双頭魔人のおちゃめ(?)グッズ(2)
〜[バニーメル] Brandish4サイドストーリー〜



 −わいわいがやがや・・−
ここは、神の塔にある街、カルアの一角にあるレストラン。
食事を楽しみながら、最近よく耳にするうわさ話に花を咲かせていた。
「でよー、いつの間にか塔の上の方まで道が繋がってたらしいんだ。と言っても俺達一般人にゃ、 危険すぎて到底行くことはできないけどよ、調査隊の話じゃ、なんでもすっごく強ぇ魔物が徘徊してるってことだ。」
「ああ、それ、オレもいいたぜ。で、そのまたボスがいるっていう話。」
「そうだそうだ!その辺りにいる魔物だって強くて、調査隊だって歯が立たないってのに、その ボス格の魔物は、簡単にのしちまうんだってな。」
「そうだってなぁ、恐い魔物がいたもんだぜ。」
「そう言やー、確か巫女さんがその辺まで行ってるらしいんだが、大丈夫なのかな?」
「大丈夫なわけないだろ?以前ちらっと姿を見かけたけど、まるっきり子供って感じだったぜ。あれじゃ とっくにおだぶつしてんだろ?」
「だけど、そこまで上がっていったんじゃないのか?」
「まーそうだな。やっぱり巫女さんだから魔力があるのかな?いや、神力か?」
「うーーん、だけど今頃その強い魔物の餌になってやしないか?」
「だろうなー・・」
「店があるらしいから、そこへ避難してるかもな?」
「ああ・・店か・・でもそんな危険地帯にある店ってのも、なんか眉唾もんだな。怪しいぜ。どうせ 人間じゃないんだろう?」
「らしい・・・。」

−ガタン−
カウンタの隅で食事を取りながら、男達の話に聞き耳をたてていた若者、ディーが勢い良く立ち上がった。
「巫女さんってのは、やっぱりあのクレールか?もしかして、モーブも そこで足止めされてるかもしれないな。行ってみる価値はあるな。」
そう思ったディーは、急ぎ足で塔の上へと向かった。

「ふ〜〜ん・・・手強い魔物を簡単にやっつけてしまう新たなる魔物ねぇー。」
やはり街にある教会の片隅では、手下である偽司祭のズフォロアから妖炎の魔術師、メルメラーダがその情報を聞いていた。
「魔物同士で仲間割れでもないでしょうし・・。これ以上上へ行かさない為にザノンが召喚した魔物かしら?」
「さあ?そこまでは私も。」
肩をすくめ、無表情ながらもそれ以上の情報収集は無理だと態度で示すズフォロア。
「いいわ。いずれにせよ、私の行く手の邪魔だてしようというのなら、倒すまでよ。 どおってことないわ。」
ふん!とせせら笑い、再びメルメラーダは、記憶石で上へと向った。

「というわけなんですよ、キエンさん。何しろ辺り一帯に、その・・なんて言ったらいいのか、 猫のような猫でないような・・・えっとですねー、つまりちょうど、化け猫みたいなと言ったらいいんでしょうか?ともかく そんな感じのぞぞっとくるような気持ち悪い声が響いて・・つい・・街へ急ぎ戻って来てしまった というわけなんですよ。」
街の路地で青い顔をした体躯の良い大男が布で顔を覆い目のみ出している一見胡散臭くも見える 剣士風の男に話しかけていた。
体躯のいい男は、ガラハッドという名前のもぐりの考古学者であり、もう1人の剣士は、キエンという 記憶喪失の男だった。
「あのエリアの上に、多分神殿があると思うのですがねー・・。」
いかにも残念そうに腕組みをして言うガラハッドに、覆面の男、キエンは静かに言った。
「私もご一緒しましょうか?」
「え?い、いいのですか?キエンさん?」
嬉しそうに目を輝かせて言うガラハッド。
「いいも何も私こそ最上階に行かなければならないのですから。」
「え?それはどういう?」
不思議そうに聞き返すガラハッドに、静かな視線を返し、キエンは記憶石を取り出した。
「行きましょう。」
「は、はい。」
その静かな視線に自分が放った問いが愚問だったと感じ、それ以上聞くことは止め、ガラハッドはその横に静かに並ぶ。
そして、一瞬後2人の姿はそこからかき消えた。

通称胎内と呼ばれるそのエリアは、人肌の空気とまるで鼓動しているかのような肉質とも言える壁に 囲まれた、あまり居心地のいい所ではなかった。
始めてこのエリアに入ったものは、誰しもその異様さで吐き気を催さずにはいられなかった。
その上、徘徊する魔物は凶暴極まりなく、一瞬たりとも油断はできない。
相当な力を有する者しか立ち入ることはできないエリアだった。

「えっと、確か胎内の3階だったっけ?その猫魔人とやらが出るっていうのは?店も同じフロアだったよな?」
転移した魔法陣から足を一歩踏み出しながら、ディーは1人呟いた。
「ん?何だここは?魔法陣だらけじゃねーか?どこと繋がってんだ?」
襲いかかる魔物を倒しながら、転移の連続に悩まされるディーだった。
「一体いつ目的地に着くんだ?オレは何処へ向かってるんだ〜?」

