遙かなる旅路
〜[クレール in Brandish1] Brandishストーリー〜

(27)[FORTRESS TOP]

〜 スケート靴めいどおぶラクサーシャ 〜

 『後は・・・・・ない』
ドアの前にそう書かれたプレートがあった。
−ごくん!−
お気楽天然?のクレールもさすがに緊張感を覚えながらそのドアを開ける。
そして・・
「きゃっ・・・・な、なに、これぇ〜?」
入ったところは広めの空間。そして、その床は何かの鱗のような感じでツルツル。
気を付けて歩かないと滑って転んでしまう。そして、所々に穴と、その部屋の中央には下の階までの穴がぽっかりと口を開けていた。

「気を付けないと!」
そこにいたモンスターはヘッドレスが数体とラクサーシャが1体。
そのヘッドレスは火球が効いたので遠くから倒し、ラクサーシャはサンダーの連続で倒した。
「ふぅ・・・・」
倒れるときラクサーシャが落としたカギで開かなかったドアを開けてクレールは進む。
と、その前に・・・

「きゃあ・・・す、すべるぅ〜・・・・・」
床に落ちているフレイムソードを拾い上げようと、クレールは床と奮闘していた。
どうしても滑ってソードの前に立ち止まれない。手を伸ばせば届きそうなのに取れない。
「ぜったい拾うんだから。だって、ピンクに光ってて綺麗なんですもの。・・・そうだ!」
クレールはソードの前に立ち止まろうとすることをやめ、行き過ぎることを最初から計画する。そして、首尾良く拾い上げる。
「やったわっ!」


その先、床にスイッチが並ぶ細い道の先にあった宝箱の中にはドーラの手紙が入っていた。
『鍵は頂いたわ!!Byドーラ・ドロン』
「お姉さまったらいつの間に?」
開かなかったドアを開けてから戻り、フレイムソードを拾い上げるのに必至になってた間にドーラが追い越したのだろうか、とクレールはふと思う。
「でも、誰が開けても同じよね?」
クレールはそう呟くとにっこりと笑った。
そして横の壁に見つけたスイッチを押してから、行き止まりだった細い道を戻る。再び床に並ぶスイッチを踏みながら。
そう、行きもだが帰りもそのスイッチを踏むたびに奥から矢が飛んでくる。それを防ぎながら注意深くクレールは進む。


「あ!お姉さま!」
クレールの目に飛び込んできたのは、通常それまで見たものよの2倍ほどのラクサーシャに襲われているドーラ。
「ぼさっと突っ立ってないで手を貸しなさいよ!このスットコドッコイ!・・・って・・・な、なによ・・また子猫ちゃんなの?」
明らかに形勢不利。次から次へと交互に繰り出されてくるラクサーシャの大きく鋭い4本の剣。満身創痍のドーラは、持っていた杖でそれを止めるのがやっとの状態。
「た、助けないと・・・!」
そうは思ったが身体がすぐには動いてくれようとせず、突っ立ったままのクレールの横を黒い影が素早く素通りした。

−キン!ガシュッ!−
「あ・・・・アレス・・さん?!」
その黒い影は素早くラクサーシャに近寄ると、その攻撃を簡単に避け、数太刀で倒した。
「ドーラさん!」
それを確認し、クレールは慌ててドーラに近寄り、回復の呪文を唱える。

「ひとつ借りができちゃったわね!まあ、今回は見逃してあげるわ。・・じゃあね!」
クレールには小さく礼を言ったドーラだが、目の前に立っていたアレスを忌々しげに睨むと、吐き捨てるように言ってドーラは駆けていった。

「もう・・・お姉さまったら正直じゃないんだから、ね、アレスさん?」
クレールはドーラはアレスが好きなのだと思いこんでいた。恥ずかしがり屋だから今更正直な態度に出られないに違いない、そう信じていた。
もちろん、アレスがそのクレールの問いに答えるわけはなく、アレスはドーラが立ち去るときにわざとらしく落としていったカギを拾い上げる。
「あ!それが宝箱から先にいただいたってドーラさんの書き置きがあったカギね?」
(助けてもらったお礼に落としていったんだわ)
クレールはくすっと軽く笑いながらそう思っていた。
「あ!アレスさんっ!」
いつも通り、クレールの独り言のような質問に答えるはずもなく、アレスはさっさと足早に先を進んでいってしまった。

「ん・・もうっ!アレスさんったら・・・あんなんだからドーラお姉さまも正直に言えないのよ。」

ぶつぶつ独り言を言いながら歩き始めたクレールを待っていたのは、通路一杯に広がった酸の床。ぼこぼこと沸き立つ酸の強烈な臭いで鼻も曲がりそうである。

「魔物じゃ相手にならないからって、酸で責めるなんて・・・でも、クレール頑張るわ!このくらいの酸・・・少しくらい溶けたって回復呪文かけながらなら・・・・・・きゃっ!」
どうあっても酸の沸き立つ床を歩かなければ先に進めそうもなかった。恐る恐る足を差し出したクレールは、回復魔法と防御魔法が発動中だというのに、びりっとくるその激しい痛みに、思わず足をひっこめる。

