『ニールとゆかいな仲間たち♪』
== ネクラ・・もとい!ネクロマンサー、ニールの徒然冒険記 ==

その19 意外な再会・モテモテニール?

 「ニールっ!・・・やっぱりあなたが助けに来てくれたのね!?」
「へ?」
フェティッシュと友好条約を結んだ(笑)後、調査はトントン拍子に運び、恐怖の魔王ディアブロの弟と言われるメフィストの潜む地下神殿へ続く扉を開けるアイテムも難なく集め、多少の苦労はあったが、どうにかメフィストを倒し、そして、地獄の宮殿で眠っていたディアブロも調子よく倒すことができたニールとサシャナを待っていたのは、それで終わりだ思っていた安堵感の粉砕だった。
そして、ディアブロ3兄弟の最後の一人バールを倒すため、またしても新しい地へ彼らは来ていた。

そこで、ようやく鑑定料をただにしてくれたケインに気を良くしたあと、魔物に占領されたという山岳地帯へと2人は足を踏み入れていた。
そして、そこで・・・・牢獄となった廃墟に囚われた戦士の救助に向かったニールを出迎えたのは、思いもかけない声と・・・・人物・・・。

「お、おい・・・・ま、まさか・・・エ、エリー?」
牢獄の鍵を開けると同時に首に巻き付かれ、呆気にとられたニールはそれでもその声に聞き覚えがあることから、思わず呟く。
「ニール・・・ニール・・今度こそダメかと思ってたの。私・・・」
少し落ち着き、ようやくニールの首から腕を放すと、エリーは感激の涙を瞳に溜めてじっと見つめる。
「今度こそって・・・いつこっちに来たんだ?ローグキャンプは?あいつらはどうなったんだ?」
「あ・・うん・・・・・アカラ様の提案でね、残った魔王のバールとの最終決戦だ!ということで、希望者を募ってここに来ることになったの。」
「なるほど。あのばーさんか・・・。」
「ニール組の彼らは鶏のコッコちゃんと共同して上手くやってるから心配ないわ。それに、ニールから見ればまだまだかもしれないけど、結構腕の立つ方なのよ、私。頼まれた方なんだから。」
「まー・・だろうな。」
ニールとの探索でエリーの腕は相当上がっているのは、ニールも認めていた。
「でも、捕まったんじゃない?!」
思ってもみなかったエリートの再会、しかも予想外の歓迎をうけ、すっかり頭の中から消え去っていたサシャナの事。その彼女の声にニールはぎくっとしてすぐ横にいた彼女を見る。
当然、不機嫌そうな顔をしている。
(やべぇ・・・かな?)
思わずニールの表情に焦りの色が浮かび上がる。
そしてそんなニールの顔を見ると共に、エリーもサシャナを見る。
「ニール?」
誰?この子?といった表情でエリーはニールに視線を移す。
「あ、いや・・・ちょっとした縁というか、きっかけでな、一緒に行動することになったというか・・・。ディアブロを倒した時も一緒だったんだ。ソーサレスのサシャナだ。」
そして、エリーからサシャナに視線を移す。
「話したことあるだろ?彼女がエリーだ。オレがローグキャンプにいた時と・・それからラットゴーレインでもしばらく一緒に探索していた。」
「ふ〜〜ん・・・ローグね・・・・。」
気に入らない、といった表情でサシャナはエリーをちらっと見る。
「あ・・・こんなところじゃいつ敵が来るか分からないわ。みんなもう街へ転移しちゃったみたいだから、私たちもそうしない?」
「あ、ああ、そうだな。」
「そうしたいんなら、ニールだけそうすれば?あたしは・・・まだ捕まってる人たちを救出するわっ!」
ぷいっと横を向くと同時にサシャナは来た道を走り始めていた。
「あ、おい、一人じゃ危険だぞ!・・・サシャナっ!」
悪い、先に街へ戻ってくれ、とニールは目でエリーに謝ると、慌ててサシャナを追っていった。

