『ニールとゆかいな仲間たち♪』
== ネクラ・・もとい!ネクロマンサー、ニールの徒然冒険記 ==

その11 世論は強し!

 

 

 「ニールっ!」
気持ちよく木陰で昼寝をしていたニールに突如として雷鳴のごとくきつい口調が突き刺さる。
「な・・なんだ、なんだ・・・だれかと思ったら・・・エリーじゃないか?」
その声に驚いて飛び起きたニールは、声の主を見て、再び驚く。
そんなニールをエリーは腕組みをして、鬼のごとくの形相で睨んでいる。
「エ、エリー・・?どうしたんだ?ローグ・キャンプは?」
怒りで言葉も忘れたのか?、何をそう怒ってるんだろう?と思いながら、ニールは恐る恐る口を開く。
「どうもこうもないわよ!」
「なにが?」
わけがわからないニールは、きょとんとした顔で聞く。
「『なにが?』って・・・あ、あなたねー、昼寝ばかりしていてちっても元に戻してくれないって・・・・・キャンプ地まで依頼が来たのよ!」
「依頼?」
「そうよ!闇を払い、明るさを、太陽を取り戻してほしいって・・・・ケイン長老から。」
「へ?・・・で、なんでエリー、お前が?」
すっとぼけたような顔で、依然自分を見つめているニールの胸ぐらをぐいっと掴んで、エリーは叫んだ。
「あたしがついてないから、あなたが動かないんだって!」
「は〜ぁ?・・・なんだそりゃ?」
「聞きたいのはあたしの方よっ!」
掴んだ手をぱっと離し、エリーは両手をぐっと握りしめながら吐いた。
「どうしてこう・・・いつまでもあんたの尻拭いをしなくちゃならないのよっ!こ、これを・・・これを腐れ縁と言わずして、なんと言うのっ?!」
「エ、エリー?」
まだ事情が完全に理解できていないニールは、その勢いに押されてすっかり萎縮していた。(エリーの怒りの前にはいつものことだとも言えるが)
そんな煮え切らないニールを今一度にらみ返すと、エリーは立て続けに怒鳴る。
「いいこと?世界が滅亡するかどうか・・・人類がこの世から消滅するかどうかの瀬戸際なのよ!みんなあなたに期待してるのよ!こんなとこで呑気に昼寝してる場合じゃないのよ!分かってるの?」
「・・・あ、・・ああ・・・・」
怒濤のような罵声のようなエリーの言葉に、ついうっかり曖昧な返事をしてしまったのがますますもって悪かった。激怒の輪は2重3重と増えていった。
「『ああ』って・・・ニール、あなた・・・・わかっててこんなことしてたの?」
「・・・じ、じゃー、どう言やいいんだ?」
すでにリミットブレーク。まだ木に持たれ座っていたニールの腕をがしっと掴むとぐいっと引き起こす。
「ああ〜〜・・もう〜〜!煮え切らないんだからっ!だからネクラマンサーなんて嫌いなのよっ!大っ嫌いよっ!」
「ネクラじゃなくてネクロマンサーだぞ。」
ついうっかり訂正してしまったニールは、エリーの頂点とも言えるその怒りの表情の中に悲しげなそれを見つけ、言ってしまった言葉を後悔する。
「あ、あたしは、いつになったら自分の人生を取り戻せるの?・・あたしの人生を返してよ!いい加減にあたしを解放してちょうだいっ!」
怒濤の怒りの次は、万感の悲壮感を漂わせて思いっきり嘆くエリー。
「・・・・・・」
そんなエリーに、いくらひょうひょうとして呑気なニールでもどこ吹く風といくわけにはいかなかった。
断片的だが、エリーの話の内容から、今の状況の早期解決を願うあまり、町中こぞってエリーにニールの尻を叩くのを頼んだらしいということを。
それは、とりもなおさず、この町の人間やキャンプ地にいる者たちが、ニールとエリーの間柄をどうとらえているかを表している。エリーが怒るのは当然である。
しかし、ニールが口を開けば開くほど、今の2人の状況は悪化するばかりであることは確か。ニールはとにかく刺激しないように静かにしていることにした。
「とにかく、蛇退治に行くわよっ!」
そう言い捨てて、さっさと先を行くエリーの後をニールは静かについていった。