「でも・・・ドーラお姉さまもアレスさんもこの先へ行ったのよね?」
ハンカチで鼻を押さえながらクレールは呟く。
「そうだ!さっきのラクサーシャさんよ!それに着ていた服も丈夫そうだったわ♪」
ひらめきを覚え、クレールはラクサーシャの死体へと駆け寄り、まだその手にしっかと握っている剣をなんとかその手から外し、そして、その剣で角を切り始める。
「でー、丈夫なこの腰ひもで結わえてお洋服の一部を縫い合わせてっと。」

なにができあがったか・・・それは、スケートシューズのような靴と言ったら分かっていただけるだろうか?氷の上を滑る刃の代わりにラクサーシャの角をつけ、彼が着ていた分厚い皮を縫ってつくった靴なのである。(ゲームではそんなアイテムはありません。(笑)

「大きめに作ったからこのまま履いても大丈夫よね?」
クレールは今履いているサンダル履きのままその靴を履く。
そして、臭いを我慢しての酸の床渡りが始まった。

−シュ〜、シュ〜〜・・・・・−
「い、いつまでもつかしら?この靴?」
強烈な酸でさすがのラクサーシャの角も徐々に溶けていることが分かる。クレールは冷や冷やしながらも先を急いだ。

そして、隠し通路の先で、3つ頭の龍と格闘しているアレスを見つける。
「3つの頭の龍って、たしかアジタカーハとかいう名前だったかしら?・・きゃっ!」
ぼんやりと考えていたクレールのところに、龍の放った特大の炎が飛んでくる。アレスが闘っているエリア外から覗くようにしていたのだが、アジタカーハの炎はエリア外に出ても消失してしまうような甘い物ではなかった。勢いよく燃えさかる慌てて避けながらクレールは魔法を試してみる。
「あら・・やっぱり魔法は利かないのね?」
だとしたらここはアレスに任せるしかない、と思いつつ、クレールはアジタカーハと激しい攻防を繰り返しているアレスを観察する。
「余裕みたいね、アレスさん?私が出ていっても邪魔になるだけよね?」
一人確信しながら、アレスの受けた火傷や傷の回復に専念する。

そして・・・
−ズン!−
ようやくその巨体をアレスの前に横たえ、戦闘は終わり、その先にあった小部屋でアレスは1本の剣とクレールが見つけたキノコのような形の大きめのカギを手にした。

「すごいわね、アレスさん、その剣が発してる気・・・・・」
不気味ともそして聖なる気とも感じられる不思議な気を刀身全体から発していたその剣は、まるでアレスの手に収まったことを喜んでいるように感じられた。

そしてしばらく行くと進行方向と左右そえそれぞれに魔法陣を見つけ、クレールとアレスは左右に分かれて、左側の魔法陣から進んだ先にあった薄暗い部屋にクレールは辿り着いていた。
行き止まりにあったその部屋には誰もいない。あちこちクモの巣がかかり埃がつもっているそこは、明らかに長年誰も使っていないと思われた。
部屋の片隅にあったテーブルに古びた本が一冊置かれている。
『この国が地下に没してからどれ程の時が流れたのか、今となっては知る者もいない。そしてこの国は、その呪われた王と共に闇と永遠の時をさまよい続けるのだろう。いつかその呪われた運命の終期を告げる者を求めながら・・・』

「呪われた運命の臭気を・・・じゃないっ!終期を告げる者・・・・これってあたしたちのことになるのかしら・・・ともかくアレスさんと合流しないと。」

が・・・当然かもしれないが、アレスが待っているはずはなかった。右側の魔法陣へ乗ってその先へ行ってみたクレールは、そこに空の宝箱を見つけ、行き違いになったとがっかりして戻り、正面にあった魔法陣へと足を運んだ。

そして、再び少し広いエリア出たクレールは、あちこちにヘッドレスが倒れているのを見て、アレスはすでにここを通ったと判断して、その先を急ぐことにした。
「きゃあっ!す、滑る〜〜〜・・・え?・・・真ん中に穴があるなんて聞いてないわよ〜〜・・・」
ここまで来るまでの酸で滑らかになったラクサーシャの角のスケートシューズは、一段とその滑りに拍車をかけていた。そして、そのエリアの真ん中には小さめだがぽっかりちと穴が開いていた。
「お、落ちちゃう〜〜・・・」
−シュン!−
思わず目を閉じたクレールは、次の瞬間、自分が落ちているのではないことを知ってそっと目を開ける。
「あ・・あら?・・・もしかしたら飛び越しちゃったの?」
あまりにも勢いよく滑ったからだろう、穴を飛び越え反対側の床に着地し、滑る部分が終わるところ、1体のヘッドレスにぶつかって止まっていた。
「よ、良かった・・・・下まで落ちゃったらまた遅れちゃうところだったわ。」

胸をなで下ろし、先を進むクレールを待っていたのは幾重もの扉。
そして、その先に、ついにこの迷宮の要、最後の砦であろう魔獣とクレールは対面する。
広いその空間一杯に毒素を撒き散らし、来る者を圧する憎悪と敵意に満ちた激しいその攻撃と対峙していたアレスの姿を見つけた。

** to be continued **


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