『ニールとゆかいな仲間たち♪』
== ネクラ・・もとい!ネクロマンサー、ニールの徒然冒険記 ==

その18 いざリベンジ!騎馬スケルトン!

 「ふっくんとたっくんともっくんを出してちょうだい!」
ようやく眠気もそして酔いも醒めたニールに、サシャナが命令する。
「だから、なんなんだよ、そのふっくんとたっくんともっくんって?」
いくら呑気でも、あんな場所で眠ってしまっていたことに気がひけていたニールが頭をぼりぼりかきながら、少し怒っているようなサシャナに聞く。
「だから、スケルトンよ!リベンジに行くんだから早くだしてっ!」
「へ?」
「もう!いいから、召喚してよ!きちんとふっくんとたっくんともっくんを出してよね?他の子じゃだめよ!」
「他の子じゃだめって・・・・」
「だって、この前森で仲良くなったんだもの、あたしたち。」
「あたしたちって・・・・・」
にこにこ顔で説明するサシャナに、ニールは大きくため息をつく。
「そういえば、この前、スケルトンたちとえらく盛り上がってたな。」
ニールは、2日ほど前、森での戦闘が終わった後、サシャナがスケルトンたちときゃーきゃーやっていたのを思い出していた。
「で、ふっくんとたっくんともっくんって?」
「だって、名前つけなきゃ、誰が誰だか分からないんだもん。」
「分からないって・・・・・」
「だから、早く3人を召喚して!」
「ちょ、ちょっと待てよ。街ん中じゃ召喚しちゃいけないって事くらい、サシャナだって知ってるだろ?」
「知ってるわよ。でも、転移の門を出れば、すぐサーペントの親玉が待ってるわ。それに、もしかしたら、フェティッシュたちも待ちかまえてるかもしれない。」
「まー、そりゃそうだな。」
サシャナの言うことももっともだと、ニールは顎に手をあてながら返事をする。
「だけどだなー・・・・」
たとえ味方といえど、街での召喚や魔法は御法度なのである。
「大丈夫よ。」
サシャナはわざと胸をはり、ニールに誇らしげに微笑む。
「大丈夫って?」
「ケイン長老に断ってきたもん。」
「『断ってきたもん』って行ってもだな・・・・じーさんは別に街の有力者じゃないんだし・・・。」
心配げに彼女を見ながら呟くニールに、サシャナは断言する。
「あら。でも最後の最後、たった一人生き残っているホラドリックの生き残りよ。みんな一目置いてるわ。オーマスだってフラトリだって、他のみんなだって。」
「んな偉そうなじーさんにゃ見えないんだが・・・。」
「見えなくてもそうなの。・・・確かに、よぼよぼのおじいさんにしか見えないけど」
ケインの風貌を思い出しながら、サシャナも思わず付け加えていた。
「とにかく、そうなんだから、召喚しても大丈夫よ。それにここは街外れなんだし、みんなが共用で使ってる門と違うもん。大丈夫よっ!」
確かに巻物を使って出した転移の門は、街外れに繋がっている。現にこうして2人がその門を目の前にしているところも、周囲には誰もいない。
「そ、そうなのか?」
「そう!だから、ねっ!早くぅ!」
「・・・しかし、うっくんとあっくんとおっくんって・・・・」
「違うわよっ!ふっくんとたっくんともっくん!」
「あ、ああ・・・・・」
少し頬を膨らませて訂正するサシャナに、ニールはすっかり負けていた。

そして、精神を集中して召喚する。
まず、一体。
「きゃ〜っ!さすがニールだわ!もっくん、久しぶり〜ぃ!」
「うがっ♪」
手を取り合ってオーバーに再会を喜んでいる2人にため息をつきながら、ニールは再び精神を集中して2体目を召喚する。
「え?・・・あたし、知らないわ、こんな人。」
「知らないわって・・・・」
ニールの目から見ると、同じスケルトンなのである。先に召喚したもっくんも今回の違うとサシャナが言ったスケルトンも。
「ごめんなさいね、今日は、あたし、ふっくんとたっくんにお願いしたいの。また今度会いましょうね。」
そのスケルトンににっこり笑いながら謝ると、サシャナは、ニールに視線を移す。
「じゃ、もう一回お願いね、ニール。今度こそふっくんかたっくんにしてね。」
「は〜〜〜・・・・・・」
呆れ返って再び大きくため息をつくニール。それでも仕方ないので、今召喚したスケルトンにお帰りを願って、別のスケルトンを召喚する。
「きゃ〜!今度こそふっくんよ!」
「わお!ニール、いい調子じゃない?たっくんだわっ!」
4人は手を取り合って喜んでいた。
「な、なんなんだよ、いったい・・・。」
ひたすらその展開に呆れ返るニール。
「じゃ、この間打ち合わせしたみたいによろしくねっ!」
「うがっ♪」
3体のスケルトンは、嬉しそうに陣形を作る。1体は前、そして2体がその後ろに回って腕を組む。
「オッケー♪」
そして、スケルトンたちが組んだ中央にサシャナがぴょんと飛び上がって座った。
「よーーーし!スケルトン戦車完成よっ!」
「スケルトン戦車って・・・・」
ニールは呆れる一方。
「なんなんだ、これは?」
「えっとね、ここへ来るまでに通ったところで『運動会』っていう名前のお祭りをしていたところがあってね。そこでこういう風に3人が組んだ上に一人が乗って、戦いあうっていう競技を見たの。あたし、機会があったらやってみたいって思ってたの。」
ぺろっと舌を出して嬉しそうに話すサシャナに、ニールは何でも勝手にやってくれの心境。
「命名!『騎馬スケルトン!』」
「命名って・・・・」
「いいでしょ?じゃ、行きましょ、ニール!」
「あ、ああ・・・・・」
ニールには、もう何も言う気力はなかった。

