〆〆 その32・王と王妃と愛人と 〆〆

 スケルトンとスピリッツ、相手が相手なのでディスペル・アンデッドの呪文がやはり一番。
ハートレーとホト は、続けざま呪文を放ち、ショウとコルピッツは、それぞれ自分の武器で攻撃していっ た。
私は、得意のリュートによるスリープの魔法が全く効かないので、必死で色々な 呪文を試していた。
とにかくスケルトンっていうのは、動作が速い、ガタガタ、カチャ カチャ不協和音を奏でながら攻撃してくる。
それに呪文もばんばん唱えてくるなかなか手強い相手だ。
そして、魔法力もつきかけたころ、なんとか倒すことができた。
でもいつ他のモンスターが襲ってくるか分からない。
倒れた首領の骨の間に挟まっていた鍵を見 つけると通路の行き止まりのドアを開けにかかった。


ドアを開け中に入る。そこは、ホールのようになった少し広い部屋。
でも、死者の殿堂の中心部だけあって、そこかしこ、骨、骨、骨、骨の山だった。
今にもその山の中から 幾体かが起きあがり襲ってきそうな感じがする。
私はとにかくすべてを回復してくれる 泉に行く為に、部屋に入って右側の壁を調べることを提案した。
やはり少し歩くとスケルトンや亡霊が襲ってきた。
それでもなんとか倒し、ようやくの思いで壁の隠しドアを見つけ、その通路へと入る。
途中横道の先に門が見え部屋があったが、今は無視し、泉へと急いだ。もう全員へとへとなのだから。

 「ふー、生き返った気分だぜ。」
なんとか無事に泉に着く。
さすがのピアースも、 もう一団体来たらやばかったらしい。
私なんて泉を見つけた時、疲れも忘れ、駆け寄っ てしまったくらい。
途中でモンスターが飛び出して来なかったのが幸いだった。
「でもホント、ツェナちゃんがこの泉の場所を知っててくれて助かったなー。ここの奴 等は生半可な奴じゃないもんなー。」
ピアースは、今までの戦いを思い出しているように言った。
「そうですね、もう全員体力も、気力も限界に近かったし、魔法力は勿論ポーションも スクロールも使いきってしまってましたし・・かと言って戻るわけにもいかず、もしツ ェナが知っていなかったら、たぶん私たち全員あの骨の仲間入りでしたでしょうね。」
ハートレーまでが考え深げにそう付け加えた。
「そうそう、最後には、『泉まで頑張れ、もう少しだ!』がお互い合い言葉だったもん ね。」
ホトもようやく落ちついたような感じだ。
「全くです。」
静かにコルピッツが言った。
「いつ、また襲ってくるかは分かりません が、ここで暫く休みませんか?気持ちの悪い場所であることには変わりありませんが、 泉があるだけでも違うと思いますので。」
全員コルピッツの提案に賛成し、泉を囲むようにしてそこに座り込んだ。
と言ってもモ ンスターの急襲に備えて泉を背にして。
そして久しぶりに干し肉や乾燥野菜などを口にほおばった。

「泉の水じゃぁ、腹はふくれねーからな。」
痩せの大食らいという言葉は正にピアースの為にあるんじゃないだろうか、と思えるくらい勢いよくピアースは食べていた。
私もしばらくぶりの食事はおいしく感じた。もっとも家での食事とは比べものにならな いけど。場所が場所、状況が状況なだけに贅沢は言っていられない。
それにしすぎたと 言っていいほどよーく運動(?)した後なので、こんなおいしいものだったのか、と思 ったほどおいしく感じたことも確か。


スケルトン達と戦って、守護者の部屋の鍵を次々に手に入れ、第1、第2、第3、そし て第4の守護者をも倒して行った。
勿論泉まで往復しながらね。
王と王妃の墓を守る守護者なのだから、それ相応に手強い。
泉がなかったらとてもじゃないけど、生き延びてはいないだろう。
それにちゃっかりその守護者の装備は頂いた。
第1の守護者はハイランダー。残念ながらパーティーにレンジャーはいなかったので、 ほかって置いたけど。売ればお金になるけど、そんな余分なもの持ってはいられない。
第2の守護者はダーク・ナイト。この装備はハートレーがそっくり頂いた。
第3は、ヴァルキリー、というわけでこれは勿論、ホトのもの。
そして第4は、侍。忍者と共に戦いを挑んできた。
キリ術を習得しているだけあって、本当に手強かった。
でも、ピアースは腕試しができる、なんて言って嬉々として戦っていたっけ。
忍者の装備はピアースのと一緒なので取ってもしかたなく、そのままにしたけど、 侍の装備していた鎧兜はそっくりショウがもらった。
それと忘れてはいけないのが、ムラマサブレード。
本物のターマンならどうだっただろう。多分彼ならそれを持つのに相応しい人物だったと思う、でも、今は、そう、今はショウなのだ。
ショウは、しばらくムラマサブレードを両手で持ち、じっと見ていた。
そして、そっと鞘に収め、未だにそれを使ってはいない。


