**Brandishサイドストーリー・番外編?**

泥酔美人とむっつり・・・(6) 危機一髪の脱出後

***ある日ある時ある場所で・・・アレスとドーラのお話です***
  

*アレスは後ろを振り返っているところです。見えなくてごめんなさい。
*おかしなところは見逃してやってくださいまし。m(_ _)m
   
         

 (なんとか間にあったな・・・。)
まさに危機一髪・・・気を失ったドーラを抱えアレスは崩壊する岩城の迷宮を抜け出ることができた。
後ろを振り返り真っ赤な炎に包まれて燃え上がる城を見ながら、アレスはほっと一息ついていた。

(さて・・・・無事脱出できたのはいいが・・・・こいつはどうしようか?)
ふと抱きかかえていたドーラの事を思い出し、心の中で呟く。
(あの時は洞窟の入口に寝かせたまま放って来たが・・・気に入らなかったみだいだしな?)参:その2冒頭部分
しばしドーラの顔を見つめ、思案するアレス。


(ともかくこの橋だけでも渡ってしまおう。)
橋を渡り、その近くの草むらにドーラを横たえる。一応大木の木陰を選んだ。
(考えてみれば、滅多に近寄らないと思えるあの洞窟にしても、入口に気絶した女を放っておいたのはまずかったか?幸いあの時は誰も通らなかったみたいだが?)
気絶した美女、しかもいかにも蠱惑的なその格好は、男にとってはいただきますのまな板の鯉状態とも言えるとアレスは考える。
(その場で手は出さないにしても連れ帰って命の恩人よろしく、とか?・・いや、ドーラが簡単に命の恩人と認める訳はないか・・・・それとも心臓に毛の生えたような気の強さのこいつでも相手によっては歓迎に値するか?)
横に座り、休憩をとりつつ剣の手入れをしながら、アレスはあれこれ考えていた。


−パチパチパチ−
よほど前の時のように放って行こうとも思ったが、山道とはいえ、そこは一応街道沿いの一角。後がうるさいと判断したアレスは、夕刻となり少し冷えてきたこともあり、荷袋から上着の替えを取り出すとドーラにかけ、近くにあった小枝を拾ってきて焚き火を起こした。

気付け薬で気づかせる方法もあったのだが、速攻で効くそれは、気づくと同時に罵声をあびせられるに違いなかった。つまり飲ませるには口移しで飲ませなければならない。そしてその体勢で気づいたとしたら・・・後はどれほどその罵声が続くか・・・・。慣れたといえば慣れたが、うるさいことも確かだった。
(もう少し遅効性だったらいいんだがな・・・・)
気付け薬で気づいたこともわからないくらい効き目が遅いものなら、とアレスはふと思っていた。それなら安全地帯まで離れられる。そして、ドーラが気づくと同時に、さっさと立ち去ってしまえばいい。


(しかし・・こいつは本当にオレの首を取る気があるのか?)
育ての親であり魔術の師匠であるバルカンの仇として、そして賞金目当てでアレスを狙っているはずだった。
(もっとも・・オレの相手じゃないが。)
その判断は間違いないと思っていた。決してドーラの能力を軽んじているわけではない。
(オレとしたことが珍しい。たとえ熱さも感じないくらいの小さな火の粉であっても己の身に降りかかってくるものは、容赦なく排除するのがオレの理念・・いや、本能から来る行動じゃなかったのか?)
アレスは自問自答し始めていた。
ことドーラに関しては、無視はしても倒そうと感じたことはなかった。たとえ戦いを挑んできた時でさえ。
『女だと思ってバカにすると痛い目にあうわよ?』
初めてドーラにあった時の言葉がアレスの耳に響いた。
確かに女にしては強力な術使いだ、とアレスも思う。
(それとあのサバイバル精神・・・悪いこと全てオレのせいにするのは・・迷惑でしかないが・・・・)
自信たっぷりに向かっていったかと思うと、ちゃっかりアレスの背後に陣取り、早く倒せとけしかけるところなど、到底真似できそうもないと感じさせられた。
(単にけしかけるだけじゃなく、防御魔法などはかけてくれるが・・・・)
それにしても小うるさいことも確かだった。黙ってみてろ、と思わず睨み返したくなるほどに。


