『ニールとゆかいな仲間たち♪』
== ネクラ・・もとい!ネクロマンサー、ニールの徒然冒険記 ==

その26 「ケイン長老と井戸(1)」

 「モテモテで困っとるようじゃの、ニール?」
「なんだ・・誰かと思ったらケインじーさんじゃねーか?」
その街へ来たそうそう、定例行事で街のあちこちを見て回っていたニールに、不意に声をかけた老人に、ニールは苦笑いする。
にたにたとニールの顔を見て面白そうに笑うケインの顔を見、ニールはふと思い出したことを口にした。

「ホントにじーさんっていつもオレの先回りしてるな。目利き鼻聞きってか?」
「ふぉっふぉっふぉ・・・そうじゃの〜・・・まだまだ世界には魔物が蔓延っておるからの。ダンジョン有る限り未鑑定アイテムもある。とするとわしの出番ぢゃろ?」
「巻物があるだろ?」
ケインの口調を真似して付け加えたニールに、ケインは思わず口ごもる。
「ぢゃが、わしの方が安いぞ?」
「そうだな。オレは・・ただだしな?」
「い〜〜や。」
「へ?」
にたりと笑いケインは断言した。
「魔王の恐怖はなくなったんぢゃ。で・・・わしも生活がかかっておるのでな。」
「は?」
「つまりぢゃ・・・救助の依頼だとか魔物が関与する問題の相談料で食を繋いでいたわけぢゃが・・それが少なくなっての〜。」
「だけど、オレは特別なんじゃないのか?」
「ふぉっふぉっふぉ・・・い〜んや。万人平等でないとな。」
「こんな時にそれを適応しなくてもいいだろ?普通するか?」
しれっとして言い切るケインと怒りを露わにして睨むニール。
「あんたがわしを助けてくれたのなら、そうもしたが・・。」
(う・・・トリストラムで助け出さなかったことをまだしつこく根に持ってるのか)とニールは焦る。
「神の秘密結社(?)ホラドリムの最後の長老だろ?そんなことにいつまでもこだわるなんざ、大人げないと思わないのか?」
「い〜〜んや。」
大きく首を横に振ってケインは否定する。
「わしが井戸の上の檻の中でどれほど心細かったか・・。お前さんときたら、すぐその下を通ったっていうのに、すっと通り過ぎてしまったんじゃからのー。あの時はもうだめだと覚悟したものぢゃ。」
「んなこと言ったってだな、じーさん。あの時はオレの方がもう死ぬかと思ったんだぜ?精神力も体力も限界だったし、その上、ポーションも尽きてたんだ。あのアンデッドのおっさんは強いなんてもんじゃなかったぜ?!」
「ふん!そうぢゃな。武器屋のグリズは強いからの。それに加え、あの頃のお前さんは今の100分の1も力がなかったんぢゃったな。」
「じーさん、それは言い過ぎじゃねーのか?」
「どのみち・・ぢゃ・・・。」
「ん?」
「1個100G。それ以上はびた一文下げるつもりはない。」
「この・・ごうつくじじい!」
面と向かってそしられてもケインは涼しい顔をしていた。
「いいぢゃろ?巻物より安いぞ?」
「じゃー、いいよ。ラット・ゴーレインで巻物仕入れてくるよ。アトマの口利きで安く買えるんだぜ?」
「ほ?・・・なんぢゃ、魔王以外全て無視しておったと思ったら、寄り道して依頼を引き受けてやったのか?」
「まーな。」
「ふ〜〜ん・・・」
「な、なんだよ、そのいやらしい笑い顔は?」
「そうか、そうか、そうぢゃったのか。」
「な、なんだよ、それは?」
にたにたと笑いながら一人頷いて納得するケインに、焦りを覚えながらニールは聞く。
「なんだって・・そうぢゃろ?」
「なんだ?」
「エリーもサシャナもガルナーヴァも無視しておるはずぢゃ。仲間としてならまだしも女としては見てないってことかの?」
「だから、なんだってんだ?」
「すこ〜し年増ぢゃが、いい女ぢゃでの〜。」
「ばっ・・・・」
ケインが何を言いたいのか即分かったニールは、ばちっ!とウィンクしたケインを睨んだ。気のせいかほんのり顔が赤く染まっているように思える。
「回り道になる依頼はほとんど無視して進んでおったお前さんがわざわざ戻って引き受ける気になったのもよ〜く分かるわい。」
そう、依頼を受けずに次の地へ旅立ったことは、ケインはよく知っていた。
「そ、そーじゃないって、じーさん!」
「まーまー、誰しも好みはあるし・・ネクロマンサーだとて男ぢゃからの。」
「じーさん!」
ふぉっふぉっふぉっと笑い、ケインは面白そうにニールを見つめた。
「いいぢゃろ。ぢゃ、そこで買える2割引ということでどうぢゃ?」
「だから、けちくさいこと言うなって言ってるだろ?」
「ぢゃから、生活がかかっておるといってるぢゃろ?」
今度はケインがニールの口調を真似して言った。
「それにぢゃ、2割りぢゃと言っても安いんぢゃ。わざわざそこまで行くこともあるまい?・・・・もっとも、アトマに会いたいということなら、別ぢゃがの。」
「そ、そんわけないだろ?わかったよ、払やいいだろ?払や!」
亀の甲より年の功、いや、無口なネクロマンサーが口達者なケインに勝てるはずはなかった。
 


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