そして、転移の門を出ると同時に、サシャナのファイヤーが炸裂する。予想通り門の前に集まっていたフェティッシュの大方は、その火に大騒ぎとなって逃げ回り、サーペントがいるのも構わず、湖へ飛び込む。
「さっきのお返し!あたしたちを餌にしようとした報いよ!」
−シャーーーー!−
「ぎゃわわわわ・・・」
服についた火が消えると同時に、今度はサーペントの大きな口に追われ、彼らはバチャバチャと必至になって泳ぐ。
「あ・・・・・」
それを見ていたサシャナの表情が変わった。最初はざまーみろ、と思っていた彼女だったが、必至で岸へ泳ぎ着こうとするフェティッシュたちの姿が、かわいそうに思えてきた。
「ふっくん、たっくん、もっくん・・・攻撃目標変更!・・ターゲットは・・・サーペントの親玉〜〜!!」
「うごーーーー!」
3体が作っている騎馬の上にサシャナはすっくと立ち上がると、杖をサーペントに向けた。
だだだだっと彼らはサーペントに勢い良く直進していく。そして、サーペントが射程距離内に入ると、精神を集中していたサシャナは、思いっきり特大のファイヤーボールをサーペントに放つ。
「ぐぎゃ〜〜〜ぉぉぉ・・・・」
そして、ニールが召喚したメイジスケルトンと共に、サーペントを倒す。
「やっり〜〜っ!じゃ、後は出口まで、このまま直行よ!」
生き残ったフェティッシュがなんとか岸まで泳ぎついて一息しているのを確認すると、サシャナは、再び騎馬スケルトンの進行方向を出口へと向ける。
「ほらほら!道をふさぐものは何だって丸焦げにしちゃうからね!」
ごあっ!と1発、前方に向かってファイヤーボールを放ち、サシャナを乗せた騎馬スケルトンは、上への通路を突き進み始めた。
「ほら、どいて!どいて〜!」
サシャナの快進撃に、フェティッシュたちは逃げるしかなかった。


そして、順調に地上へと出たサシャナは、スケルトンのふっくん、たっくん、そしてもっくんの労をねぎっていた。
「ご苦労様。面白かったわ。またお願いね。」
「うがっ♪」
そして、彼らはニールの呪文により姿を消す。

「なんて奴だ・・・スケルトンをあそこまで使いこなすなんて・・。」
ニールは驚いていた。
「オレよりよほどネクロマンサーなのかもしれん。」
森の中、たき火を囲んでくつろぎ、騎馬スケルトンで走り回った洞窟内がどれほどスリルがあって面白かったかを話すサシャナの嬉しそうな顔を見つつ、ニールは苦笑いをしていた。
狭く入り組んだ洞窟。時には天井が低い場合もある。全速力で走る騎馬スケルトンの上で、そういった事を判断しながら指令を出すスリルと満足感。何度となく天井に頭をぶつけそうにもなった。そのおもしろかった事を本当に楽しそうに話すサシャナに、ニールはふとその思いついた事を口にした。
「なー、魔術師よりネクロマンサーの方があってるかもしれないぞ?どうだ?教えてやるから覚えてみちゃ?」
が、ニールのその提案は軽く笑い飛ばされた。
「ダメよ、あたしの魔法力じゃ、ニールのようになるまでなかなかよ。それより、ニールに召喚してもらったアンデッドと友達になった方がいいわ。とってもよく言うこと聞いてくれるし。」
「・・・・・・」
サシャナのちゃっかりさには、完敗だった。

そして、結果的にサシャナが助けたことになったフェティッシュたちの仲間への提案と証言により、彼らとニール、サシャナの間には、友好条約が整った。その証として、彼らが大昔から祭壇に祭っていたもの、ニールのこの地での探索目標の一つである『カリムの脳』を譲り受けることとなった。
加えて、倒したサーペントを燻製にすることと引き替えに、他の部分の情報を彼らから引き出す。数年分の食料となりうるサーペントの燻製に、彼らは心から喜んび、そして、ニールとサシャナもその結果に大満足だった。

「うう〜〜ん・・・冒険って・・楽しい〜ぃ!!」
サーペントの肉をほおばりつつ、フェティッシュの秘造酒でのどを潤して上機嫌のサシャナにニールは呆気にとられながらも、やはり酒を口に運んでいた。

その夜、森の奥深くにあるフェティッシュ村では、篝火を囲んで遅くまでにぎやかに宴会が続いていた。

 

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