そうして、最後にとっておいた、災いの王とのご対面。最初王の塚で会ったのだけど、 そのときはただ単にからかわれたのみ。
私たちの攻撃なども無視して飛び去っていってしまった。
で、その塚で王妃の塚の鍵を手に入れ、そっちに向かった。
王妃の霊は散々王とその愛人、悪魔の子なるレベッカの悪口を言っていた。
すべてはレベッカのせいだと。王がそれまで以上の力を欲するようになったこと、そして、ペンの力を借り、それを実現しようとし たこと。自分はレベッカに殺された事、牧師とその愛人アニーの事、そして王が、自分 自身の不老不死を願って、ついには邪悪なる者として生きる羽目になった事など。
そう、ペンは、それを用いて書いた事を実現してくれる。でも、書いた本人には、必ず 何かしら恐ろしい呪いがふりかかってくるらしい。
ゾーフィタスもあのミスタファファスも確かそう言っていた事を思い出した。
王妃の霊は言いたいことを言うと私たちにレベッカを殺せと命令して、彼女の部屋の鍵をくれた。
そこへ続く道は、王妃 の塚の壁のボタンを押すことによって開いたのだけれど、部屋に入る前に王妃に貰った『銀の十字架』をどうするかで、私たちはもめた。

『邪悪なる者、悪魔のレベッカと今やバンパイアとなってしまった王を倒すべく、そう いう時の必需品として『銀の十字架』は絶対持っていく』というハートレーとホトの 意見と、私の『戦いたくないから、それに彼らは自害するんだから持っていかない』と いう意見とに分かれた。
ホトたちは、「彼らが最後に自害するなんてとても信じられない。」と言うのだけど、その気持ちも分かるの。でも私としては不要な戦いは避けたい。それは、ホト達も同意見だったけど。
「今から死にそうになるくらい血は吸われちゃうけどね。」と言ったのもいけなかった ような気がする。
後で文句を言われるよりいいし、それに「バンパイアには、ならないよ」とはつけ加えておいたんだけどね。
コルピッツとショウも決めかねている様子だ。結局、それまで黙って私たちみんなの意 見を聞いていたピアースのとった行動で決まった。
「どうでもいいけどよ、俺は気に入らねーな、あの女。どうも辛気くさくてよ。王が嫌 うのも分かる気がするぜ。それにあの女も、なかなかのもんだったじゃねーか。お前ら も見ただろ?王妃の部屋にしまってあったものをよ!」
そう言われて一同、思い起こした、例の物を。
「それに俺は他人に命令されるのがでぇっ嫌いなんだよ。あの高飛車な言い方。思い出 しただけでも怒れてくるぜ。」
そう言うが早いか、ハートレーが手にしていた銀の十字 架をぱっと取ると真っ2つに折り、ぽいっと捨ててしまった。
そして、呆気にとられているみんなを無視し私にそおっと耳打ちするとすたすた歩き始めた。
「俺様はいつだってツェナちゃんの味方だぜ。」



