『ニールとゆかいな仲間たち♪』
== ネクラ・・もとい!ネクロマンサー、ニールの徒然冒険記 ==

その9 旅立ち・・・次なる土地へ!

 『アンダリエル倒れる!』
その訃報が1年ニール組の洞窟内に響くと同時に魔物たちの間には動揺が広がっていった。

「おい、ついに親分があのばばーを倒したっていうじゃねーか。さすがだよなー、うちの親分!」
「親分じゃなくて委員長!何度言ったらわかるんだ?」
「まーいいじゃねーか、そんな固いこと!」
「だけどよー、なんかこう胸のつかえがおりたというか・・」
「「お?おめーさんもそうなのかい?」
「そうともさ!」
「だよなー。あのくそばばあ、おれ達をあごで散々こき使いやがって。」
「そうだ!そうだ!」
「だけと、そうすっと親分はディアブロを追って東へ行っちまうのか?」
「あ・・・・そ、そうだった!それがあったんだ!」
わいわいがやがやと浮かれていた一同の顔色がさっと変わる。
「お、親分・・いなくなっちまうのか?」
「オレたちを置いて・・・・?」
−し〜〜ん・・・・・・−
しばらく全員無言で立ち尽くす。誰しも下を向きうなだれている。
「だ、だけどよ、まだエリーの姐御がいるじゃねーか?親分は魔王を追っかけなきゃならなくても、エリーのあねさんは・・・・」
「そ、そうだ!そうだ!エリーのあねさんがいる!」
はっと目を輝かせお互いを見詰め合う魔物たち。
「だけど、エリーのあねさん、親分について行きゃーしねーか?」
「あ・・・・・・・・」
そして、再びうなだれる・・・・。

「なに暗くなってるんだ?」
そんなところへニールがやってきた。
「どうしたんだ、みんな?」

全員その問いかけに答えもせず、じっとニールを見つめる。
「な、なんだ・・・どうしたってんだいったい?」
わけがわからず、一体何事かとニールは困惑する。

「あ、あの・・・」
「ん?なんだ?」
スケルトンが思い切って声をだす。
「あの、アンダリエルを倒したそうで・・」
「あ、ああー・・なんとかな。」
「お、おめでとうございます!」
「ございます!」
「お・・・あ、ああ・・・。」
てっきり自分達のボスを倒され、複雑な心境になってしんみりしているのかと思ったニールは、一斉に祝われて戸惑う。
「・・・だけど・・だけど、親分・・・」
「なんだ、だけどどうしたんだ?」
言い出しにくそうに話すスケルトン。
「あの・・・東へ行ってしまわれるんですかい?お、オレ達を置いて・・」
うらめしそうな悲しげな表情で聞く。
「あ、ああ・・・そのことか。」
ようやくニールは、そこにいた全員が暗くなっていた理由がわかった。
つまり自分がいなくなったあと、ここがどうなるかということが心配なのだと。
「それだったら心配はいらない。ここ一体の総指揮官であるアンダリエルが死んでもまだまだオレたち人間に敵意を抱く魔物はたくさんいる。だから、エリーはここに残るんだ。」
「え?あねさん、親分について行くんじゃ?」
「あ・・ああ・・・・それはない。大丈夫だ。」
ニールは苦笑いをしながら答える。その話をしたときのエリーの怒り心頭の表情と頭ごなしに浴びせられた罵声を思い出しながら。


