『ニールとゆかいな仲間たち♪』
== ネクラ・・もとい!ネクロマンサー、ニールの徒然冒険記 ==

その27 「大人気!ふもたっくん」

 「あっ!ふもたっくんだーーーー!!」
そこは、ある街のある恵みの家。言うなれば親を亡くした孤児たちを預かっている施設。
「元気してたかな?」
「はーーーい!」
元気に返事をする子供たち。
サシャナはニールと共に旅をしながら、立ち寄った町や村にあるそういった施設を一番の仲良しであるスケルトンのふっくん、もっくん、たっくんと共に、いつの間にか慰問するようになっていた。
サシャナの軽い魔法による手品もどきとそして、ふもたっくんによる組立体操、漫才など、結構人気があった。

ときには、アンデッドでもある彼らを怖がったり、そして、親など親族を魔物に殺され憎しみをぶつけてきたりする子供もいたが、サシャナの明るさと彼らの素直な心にそれも次第に和らいでくるのが常だった。
そして、その噂を聞き、依頼が来るようになっていた。

「今回も大成功ってか?」
「うん!」
上機嫌で帰ってきたサシャナに、ニールは軽く笑う。
サシャナはニールも一緒にと言うのだが、ネクロマンサーが行って小さな子供を怖がらせてもいけないと思い、ニールは依頼されていれば魔物退治、そうでなければ酒場でのんびり酒を呑んでいる事が多かった。
「今日はね、新作披露してね、またまたすっごく盛り上がったのよ。」
「新作・・ああ、そういや、移動中も4人でごそごそやってたな?」
「うん、練習したかいがあったわ。ね♪ふっくん?」
えへへ、と笑いスケルトンのふっくんは頭をかく。
「ほー・・・。で、どんな芸なんだ?」
スケルトン3人組におどけたようなわざとらしい笑顔を送ったニールに、サシャナは話し始めた。
「うん・・・あのね・・・」

その新作とは、なんと、もっくんとたっくんを一旦バラバラにした上で傘の形に組み合わせ、ふっくんが、それぞれの手にもっくん傘とたっくん傘を持って、しゃれこうべ回しをするというのである。
くるくる回る傘の上、にかっと笑ったしゃれこうべが踊るように回っている。そして、大業!回している自分の頭上高く上げ、もっくんとたっくんのしゃれこうべを交差させて入れ替える、なんてことも披露し、会場となった施設の青空広場は子供たちや、そしてやはり見物に来た大人たちからの喝采を浴びていた。

そして、・・・再び傘をバラバラにし、今度は元の形、スケルトンになっていく。その過程がまた面白い。これはお前のだ、それはオレのだ!と掛け合いながら、元にもどっていくそれまでの漫才?がまたまた面白いのである。
会場は、大爆笑の嵐。惜しみない拍手と笑顔が溢れていた。

「そうか。それはよかったな。」
「でー・・・・」
「なんだ、まだ何かあるのか?」
サシャナは笑顔のニールに、目を輝かせて言った。

「あのね、施設の子たちと約束しちゃったの。」
「なんだ?」
「うん・・・あの・・怒らないで聞いてくれる?」
「なんだ、サシャナらしくない。オレがいつサシャナを怒ったっていうんだ?」

それでも、サシャナは少し言いにくそうに口を開いた。

「ふっくんともっくんとたっくんの3人を中心にね・・・縄跳びのギネスに挑戦することになって・・・・。」
「は?」
「えっとねー・・・大会があるんだって、1ヶ月後に。で、その定員が多くて。」
「多いって?」
「うん・・30人。」
「30人?」
「うん・・・・魔王を倒したニールならそれくらいの召喚軽いよね?って、子供たちに言われて・・・つい・・・・」
「ま、まー・・・できないこともないが・・。」
考えながらニールは答えていた。確かにそのくらいの数なら召喚したこともあった。
「で、練習しなくちゃならないのよね?」
「あ・・そうだな。最初からできるわけないからな・・・・って、待てよ、おい?」
そこまで考えてニールはぎくっとした。
「まさか、サシャナ・・・・」
「あ、あたし、栄養のあるお料理一杯作るから!だから・・・ねっ!」
ニールが口にする前に、サシャナは顔の前に両手を合わせ、ニールを拝んでいた。
「ごめんなさい!あの子たちの喜ぶ顔見てたら、断れなかったの。だから、お願い、ニール!」

