『ニールとゆかいな仲間たち♪』
== ネクラ・・もとい!ネクロマンサー、ニールの徒然冒険記 ==

その17 本邦初公開!ネクロな酔拳(謎

 「わやわや、かやかや、・・・・・」
小人族フェティッシュの地下神殿。そこに今ニールとサシャナはいた。・・・しかもサシャナが提案したビッグシャーマン姿で。
「通用するはずないって言ったのはどこのどなたでしたっけ?」
「そう思ったから言ったまでだ。まさか・・・こいつらが本当にビッグシャーマン扱いしてくれるとは・・・。」
そう、そんなことは、思ってもみなかったのである。ともかく、前からサシャナが言っていた事、フェティッシュのシャーマンを倒したら、そのお面をかぶったサシャナをニールが肩車し、マントをはおって、ビッグシャーマンを名乗る。それを実行してみただけである。まさか彼らが信じるとは思わずおもしろ半分、ばれて元々と、軽い気持ちでやったのだが・・・・名乗る前に、彼らはサシャナとニールのシャーマンの前に跪き、あれよあれよという間に、森の奥にある彼らの地下神殿へと連れていったのである。

台座に座らされ、その前には次々と食べ物が運ばれてくる。そして、ニールとサシャナは二人羽織(笑。

「あん!違うったらニール!そこは鼻なんだから・・・・口はもうちょっと下よ!まったく鈍いんだから〜・・・。」
「そんなこと言われてもだなー・・・。それにオレだって腹はへってるんだし・・・酒だって呑みたいんだぞ?」
「そうよねー・・なんてったって、フェティッシュの秘造酒だもん。こくと甘みがあっておいしいわよ〜♪」
「おい!子供があんまり呑むんじゃないぞ?」
「あら、失礼ね!外見より私、大人よ?!」
「大人ってったって16か17か・・・そのくらいだろ?」
「えへへ・・・・」
「それのどこが大人だってんだよ。だいいち成長期にアルコールなんざ、あまり呑まない方がいいんだぞ?」
「え?そうなの?」
「らしいぞ?どこかの国じゃ、20歳まで禁酒なんて法律があるらしい。」
「へ〜・・・それは知らなかったわ。よかった、その国でなくって。」
「おい!?・・・ま、いいか・・・だから、オレにも呑ませろ。」
「仕方ないわね、じゃー、マントの裾から。」

ばれたらどうなるか分からないというのに、呑気な会話をしながら、二人はごちそうと酒を楽しんでいた。勿論小声で。


そしてサシャナも、ニールもほどよく酔いが回った頃・・・・

「ぽしょぽしょ・・・・・わいわい、かやかや・・」
フェティッシュたちがにまっと笑った。

「え?・・・な、何?なんなの?」
「ん?・・ど、どうしたんだ?」

気づくと二人は台座ごと大勢のフェティッシュによって移動していた。
そして、二人の目の前に見えてきたのは・・・・洞窟の奥深いところのにある地底湖と、そして、真っ赤な瞳に真っ赤な口と舌、そして、鋭い牙のサーペント。それは、それまでに森の中の泉でみかけたものより倍ほどの大きさと太さの、見るから強そうなモンスター。
「おい・・・ひょっとして、オレたちって騙してるつもりが、騙されてたってこと・・・・か?」
「み、みたいね。」
さすがのサシャナも焦る。
「早くなんとかしてよ、ニール!」
サシャナの魔法力は、フェティッシュの前でビッグシャーマンとしてのパフォーマンスで使い切ってしまっていた。そう、言わずとしれたファイアー魔法での力の誇示。
「そんなこと言われたって・・・」
その間にもわいわいかやかやと、二人が乗った台座はフェティッシュたちによって進んでいく。

「は、早く、ふっくんとたっくんともっくんを!」
「は?なんだそりゃ?」
「いいから!スケルトン召喚してよ!この体勢でもできるんでしょ?」
「そ、そりゃまー・・・・・だけど、ふっくんとたっくんともっくんって何だ?」
「いいから、早くっ!」
訳の分からなかったニールだが、それでも召喚を試みる。

が・・・・・
酔いが回ってるニールの注意力は定まらず、なかなかお目当てのスケルトンが出てこない。
そうこうしているうちに、そのサーペントの目の前に台座を置くと、フェティッシュたちは大急ぎで来た道を戻っていく。もちろん、そこへ行く途中にあった柵は、しっかりと鍵をかけて。そして、その柵の向こうに数人のシャーマンが揃って祈りをあげている。

