『ニールとゆかいな仲間たち♪』
== ネクラ・・もとい!ネクロマンサー、ニールの徒然冒険記 ==

その14 雨あられ時々雷、そして春? 前編

 「な、なんだ・・なんなんだよ、こいつらは?」
ニールはラット・ゴーレインでの仕事を全部終え、ディアブロの次の目的地であると思われる場所に近いクラスト・ドッグタウンに来ていた。
そこから数キロ森へ入ったところで、小人族に囲まれ目を丸くしていた。

わやわや、わらわら、ざわざわ、かやかや・・・とあちこちから出てきて吹き矢で攻撃してくる彼ら。
最初こそ、なんだ小人か、と思ってバカにしていたニールだったが、その数の多さにうんざりしてきていた。
加えてトーテムポールのようなお面をかぶった彼らのシャーマン。いきなり口から火を吐いてくる。
「ちょっと待てよ、いきなりそれはないだろ?やけどしちまうじゃないか?!」
思わずぐいっとお面についているぼさぼさの毛をひっぱると、お面はするっと取れ中から小人が3人。
「な、なんだ、3人で肩車してたのか?」
あきれ果て、倒すことも忘れて見つめるニール。が、その間も周囲から吹き矢攻撃は続いている。
「ああ〜〜!もう、うっせ〜〜んだよっ!」
次々とスケルトンを召還して彼らを倒させる。

「ったく・・・・穴の中に入りゃ、巨大蜘蛛ばかりだし・・・・森の奥にある遺跡を探索してりゃ、いきなり雷の嵐が降ってきやがるし・・・・なんなんだよ、ここは?え?」
街へ戻ったニールは酒場で一人ぶつくさ文句を言っていた。
「おまけに目と心臓と脳味噌を見つけろだと?・・・いくらネクロマンサーのオレでもいい気持ちはしないぜ?死体愛好家じゃーねーんだからな。あ〜あ、暗闇の砂漠はよかったよなー。ここはいつもどんより雲ってやがって、小雨が多いと来たもんだ。矢の雨よりはいいが・・・どうも辛気くさくていけねーや。ん?ネクロマンサーに言われたくない、だと?オレのどこが辛気くさいんだよ?・・・まーいいや、一般的にはそう思われてるらしいからな。ん〜・・・エリーがいないのはいいんだが・・こう雨が続いてると気分的に滅入るからな。・・仕方ないから地下でも潜って黒魔術の書でも探してくるか。」

エリーは虫の恐怖に耐えきれず、この地へ来る前、とっくの昔にキャンプ地へ帰っていた。
そして、仲介者というか、ニールの尻を叩く人物がいなくなってしまった事を懸念したケインは鑑定料を200Gから100Gに下げ(ゲーム上の事実です/^^;)、ニールにここでの仕事を依頼した。
「なんだ、なんだ?・・半額にしたって言ってもそれでようやく普通の奴らと一緒だろ?」
勿論依頼の内容と共に、その金額に満足などしない。
「依頼の話の説明に半日もかけやがって・・まるでお説教じゃーねーか、あれじゃ?」

そして、その探そうと思った書物は、初めてネクロマンサーであるニールを大歓迎してくれた人物、アルコーから依頼されたものだった。ネクロマンサーが好きだなんてろくな奴じゃないな、と思いながらニールは引き受けた。事実、アルコーは変わり者で通っている。

「ふん!見つけてもオレには読めないとかなんとか言いやがって・・・おーし!何が何でも見つけて読んでやろうじゃないか?」
小人族のいない地下、ニールは余裕で暴れまくっていた。(実際に暴れまくっていたのはスケルトンとゴーレム。)
外のどんよりは好きじゃないが、地下の暗さとじめじめ感はいい、というニールの不思議な感覚はどこから来ているのだろうか。ともかく快進撃を続けるニールは、黒魔術の書を手に入れる。

「なんだ、こりゃ?・・・・こんな字あったっけか?」
術の研究のために怪しげな書物は結構読んだ。が、それはそれまで見たこともないような書体で書かれていた。
「しかたない、持っていってやるか。」
脱帽するようであまり気は進まなかったがとにかくアルコーへ渡す。
「おおーーー!こ、これじゃ!これじゃ!」
目を細め、アルコーは、後で特別のお礼をするからといって、書物をさすりながら奥へと入っていた。
「オレよりよほどネクロマンサーなのかもしれんな。でも、ああはなりたくないな。」
ふとニールはそんなことを思っていた。


一仕事、つまり、一探索終えたあと、本当なら酒場で一杯やりたかったが・・・・ケインがうるさい。彼の目の届かないところといえば、魔物の潜む森。ということで、ニールは森で昼寝をすることにした。そう、エリーが召喚(笑)されなければ、誰も邪魔しないはずである。勿論、そのエリアの魔物は倒し、ニールが召喚した魔物に周囲を見張らせてである。


