『ニールとゆかいな仲間たち♪』
== ネクラ・・もとい!ネクロマンサー、ニールの徒然冒険記 ==

その6  アナザーワールド1年2組 ・・・先生は大変なんてもんじゃない?!

 

 ここは、出亜風呂市にある、呂具小学校。
そして、時は9月、その呂具小学校も新入生を迎えて、とっても賑やかである。
しかも、いつも静かな校長室から何やら大声が・・・・・。

 「よろしいですか、エリー先生?」
どうやら新学期早々、アカラ校長が新1年生担任のエリー先生におこごとらしい。
「はい、申し訳ありません。よ〜く注意しておきますので。」
−ガラガラ・・・パタムー
神妙な顔で、深々とアカラ校長に頭をさげて謝った後、エリーは校長室の外へ出た。
「あんのくそがきども〜〜〜!!!」
そのきつく握りしめた拳に怒りもあらわにし、エリーは担当の教室へと急いだ。


 新学期に早々、『魔物の巣窟』という呼び名をつけられたその担当の教室『1年2組』は、その名の通り、人間の生徒もいたが、ほとんどが魔物の生徒でしめられていた。
この小学校が初めての試みとはいえ、別に他の生徒と区別とか嫌っているとかではなかったが、とにかく今まででは起きえない事件なども起きることもしばしば、1年2組は、小学校内外共に注目されていた。

−ガラっ!−
「起立!」
「礼!」
委員長であるニールの号令で、ともかく挨拶。
「おはよう、みんな。今日は授業の前に、少し話したいことがあります。まず、アイスメイジの氷君。」
「はい。」
「プールの水を君が凍らせたって本当なの?」
「は、はい・・・だって、肉がないから浮力がなくて、浮けないんです、ぼく。」
「だからって凍らせたら、他の人も入れないでしょ?」
「はい、ごめんなさい。」
素直に謝る氷にエリーはため息をつきながらも、一応許すことにした。
「え〜と、ファイヤーメイジ、炎(エン)君とファイヤーゴーレムのボン君。」
「はい。」
「ほい。」
「あとで融かしておいてくれる?」
「はい、わかりました。」
こくんと同時に頷く2人を見て、エリーは一応満足する。
「それからー・・・・そうそう、理科委員のドク君!」
「ふぁい。」
「君ねー、理科委員の特権を利用して、準備室に勝手に入って実験はしないこと!」
「え?ばれちゃった?」
「ばれちゃったじゃないわよ。緑色の液体があちこちにこぼれたままだったそうよ。」
「いけね。」
えへへと笑うドクをエリーはきつい目で睨む。
「まったく・・・この前、サンダーメイジの雷雷(ライラアイ)さんが発電実験してたことがわかって、委員を変わったばかりでしょ?なのに、新委員がそんなことしちゃだめじゃない?」
「ごめんなさい、先生。だって、あまりにもいろいろ薬品があったから、片付けるつもりがつい・・・・。」
「ホントにもう・・・」
呆れ顔でドクを見つめるエリー。
「あとは・・・そうそう、委員長、ニール君!」
「はい、なんですか、エリー先生?」
クラスの中では唯一の人間であるニール。人語を解さない魔物たちとのコミュニケーションには欠かせない生徒だった。
「いいこと、ニール君。君が力があることはわかってるわ。」
エリーは、じっとニールの瞳を見つめると、言い聞かせた。
「でもね、理科室の人体標本の骸骨やホルマリン漬けの蛙などを蘇生させないでちょうだい。」
「でも、先生。傍にいったら声が聞こえたんだ。『生き返りたい』って。だから、ぼく、かわいそうになって・・・つい・・・」
ふうー、とため息をつくとエリーは、ニールの頭にそっとその手をのせるとやさしく言った。
「ニール君のやさしいところは、とってもいいことよ。でもね、標本がないと勉強に支障がでるの。先生が弁償しなきゃいけなくなりそうなのよ。」
トンドン、と誰かが肩を叩いてるのに気づき、エリーは振り向いた。
「あ、あら、あなた誰?このクラスにはいなかたような・・?」
「ああ、そのスケルトンは、理科室の標本だよ。」
「え?・・・・こ、この子がそうなの?」
思わずエリーは、ニールと後ろに立っていたスケルトンを交互に見つめる。
「うん。あのね、授業に必要な時は、理科室へ行くから、大丈夫だって言ってるよ。」
「カタカタカタ」と話す彼の言葉を訳すニール。
「だ、大丈夫だって言われても・・・」
それこそ気持ち悪がる生徒も出て、また校長からしかられるじゃないの、とエリーは思わず口を開けたまま元標本のスケルトンをじっと見つめた。

−ジリリリリ−
1時間目の始業のベルが鳴り渡った。
「この話はまた後でしましょ。え〜と1時間目は図工だったわよね。先週から始めた粘土作品の続きだったわね。じゃー・・・」
エリーがひとまず気を取り直し、みんなの作りかけの粘土が置いてあるはずの棚に視線を移した。と・・・
「あら?どうしたのかしら?何もないじゃない?」
まさか、1時間目がそうなので、早くも作り始めているなんてこと・・・と思いつつ、生徒達の机の上を見る。
やはりそこには、粘土はない。
他の場所へしまったかしら?と考えていると、誰かの声が耳に飛び込んだ。
「先生〜!ニール委員長が、ぼくたちの作品を使ってクレイゴーレムを召還しちゃったんだよ!」
「え?」
驚いて自分を見つめるエリーにニールはにっこり笑って答えた。
「大丈夫だよ、先生。クレイゴーレムから取ればいいんだから。」
「と、取ればって?」
思わずどもってしまったエリーの目の前に、自分の腕からぬまっと一塊りむしり取って差し出すクレイゴーレムが立っていた。
「で・・でも・・・・そうすると・・・」
「心配ないよ、先生。自分で再生できるはずだから。」
誇らしげにエリーにそう言うと、ニールはみんなに声をかけた。
「頭以外は取らないようにしろよ。」
「OK!!」
そして、あっという間に頭だけになっていく。
「ち、ちょっと・・・」
教壇の上の頭だけになったクレイゴーレムの笑みを見つつ、エリーは、自分の意識が遠のいていくのを感じていた。
「だ、だめ!ここで倒れちゃ!」
ここで倒れるとどうなるかわかったものではない。エリーはぐっと下腹に力を入れると、なんとか踏みとどまる。が・・・

「あれ?先生?」
「ちょっと自習しててちょうだい。」
一旦保健室で休んだ方がいいと判断し、エリーは言葉少なく教室を後にした。
           


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