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[2]フラビーとウェイポイント |
最後は独り言のようになってしまったニール。多少ネクロマンサーとしては面白くないようでもあった。 「あっ!ウェイポイント、発見っ!」 「なんだ、そのウェイポイントって?」 横を歩くニールが不思議そうに私を見た。 「だから、瞬間移動の装置よ。転移装置。」 「転移装置。」 「え?まさかニール知らない?」 「あ、ああ・・・魔法使いのテレポートくらいは知っているがな・・転移装置か・・これが?」 どうやら本当に初めて見るらしく、ニールは地面から少し突き出ている岩をじっと見つめていた。 四角い岩にはほぼそれいっぱいの円が描かれている。そして、その岩の四角形の二カ所の隅、対角線上に古ぼけた燭台がおいてある。 「足を踏み入れたら、いきなり見ず知らずのところへ飛ばされるってんじゃないだろうな?」 「ううん。そんなことないわ。 ゲームだとそれまで見つけ移動可能にしたウェイポイントのリストが出るのだが、実際(夢だけど)にはどうなんだろう?と考えながら私はその円形の真ん中に足を踏み入れた。 −ほわ〜〜〜− その燭台に青白い炎が灯る。 「わー!やっぱり炎が点くんだ・・・・・どういう仕掛けなのかな?」 「・・・・・」 腰を落としてその炎の1つをじっと見つめている私にニールはにやっと意味深な笑みを見せた。 「な、なーに?」 「人間の魂だな。」 「え?」 ぎょっとして私は聞き返す。 「な、なんで?ど、どうして分かるの?」 「オレが誰なのか忘れちまったか?」 そうだ!ニールはネクロマンサー、死霊使い、この手の事に関しては敏感だった、と私は思いだした。 「誰が作ったかしらないけどな・・・・先人の遺物なのか、それともこの地へ先にきた高僧あるいは賢者とかいう知恵者の作ったものなのかはわからんが・・・」 「人間の魂って・・・それじゃ・・これって・・・人魂?」 びくっとして私は立ち上がりざま後ずさってしまう。 「まー、そんなところだ。」 いつの間にかその前に腰を落としていたニールは、そっと手を炎の上にかざした。まるで愛しい者を撫でるように。 「どうやら生前の罪の贖罪ってやつらしい。」 「え?罪?」 「こうして人に手を貸すことで、自分の罪を償って、新しい命として生まれ変わるんだそうだ。」 「ニール・・・話せるの?」 「ああ・・。しかし・・・誰だか知らねーが・・・頭も力も相当なもんだな。」 「そう・・ね。」 風もないのに前後左右にゆっくりと揺らめいている青白い炎。確かに気持ち悪い感じも受けたけど、ニールの説明で私はその気持ちが少し薄らいだ。 でも、ホントに誰がこんな装置を発明したんだろ?感心してしまう。 (バカね、沙也香、そんなに感心する必要ないじゃん?これ、夢んだし?) 「あっ!そうか!」 「何がそうなんだ?」 心の中の声に思わず叫んでしまった私をニールは怪訝そうに見ていた。 「あ、・・だ、だから・・・この装置を発明した人はすごいってこと。」 私の作り笑いがきいたのかどうかは分からないけど、ともかくニールはそれ以上追求してこなかった。 「で?これでどうするんだ?炎がついただけで何も変化しないじゃないか?」 「あ、そ、そうよね・・・・」 1、2秒そこの立っていれは、炎がつくと同時に転移可能なウェイポイントのリストが現れるはずだった。 (ゲームじゃないからリストってことはないのかもしれない?でも・・・夢ならリストが出てきてもおかしくない?) そんなことを考えていた私の頭に不意にわき上がったある事実。思い出したその理由。 (しまったっ!キャンプ地内のウェイポイント踏んで来なかった!) リストが出ないはずである。 「ニール、キャンプ地内にあるはずのこれと同じもの踏んできた?」 「いや・・・確かにこれと同じようなものは見たが、盛り土の上にあってな・・・ローグたちの特別な場所かなにかかと思って通り過ぎた。」 ガクッ!ニールだけでも踏んでいれば、という淡い期待は無惨にも消滅した。 「ニール、一度キャンプへ帰らない?」 「なんでだよ?せっかくここまで来たんだぜ?」 「いいから!ここからは強敵が多いのよ!私、そのつもりじゃなかったから、Tシャツにジーンズのままだし。」 「それTシャツとジーンズって言うのか?」 「あ、う、うん、そう。」 「そうだな、どう見ても防御力があるとは思えないからな。」 「じゃ、手っ取り早くタウンポータルの巻物で!」 「あ!そんなのもったいない!」 「へ?」 「いいから歩いて戻ろ。アイテムは大切にしなくちゃ。」 「お、おい・・そんなケチケチしなくても・・・・」 「だめっ!いい物を買う為に、節約できる物は極力節約するの!」 私は今にも袋から巻物を取り出しそうなニールの腕をぐいぐい引っ張って、来た道を戻り始めた。 |