 「な、なんですって、ニール?」
「だから、仕方ないだろ?2人とも行ってしまったら、キャンプのみんなも心配だろ?いい奴らだとは分かっていても、オレやお前のようにはなつかれてないんだし。オレたちがいるからみんなも納得してくれてる面があるし。」
「す・お・ー・い・う・・・ことじゃー・・な・い・わ・よ!」
「じゃー、どういうことなんだ?」
真っ赤になって怒るエリーにニールは、アンダリエルよりも恐ぇー、と思いつつ静かにしていた。
「な、なんであたしがあなたの尻拭いしなくっちゃならないのよ?!」
「尻拭いって・・別に悪いことしたわけじゃないぜ・・」
「た、確かに悪いことだとは・・・・」
ニールの言い返した言葉に一瞬ひるんだエリー。だが、次の瞬間怒りは復活!
「・・だいたいあたしは関係ないのよ!何がニール組よ!副委員長よ!あ、あたしはそのおかげで・・・あ、あたしの人生めちゃくちゃよーー・・・・。」
思いっきり怒鳴った後、エリーはニールの補佐をするようになってからのことを思い出し、その声は小さくなっていった。
(そ、そうよ・・・み、みんなあたしを特別扱いするようになっちゃって・・・せっかくあたし好みの戦士が来たときも、それが理由で・・・・)
「なんだ?」
そんなことは全くしらないニールは、勢いよく怒鳴っていたエリーが急にしおんとなり、心配して小声で声をかける。
「連れて行けばいいでしょ、奴らみんな!あたしは知らないから!」
そして、そんなニールに今にも噛み付きそうな顔で、詰め寄って怒鳴るエリー。
ニールはもうたじたじ。
「そ、そんなわけにはいかないだろ?いきなり街へなんて連れて行ったらパニックになるぜ?」
「う"・・・・・」
ニールの言うことはもっともだ。
「まー、向こうでちょうどいいような場所が見つかればそうしてもいいんだが、奴らも生まれ育った所の方がいいだろうしな。」

そして、アカラも巻き込んで話は続き、結局ニール一人で行くことになった。アカラに頼まれてはエリーもニールのときのようにぽんぽん言い返すこともできない。
(あ、あのくじ・・・あのくじさえ引かなかったら・・・・)
エリーは、ニールを補佐することになったくじ引きの時の様子を苦々しく思い出していた。
このキャンプ地においてアカラの決定は絶対である。しかもエリーも他のローグ同様、アカラを心底尊敬している一人である。そのアカラに頭を下げられては断るわけにはいかない。
一人荒野に出たエリーは自分のくじ運の悪さを呪いながら、そのやり場のない怒りを思いっきり吐き出していた。
「ニールのぶわっかやろーーーーー!ネクロマンサーなんかどあーいっきらいだあーーーー!」
離れてはいたが、エリーのその罵声は洞窟へ向かう途中だったニールの耳にかすかだったが届いていた。
(どうやら本気でオレを嫌ってるらしいが・・・奴らにあたるようなことはないだろう。)
苦笑いをするしかないニールだった。


 そんな余分なことは言う必要もないが、とにかくきちんと説明しておく必要があるな、とニールは魔物たちの不安げな表情を見て続けた。
「キャンプのみんなにもアカラにも聞かれたんだが、ここにいるお前達は敵意を抱いていないっていうことを頭では理解していても、いまいち不安らしいんだ。で、まとめ役としてエリーには残っていてもらいたい、ということらしい。それに・・・」
「それに?」
そこで言葉を切って思い出しているようなニールにスケルトンは言葉尻をとって聞く。
「つまりなんだ・・本人もついてくる気は毛頭ないみたいというか・・エリーは心底ネクロマンサーであるオレが気に入らない・・・い、いや、こんなことはどうでもいいんだが・・・とにかくエリーはいてくれる。オレも時々帰ってくるから、お前達は今までどおりでいいんだ。」
「ほ、ほんとですかい?」
「本当だとも!」
「う・・・うわあああああい!」
「やったーーー!」
「ばんざーーーい!」
どっと歓声がわく。
「よかった、よかった!」
中には安堵して涙を流し、肩を抱き合って喜ぶものもいた。
「そうと決まれば話は早い!」
「なんだ?」
「なんだ、じゃありませんや!親分の快挙を祝わなくてどうすんです?」
「そうだ!そうだ!お祝いだ!お祭りだ!」
「お別れパーティーだーーー!」
「お,別れ・・・・・」
『お別れパーティー』・・・勢いにのってその中の1人が言ったその言葉で、再びし〜んとなる。