1ヶ月もの間、毎日30体ものアンデッドを召喚・・・・それは、いくらニールと言えど、気の遠くなるような話だった。
『サシャナ・・・1体2体ならまだしも、一度に30体・・・しかも毎日召喚するということが、どれほどの精神力を費やすか、・・・・知らないとは言わせないぞ?』
ダメだ、と言おうと思ったニールだったが、信頼し頼り切った瞳でじっと自分を見上げているサシャナの笑顔に・・・・・またしても負けてしまった。
「ふう・・・・栄養たっぷりの3食に昼寝をつけてくれよ。」
「ニール!♪」
ひょっとしたら、そんなことできるわけがない!と言って怒られるかと心配でもあったサシャナの顔が輝いた。
「ニール!やっぱりニールは最高よ!」
「最高か・・。」
首に巻き付かれながら、なぜこうもサシャナの笑顔に弱いのか、とふとニールは思いながら笑っていた。
「それはもしかしたら、奴らも一緒なのかもな?」
スケルトン3人組だけでなく、召喚したアンデッドたちは、全員サシャナの言うことにはなぜか恐ろしいほど素直に従う。
「最高で最強の術なのかもしれないな?」
サシャナの屈託のない笑顔を見つめ、ニールは思っていた。サシャナの魔法もかなり強力だが、笑顔はそれ以上かな?とふと思う。

が、それはそれ、これはこれ。そして、これも修行の一つだと思えばいいだろう、とニールは考えを切り替えていた。毎日30体ものアンデッドの召喚を30日連続。
「ん?ひょっとするとこっちの方がギネス申請できるんじゃないか?」

が、まさかギネスの更新に次ぐ更新とは、誰が予想しただろう?

「ニール!今度の対戦者はねー・・・・」
その町で息ぴったりのジャンプをみせ、見事優勝を果たしたスケルトングループには、次から次へと対戦の申し込みが舞い込む。


「おやぶん・・・」
「ああ・・・・」
手紙に目を通している嬉しそうなサシャナの横で、顔をお互いに見合わせるニールとスケルトン3人組のふっくん、もっくん、たっくん。
それは、他のスケルトンたちは召喚時に交代ができたが、そうもいかないのが、音頭取り、つまりまとめ役の3人・・とそして、召喚者のニール。
「ギネスって・・・一体どんな魔物なんでやすか?いつになったらそいつのアジトに付くんでやす?」
「早く倒して、オレたちも少しゆっくり休みたいっす。」

『ギネスに挑戦よーー!』<サシャナ
『うおーーー!』<スケルトングループ
縄跳びを始めるいつものその掛け声から、3人組は、どうやらギネスという倒さなければならない魔王がいると思いこんだらしい。

そうは、思ってもサシャナの笑顔にはその言葉がでない。出るのはため息ばかりなり。
「あ!それからね!ふもたっくんには、競技場の落成式にドクロ回しをやってほしいんだって。最近縄跳びばかりで、練習してないから、少ししないとね♪」
「へ?」
「ふもたっくん?」
「あのね、一人ずつ言うのは長いから、省略したこの言い方が流行ってるのよ。いつも3人一緒だからって。知らなかった?」
「流行ってるの、は、いいが・・・あ、あのな・・サシャナ・・・・」
「うふ♪ふもたっくんって、すっごい人気なのよ。ドクロ回しでしょ?漫才でしょ?それから縄跳びのリーダーとしても超有名なの。」
得意げに喜んでいるサシャナに、4人(?)は、言葉を失っていた。

『歓迎!ふもたっくんとご一同様!』
次の町の入口、ニールはしばし唖然として、大きくそう書かれたアーチを見上げていた。

(オレっていったい・・・・・?)
魔王を倒した勇者という呼称は、ふもたっくんの人気の影に隠れ、早くも風化していた・・・? 

 

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