遙かなる旅路
〜[クレール in Brandish1] Brandishストーリー〜

(8)[TOWER 4F]

〜トラップづくし〜

 

 金槌を買いに1階のゲイラさんのお店まで戻ろうとしたんだけど、途中で運良くアレスさんに会ったの。
こういうのはいいのよね。ずるじゃないわ。アレスさんに崩れかけた壁を教え、なんなく入ることができたというわけ。
でも、その先でまた手をやいてしまったの。

そこは結構広い部屋だったの。反対側に扉があったので、さっそくそこへ向かって歩いて行ったら・・・・見えないワープの壁で入り口へ何度戻されたことか・・・・。1歩ずつ安全な床を調べるのにかなり時間がかかったわ。
一度なんてワープで戻されたそこには、ちょうどあの蜘蛛がいて・・・・いきなりあの鋭い歯で噛まれてしまって、痛かったわ。勿論おこげにしてあげたけど。

そうしてなんとかその奥へ進んだの。そこは床から矢が飛び出してくるトラップでいっぱいだった。

「きゃあ!また緑蜘蛛だわ!」
突如前から突進してくる蜘蛛に気づいたあたし。魔法を唱える間もない。驚いて頭をかかえてそこへ丸くなったの。と・・・
−バシュッ!−
「え?・・・な、なあに今の音?蜘蛛は?」
頭からがぶっと噛まれると予想していた私は、恐る恐る顔を上げて周りをみた。
と・・・・あたしを襲ってきたはずの蜘蛛が例のトラップで串刺しになっていた。
「あ・・・・・」
白いどろどろの血を流してその巨大な蜘蛛はすでに息がなかった。
なんとも気持ちの悪い光景ではあったけど、でもあたしはそのおかげで助かった。見るとそのエリアのあちこちで蜘蛛はぐさっと刺されている。
「避けることを知らないのね。」
よく似た色ではあるが、やじりが出てくるところが少し濃い。気をつけて歩けば分かるはずなのに。
「蜘蛛って床には目が行き届かないのかしら?」
そう思いながら、あたしは1歩1歩、床をよく確認してから歩いたの。

そのエリアの隅の床にスイッチらしきものを発見。次々に踏んでいくと、魔方陣が現れ、あたしはそこでカギを見つけた。このエリアへ入る前に開かなかった扉があったので、そこのだろうと判断できた。
そして、あたしは今、目の前にある壁に向かってジャンプしようかどうか迷いに迷っている。
え?どうしてかって?それは・・・・その前に落とし穴が2つも続いてあるの。どうがんばっても2つも飛び越すなんてできそうもない。
どうしよう?・・・・
その先に何があるのか気になるの。空間感知の魔法で調べるとそこは人が横になれるくらいの空き空間でしかないわ。でも、確かにその壁にはしみのような感じがあるのよ。通れるはずなの!
通れなかったら落とし穴・・・・ううん、通れたにしても壁の手前の落とし穴には落ちそうなのよ。
何度やめて魔方陣で戻ろうとしたか・・・でも、その先に行けるかもと思ったら飽きられない。

ということで、あたしはその狭いところでできる限りの助走をつけて挑戦した!!!
「ホップ、ステップ、ジャーーーンプーッ!」
−ぴょーーん!−
「や、やっぱりだめだったわーーー・・・・」
期待もむなしく、ううん、予想通りと言ったほうがいいかも、1つは飛び越しても2つめにはものの見事に落っこちてしまった。
−ドッスーーン!−
「いったーーー・・・・・」
でも、床に槍が仕掛けてなくて助かったわ。お尻の痛みはヒールの魔法で治し、あたしは怪しげな壁に向かって思いっきりジャンプ!
そして、これまた予想通り、壁はイリュージョン。しかもその先の小さな空間にはなんと宝箱があったの。そして、その中には黄金に輝く剣が!!
あたしはその美しさに嬉しくなって、帰りにもう一度落とし穴に落ちなくちゃいけないことも忘れてた。(笑)あ!でも断っておくわね、金に目がくらんでというのじゃなく、純粋にその彫金の、施された飾りの美しさによ。

魔方陣で元のところに戻ったあたしは、魔法屋さんを見つけると荷物を整理するためそこへ入ったの。そこにはにこにこ顔の人のとってもよさそうなおじいさんがいたわ。

「おやおや、これはまたかわいらしいお嬢さんが来なさったものじゃ。屈強の戦士や力のある魔法使いならいざしらず、なんでまたこんなところに?」
「ありがとう、おじいさん。でもこうみえてもあたし、少しは魔法も使えから大丈夫よ。」
「そうかの?・・・じゃが、少しばかりの魔法は怪我の元じゃよ。」
「でも、そうかといって、ここから出られるものじゃないでしょ。」
「おお、確かにそうじゃった。こんな物騒なとこ早く出なさいと言ったろころで、出るにはもっと強い魔物と戦わんといかんかったの。はっはっは、そうじゃった、そうじゃった。」
頭をぺし!と軽く叩いて笑ったそのおじいさんはとってもほがらかだった。
「そういえば、さっき若造が1人来たぞ。」
「え?若造って・・・ああ、もしかしてさっき助けた男の人かしら?恋人と一緒じゃなかったですか?」
あたしはゴブリンに捕まっていた青年のことを思い出していた。恋人に頼まれて助け、そのお礼に異次元箱をもらったの。
「いや、一人じゃったが。そうじゃな、剣の腕は結構たちそうじゃったが。」
「じゃーアレスさんかしら?」
私は考えていた。どうみても助けた青年は腕が立つとは思えない。でも『若造』っていかにも頼りなさそうな感じがするから違うと思ったからアレスさんじゃないと思ったのだけど・・・。とそこまで考えて、ふと気づいたの。
そう、このおじいさんから見れば、み〜んな若造よね。
ふふふ♪思わずあたしは笑ってしまった。

開かなかったドアも手に入れたカギで開けることができた。その部屋は予想通り上の階へと続く階段があった。でも、門番として屈強なバイキングがいた。
物陰から彼を見たあたしは、神の塔での闘技場でのあの親子のマッチョマンを思い出してしまっていた。
(そう!本当は自分達が最強だとか言っていたあの2人。勝って帰ると褒めてくれるんだけど、負けた時なんかぼろかすに悪口言ってくれたあの親子!できれば塔が崩壊する前にあの2人と戦ってみたかったわ。)
それを思い出したあたしは、もう戦闘意欲満タン!ぼんぼん火炎を放ってやったの!

そうそう、アレスさんなんだけど、彼はワープゾーンの部屋から入らず、もう一つの部屋から入ったらしいわ。入り口のすぐ先が落とし穴で、その向こうからダークレンジャーが弓を次々と放ってきて飛び越すことなんてできそうもなかったから、あたしは諦めたんだけど。
一旦進んだ道は先が続いてるのなら引き返さずとにかく前に進むアレスさんらしいわね。あたしはどうしても安全な方を取ってしまう。

ともかく、トラップでいっぱいだった4Fもなんとかクリア。5Fはどんなエリアなのかしら?
いつの間にか次はどんな魔物がいるのか、どんな仕掛けがあるのか、そしてどんな宝物があるのか、を楽しみにしてしまっているあたしがいた。
外へ出ることなど二の次になってしまってるかも?(笑)



** to be continued **



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