遙かなる旅路
〜[クレール in Brandish1ワールド] Brandishストーリー〜

(2)[RUINS2]ご冥福をお祈り致します。

 

 「えいっ!」
クレールは崩れかかっているところへ来ると、今し方作ったばかりの柵を壊して大金槌を振るった。
しかし・・・・パラパラとほんの少しの土と小石が落ちるのみで、その切り立った崖は崩れる気配が全くない。
「崩れるまでやるしかないわね!」
今一度大きく金槌を振りかぶる。
「ええーーーーいっ!」
−ポテ・・・ー
崩れるどころか穴の開く気配もない。
それどころか、徐々に金槌を振るう腕が疲れてきて、その重みに身体のバランスさえ崩れてしまう。
「・・も、もう一度!!」
ふらふらと再び金槌を振りかぶったときだった。誰かがクレールの手から、それをひょいと奪い取った。
「え?」
彼女は急に軽くなった手と人の気配に、何が起こったのかと振り返る。
「あ・・あの・・・?」
そこには、体躯のいい戦士らしき男が金槌を持って立っていた。
後ずさりしてクレールが場所を空けると、男は黙ったまま大きく金槌を振るった。
−ズガッ!−
見事、1発でその土壁は崩れた。
「あ・・ありがとうございます。」
「・・・・・」
「あ?あら?」
彼女がお礼を言い、深々と頭を垂れている間に、男はさっさと壁の向こう側にあった道を進んでいる。
「あ・・あの〜・・・・」
すたすたと歩く男にクレールの声が届くわけはなかった。
まるで何もなかったように、男は奥へと姿を消した。金槌を持ったまま。
「あ!金槌・・・まだ必要かもしれないのに・・・。」
そうつぶやいたものの自分が持っていても役に立たないと気づき、ため息を付く。
「あの人も上に行こうとしてるのなら、必要なところは崩していってくれるわよね。」
そして、クレールもその道へ歩を進めた。



 「助かったわ。あれから数カ所崩した後があったもの。あたしでは、いつになるかわからなかったわ。」
後を付けているようで悪い気もしたが、目的地が同じなのだからしかたない。彼女は楽をしているという後ろめたさも感じながら、いつの間にか次のエリアに来ていた。



 「きゃあーーーー・・・・・・」
−ドシン!−
そこは、その辺りでは結構広いエリアだった。その広場のようなところに1歩足を踏み入れた途端・・・ そこにあった床は(といっても一面に草が生えているので、床とは言えないかもしれない。)ぱかっと口を開け、当然のごとく クレールは真下に落ちていった。
「いったぁ〜〜〜・・・・」
お尻をなでながら立ち上がる。
「まさかあんな仕掛けがあるなんて・・思わなかったわ。おばあさんが鉄球を持って言った方がいいって 言ってくれたのが分かる気がするわ。えっとぉ・・・出口はどこなのかしら?」
きょろきょろと辺りを見回す。周りは真っ暗で、クレールの落ちてきたところから光が差し込んでいるのみ。
「え?」
暗闇にも目が慣れ、周囲の様子を見て、クレールは小さく叫んだ。
そこには・・・白骨化した骸骨があちこちに倒れていた。
「こ・・ここって・・墓場だったの?」
思わず呟いたクレールだが、すぐに、実はそうではないと気づく。
「そうなのよね・・上から落ちてきた人たちが・・ここから出られなくて死んでしまったのよね・・・。」
お気の毒に・・と、クレールはそこで合掌する。
そして・・・お墓を掘り始めた。
「ほかっておいちゃかわいそうだわ。」

が、しばらく穴掘りの作業を続けたが、死体が多いのと土が硬いうえに道具がないということで断念する。
「ごめんなさいね。また何かいい方法を思いついたらお作りしますわ。今はこれで我慢しててくださいな。」
死体の上に、土をぱらぱらとかけて回り、クレールはそこを後にした。
そして・・・

「きゃーーーっ!」
−ドシン!−
「いった〜〜・・」
またしても落ちてしまった。
上のその床は、ほとんどが落とし穴。
落ちては上がり、また落ちる・・の繰り返し。
「もう!見た目だけじゃ分からないんですもの・・・」
いくらのんびり屋のクレールでも、いい加減に嫌気がさしてきていた。
「でも鉄球なんか使うと、死体の上に落とすことになってしまうし・・そんなの死者への冒涜よね・・。 どうしましょう?」
ししばらく入り口で考えていたクレールだが、はた!と気づいた。
「そうよ!これ以上犠牲者が出ないために、そうすべきなのよ!幸いあたしは身が軽いから怪我もしないし。 文句を言ってないで、そうすべきなのよ!」
そして・・・・・
そのエリアの床全部に穴が開くまで、クレールは落ち続けていた。


「ここも明るくなったし・・この人たちも喜んでるわよね、きっと。」
そして、満足げに次のエリアへと進んでいった。


・・でも・・何かもっとおもしろいことないかしら?



** to be continued **



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