『ニールとゆかいな仲間たち♪』
== ネクラ・・もとい!ネクロマンサー、ニールの徒然冒険記 ==

その28 「黄昏のエリー」(1)ニールの脱走補助?

 「なんなのよ、まったく、サシャナったら・・・ニールをこき使うにもほどがあるわっ!」
もちろん、おまけ?とし、エリーも例外ではなくこき使われてるのだが、ともかくエリーはニールのことが心配になっていた。
「ただでさえ顔色悪いんだから・・・それにあんなに召喚ばかりしていちゃ生気もなにも空っぽになってしまうわよ?!」
ホントに子供というのは限度というものを知らないから困ったものだ、とエリーは舌打ちしていた。
「おまけに遠慮ってことも知らないし。」
それはニールに対しても、そして、エリー自身に対してもそうだった。
「ニールもニールよっ!にこにこしちゃって!あ、あんな子供に・・・・」
が、ふと子供だと思ってるのなら、子供に対するというだけの気遣いだけなら、許せるかもしれない、とエリーは思い直す。
「でも・・・・ロリコンってこと・・ないでしょうね?」
が、また一つ、他の考えが浮かび、エリーは、ぶんぶんと首を振ってそれをうち消した。
「アンデッド召喚は好きらしいけどね。別に死体愛好家じゃなかったし・・・・。呪術もニールは嫌いらしいし。ロリコンということもなさそう・・よね?」
が、どうもサシャナの言葉には弱いらしいとエリーは思っていた。
そのサシャナの改良?のおかげもあって、最初出会った頃のように、おどろおどろしい雰囲気はすっかりなくなっていた。今ではこざっぱりしたそれでもちょっと暗っぽいけど、話してみるときさくなお兄さんといった感じになっている。
もちろん、すっかり慣れたエリーには、それに加えて頼もしさも付け加えられている。もっとも、ともすると、どこでもごろりと転がって昼寝したがるさぼり癖は抜けきっていないが・・・でも、まー、かわいいと言えばかわいくも思えるのである。今のエリーにとっては。

そう、実は今、エリーはニールと2人きりなのである。
もっとも・・・・・ニールはエリーの膝枕でお昼寝中なのだが・・・・。
つまり、あまりにものサシャナの使いように頭に来て、それでも、がんばっているニールの腕を引っ張って、さぼりをすすめたのである。


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「珍しいな、エリーがそんなこと言うなんて?」
少し休んだ方がいい、と言ったエリーに、ニールは笑いながら応えた。
「だって、いくらなんでも連続して召喚しすぎよ。これじゃあなたが弱ってしまうわ。」
「あっと・・・じゃー・・」
「え?」
町はずれの森の中。小さな池の畔を歩いていたニールは、ちょうど見つけた大木を指さす。そして、その木の下へ歩み寄ると地面に座るようにエリーを促した。
−どきっ!−
やさしげなニールの視線に、思わずエリーの心臓は大きく鼓動する。
そして、大木にもたれるようにして座ったエリーの横に、どさっとニールが座り、再びエリーの心臓は踊る。
「せっかく言ってくれてるんだ。ちょっと甘えさせてもらうとしよう。」
「あ、ど、どうぞ。」
横にいるニールの顔が見られず、エリーは前を向いたまま応えた。
と・・・・
−トン−
「え?」
エリーの膝に、ニールがその頭を置いたと思った次の瞬間、やすらかな寝息が聞こえていた。
「え?・・・・も、もう寝ちゃったの?」
よほど疲れていたのだろうか、そう思いながらも、エリーは期待した自分がおかしくなり、小さく声を出して自嘲した。
「くくっ・・・・・でも、ニールなのよね・・・・・ニールなんだから・・・」
勇者として歓待を受けるとき、当然女性の歓待も受けるときがある。が、まるっきり無視状態のニール。人間の女性には興味ゼロというのが、その態度からは手に取るようにわかる。歓待しがいのない勇者様だ、そんな噂もあった。だから、女をあてがってうまいこと使おうという目論見で呼んだ権力者は落胆する。盛大且つ立派に整えられた会場で歓待をうけるより、場末の酒場で一人静かに呑んでいる方が好みのニールは、煮ても焼いても食えない人種だった。あえて言うのなら好きな酒を山盛りプレゼントすることだろうか?だが、それでも、自分の気の進まないことは絶対しない。誰がなんと言おうが。そして、そんなニールに命令できるのは、いかに大国の国王と言えどもできなかった。
なにしろ、世界を恐怖のどん底に貶めた魔王を倒した人物である。一見気弱でおとなしげにみえるが、その実力は実証済みなのである。意に染まないことを強要しようものなら、何をされるかわかったものではない。
ただ、一つ、ニールに命令できるとすれば、同行者である魔法使いのサシャナという少女なのだが、ところがどっこい、小柄で華奢な少女にみえるその彼女も、魔王退治に同行した勇者である。下手なことを言えば、簡単に一蹴されるだけ。しかも、気にさわる内容だったとしたら・・・・火炎を投げつけられるかはたまた氷漬けにされるかわかったものではない。それは、蔑視を残して黙って立ち去っていくニールより恐かった。
ニールがサシャナの魔法を怖がっているということはなかったが、ともかくサシャナの言うことには不思議なほど従っていた。しぶしぶだが、聞いてしまうのである。
なぜだか・・・・本人にもわからないらしいのだが・・・。
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「さんざんきついこと言った私だけど・・・・・でも、サシャナと私・・どう違うの?」
ニールの寝顔を見つめながら、エリーは呟いていた。
明らかに違っているようにも思えた。頭ごなしにどなってしまった頃。でも、サシャナも同じようなものだと、エリーはふと感じる。
ニールの意見など聞こうともせず、自分の言うことを通す。そのこき使い度は、今ではエリーよりサシャナの方が断然上のはずである。なのに・・・・人に指図されることは嫌いでうるさがるニールが、いつもおとなしく聞いている。
そこにどう違いがあるのか・・・・エリーは悲しさを感じながらニールを見つめていた。
「ネクロマンサーを毛嫌いしてたことが原因?」
(・・仕方ないのよ・・・だって・・・・・・・)
エリーは、膝にニールの頭から伝わってくる温かさを感じながら、その記憶を遠い日に飛ばしていた。 

 

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