『ニールとゆかいな仲間たち♪』
== ネクラ・・もとい!ネクロマンサー、ニールの徒然冒険記 ==

その23 かくれんぼと鬼ごっこ

 「ああ〜!バールじゃないあれ?」
カオスの聖域への道を背後に、ワールドストーンと呼ばれる異空間に広がる洞窟の最深の奥まった部屋の玉座にバールは座っていた。
「下がってろ。」
そこまで連続テレポートしてきたサシャナを自分の背後に下がらせ、ニールは近づいてくるバール直属の配下を打つため剣を握りしめる。
−シュシュッ!−
「な?」
が、ニールが彼らに斬りかからないうちに、サシャナのフローズンオーブが彼らを取り囲む。
「サシャナ・・・・」
「えへへ・・」
「オレの出番がないじゃないか〜?」
「だってさ、あれくらいのテレポートどうってことないもん。」
「ったく・・・・」
ぶつぶつ文句を言いながらもニールは倒れたバールの配下を次々と蘇生させていく。
「ほら、ニールの出番、あったじゃない?」
「違うだろ?あれじゃオレのメンツ丸つぶれだろ?」
「誰に対して言ってんの?」
「あ・・・そ、そりゃ〜・・・・・」
そういえば、他には誰もいなかった、とニールは思い出す。メンツも何も気にする必要はまったくない。
「そ、そうだったな。」
ははは、ふふふ、と2人は呑気に笑っていた。
と・・・・
「わはははははは」
地を這うようにバールの笑い声が辺り一帯に響いた。
「人間よ、よくぞここまで来た。褒美として我が親衛隊の歓迎を受けるがいい。」
「え?」
檀上のバールが高く手を掲げると、2人の目の前に数体の魔物が出現する。
「くそっ!凶暴なのばかりだぞ?」
と、一瞬ぎくっとしたものの、それは不必要な心配だったとニールは頭をかいて苦笑いしていた。
その凶暴且つ手強いバールの親衛隊は・・・全てすぐ目の前にいたニールが蘇生させたかつての彼らの仲間に攻撃をしていた。
「なんだ・・・腕っ節はいいが、おつむが弱いってか?」
笑いながらふと横を見たニールは、隣に立っていたはずのサシャナの姿がないことに気付き焦る。
「サシャナ?」
「ニール、こっちこっち!」
「お、おい・・・・大丈夫なのか?」
「大丈夫だからここにいるんでしょ?」
笑って答えるサシャナは、なんと玉座に座るバールのすぐ後ろにたっていた。
「ど、どうなってんだ?」
戦い続けている敵と味方を横目で見ながら、ニールも壇上へと向かう。
「な、なんだ、実態がない?ホログラフィーって奴なのか?」
「さあ〜、なんだか知らないけど素通りしちゃうでしょ?」
「・・・・・・・し、しかし、これって・・・ぷくくっ!」
思わずニールは笑い始めていた。
そう、バールの幻影(?)は、真面目な顔をして配下が全員倒されると、さもまだ次の手があるから余裕たっぷりだ、とばかりの表情と笑い声で、手から放つ雷と共に次の手下を召喚している。
が・・・実際には、そこに敵であるはずのニールもサシャナもいない。死体ができればバールの後ろから蘇生させればいい。
つまり、バールは、そこにいもしない敵に啖呵をきり、嘲笑し、そして次々と手下を召喚してけしかけているということだった。
「で・・・これはいつまで続くんだ?」
バールの背後に赤黒くうごめく空間。そこがバール本体の潜むカオスの聖域だとはわかっていた。が、そこへ入ることができない。
「どうなのかなー・・・?ひょっとしてこのおじさんが手持ちの駒全部召喚し終えれば通れるようになるんじゃない?」
「おじさんはないだろ、サシャナ?魔王なんだぜ?」
「だって、やせこけた人相の悪いおじさんにしかみえないもん。」
「ぶっ・・・・本体が聞いてたら怒るだろーなー?」
「聞こえないのかしら?」
「さーな。怒らないところを見ると、そう大した遠隔操作じゃないみたいだな。」
「そうよね。ただ目の前に手下を召喚してるだけなんだもん。」
「まったくだ。なんか、あほくさくなってきた。」
「ニールに言われたらおしまいね。」
「なんだそれ?」
「えへへ」
ちろっと軽くニールに睨まれ、サシャナは舌をぺろっと出して笑う。
「まー、なんでもいいが・・・後ろは通れないかぎり、待つしかないんだろうな?まだか、特殊なアイテムが必要ってことないだろうな?」
「どうかなー?ここまであまり探索らしいこともしないでテレポしてきちゃったからね。でも、たぶん大丈夫よ。」
「そうか?」
「うん。あたしの感だけどね、ラスボスがこんなあほなのよ。そんな手の凝った仕掛けはないと思うわ。」
「あ、あほ・・・・・」
「あほでなかったら何なの、これ?」
「ま、まーなー・・・・」
未だに2人には背を向けたまま、前面に部下を召喚しているバールを見て、2人は苦笑いする。
「究極の安全地帯だな。」
「そうね。」
「しかし、暇だな・・・・」
「じゃー、ニールも戦ってくれば?」
「オレが行っても邪魔になるだけさ。」
蘇生させたアンデッドに全部任せた方が間違いないさ、とニールは笑った。

そして・・・・
−シュン!−
「え?・・あ、あれ?」
全部部下を召喚し終わったのか、バールがものすごい早さで2人の身体を通り抜け、それまで入れなかった空間へとその姿を消した。
「ニール・・・」
「ああ、もう入れるってことだな。」
2人は顔を見合わせ、そして、その中へ足を踏み入れた。それまではうごめいてはいるが、全くの壁だったものが、すんなりと2人を招き入れる。

「さーて、本体との遭遇だ。覚悟はいいか、サシャナ?」
「勿論よ!ニールもいい?」
「当たり前だろ?オレはもう眠くてたまらないんだ。手っ取り早くやっつけてゆっくり昼寝といこうぜ?」
「やーね、ニールと一緒にしないでよ!」
「なんだ、昼寝はいやか?」
「あたしは昼寝より、ごちそう一杯食べたいな。」
「うん・・それもいいな。サシャナのおごりな。」
「なんでー?ニールのおごりに決まってるでしょ?」
冗談のように軽く言い交わしながら、2人は目の前に立ちはだかったバール本体を真剣な表情で見つめていた。


※壇上のバール(のホログラフィ?)の後ろでたいくつそうに立って時を待っていたのはゲーム上の事実です(w

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