「う・・・・」
小さく声をあげ、ドーラが気づく気配を見せると、アレスはふっと笑みを作って立ち上がる。
傷は全て治してある。近寄って大丈夫かと聞く必要性は全くない。


「ちょっとアレス!待ちなさいっ!」
(お?・・・さすが早いな。気づくと同時に100%復活か?)
などと思いながら、アレスはドーラに背を向けたまま一応立ち止まる。
「こんな夜道に女一人放っていくつもり?」
今回はそう来たか、とアレスは心の中で苦笑いする。
「それに、何よ、これ?あたしがこれくらいで風邪引くとでも思ってんの?・・・汗くさいったらありゃしない!気を利かしたつもりなら、もっときれいなものにしてよ!」
バサッとアレスの頭にかかったのは、ドーラにかけたアレスの上着。
(仕方ないだろ?他にないんだからな。マントはぼろぼろになってしまってたんだ。あのカッコのままじゃいくらなんでも・・・)
思わず心の中で反論するアレス。
(オレが男だってこと忘れてやしないか?・・それとも自分が女だということを?・・・いや、今、自分で女だとは言ったな?)
戦いを求め?前進することしか頭にないようにみえる闘神のようなアレス。それでも男には違いない。気絶したダイナマイトバデー(笑)の美女は、目の毒と言えばそうでもあった。
「こんなことくらいであたしが恩にきると思ったら大間違いよ、アレス!仇は仇!きちっとケリはつけさせてもらうわ!」
(ほ〜〜ら、おいでなすったぞ?)
なんとなく楽しくなってきたアレス。(本人はそう感じていることを認めないだろうし、自覚もしていないかもしれないが。)
黙ったまま投げ返された上着を荷袋に押し込み、再び歩き始めたアレスの前にドーラは駆け寄る。


「聞いてるの、アレス?!」
(やっぱりこっちの方がこいつらしいな。)
気絶している間は、可憐な美女という形容がぴったりだったが、やはりこうこなくてはドーラじゃない、とアレスは、無意識に唇の端を上げていた。
「な、なによ、その笑いは・・・・?ま、まさか、アレス・・あたしが気絶している間に?」
(前にもこんな展開があったな。)
そして今また口元がゆるむアレス。
「アレス・・・あ、あんた・・・・・」
その笑みをみて、再び噴火するドーラ。
「あったかなかったか・・・それくらい分かるだろ?」
「え?」
思いがけなく返答されて聞き返したドーラの横をすっと通り過ぎていくアレス。

−バッコーーン!−
「痛っ・・・」
「こ、この、むっつりすけべっ!」
それは瞬間のできごと。数歩開いた間を瞬時にして縮め、アレスが手にしていた盾を横から奪うが早いか、いきなりそれをアレスの頭にドーラがお見舞いしていた。しかも思いっきり。少しの躊躇もなく、手加減もなく。


「ふん!一応迷宮の外まで連れて出てくれたことは確かだから、今日はこのくらいで勘弁してあげるわ。」
(おいおい・・・なんだ、それ?)
頭に手を充てアレスは心に中で苦笑いをする。それはまさしくいつものドーラの独断と偏見。
「あんなカッコ(バニースタイル)じゃ、戦う気力も失せるけど・・・元に戻ったからには、容赦しないってこと、わかってんでしょうね?」
きっと睨んで自分を指さしているドーラの姿に、なぜかほほえましい・・とは少し違うが、満足しているアレスがそこにいた。が、おそらく本人はまだ自覚していないと思える。
「今度会った時があんたの最後よ!その首、きっちりもらってあげる!」
そして、ぽいっと盾をアレスに投げ返すと不適な笑みを残し、ドーラはすたすたと歩き始めた。