 銀の十字架を捨ててきた私たちを待っていたのは、当然のごとくバンパイアの洗礼。
と言ってもバンパイアになったわけではない。たっぷり血を吸われたけど。気を失って いる間にゾーフィタスとか気持ちの悪い夢を見て、気がつくと牢屋の中だった。
鉄格子の向こうには見張りが立っていた。でも私たちの持ち物や装備は何1つとして取 り上げられていない。その事実もあってホト達も少しは私の言ったことを信じてくれた みたいだった。
とにかく、血を吸われてふらふらだったので、回復魔法を目一杯かけて眠るという事を 繰り返した。牢屋を出てからでは休める場所もないのだから。
「だけどよ、あの悪魔の娘・・・確か、レベッカって言ったよな、なかなか魅惑的な女 の子だったよな。王がぞっこんになったのも分かるぜ。声を聞いた時、ぞくぞくってき ちまったぜ。」
彼女を思い出しているのか天井を見つめながらピアースが呟いた。
「へぇ、ピアースってあの手が趣味だったのかい?緑色の肌と真っ黒の翼を持った悪魔 の化身が?」
干し肉をほおばりながらホトが呆れたような顔をした。
「それはそれとしてだ、男ならあんな魅惑的な女、ほおっておく奴いねーよ。男を虜に する魔性の女ってとこかな。顔はかわいいし、スタイルはばつぐんだし、なんと言って も彼女のかもしだす雰囲気。たまんねーよな。」
ピアースは隣に座っているショウに話しかけた。
「・・・・・・・。」
私が睨み付けいるのがわかったのか、それとも本当に答えに困ったのか分からないが、ショウは何も言わず、もくもくと食べ続けている。
「ちぇっ・・・お前、それでも男か?」
期待していた応えが返ってこないので、ふてくされてごろんと横になった。
「あんたが、げてもの趣味なだけだよ。」
ホトも不機嫌そうだ。
「女にゃ、わかりっこねーよ、彼女の魅力は。」
ホトの方を見るわけでもなくピアースは、仰向けに転がったまま言い返している。彼の目に写っているのは、天井じゃなく、レベッカなんだろう。
「それにさ、言っとくけど、レベッカは、134歳のバーさんなんだよ。14歳だった のは120年前なんだよ。」
「分かってるってそんなこと。だけど、歳は関係ねーよ。バンパイアは歳なんて取らな いしな。」
「はんっ、勝手に言ってな!」
ホトはそれ以上口をきこうとはせず、横になると寝てしまったようだった。
「なんだよう、文句ばっか言って自分は勝手に寝ちまいやがって。」
ちらっとホトを見 るとピアースもそれきり黙って横になっていた。
「やっぱりショウも、そう思った?」
私は小声で聞いてみた。
「お前なぁ・・俺には、げてもの趣味はないぜ。」
ちらっと横に座っている私を見て、すぐ顔をそむけた。
「でも・・・いい線いってると思ったでしょ?」
自分でも意地悪言ってると思ったのだけど、ついつい口から出てしまっていた。
「俺にそう言わせたいわけか?」
怒った時のショウの言い方になってきた。
「ご、ごめん・・・。」
「どうもお前、こっちにきてから俺に突っかかってくるような言い方するけど、俺なん か気にさわることしたか?」
「う、ううん・・別に。」
それどころか助けてもらったんだ。
「それにしてもお前、よく魔法なんか使えるようになったな。」
少し気まずい雰囲気になりかけてたが、ショウの方が話題を変えてくれた。
「ん、最初なんか、もうどきどきだったよ。あのね、一番最初に試したのが『ノック・ ノック』の魔法で、できないと置いてくぞってターマンに脅されてさ。あっ、前のター マンだよ。」
私は、最初のころの失敗等をショウに話した。
「俺だってそうだ。とにかく殺らなきゃ、こっちが殺られるから、と自分に言い聞かせ て戦ったんだけど、なかなか思うようにはいかなかった。」
「でも、もう戦い方もさまになってきたじゃない。」
「ああ、なんとかな。最初はそうもいかなかったけど、俺の心の中で誰かが、ああしろ とか、こうしろとか、言ってくれてるような気がするんだ。そうしてるうちに刀の使い 方にも戦い方にも慣れてきたんだ。」
「それってもしかしたら、ターマン・・・・かなぁ・・。」
「そうかも知れない。刀を持つと全身に力が満ち、不思議なくらい動けるんだ。敵がこ うきたら、こうやるんだ、とか、するべき事がふっと頭に浮かぶんだ。いや、それより 行動の方が早いかな?多分、思うと同時に動いてるんだろうな。」
「ちょっと、ショウ、それって少し危なくない?」
「ははは、かもな・・・。」
ショウとこうして話すのは、こっちに来てから初めてだ。他のみんなが寝ているのをい いことに、私たちは、睡魔が襲ってくるまで話し続けていた。でも一番私が聞きたかっ たこと、ホトとのことは、最後まで聞けなかった。

 


〆〆to be continued〆〆

 
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