遙かなる旅路
〜[クレール in Brandish1] Brandishストーリー〜

(28)[FORTRESS TOP〜]

〜 そして地上へ、そして迷宮へ・・ 〜

 「え?」
魔獣を見つめていたクレールの身体に異変が走った。
「あ・・あ、あたし・・・変身が始まってるの?・・・なぜ?・・・・あの魔獣のせい?」
クレールの意思に反して、彼女の身体は獣人化しようとしていた。
「・・・・あの魔獣の瘴気で?」
クレールは知らない、その魔獣がその昔、守り神出会った龍を殺した国王のなれの果てだということを。が、確かに魔獣から発せられている気、あるいは、魔獣の胎内になる何かの影響らしいと感じた。
変身を止めようとしても止まりそうもない。
そして・・・

「・・・変身しちゃった・・・・アレスさんの前なのに・・・・・」
自分自身を確認するとクレールはがっくりと来る。そして次ぎに怒りがわき上がる。
「よくも・・・よくも勝手に変身させてくれたわねっ!・・・あ、あたしに断りもなくっ!」
−ズゴゴゴゴ・・・−
彼女の瞳が怒りに染まっていく。
きっときつい視線を魔獣に向けたクレールは、半ば呆然としたようなアレスの目の前で、激しいパンチとキックをその魔獣にお見舞いし始めた。
−ヒュン!ドカッバキッボスッ!−
魔獣の攻撃など軽く交わし、クレールの軽快なリズムに乗ったハイテンポな攻撃が続いていた。

−ズズ・・・ン・・・・・−
「どう?わかった?あなたなんてあたしの相手じゃないのよ。」
魔獣が倒れ、パンパン!とその結果に満足そうに手を払ったクレールは、はた!と自分の現状に気付く。
「あ・・・・」
それまで我を失っていたクレールは、それと同時に元の姿になり、ふと視線を向けたアレスと目があい一気に顔を真っ赤に染める。
が、アレスは獣人化したクレールを気にとめるふうでもなかった。軽くにやっと口の橋をあげたアレスの雰囲気と態度はそれまでと同様だった。
そして、魔獣が立ちはだかっていた奥に通路を見つけると、何もなかったかのようにアレスは足早に進んでいく。

「あ・・えっと・・・・・」
しばらく我を忘れたようにアレスが進んでいった方向を見ていたクレールだが、ともかくクレールはアレスの後を追った。
(つまり・・・アレスさんはあたしの変身した姿も・・あの獣人になったあたしでも気にしてないってことよね?・・あんなあたしを見た後でもアレスさんの態度は少しも変わらなかったから・・・。)
そんなことを考えながらクレールは奥に続いていた狭い通路を走っていた。

「あ!扉が!」
その薄闇の通路の先には大きな岩の扉があった。アレスが開けて出たのか人一人通れるくらい開いている。

「わ〜・・・・夕焼けがきれい・・・・」
外に出たクレールは目の前の景色に思わず目を奪われて見入る。
「それに、気持ちのいい風・・・・・」
しばらくその景色と風を堪能しながら辺りを歩いていたクレールは、ふと見つめた先にアレスを見つけ、クレールは駆け寄ろうとする。
崖の上から辺りを見渡しているアレスは、クレールと同じく久しぶりの地上を満喫しているように見えた。

「アレスさ・・・」
「ちょほ〜いと待ちなさいよ。ほっとするのはちょっと早いわよ!まだ私の話は終わってないんだから・・。」
「え?ドーラさん?」
クレールがアレスに駆け寄ろうとした反対側からドーラの姿が見えた。
杖を構え、ドーラは不適な笑みを浮かべつつ、アレスをきつい視線で見つめる。そのドーラにクレールなど目に入っていない。
「どうアレス、あの時私を助けたこと、後悔してるでしょう?」
(え?ま、まさか、ここで闘うの?そんな・・せっかく地上へ出られたのに?)
焦るクレールとは反対にアレスは無言でドーラを見ている。
「・・・」
そして、ドーラはそんなアレスをしばらく見つめていたあと、すっと杖を降ろし、ふうっと軽くため息をつくと言葉を続けた。
「と言いたいんだけど、やめとくわ。やっぱり借りを作りっぱなしじゃどうも気分が乗らないしね。・・・もう少しつないどいてあげる、あんたの首。」
くるっとアレスに背を向け、ドーラはゆっくりと来た道を歩き始め、アレスもドーラとは反対の方向に歩き始めた。

「あ、あの・・・・・」
横を通りざま、ちらっと彼女を見たアレスの視線は、やはり獣人化した彼女を見る前と少しも変わらないものだと感じ、クレールは改めて胸をなで下ろす。
「アレスさん・・・・」
獣人の彼女もそのまま認めてくれたと感謝しながら遠ざかっていくアレスの後ろ姿を見つめていたクレールの目に、ドーラの姿が目に入った。
「あら・・・お姉さまったら・・ホントに正直じゃないんだから・・・・」
ところどころにある突き出た岩陰に身を隠しつつアレスの後を追うドーラの姿に、クレールは思わず微笑んでいた。


「さてと、地上までの道ができたんだから・・・今度は出ることを諦めている人たちの救助活動よね?」
2人の姿が見えなくなるまで見送っていたクレールは、ようやく次の仕事を思い出す。
「あ!・・・それとも最後の魔獣を倒しちゃったから迷宮が崩壊し始めてたりしたら・・・そ、そうよね・・・・ど、どうしよう?」
真っ青になってクレールは出てきた岩の大扉へと走っていく。

「アレスさんもドーラさんもさっさと行ってしまうんですもの・・・」
つい口に出てしまったその言葉をクレールはぶんぶん!と頭を振って反省する。
「ううん、アレスさんはきっと何か大切な急ぎの用事があるに違いないわ。いつも急ぎ足で進んでいたもの。それにお姉さまなら頼めば協力してくれそうだけど、アレスさんと引き離しちゃいけないわ。私がやらなくっちゃ!そう!救助活動ってやっぱり巫女の仕事よね?」

窮地に陥っている人々を助ける。巫女としてのクレールのここでの仕事はこれからだった。
「やることはたくさんあるけど、がんばるわ、私!一人でだってくじけたりしないわ!見ていてね、サフィーユ!」
親友の笑顔を思い浮かべ、再び迷宮へ入っていくクレールの瞳は自信と希望に満ちていた。

「クレール、ふぁいとぉ〜〜〜!!!」
地下迷宮にクレールの自分へのエールがこだましていた。

** FIN **


長い間、クレールBR1ワールドにお付き合いくださりありがとうございました。
思えば書き始めてからほぼ3年もたってしまっていて・・・。/^^;
そんなに長い話しじゃないのに・・・・・。(汗っ
BR2ストーリーは、もう少し早く書き上げようと思ってます。

続きがなかなか出なくても忘れずにいてくださり、立ち寄って読んで下さった方々、本当にありがとうございました。
感謝感謝の気持ちでいっぱいです。
書き方も最初の頃と変わってしまったし、最後の辺りは説明っぽくなってしまったようで、申し訳ないとも思うのですが、現状では精一杯書いたつもり・・です。

本当に最後までお読み下さり、ありがとうございました。
今後ともこんな筆者ですが、私のお話をよろしくお願い致します。
思い出された時、ちらっと読みにきていただければとても嬉しいです。
BR2と4、パラレルワールドのちびアレスくん、そして2が終わったら3も書きたいと思ってます。進行はゆっくりだと思いますけどね。/^^;

懲りない管理人を今後ともお見捨てなく、どうぞよろしくお願い致します。 m(_ _)m

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