「えっと〜・・確かこのフロアです。・・・・」
胎内3階へ足を踏み入れたと同時にそう言って、耳を澄ましたガラハッドに聞こえてきたのは、 確かに例のネコの泣き声だった。
「みぃぎゃ〜お〜・・・・・」
「ひ・・そ、そうです・・・確かに間違いありません。キ、キエンさんも聞こえたでしょう?」
心なしか青ざめた顔で後ろのキエンを振り返るガラハッド。
「そうですね。確かにネコの泣き声のような感じですね。」
静かに答えるキエン。
「と、とにかく・・・進まないことには、どうしようもありませんよね・・・あ、あはははは。」
冷や汗がガラハッドの背中を伝った。
そして、しばらく進み、角を曲がった途端・・・
「みゃ〜っ!」
ガラハッドの視線に真っ白な人間ほどの大きさのネコの姿が入った。
大きく開いた真っ赤な口が・・・。
「ぎ、ぎゃあああああ!!!!!」
−ドシン!−
恐怖で我を失ったガラハッドは、キエンにぶつかったことも気づかず、今来た道を 突っ走った。
「あっ!し、しまった〜〜っ!」
足元に地面がなかったことに気づいた時はもう遅かった。
「わーーーーーー!」
そのままガラハッドは、階下へと落ちていった。
「ガ、ガラハッドさん!」
慌てて後を追ってきたキエンは、穴の前で立ち止まり、下を覗き込む。
が、その穴は結構深く暗い。ガラハッドの姿がそこから見れるわけはなかった。
気絶でもしているのか、返事もない。
しかたなくキエンは、1人先を進むことにし、まず、ネコを探してみる。
が、すでに泣き声も止み、辺りにはそれらしき姿もなかった。
「とにかく、上への道を見つけることにしよう。」

「出たわね、化け猫!」
胎内の一角では、運良く(?)メルメラーダが魔物と戦っている猫に扮したクレールの後ろ姿を発見していた。
「ま、待って下さいメルメラーダさん!」
今にも魔獣を召喚しようとしていたメルメラーダに、クレールの焦り気味の声が飛ぶ。
「え?」
呪文の詠唱の半ば、メルメラーダは、その声と自分の方を向いたその顔に目を見張る。
「な、何よ・・・あ、あんただったの?猫魔人の正体は?」
「ね、猫魔人?」
訳が分からず不思議そうな顔をするクレールに、メルメラーダは街で持ちきりのうわさ話を話す。
「だ・・誰かに見られてたんですね・・・。」
耳をうなだれ、クレールはそれ以上ならないほど真っ赤になる。
「らしいわね。幽霊の正体見たり枯れ尾花ってところねー。で・・でも・・・」
−ぶーっ・・あははははっ!−
もう我慢できなかった。事情を話すまでは、と必死に堪えていた笑いをメルメラーダは一気に吹き出した。
「きゃははははっ!こ、子猫ちゃんったら、ホントに似合ってるわよ。城塞のお店の時のネコヒゲ(参)といい、今のその カッコといい・・・きゃははははっ!・・お、お腹痛い・・・く、苦しいわよぉ・・・」
「メ、メルメラーダさん・・・」
「それであの時のヒゲつけたら、もう最高よ!あははははっ!」
「・・・・・・」

「一体そんなものどこで手に入れたの?」
散々笑い尽くし、ようやく落ち着くと、メルメラーダは、まだ真っ赤な顔をしているクレールに聞いた。
「あ、あの・・ここのフロアにあるお店の魔人さんが売ってくれたんです。」
「ふ〜ん・・・・性能は結構いいみたいねー。」
普通のローブに着替えると言うクレールを止め、着たままでそのしっぽつき服を見せてもらって呟く。
「でもねー、私の趣味じゃないわ。杖も手袋もね。いまいちセンスが・・・」
ともかく、メルメラーダは、試しに、その特種アイテムを売っているという店に連れていってもらうことにした。

「あら、いらっしゃ〜い!」
「あら〜、お友達を連れてきてくれたの?嬉しいわ♪」
クレールとメルメラーダににこやかに挨拶する双頭魔人、ヤスミンとサブリナ。
「う・・・」
その姿形と言葉遣いのミスマッチにさすがのメルメラーダも一瞬腰を引く。
が、そこはクレールと違い、回復は早い。
「あたしに合う特種アイテムなんてあるのかしら?」
相手がたとえ魔王でも神でもメルメラーダにとっては関係ない。自分にとって 益があるかどうかが問題なのだ。
「あら〜、勿論あってよ!」
「確か、あったわ!あなたのような素敵なお姉様にぴったりのが!」
目を輝かせて答える2人に、何かを感じ、メルメラーダは思わず一瞬びくっとした。
しかし、ここで引き下がってはメルメラーダの名が泣く。
「じゃー、待たせてもらうわ。」
「時間がかかるかもしれないから、お散歩でもしてきたらどうかしら?この辺りって宝箱が結構あるのよ。」
「そうそう。奥へしまってあったと思ったから、多分探し出すのに時間かかると思うわ。」
「そお?じゃー、退屈しのぎに宝探ししてくるわ。」