「・・・・」
「おいおい!そう暗くなるなって!さっきも言っただろ?時々帰ってくるから。」
「お、おやぶん・・・」
「ああ・・・帰ってくるさ!」
「だ、だけど・・向こうにいる奴らの凶暴性はオレ達とは雲泥の差だし・・・。」
「ああ、心配してくれてるのか。だ〜いじょうぶ!オレがそう簡単にやられると思うのか?」
「そ、そんなことは!」
ぶんぶん!と勢いよく首を振る。が、万が一ということもある。完全にその心配がないわけではない。
「大丈夫だって!」
「そ、そうですよね、大丈夫ですよね、親分なら・・・。」
魔物たちはそんな不安を心の隅に押し込め、今は純粋にニールの快挙と未来を祝うことにした。

そして、キャンプのみんなも巻き込み、賑やかに開かれた祝賀会兼送別会が終わり、今日はニールの旅立ちの日。
今日だけは特別とあって、ニール組の魔物たちはキャンプ地へ来ていた。
「じゃーな。キャンプ内のみんなにあまり迷惑をかけないこと。そして、通りすがりの人たちをあまり脅かさないようにすること!それから、エリーの言うことをよく聞いて、いい子にしているんだぞ!」
「はーい!」
「ほーい!」
「うおーーー!」
一斉に元気よく返事する魔物たち。と、それをため息と共に見つめるアカラたち。
「じゃな、あとはよろしくな、エリー。それから、アカラ、お世話になりました。」
「ニール殿も気をつけて。」
「ああ。・・・さてと・・・」
「準備はいいのか?」
ワリブがそれまでの様子に笑いながらニールに聞く。
「ああ、頼む。」
「それじゃ」
ワリブが低く呪文を唱え始めた。
「行ってらっしゃーい、おやぶーーーん!」
転移魔法が発動されその光で全身を包まれたニールは、魔物たちの見送りを受け、次なる土地へと出発した。
・・・勿論、面倒なことをすべてぶつけられたエリーは、一言も口をきかなかった・・・。


そして、ついたところは砂漠の町、ラット・ゴーレイン。
そして通りを歩くニールに最初に声をかけてきたのは、なんとデッカード・ケイン、ディアブロ復活の地、トリストラムの長老であり、実は、その救助をアカラから頼まれたものの、面倒で行かなかったニールなのである。
「なんとかローグのみんながわしを助け出してくれたんじゃ。あんたがニール殿じゃろ?キャンプ地のみんなから話は聞いておる。わしはアイテムの鑑定ができるんぢゃ。それといろいろ必要になってくるじゃろう情報の提供もな。」
「そうかい、あんたがケインか。よかったな。」
少し嫌味っぽさも感じられたその老人からは、常人でない雰囲気が漂っていた。
(だいたいオレでもついさっき転移してきたんだぞ。向こうでこのオヤジの顔は見なかったし、アカラも救助したなんて言ってなかったが・・・いつ助けられて、しかもオレより先にこっちへ来たんだ?)
疑問もあった。が、アカラの知り合いということだし、敵意は全くないようなので、ニールは気にしないことにした。
「じゃーちょうどいいや、未鑑定の剣があるんだ。鑑定してくれるか?」
「ああ、お安いごようじゃ。じゃ、前金で200G。」
「あれ?さっき鑑定してたようだが、確か100Gだったような?」
話し掛けられる前、1人の戦士がケインに鑑定してもらっていた。確か払ったのは100G金貨1枚だったとニールは記憶していた。
「いや、200Gじゃ。」
にまり、と笑うケインにニールは納得した。
(このくそじじい・・オレが助けに行かなかったことを根に持ってやがるな?)
しぶしぶ200G払うニールだった。
(ケインを助けずACT2へ行ったらちゃっかりそこにいて、しかも鑑定料が200Gだったというのはゲーム上の事実です。(笑)

砂漠の町、ラット・ゴーレイン・・・ここではどんなことが起きるのか?
乾ききった風が、歓待しているかのように砂を巻き上げながらニールの全身を抱いた。                    



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