(ま・・・いいか・・・・)
そして、アレスも歩き始める。ドーラの後を。(笑



「な、なんで付いてくんのよっ?!そんなにあたしに首を取られたいの?」
(次の迷宮へ行くにはこの道しかないんだが・・・)
何も言わず心の中でそう呟いたアレスの言葉をドーラは敏感に感じ取り、そして、今脱出してきた迷宮で耳にした宝を入手すべく次に向かう迷宮が、アレスの目的地と同じなのだ、とドーラは悟る。
究極のサラマンダー召喚術、世界をも焼き尽くすと言われるその呪文が書き記されている魔法書が眠っているというその迷宮。それを入手し、アレスを倒す!それがドーラの目的だった。(本当に倒すかどうかは別として。)
そして、アレスは本能に導かれるまま、次なる目的地はそこだと、自然に足が向いていただけである。

「分かったわよっ!探す手間が省けてちょうどいいわ!でも、いいこと?好きで同行してるんじゃないんですからねっ?!見張りよ・・・いい?あんたが逃げないように見張ってるんですからねっ?!」


ドーラの罵声を聞きながら、アレスは、ふと自分が愉快に感じている事に気づいた。
(切っても切れない腐れ縁ってやつか?)
表情には出さなかったが、アレスはふっと自嘲した。


散々罵って気がおさまったのか、はたまた、言いたいことがなくなったのか・・少し間を空けてついてくるドーラに、時には二人旅もいいかもしれない、という気持ちがアレスの心の奥深いところで生まれていた。
(ちょっと?うるさすぎのツアーガイドだが・・・。)


(ん?)
背後についてきているはずのドーラがあまりにも静かで少し心配になったアレスは振り返ってドーラを確認した。
辺りはすっかり真夜中である。いつそのへんの岩陰から賊が出てきてもおかしくない。かといえ、気配で十分わかるが、視野の中にいればもっと確実である。
アレスは立ち止まると進行方向を指さす。

前を歩けと言わんばかりのそのアレスに、ドーラの焦ったような怒ったような声が聞こえた。
「あ・・あんたが後ろにいる方がもっと危ないわよっ!」
その言葉で、マントがなかったことを思い出すアレス。前を歩かせば、視野に入るのは、当然のごとく、柔らかな長い金髪に見え隠れするドーラの・・・。


−バキッ!−
「痛っ!」
「なににやけながら想像してんのよっ!やっぱりあんたはむっつりすけべよっ!」
ドーラの杖がアレスの頭に炸裂していた。
「ほらっ!さっさと行くわよ!夜明けには次の町に着かなくっちゃっ!回復ポーションじゃ空腹感までなくならないんだから!」
なぜこうも簡単にドーラの一撃は入ってしまうのだろうか、と不思議に思っていたアレスの横に立ち、きっと睨むドーラ。
前も後ろも悪いのなら、残るは横に並ぶこと。


ふっと軽く笑い、アレスは歩き始めた。横にドーラの睨み続けている視線を感じながら。
(手を伸ばせばすぐ捕まえられるということには・・・気づかないのか・・問題外なのか?)
そんなことをする気もないが、アレスはそんな今の状況が不思議と楽しく心地よかった。
そして、気に入らないと言いながらも、一緒に歩くその道は、なぜかドーラにとって安心感と満足感があった。自覚してはいないようだが。


アレスとドーラの道行きはどこまで、そして、いつまで続く?
そして、2人の関係に展開はあるのかないのか?


それは、神のみぞ知る。    

※「むっつり・・・」の「・・・」には、剣士という言葉が入るんだぞ? /^^;

  

 お姉さまに見えなくて・・ごめんなさい。m(_ _)m 


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