双頭魔人のおちゃめ(?)グッズ(3)
〜[胎内は、ニューモンスターがいっぱい!] Brandish4サイドストーリー〜



 いつしか自分がバニーガール姿だったということも、胎内エリアを探索し続けているうちにメルメラーダの意識から薄れていった。
自分からでは見えないし、その攻撃力、防御力には満足もしていたからだった。

 「あら?そこへ行くのはディー坊やじゃない?」
幾つ目の魔法陣だろう、転移終了後のメルメラーダの前方を走っていく若者の姿が目に入った。
「ん?」
立ち止まり振り向いたその男は、確かにディーだった。
「なんだ、あんたか・・何か用か?」
ディーは、咄嗟に用心してメルメラーダを睨む。
「あらあら、そんな恐い顔しなくてもいいじゃない?私とあなたの仲で。」
くすっと笑うメルメラーダ。
「何が『私とあなたの仲』だよ?散々オレをこけにしやがって!」
「あら〜、ディーったら〜・・『見・な・お・し・た』って言ったじゃないのぉ? あ、もしかしたら、さっきの『ディー坊や』が気にさわった?だとしたら、ごめんなさいね。 言い慣れた呼び方ってすぐ直らないのよ。」
バチン!とウィンクするメルメラーダにディーの頬に、ほのかに赤みがさす。
「な・・なんだよ。そ、それに、何だその格好?」
ディーに指摘され、メルメラーダははっとして自分の今の格好のことを思い出した。
「あら〜・・似合わない?この格好?」
彼女は開き直ることにした。
「似合う、似合わないの問題じゃないと思うんだけどな。ちょっとふざけてないか、それって?場違いだぜ?」
「クレールちゃんのネコ姿よりましだと思うんだけど〜。」
「クレールのネコ姿?」
きょとんとするディーに、それまでの経緯を話すメルメラーダ。

「ふーん・・・そういうわけかー・・。」
何やら遠い目をして納得しているディーの態度に、メルメラーダはふと、ディーがずっと後ろに手を回していることに気づく。
いつもならそんなポーズは取っていない。鞭を持った手はいつも横にある。
「どうしたの?」
ひょいと後ろを覗こうとするメルメラーダに、ディーは後ろを見られないように慌てて方向転換する。
「な・・なに?それ?・・鞭なの?」
が、めざとく目的物を目にとめたメルメラーダの声は、すこしうわずっていた。
ディーが後ろに隠していたのは、真っ赤なリボンをその先に結んだ三つ編みにされた黒髪の束。それが、まるで 鞭と言える長さ。
「い・・いや・・・そ、その・・・」
ばつの悪そうな顔をして、仕方なくディーはメルメラーダに事の次第を話し始めた。
ディーもメルメラーダたちと同様、道具屋デュアルで、特種グッズを買って(買わされて?)いたのだ。
今メルメラーダが目にした黒髪の鞭『兄貴の三つ編み』そして、見た目には革製の胸当てと変わらないが、 何者かの肉塊で作られたらしい『兄貴の胸板』と肉襦袢のような材質でできている籠手の『兄貴の二の腕』という 兄貴シリーズ3点セット。
「確かに攻撃力、防御力ともいいんだが、このなんていうんだか、人肌的なぬくもりが・・なんとなく気持ち悪くて たまんねーんだよな・・・。まるで誰かに抱き留められて守られてるような感じなんだ・・」
思わずぶるっと身震いするディー。
「・・この鞭だって、攻撃してないときは、髪が腕にからみついてくるような気がするんだぜ・・・。」
気味の悪い者でも見るような目つきで、手にしている艶やかな黒髪の鞭を見つめながら、ディーが吐くように言う。
「・・・あの魔人の趣味っていったい?・・・。」
大きくため息をつくと共に、メルメラーダは苦笑していた。
「まー、仕方ないわよね、お互い。じゃー、こうしない?私があなた向けのアイテムを見つけたら、あなたにあげるから、 あなたも私にぴったりのを見つけたら、私にくれない?」
「あ、ああ・・そういう話ならいいぜ。」
「話は決まったわね。じゃー、一緒に行動するより、別々の方がいいでしょ?見つけたら・・そうね、あの魔人に預かってもらっておくわ。それでいいでしょ?」
「いいだろ。お互い取引に見合うアイテムが揃った時点で交換ということだな?」
「分かってるじゃない、坊や。じゃなかったわ、ディー。」
「ふん!ただでくれるわけないもんな、あんたが。」
「あら・・おほほほほ!」
−シュン!−
話が決まると同時に、メルメラーダは魔法陣で転移した。

