銀の守護聖 
別世界・もう一つの物語(4)
 

**お茶会は一騒動?**

 その日の午後、予定通りサロンでお茶会が開かれようとしていた。
一人、また一人とリュミエールの待つサロンへ守護聖が集まってきた。
来た者から順にお茶を入れてもらい誰ともなしに談笑する。
穏やかな午後に似つかわしい雰囲気だった。
「あれ?まだセクァヌ来てないのか?」
その穏やかさを破るようにゼフェルが大声で言いながらサロンに顔をだした。
「ええ、まだのようです。」
リュミエールがお茶を入れながら答える。
「ふ〜〜ん。」
ガタンと少し乱暴に適当なイスをひいてゼフェルは腰掛ける。
「早いんだな、ゼフェル。」
そこへランディーとマルセルもやってくる。
「暇だからな。」
「またまた〜〜、セクァヌが気になってじゃないの?」
「マルセル、お前な〜〜〜!!」
「ちょっと2人ともおやめ!」
オリビエが喧嘩に発展しないうちに中に入る。
「もう少し静かにできないの?」
「ふん!」
リュミエールは苦笑いしながらお茶をすすめる。
「セクァヌはロザリアのところへ行っていて少し遅れるらしい。」
「あん?」
全員声の主、庭からサロンへと向かってきているオスカーを見る。
「なんだよ、迎えにでも行ったのか?」
ゼフェルがぶっきらぼうに聞く。
「ああ、一応な。」
−カタン−
一番手近なイスを引くとオスカーはそこへ座った。
「ああ、そうだ・・・言っておいた方がいいかもしれん。」
リュミエールが差し出したお茶を飲みながら、オスカーが思いついたように口を開いた。
(まさか、オレがつばつけたから手を出すな・・・じゃーないよな?)
思わずお子様3人組、ゼフェル、ランディー、マルセルは思ってしまった。
「セクァヌのこと?」
オリビエが意味ありげな目をしながら聞いた。
「ああ。」
こくん、と一口飲むとオスカーは話す。
「実は、彼女は目が弱くてな。いや、盲目というわけではない。それに、視力はどうってことないらしいんだが、光に極力弱いんだ。日中戸外は勿論、明るい部屋の中でも長くは開けていられないらしい。だから支障ない明るさでも、その癖で目は閉じてる時の方が多い。それを承知しておいてくれ。」
「ホントか?」
ゼフェルが目を丸くして聞く。
「ああ。」
「いかにも闇の守護聖って感じ・・・だな。」
「そんな風に言っては失礼ですよ。」
マルセルがたしなめる。
「だって、そうじゃないか?ひょっとして目だけじゃなくて太陽そのものが苦手だったとか・・・」
「そんな事言ったら吸血鬼かなんかみたいじゃない。失礼だよ、ゼフェル。」
「お!マルセルにしてはいいとこつくじゃないか!?」
「何がいいとこなんだよ!セクァヌに失礼とは思わないの?」
「お前が言ったんだぜ?」
「おい!止めろよ、2人とも!」
にらみ合って文句を言う2人にたまらず、ランディーが止めに入る。
「いいかげんにしておくんだな!」
オスカーも呆れならが2人を睨みつける。
「だって、つい気になってしまったから・・・・」
別に悪口言うつもりはなかった、と顔で弁解するゼフェル。
「なんなら直接聞いてみたらどうだ?太陽が苦手かどうか。守護聖同士、ある程度の理解も大切だぞ。誤解したままはよくないからな。」
すました顔をして言うオスカーの目に、青いような赤いような顔をしたゼフェルとマルセルの顔が入った。
「どうした?ん?」
2人と、その横にいたランディー、オリビエの視線をたどるオスカー。
「な?!」
オスカーのすぐ後ろ、まだ数歩間はあったが、確かにそこにセクァヌが立っていた。
−ガタン−
慌てて立ち上がるオスカー。
焦るオスカーを全く気にしていないかのように、セクァヌは、ゆっくりと口を開いた。
「私、目は弱いのですが、太陽の暖かい光はとても好きです。ひなたぼっこはよくしますし、こういうところでのティータイムも落ち着いていて素敵だと思います。」
微笑んだセクァヌの笑み、安らぎを湛えたその笑みが何も気にしていないことを語っており、そこにいた全員ほっと胸をなでおろした。

そして、お茶会は何事もなく終わった。
そこで受けた全員のセクァヌに対する印象は、どうやらあまり賑やかなのは好きではないらしいこと。話し掛ければ答えるのだが、自分から進んで話すようなことはなかった。最もまだ慣れていないせいもあるのではないか、と思われたが。

「ちょっと冷たい感じ・・・っていうのかな?最初のロザリアの時みたいにつん!というのじゃないけど、なんかそんな感じっていうか・・・・」
その日の執務も終わり、私邸への帰り道に例のごとくお子さま守護聖3人組が連れ添って歩いていた。
「まだ慣れてないせいじゃないの?」
マルセルがゼフェルを上目遣いに見る。
「そうだよな。いきなり男ばっかの中だもんな。緊張してたとか?」
「そうだよね、ランディー!」
「かもしれねーけど・・・オレたち、いらぬお節介してんじゃねーか?って感じもしないでもなかったけどな。」
「そういえば、しっかりしてるっていうか、一人でも大丈夫って感じもあったけど。」
「あんたたち、目で見えることばかり言ってちゃだめだよ。」
オリビエが後ろから声をかける。
「夢魔の事件・・ロザリアのことを忘れたわけじゃないだろ?」
完璧な女王候補だったロザリア。それゆえ大丈夫だと誰もが思って、彼女の心の奥底の思い、不安や絶望などの弱い心を気遣ってやれなかったことから起きた事件。
3人ははっとする。
「完璧な人間なんているもんじゃないんだから・・・わたしやあんたたちも含めて、ねっ!」
「わかった、オリビエ様。オレたち気をつけて見てるよ。」
「うん、そうだね。しばらくは様子見でいいと思うよ。そう急がなくてもさ。」
ランディーの元気のいい返事に、オリビエは満足してにっこりする。

まだセクァヌも来たばかりで肩に力が入ってる。少しずつ打ち解けていけばいいんじゃないか?3人組のだした結論、そして他の守護聖も感じていた事だった。

 

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