 「で、あいつらは?」
黙々と足早にロストシティーに向かう2人。その途中、少しは落ち着いたと判断したニールは、エリーにそっと聞いてみる。
「あいつら・・・ああ、ニール組の連中ね。」
怒ることにも疲れたのか、エリーは、それでも苦々しげに答えた。その目線は前方を向いたまま。ニールの顔を見ると、またしても罵声を浴びせてしまいそうだったからである。
「あいつらは・・・キャンプ地のコッコちゃんに任せてきたわ。」
「は?・・・な、なんだその、『コッコちゃん』って?」
そんな名前のモンスターがいたかな?と首をかしげながらニールは呟く。
「『コッコちゃん』よ。キャンプ地であたしたちが飼っていた鶏。」
「鶏ぃ〜?」
意外な事を聞いて、目を丸くして驚くニール。
そんなニールをちらっと見てエリーは、遠い目をしつつ話し始めた。勿論足はロストシティーへ向いたまま。
「あんたが去った後、あたしには、普通の生活は残ってなかった。魔物と人間の仲介・・・そりゃー彼らが悪人(?)じゃないことはあたしでもよくわかってる。だから、誤解を生じさせないように誰かがパイプの役目を担わなきゃならないということもわかってるわ。だからあたしは・・・・。」
エリーはふ〜っと大きくため息をつく。
「みんなから一目置かれてるっていうか・・・よく言えばそうだけど、悪く言えば・・・仲間はずれよね。」
「そんなことは・・・・」
思わずニールは訂正する。
「ええ・・そう、わかってるのよ。あたしだってわかってる・・・そんな人たちじゃないわ。ローグは特に仲間意識が強いの。だから・・・ああ、わかってるんだけど・・・・・・でも、でも・・・・・・」
「エリー・・・」
無意識に立ち止まると、ふと視野に入った岩にエリーは身をもたれかける。
そして、自分を見つめているニールに自嘲のような笑みをみせて続けた。
「そんなことはない、と思っていても、時にはそう感じてしまうこともあるのよ。考えすぎなんだろうとは思うけど・・・で、そんなとき、よくキャンプ地の片隅でぼんやりしてて・・・ふふっ」
「な、なんだよ?」
急に吹き出したエリーにニールは驚く。
「うん。コッコちゃん・・つまり1匹の鶏がね、まるであたしを力づけてでもいるように近づいてきてね、あたしの周りをぐるぐる回ったの。コッコッコ、コケッ、とか鳴きながら。」
「あ、ああ・・・・」
ニールには話がみえなかった。
「で、そのうちあたしは鶏に、ぐち・・かな?いろいろ話しかけるようになったの。」
「ああ・・・」
大丈夫なのか、こいつ?とついニールの頭をそんな考えが走る。
「でね、そのうちキャンプ地の外へもついてくるようになったの。」
「鶏が・・・か?」
「そうよ。」
わけわからんぞ、と言いたい顔のニールに、エリーは少し笑った。
「すごいのよ、コッコちゃん。魔物の攻撃なんてものともしないのよ。あれにはあたしも驚いたわ。でもってあのするどいくちばしと爪でやっつけちゃうのよ。もう最強!!」
「そ、そうなのか?」
ようやく話も見え、内容がわかったが、その信じられない話に、依然としてニールの表情は嘘だろ〜?と語っている。
「そう。ボディーガードにお薦めよ!」
「で?あいつらとは?」
「いつの間にか他の鶏たちもコッコちゃんを見習ってね、羊と洋犬の関係と言ったらいいのかしら?上手く彼らを誘導したりするのよ。」
「ゆ、誘導?」
「そう。お互いに意思も結構通じてるみたいよ。」
「・・・・・・鶏と・・・モンスターが・・か?」
開いた口がふさがらない、ニールはその状態だった。
「食べられそうになると、彼らのところへ逃げて行くし。」
「逃げて・・・・」
「そう。だから今やキャンプ地の鶏は、食用じゃなく立派なキャンプ地の一員というか、人権・・じゃないわね、鳥権を認められた異種族の仲間といったところね。ニール組の彼らと同様。」
「・・・はぁ・・・・」
全くの予想外、奇想天外なその展開にニールはただただ驚いていた。
「だから、大丈夫なのよ。彼らもコッコちゃんたちの言うことはよく聞くし。」
「あ!だけど、反対にあいつらを扇動して人間を襲うとか・・は?」
「ああ、今まで仲間が餌にされてきたから?大丈夫そんなことはないみたいよ。コッコちゃんが言ってたわ。自分たちは、平和主義だから、人間のようなことはしないって。」
「人間のようなこと?」
「そう、つまり仇討ちだとかリベンジだとか、そういう事はしないって。」
「ふ〜〜ん・・・・・」
信じられないような話だった。しかしどうやら嘘ではないらしいことも、エリーの目を見ればわかる。気が違ったわけでもないらしいし。
「で、お前もコッコちゃんと意思が通じるのか?」
「う〜〜ん・・つまり、コッコちゃんが私の話を理解してくれるのよ。私はコッコちゃんの態度で、わかってくれたかどうか判断するだけ。」
「な、なんか、すごいな、人間語を理解する鶏って・・・どこかの子豚みたいな奴だな。」
「子豚って?」
「あ・・いや、なに、こっちの話だ。で、モンスター共は大丈夫だから、なかなか動かないオレをどうにかしてほしいと、お前に白羽の矢がたったってこと・・・」
ついうっかり話を元に戻してしまったことに気付き、焦るニール。
・・・か?」
が、時既におそし。エリーの顔には再び怒りが燃え上がってきていた。岩にもたれさせていた身体を起こしてニールを睨む。
「そうよ!ようやくあたしにも普通の生活が戻って来始めてたのに・・・だいたい、あなたがだらしないからいけないのよ!なんであたしが説得なのよ?なんであたしなのよ?!」
「す、すまん・・・」
勢いに押され思わず謝るニール。
「し、しかしだな〜〜・・」
「なによ?」
「何もオレばっかあてにせずとも、町には冒険者の類はごろごろいるんだぜ?」
「・・・確かにね。だけどここまで来れた冒険者はあなただけみたいよ。」
「そうなのか?」
「それに暗くなった原因を作ったのも、あなたでしょ?」
「う”・・・・・・」
思わずぎくっとする。
「しかしだな〜〜・・・」
「しかしもかかしもないわよっ!ほら、さっさと片付けて明かりを取り戻すのよ!」
気がつけば、ロストシティーの入口はすぐ近く。
「お、おい、エリー・・・」
その入口を指さして、さっさと行って片付けてこい!と言わんばかりのエリー。
「オレ一人で・・か?お前は?」
「何言ってるのよ?これ以上あたしが協力すれば、それこそずっと一緒にいることになるでしょ?」
「そ、そうなのか?」
「そうよ!ここでの事件を解決すれば腕を認められるわ。それはいいけど、あなたと一緒の条件がつく。最強の勇者パーティーとかなんとか・・おひれがついてね・・・そんなのまっぴらよ!それにあなたには強い味方はいくらでもいるでしょ?」
「ま、まーな・・・」
召還すればいくらでも仲間は増えるんだから、とエリーの鋭い目は語っていた。
「じゃ、そういうことで。」
ブン!と転移の輪を出して町に帰ろうとするエリーにニールは申し訳なさそうに小声で言った。
「別にオレはお前が帰っても帰らなくてもどっちでもいいんだが、これで解決すりゃ、多分・・・同じ事なんだろうな。」
「え?どういうこと?」
光の輪の中に入ろうとしたエリーが振り向きざまに聞く。
「やる気の無かったオレをその気にしたってことだけで、もう十分その価値はあるとみるさ。」
「あ・・・」
ようやく普段の表情を取り戻しつつあったエリーのそれが、青くなる。
「で、オレは女房に尻をひっぱたかれなきゃ、なんにもしないぐ〜たら亭主ってとこか?」
「な、なによ、それ?」
そして、ニールのその言葉で、真っ青から赤くなるエリー。勿論、それが恥じらいではなく怒りからだということは確かである。
「いつあたしがあんたの・・・じゃないっ!、どうすればそんな考えになるのよ?!」
「それが世間ってもんさ。よくても(どういいんだ?)ユニット・・か?まー、尻に敷かれた男ってのは免れないだろうな。」
「ニ・・・ニ〜〜ル〜〜〜〜〜!!!」
にやっと、自嘲的にもエリーに対しての嘲笑とも思える笑みを投げかけてから、ニールは爆発直前のエリーに後ろ姿を見せると左手を上げて別れを告げる。
「まー、無事で帰る事でも祈っててくれ。」
「だ、・・・だれが祈るもんですかっ!あ、あんたなんて、ニールなんて死んじゃえばいいのよ〜〜っ!」
わなわなと震える両の拳を血がにじみではないかと思われるほど握りしめ、力一杯罵声を浴びせると、エリーは町へ戻ることも忘れニールの小さくなっていく後ろ姿を睨み続けていた。