「結局オレたちは生け贄ってわけか・・・・」
「なに、呑気な事言ってるのよ、ニール!?あ、あたし、イヤよ、こんなところで食べられちゃうなんて。」
酔いも一気に醒め、べそをかき始めたサシャナの頭をぽんぽん!と軽くたたくと、ニールは落ち着いて指図した。
「サシャナは向こうの岩陰に隠れてな。いいもの見せてやるから。」
サシャナと異なり、まだ酔いが醒めたわけではなかったニールは、足取りも定まっていなかった。台座からもなんとか下りた感じだったが、ともかくサシャナは、ニールのその言葉に従った。

「よ〜し、いっちょ見せてやろうじゃないか?本邦初公開、ネクロマンサー・ニール様の酔拳!」
すっと両腕を横に広げ、片足をあげて、ふらつきながらもニールは一応形をとる。
そして、腕を前に回してくいっと手首を曲げる。
「ニールそれって鶴の構えなんじゃ?」
「へ?・・・違ってたか?・・・・いいんだよ、鶴でも虎でも熊でも・・酔っていれば、ぜ〜〜んぶ酔拳!」
「ニ、ニール・・・・」
そんな本当にその腕があるかどうか分からない酔拳より、早くメイジスケルトンでも召喚してくれないか、とサシャナは思いながら、身を隠していた。

−ザシュッ!・・ひょい!−
−ひょいっ!・・ズサッ!−
それでも、なんとかサーペントの攻撃は上手く避けていた。結構酔っぱらいの意味不明且つ予想がつかない動きは、敵をまどわせるらしい。
大きく口を開けて襲ってくるサーペントをニールはふらふらの足取りでぎりぎりといったところで避けていた。
そして、間髪入れず拳をお見舞いするのだが・・・酔っぱらいの拳は・・・ぜんぜん効いていなかった。

「ニ、ニール・・・」
サシャナは気が気ではない。
「ニールが食べられちゃったら、あたし一人でどうしようっていうのよ!?遊んでないでよ、ニール!」
湖から出ることはないサーペントは、精一杯その首を、全身を伸ばしてもサシャナのいる岩陰までは届かない。が・・・そこから出るために来た道を戻れば、そこにはシャーマンを含めたフェティッシュが待ちかまえている。その数は、サシャナ一人には到底負えそうもない。

「そうだな・・・・」
サシャナのその叫びに、ニールはもっともだと思う。
「じゃー、帰ろっか?」
「え?」
「酔いが醒めたらリベンジということで。」
「え?」

サーペントの攻撃を避け、何を言ってるのか、と唖然として見つめるサシャナの横へ来ると、ニールは懐から巻物を出し、呪文と共に巻物を空中に投げた。
−ブン!−
「な・・・な・・・・・・・・・」
呆れて言葉のでないサシャナ。それもそうである、ニールが出したのは、転移の門。それをくぐれば、その先は町。
「ニ、ニールっ?!」
そんなものがあるのなら、なぜもっと早く出さなかったのか!ときつくニールを睨むサシャナに、未だほろ酔い加減でいい気持ちのニールは、自慢げにウインクする。
「とっておきの秘密兵器は、最後の最後までとっておくもんさ♪」
「ど、どこが秘密兵器なのよ、ニール?!」
「まーまー、そう固いこと言わないで。ねっ、サーちゃん♪」
「サーちゃんって・・・え?ニ、ニール?」
ぽん!とサシャナの肩をたたくと同時に、ニールはそのままサシャナに寄りかかってくる。
「ち、ちょっと・・・ニール?」
長身のニールは痩せてはいても、やはりサシャナには重かった。その重くのしかかってきたニールに、彼女は焦る。
「ぐご〜〜〜・・・・・」
「もう!・・・・どうせなら門をくぐってから寝てくれればいいのに!」
そう、サーペントとの戦闘(?)による動きにより、酔いが一層回ってしまったニールは、眠気に耐えきれず、そこがどこかもかまわず寝てしまったのである。

「うんしょ・・・う〜〜〜〜んしょ・・・う〜〜・・・・んこらしょっと・・・・。」
いくら叩いても起きそうもなかった。いつまでものんびりとそこにいれば、しびれを切らしたフェティッシュが再び集団で襲ってこないとも限らない。
サシャナは前面の敵サーペントと背後の敵フェティッシュの動きに注意を払いつつ、ない力を振り絞ってニールをずるずると引っ張っりながら転移の門をくぐって行った。

 

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