そして、数時間後・・・・・
「な、何よこれ〜っ?!」
クレールの時と同じく着せ替え人形よろしく、さっさと衣装を替えられたメルメラーダは、自分の格好を見て 驚いた。
「わー!クレールちゃんの子猫姿も可愛いけど、メルメラーダさんも素敵よぉ!」
「ほんと、ほんと。男が放っておかないわよ〜♪きゃ〜!お姉さんったら、男殺しぃ〜♪」
「な、何勝手な事言ってんのよ?いいとも言わないうちに、さっさと魔法で服を替えてくれちゃって・・・」
わなわなと怒りで震えるメルメラーダ。
「メ、メルメラーダさん、素敵・・・」
クレールも嫌みでなく純粋に感心し、その姿を褒める。
「冗談じゃないわよ!こんな格好!」
「あら〜、でも今までのビスチェもそんな感じでしょ?」
「こ、こんなしっぽついてやしないわよっ!それに、何?このカフスにボウタイって?!こ、これじゃまるで・・・」
そう、メルメラーダの格好は、まるでカジノのバニーガール。
耳こそないものの、真っ赤な蝶ネクタイのついた首の飾り、そして、両手首には、同じく真っ赤なカフスのついた白い絹製のリストバンドが。
そして、服は、黒兎の毛でできたビスチェ。しかも真っ白なふさふさの毛のまん丸いしっぽまでついている。
「このメルメラーダ様が男に媚びを売るとでも思ったんだったら、大間違いよ!」
怒りに任せて服を脱ごうとしたが、びくともしない。ちょうど身体に張り付いてしまったかのようだ。
「あらあら、だめよ、お姉さん。」
サブリナが慌てて止める。
「あたしたちが売ってあげるそのグッズは、ただのグッズじゃないのよ。」
「まだ買うって言ってないでしょ?」
きつい視線でサブリナを睨むメルメラーダ。
「でも、買うことになるのよね。性能いいでしょ?」
「それは、そうだけど。」
確かに防御力も攻撃力もそれまでのものとは、数段違っていた。
しかし・・しかし・・・。
「言うの忘れてたんだけど・・・」
ヤスミンが申し訳なさそうに少し小声で言う。
「今、サブリナがただのグッズじゃないって言ったのを聞いて思いだしたの。」
「何をよ?」
「あのね、そのグッズたちって、自我があるのよ。だからね、一度身につけると普通では 脱ぐことはできないのよ。」
「な、なんですって?」
「え?そ、そうなんですか?」
メルメラーダだけでなくクレールも焦って思わず大声を出した。
(実際のゲームでは、そんなことはありません。/^-^;)
「そうなのよ。ごめんなさいね、それを忘れて、勝手に着せちゃったりして・・・」
「じゃー、どうすれば脱げるっていうの?」
事と次第によっては、戦闘も辞さない雰囲気でメルメラーダは2人を睨む。
「あらあら・・そんな恐い顔しないでちょうだい。あのね、脱ぐことができないわけじゃないの。」
「そうなのよ。ただ、その服の自尊心っていうものがあって・・着替えるのがそれより性能が上の場合、 身体から離れるのよ。」
「・・・ということは、これよりいいものが手に入るまで、ずっとこのまま?」
「ま、まー、そういうことになるわね。」
「ええーーー?!」
もう街に戻れない、とクレールも真っ青になって声を上げた。
「う・・・もし、この格好をズフォロアにでも見られたら、私のメンツ丸つぶれよ。」
メルメラーダも当分街へは帰れない、いや、近寄れないだろうと判断した。
「で、これよりいいものは、ここにはないのね?」
「ごめんなさいねー。多分もっと上の階へ行けば、宝箱にでも入ってると思うわ。」
「・・・・・」
怒りで爆発しそうなのを抑え、ただぐっと睨み付けるメルメラーダ。
こんなことで我を忘れて爆発するのもメルメラーダの自尊心が許さない。
「わかったわ。要は、見つければいいわけね。」
「あ!メルメラーダさん!」
−バタン!−
クレールが呼び止める声も無視し、メルメラーダは代金をカウンターに投げるように置くと、さっさと店を出ていった。
「でも、この攻撃力・・なかなかいいんじゃない?」
店では気に入らない態度をとったメルメラーダだが、内心、結構気に入っていた。
彼女にとっては、格好より性能が第一。両方良いに越したことはないが、ここでは、やはり 威力がある方が自分にとって有利だから。
「まー、そう気にすることもないわよね?」
そう割り切りながらも、宝箱を探し続けるメルメラーダだった。


       ∧∧    ∫       ∧∧    ∫
     =(^ ^ =⌒ )END =(^ ^ =⌒ )

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(参)[お話]クレールのお店番


♪Thank you for reading!(^-^)♪

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