「・・・なんでこうなるのよ?!・・・あたしの人生返せ〜〜〜っ!!!」

ちょうどその時その傍をデザートキャットの一団が通りかかる。戦闘好きで攻撃好き。エリーの姿に、獲物が見つかったと喜んだが、その尋常ならざる怒りに恐れをなし、彼らは抜き足差し足でそっと通り過ぎていった。

 

●コッコちゃん一口メモ(笑

 
鶏、最強!というのは、ゲーム上の事実です。(笑
 *提供者SYKES(笑
    (いつも忘れた頃(?)影のごとくBBSに話題として登る(勝手に引用する)人物)

 キャンプ地の外までお散歩できるし、モンスターの攻撃もものともしない。
 (事実は攻撃されない)
 こちらの攻撃もものともしない。(燃やしても凍らせても)
 ただし、くちばしと爪で攻撃する事と人間語を理解するというのは、創作です・・・/^-^;
 コッコちゃん軍団で周りを固めてディアブロに対抗しなくちゃ!!(爆

  ということで、今回はこれにてお開き・・
 仕事がなかったので
(おいおい)3時間かけて、久しぶりに書いたニール君のお話でした。(爆死

  続きはまた仕事がない日にでも・・・・って、おお〜い!
    ・・・おちゃ〜〜〜!!(謎爆

 

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