『ニールとゆかいな仲間たち♪』
== ネクラ・・もとい!ネクロマンサー、ニールの徒然冒険記 ==

その5  エリーの災難 ・・・いつまで続くの?

 

   
「よし!あらかた片づいたな。みんないるか?全員集合〜!」
「カタカタカタ・・・・・」(うーー・・魔法使いすぎてすっかり冷えちまった。)
「ガラガラガラ・・・」(サンダー攻撃はやっぱ雨の日が一番合う・・かな?)
「ぽっぽっぽっぽっ」(そろそろ毒の元仕入れに行かなくちゃいけな?)
「ふぁっふぁっふぁー!」(今回も燃やしまくってやったぜーー。)
「・・・なによ、その全員集合って!・・・まったく・・まるで子供の遠足ね・・・・。」
   あきれ果てた顔で、エリーはニールとその召還した者たちを見ている。本当ならこんなところにはいたくない、彼女の全身はそう物語っていた。
「いや、一応確認しないとな。・・・っと、ファイヤーメイジがいないようだが?どうしたんだ?」
  そういえば、一人足りない・・。ニールのその言葉と共に、全員が辺りをキョロキョロする。が、確かに視野にその姿は写らない。
「やられちゃったのかしら?」
「いや、そんなはずはない。気配はあるんだ。・・・どこへ行ってるんだ?もしかして離れたところで一人戦っているとか?」
「だとしたら、かわいそうだわ。探さないと。」
「なんだかんだ言ってても、結構気にしてるんじゃないか、エリー。やっぱり仲間だな。」
「・・う、うるさいわね。一応行動を共にしてるんだから、たとえ召還獣・・じゃない、召還アンデッド(語呂が悪いわね)だとしても、無視するわけにはいかないでしょ?」
「もしかしたら、君もネクロマンサーの素質があるかもな。普通、なかなかそうは言ってくれないんだぜ。」
  にやっとしてそう言ったニールをエリーは、思いっきり睨むと、とにかく辺りを探そうとその場を離れる。
「おい!単独行動はしない方が・・・。」
  慌てて声を掛けたニールに、エリーの後ろ姿は無言で『そう思うのならついてこれば?』と怒りで語っていた。
『素直じゃないんだからなー・・・。』とため息をつくと、ニールは他のメンバーと共にエリーの後を追いかけた。

 