「きゃああああーーー!」
と、突如森に響き渡る女性の悲鳴。
「ん?・・・エリーの声・・・じゃーないな。じゃー、急ぐか。」
木陰で昼寝をしていたニールは、エリーのものではないことを確信するとがばっと起きあがり、声のした方向へと走った。
『なによ、それ?』
そんなことを考えながら走り始めたニールの頭に、エリーのきつい口調が響く。
(だーーー・・・・、な、なんだよ?本人がいなくっても聞こえるのか?・・・幻聴もここまでくりゃ本物ってか?・・・・すっかり毒されてしまったっていうか・・・・)
走りながらもニールはうんざりした表情で考え続ける。
(間違ってもあいつに惚れてることはないはずだ・・・・。)
ニールは自分に確認する。
(惚れてるというより、恐怖感だな・・・あの喧噪さには、負けるぜ。)
「っとと・・・・」
そんなことを考えているうちに、目の前に巨大蜘蛛に周囲を囲まれた少女の姿が視野に入ってきた。
「なんだ、まだガキじゃないか?」
そう思いながらニールは素早くファイヤーメイジとファイヤーゴーレムを召還する。
「火には弱いからな、あいつら。」

−ギギギ・・キキ・・グギギ・・・・−
彼らの放つ炎にまかれ、巨大蜘蛛は逃げながらその途中で燃えていった。
「あ、ありがとうございます。」
「大丈夫か?お嬢さん?」
「は、はい。」
腰を抜かせてその場に座り込んでいたその少女は、ニールの差し出した手を取ってゆっくりと立ち上がった。
「ごめんなさい、私、どうもああいうの苦手で。」
「まーな。オレでもあまり気持ちいいとは思わないからな。」
「ネクロマンサーでもそうなんですか?」
「ネクロマンサーと言っても人間だからな。」
「あ・・・ご、ごめんなさい!」
色目で見てしまったことを恥じ、少女は勢いよく頭を下げて謝った。
「まー、いいってことさ。で・・あんた・・・ひょっとして魔術師?」
「あ、ええ、そうです。サシャナと言います。」
「サシャナか。オレはニールってんだ。で、なんでまたこんな森の奥深くにいるんだ?」
「なんでって、当たり前でしょ?魔物退治よ!それからやっぱりディアブロが最終目的よね。」
「『よね』って・・・」
ニールは呆れてサシャナを見下ろしていた。
そう、2m近い身長のニールから見れば、150cmほどのサシャナは、まさに見下ろすという感じである。そして、当然のごとく、彼女からしてみれば、ニールと話すには首が痛くなるほど見上げなければならない。
服装と顔に施された術師独特の化粧から魔術師だとは判断できたが、魔物相手に戦えるとは到底思えそうもないほど、細く小さく、かよわげな少女にみえた。
「あ・・、い、今はね、ちょっと油断してて囲まれちゃっただけなのよ!私、こうみえても一人前の魔術師なんだから!」
自分の言った言葉を信じられないような、そして小馬鹿にしたような視線を投げかけてきたニールに、サシャナは勢いよく抗議する。
「そっか、そっか。」
が、当然のごとく、ニールにはそんなものどうってことはない。エリーの罵声に比べたら子守歌のようなものだ。
「信用してないのね!」
ぽんぽん!とそっと軽く叩いたニールに、サシャナは激怒する。
「し、失礼ね!子ども扱いしないでちょうだい!」
「あ・・・悪い・・。」
ちょっとまずったかな?とさすがのニールも感じ、苦笑いをする。が、どうみても子どもに・・・みえる。
「い、いくら私がチビで童顔で、やせてて・・・・成熟不良の未発達児でも・・・・・・・」
「へ?」
オレはそこまで言ってないぞ、とニールは思わず心の中で呟いていた。
「魔術学校だって、この春きちんと卒業して、きちんと免許皆伝なんだからっ!村のみんなからもきちんと見送ってもらったんだから・・・きちんと・・・・」
「お、おいおい・・・・」
最後は涙声になってしまったサシャナに、ニールは焦る。
(まいったな。エリーの自分勝手な怒りの豪雨にも散々まいったが・・こういうのは、もっと苦手なんだよな、オレ。)
「わかった、わかった。『きちんと』一人前だってことは、認めるから、少し落ち着け、な。」
ブン!と転移の門を出して、ニールは一旦街へ帰るぞ、とサシャナに視線を送る。
「・・・・・」
そのニールを唇を噛んで暫く睨むように見つめていたサシャナは、ぎゅっと両の拳を握りしめると、不意にくるっと向きを変え森の奥へと走り始めた。
「あ!おい!一人じゃ無理だって!」
慌ててニールは彼女を後を追った。

 

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