と、転移した先で、気味の悪い嗚咽が耳に入る。
「何?」
嗚咽の聞こえてくる方向に向かっていくと、そこではキエンが束になってかかってくる 魔物相手に奮戦していた。
が、様子がおかしい・・・あの無表情・・と言っても目しか見えないが、・・感情を露にしない はずのキエンが、一太刀浴びせる度に嗚咽をもらしている。
「ど、どうしたっていうのかしら?」
めざとくメルメラーダを見つけて向かってくる魔物を倒しながら、メルメラーダはキエンを 見続けていた。よく見るとその両目からは、確かに涙が流れている。
しかも、鎧、籠手、剣の柄には、悪霊が泣き叫んでいるかのような顔が浮き出ている。
「うう・・・・・おおぅ・・・おおーーー・・」
そこにいた魔物を全て片づけると、ようやくその嗚咽もなくなり、ぐいっと袖で涙を拭う キエンの姿がそこにあった。
「キエン?どうしたの?・・まさかあなたも・・・」
メルメラーダにはその原因がはっきりと分かった。あのキエンが泣くわけがない。 考えられるのは、自分と同じ状況。・・ただし、自分よりかなりその状況は悪い。
はっとしたようにメルメラーダを見るキエン。
そして、キエンもまたメルメラーダの格好を見て、それを悟った。
「ふう・・・・まったく・・」
大きくため息をつくと、メルメラーダはあの魔人の笑顔を思い出していた。
「一癖なんてもんじゃないわね、あいつら。」
そして、再び宝探しを始めた。

「うふ・・今頃みんなどうしてるかしら?」
「やーね、サブリナったら、意地悪なんだからぁ・・」
つん!とサブリナの額をかるく小突くヤスミン用である右手。
「だってぇ・・退屈しのぎにいいじゃない?面白いんですものぉ。」
「まったく、昔っからいたずらっ子で、しょうがないんだから!」
「うふふふふ!でも、いいものであることには、違いないわよ。」
「まー、それはそうなんだけどね。」
「ね、ね、今度はどんな人が来るのかしら?もっとあたし好みのがっしりとした男、 来ないかしら?」
「どうかしらねー?多分そろそろ来るような気が・・・」
「ホント?じ、じゃー、お化粧しなおしておかないと!」
「そうね。そうだわ。そうしましょ!」
「いいこと?いっせーのぉー、で脱ぐわよ!」
掛け声をかけ、化粧の半分落ちかかった皮をまるで服でも脱ぐように上に脱皮する魔人。
「うーーん・・いいわねぇ・・新しい皮膚って・・。」
その下にすでにできているすべすべの薄皮を撫でながら上機嫌のヤスミン。
「また髪も伸ばそうかしら?」
「それもいいわね。ねーねー、ちょっと肉がつきすぎちゃった気しない?」
「どうかしら〜?なんだったら、皮の薄い今のうちに少し削いでおく?」
肉質を確かめるかのようにペシペシと両手で身体を叩く。
「そうねー。でも・・いいわ。また今度にしましょ。」
「ねー、またこの皮で防具でも作らない?」
脱いだ皮を丁寧にたたみながらサブリナが言う。
「お化粧してからね。」
「じゃー、まずは、お化粧っと。うふ。」
no6

お化粧直ししている双頭魔人
[寄贈:異次元箱さん (ありがとうございました)]


ごそごそと奥から化粧瓶を取り出すサブリナ。
「はい、ヤスミンは、紫の血だったわよね。」
「そうよ。で、あんたは青い血で。」
2人は上機嫌で、お互いの頭部から身体全体の化粧を施していった。

胎内エリア、そこにいる魔物もショップのオーナーも一筋縄ではいかない。
そして、今、新たなる魔物が徘徊するということで、調査隊は、その調査の一時中断を余儀なくされた。
どこからともなく聞こえて来る、化けネコの泣き声や、魔物のものらしいと思われるむせび泣き。
・・胎内エリアに1歩でも足を踏み入れると呪いがかかるとの噂が飛び交った。
分身で攻撃する化けネコ、分厚い肉でその身体を保護し、自髪(?)で作った鞭を振り回す魔人、怨霊の武具で 身を固めた嘆きの剣士、そして、そのエリアへ呼び込もうとでもいうのか、バニーガール。しかもその ボウタイは、鞭代わりとなる?

・・・それが、より良いグッズを求め、宝箱を探し続ける彼ら4人だとは、誰が想像しえただろう?
そして、・・もうすぐ・・いや、すでに・・新たなる仲間、5人目が・・?

調査は、一層難航の形相を示し、いつ再開されるのか、全く目処がつかなかった。


       ∧∧    ∫       ∧∧    ∫
     =(^ ^ =⌒ )END =(^ ^ =⌒ )

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