「・・・・・まだ子供みたいだけど・・・物好きもいたものね。」
そう呟きながらも、2人の後ろ姿を見ていたエリーの心をある気持ちが沸きあがってきていた。
(でも、以前よりニールってさっぱりして人間らしいというか(外見)・・・しかも魔王を倒した勇者なのよね・・・今や世界中の知る人ぞ知る・・・誰も以前のようにネクロマンサーだからといって卑下した目で見たり気持ち悪がったりなんてもうしない・・・)
まだはっきりとした自覚はないようだったが、エリーの心に彼女自身でさえ思ってもみなかった気持ちが生まれていた。それと共にサシャナに対する嫉妬のような気持ちも。
「・・ニールがあんな子供を相手にするなんてことないわよね。・・そうよ、ただ単に一緒にいるだけよ・・きっとあの子がつきまとってるだけで・・・・・」
エリーとサシャナでは10歳近く年の差があるように思えた。実年齢より小さく痩せているサシャナは、20台半ばのエリーと比べると完全に子供に見える。
女として引けはとってはいない、というか、まだ未熟のサシャナとでは、比べることはできないほど自分の方が女として勝っている、とふと思ったエリーは、そんな自分にぎくっとする。
(ちょっと待ってよ・・・ニールなんて私の趣味じゃなかったはずよ。あんなだらしないぐずでのろまな・・・・)
慌ててうち消す。
(でも、ディアブロも倒したのよね・・・・。のんべんだらりしてるみたいだけど、やることはきっちりと・・・・・・)
しかもそれは他の者では為し得なかった事なのである。だからこそ勇者と呼ばれるようになった。
(ああ〜、もうっ!・・・そうよっ!次は自分が餌にされるところを助け出されたものだから、気が動転しちゃってるのよ。それでニールが救世主に見えちゃったのよ。でなかったら、なんであんな奴のこと・・・・・)
自分に対する怒りを覚え、エリーは首をぶんぶん振ると、転移の門に足を踏み入れた。


「サシャナ・・おいっ、ちょっと待てって!そう一人で急ぐなって・・・・」
一方サシャナは、ニールが焦ったように追いかけてきていることを知っているからこそ、一層機嫌の悪そうな顔つきで、ずかずかと突き進んでいた。サシャナ得意のフローズンオーブを四方に飛ばしつつ。そして、その途中、抜け目なく捕虜を解放しつつ・・・。
「おい!サシャナ!」
「だって、ニール・・・何よ、首に巻き付かれて、でれ〜っとしちゃって!」
「いや、オレはまさかあそこでエリーに会うとは思わなかったから驚いてただけだぞ。」
「嘘っ!」
「嘘じゃないって・・・・はは〜〜ん・・・」
「な、なによ?」
自分を見てにやっと笑ったニールにサシャナはぎくっとする。
「ひょっとしてやきもち・・・か?」
「な、なんであたしが?」
サシャナはわざとらしい大声で聞き返す。
「でなかったら、なんなんだ?」
「う・・・・・」
変わらずにやついているニールをサシャナは軽く睨む。
「だって・・・・」
「だって、なんだ?」
「あ、あたし、エリーさんみたいに大人じゃないもん・・・・あんなにグラマーじゃ・・ないから・・・」
「サシャナ・・」
ふっと軽く笑ってニールはうなだれているサシャナの前に腰を折って座る。勿論周囲を警戒してアンデッドを召喚することも忘れてはいない。
「ニールみたいな大人の男の人から見れば・・あたしなんて子供の子供でしょ?」
「バカだな。」
ぽん!と軽くサシャナの頭をニールは叩いてから続けた。
「前にも言っただろ?人間なんて一皮むけば、というか死んでしまえば、誰も大した変わりはないんだ。多少骨格は違うが、グラマーかそうでないか、なんて、ちょっと肉が多くついているかそうでないか、だけだろ?」
「ニール・・・・」
それはネクロマンサー、しかも、同じアンデッドの中でも特にスケルトンが好きなニールの言いそうな言葉だった。
しばらく微笑んでいるニールを見つめていたサシャナだったが、不意に再びニールを睨むと叫んだ。
「ニールのバカっ!」
「おい!サシャナ?」
自分の言った言葉が、乙女にとって少しも慰めにもそしてフォローにもなっていないことにニールは気付かない。というより、よけい傷つけたなどとはニールは思いもしない。正直者のニールは思ったまま言っただけなのである。
「だから女なんて面倒だってんだ。」
ワケが分からないといった表情で、ニールはサシャナが街へと転移していったウェイポイントをため息と共にしばらく見つめていてから、街へ戻るべくその中央へ足を運んだ。

 

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