   ちょうどそんな時、荒野の片隅にある廃墟と化した小屋の中、話題の中心になっていたファイヤーメイジと魔物であるフォールンがなにやらぼそぼそ話していた。
「まーなんだな、お互い主人には苦労するわな。ひっひっひっひ」
「だよなー。でもよー、あんたたちの方がいいと思うな。オレっちの親分なんか後ろに隠れてオレたちを追い立ててるだけなんだぜ。あんたの大将は先頭切って戦ってるじゃないか?」
「そう言えばそうなんだけどな。でも結構気まぐれなところがあってさー、わしの前に召還された奴らなんかみじめだったらしいんだぜ。」
「どうみじめだったんだ?」
「つまり、うちの大将、この間ようやくわしらメイジスケルトンを4体召喚できるようになったんだよ。で、記念ってんで、それぞれ違った魔法の使い手を出そうと思いついたわけさ。・・・・それでだなー、思い通りにでなかったからといって、召喚し続けたんだな、これが。当然4体までの召還力しかないから、先に召喚された奴は消滅しちゃうって寸法さ。」
「げ・・・・。」
「まー、痛みはないからいいんだけどな。中には戦いたくない奴もいるだろうし。」
「まーーなーーー。オレっちもそうでよ、できるなら静かに寝ていたいんだ。だけど、大将の手前、敵に向かっていかないわけにはいかねーじゃん?だから、ぱこん!と叩いておいて逃げるってわけさ。」
「そういやー、お前さんたちフォールンはほとんどその戦法だな。」
「あ・・あはは・・・。だってさー、考えてもみろよ。大将のシャーマンは遠くから一応オレ達をサポートって形でファイヤーボールで攻撃してくれるけどよ、直接対峙するのは、オレ達なんだぜ。ばかばかしくって真剣にやってられるかってんだ。」
「それにしては、背中をみせると、即攻撃しかけてくるな。」
「い、いや〜〜〜・・・・・あんたたちが強すぎて真っ向から勝負なんて恐くてさー・・だからつい・・・・あ、あはははは・・・・そこんところは、自分たちが強いからってことで、許してくれないかな〜・・・な〜んて。」
「おお〜〜!わしらが強すぎてか?わかってるじゃないか!」
  フォールンの言葉に、嬉しそうに目を輝かせ(といっても眼球はないが・・)思わず両手に力を入れるファイヤーメイジ。
と、その瞬間ぼん!と大きく火球が燃え上がる。
「わわわっ!お、おい、気を付けてくれよ。もう少しでやけどするところだっただろ?」
  ファイヤーメイジの目の前に座って話し込んでいたフォールンは、慌ててのけ反る。
「あ、わりぃ、わりぃ・・火球を出すつもりじゃなかったんが、つい手に力が入っちまってな。すまん。」
  すまなそうに頭をかきながら、あやまるメイジに、フォールンも笑って許す。そのつもりじゃなかったのは、重々承知しているからだ。
「だけど、これからどうしよう?オレっちの仲間って全部倒されちまったみたいだろ?」
  小屋の窓からそっと外をうかがうと、再びメイジの方に向かって座り直すと、フォールンは大きくため息をついた。
「うーーん・・・・まだ無事な仲間のところへ行くとか?」
「それがなー・・・・・」
  フォールンは悲しげな表情で大きくため息をつくと続けた。
「だめなんだ。昔からオレたちレッドフォールンとブルーフォールンは仲が悪くてさー・・・・。」
「一緒にいたのも見かけたぞ?」
「それは多分、配下としてだろ。ブルーフォールンに頭を下げて仲間にしてもらったら・・・どんだけこきつかわれるか・・・・。敵前逃亡だってののしられるだろうしな。」
「んー・・・。そうだ!どうだ、お前さんもわしらの仲間になっては?」
「な、仲間に?いいのかい?」
  メイジの言葉に、目を輝かせるフォールン。
「まー、問題はニールの大将がどう言うか、なんだがな。いや、多分ニールは大丈夫だろう。一番の問題は・・・・・。」
「一番の問題は?」
  ファイヤーメイジが次の言葉を口にしようとしたその瞬間・・・・
  −バッターーン!−
大きな音と同時に半分壊れかけたドアが開いて・・・完全に壊れた。
そして、ファイヤーメイジの赤い顔は戸口に立つ人影を見るなりポイズンメイジのように真っ青(正しくは緑)になった。
「・・・まったく、人が心配して探し回ってみれば・・こんなとことで油をうってたのねーーーー?!しかも相手は敵じゃないの!」
  瞬時にして矢をつがえるエリー。
「ま、ま、ま、待ってくれ、あねさん!これにはふか〜〜いわけが!」
「なによー深いわけって?あたしは、不快よ!200%ねっ!」
  レッドフォールンを自分の身を呈してかばうファイヤーメイジに、エリーは、怒鳴りながらも弓矢をおさめた。
「ま、まー、そう怒らんと。せっかくの美人がだいなしですぜ、あねさん。」
「よけーなお世話よ!で、なんなのよ、一体?」
「それなんですがね、あねさん・・・実は・・・・」
  ファイヤースケルトンは太鼓持ちよろしく、ごますり500%で、エリーの母性と哀れみの心をゆすった。
「・・・・それはかわいそうよねー・・・戦いたくないものまで強制するなんて・・・・。」
「でしょ?そう思うでしょ、あねさん!」
「でもねー、多分ニールはいいとして・・・・キャンプ地のみんなが・・・あ!そうだ!いっそのことホントに仲間になってしまえばいいのよ!」
  ぽん!と拍手を打ち、にこっとして再び弓を構え、フォールンに向ける。
「な、な、な、なにをするんです?あねさん!?わけはわかってくれたんじゃ?!」
  焦って再びフォールンを自分の背後に隠すメイジスケルトンに、エリーはさらった言った。
「仲間になりたいんでしょ?あれこれ考えなくても、一度殺されて、召喚してもらえば誰もが認めるニール組の組員・・・もとい!仲間よ!心配しないでいいわ、これでも100発100中なんだから!」
「ち、ちょっと、あねさん!」
  とめようとするメイジスケルトン。が、エリーはまったく耳を貸す気配はない。
「自分が仲間になりたいって言ったんでしょ?言った言葉には責任を持ちなさい!これ以外に完璧に仲間になれる手段があって?」
「うっきゃーーーーーー!!!!」
  もうだめだ、と判断したフォールンは目にもとまらぬ速さで小屋から駆け出した。が、一旦ねらいを定めたエリーが逃すわけはない。
エリーの放った矢は確実にフォールンの心臓を貫いた。
「ぅぎゃっ!」
「気の毒に・・・エリーに最初に見つかったのが運のつきだったな・・・」
  短く叫んで倒れたフォールンを見つつ、ファイヤーメイジは、一番心配していたことが・・と思っていた。が、確かにこれで晴れて仲間になれる。あとはニールがよみがえらせてくれさえすれば。
そして・・・・・・

 

「なによ、フォールン?・・あたしはダメなんだったらダメなのよー。もういいかげんにしてよー!」
  無事(?)蘇り、仲間になったフォールンに、エリーは付きまとわれていた。
「そんなこと言ったってあねさんのせいなんだからさー。仲間になれたのはいいけど、真っ黒はいやなんだよおいら。おいら何よりも赤が好きなんだよ。だから、ねー、せめて赤い服作っておくれよ〜。でなかったら、お化粧してよ〜。ね〜ったらね〜。」
「そんなこと言ったって・・・あたしはお裁縫だめだし、全身にお化粧なんてしたら、すぐなくなっちゃうでしょ?化粧品はそこらの武器より高いのよ!」
  どういうわけか、蘇生後は全身が黒くなってしまう。そして、そもそもそうなったのは、エリーのせい。自分の言ったことには責任をとれ!と言われたフォールンは、エリーにもそれを要求していた。
「あ〜ねさ〜〜ん!」
  殺されたときの仕返し(?)に、嬉々としてからかって追い掛け回しているようでもあった・・・。
「なんだ、エリーはまたフォールンと鬼ごっこか?おい!仲がいいのもいいが、おいてくぞ!」
  やっぱりネクロマンサーの資質があるな、とニールは再確認したとかしなかったとか。
どうにかしたくても、仲間である以上弓を向けるわけにはいかない、それに・・・・蘇ったフォールンは、たとえそうしてもエリーの攻撃では死ぬことはない。
「ニール・・・今回はばかにゆっくりしてるのね。そろそろ荒野に出ない?」
  現状から抜け出すためには、ぜひとも魔物に殺してもらわなければならない。少しかわいそうな気もしたが、もういいかげんフォールンのおっかけには嫌気がさしてきていたエリーは、魔物にほんの少し期待してしまっていた。
が・・荒野に出れば、魔物に殺やれるのがフォールンであるとは限らないのもまた確かなのである。
「ああー、も〜〜〜〜〜!!!ぜ〜〜んぶニールが悪いのよっ!」
  エリーのニールに対する嫌悪感は、ますます高まっていった。
 


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