の舞台なんだ。しかも期限は切られていない。しばらく滞在して1週間に2、3度開く舞踏会のときに歌ってくれという依頼だ。あんたが望む限りいてもいいとも書いてある。」 「それが?」 分からないのか?ガナフォスの笑みはそう言っていた。 「今、国都をいや、シゼリア中をわかしている絶世の美姫の舞台なんだぞ?毎夜、衣装が一緒というわけには・・いや、ひょっとしたら一舞台でさえ、ずっと同じ衣装というわけにもいかないだろ?」 「あっ!」 ガナフォスが何がいいたいのかわかった2人は目を輝かして同時に叫んでいた。 衣装箱は1つというわけにはいかない。しかも舞台衣装用のそれは、人一人楽に入る大きさでもある。 「明後日の朝迎えの馬車がくる。1台はミルフィー用。そしてもう1台は衣装用の大型の荷馬車だ。」 そして、王城から迎えが来た朝、美しく着飾ったミルフィーは、山のような衣装を詰めたいくつもの衣装箱と共にガナフォスの屋敷を後にした。 −ガラガラガラ− 「いいか、セイタ、じっとしてるんだぞ。ちょっとの辛抱だからな。」 「うん。」 楽に入るといっても狭い衣装箱。ラードはどうしても付いてくると言ったセイタを腕に抱え、一際大きい衣装箱の中で緊張していた。 |