〆〆 その17・村への道って・・・? 〆〆

 どんなに辺りを探してもミスタファファスは見つからなかった。
ここにいつまでもいてもしかたないので、私達は来た道を戻ることにした。
となりにも、広い部屋らしきものがあったが、めぼしいものは何もない。
階段は2つ。1つは行き止まりで、もう1つは少し広い部屋に繋がっていた。
ゾンビのお出迎えがあったその部屋の奥には、凄まじいほどの数の骸骨が転がっていた。
城の死体置き場らしいんだって。何ともいえない気味の悪い部屋だった。
ハートレーは、頭蓋骨の1つからいくつもの骨が取り去られていたのを見て、 興味深げに言った。
「脳の手術は成功率がそれほど高くないんですが・・・」
うーーん、私じゃさっぱりわからないけど・・。

とにかく何もめぼしい物がなか ったし、何よりそんなとこに長くいたくなかったので、私達は魔法使いの洞窟を後にし て、採掘場の地下の回復の泉に来た。
かけれるだけの必要な呪文をかけまくり、MP及びHP回復の泉を飲む。これで準備万端。

「さて、どうしましょうか?ミスタファファスは『魔法使いの住処をさぐって、それか ら眼をどうにかするんだ。』なんて言ってましたが・・魔法使いの住処はあの洞窟 じゃないようですし。見落としはないだろうと思いますので。」
ハートレーがみんなを見渡す。
「城の地下2階の開けれなかった部屋が2つあっただろ?多分そこじゃないかな?手前 のが魔法使いの部屋で、奥の眼のなかった髑髏の扉なんてそれに当てはまるんじゃない かな?」
剣の手入れをしながら珍しくターマンが意見を言った。
「さっすがぁ!!さえてる〜!」
ピアースが少しからかうような言い方をしてターマン を見た。みんなも、そして私も思い出した。
「・・・そうすると・・またあの渓谷を渡って・・お城へ・・・?!」
ぶつぶつ小声で呟いてた私に、ホトが気付いたみたい。
「お城へ行くのはいいんだけど、でも、あたい、できるなら一度ここから出たい よ。たまにはベッドで寝たいし・・食料だって、泉を水を飲めば元気一杯になる ったって、やっぱりお腹になんか入れたいし、とうもろこしばっかじゃぁ。」
ホトが口を尖らせている。
「そうですね、壊れたカタパルトの先・・・あそこから外に出れるかもしれませんし、 もし出れれば、近くの村で休んで食料を仕入れてまた城に入ればいいですね。それに、そう なれば渓谷を渡らなくてもいいでしょうから。」
どうやら私の独り言は、ハートレーにも聞こえてしまったみたい。
「賛成ですね、ハートレー、ホト。但し、出口に繋がっていれば、の事ですが・・。」
「なによー、コルピッツぅ、がっかりさせるようなこと言わなくてもいいでしょ?」
コルピッツを睨み付けるホト。
そんなホトを制止するかのようにピアースが2人の間に入る。
「まっ、それも考えられない事じゃないが、とにかく、行ってみようぜ。出れなくて元 々だ。」
「じゃ、スミッティのおじさんのとこに置いてきた歯車と・・・う〜ん、あの岩って 使い道あるのかなぁ?とにかく取りにいかなくっちゃね?!」
話が暗くなってきそうだったので、私はわざと明るい態度を取った。
「そうだな!」
にこっと私に笑いかけてくれるピアース。
「そうですね、岩も持っていった方がいいでしょう。私が持ちますから、大丈夫です よ。」
コルピッツが立ち上がると他のみんなもそれぞれ手入れした武器を持ち立ち上がった。
「んじゃぁ、スミッティのおやじさんとこへ、しゅっぱぁ〜つ!!」
ご機嫌良くホトが先頭に立る。
私はピアースと目を合わせクスッと笑うと彼女の後に続いた。
みんなも口に出して言わなくても一度外に出たいと思ってるはず。ここの探索を始め てからどのくらいたつんだろう・・・記憶を失くしてしまった私にははっきりとわから ないけど、食料も底をついてしまってるし、戦闘の合間の休息は固い床やごつごつの地 面の上だし、村の宿屋で・・そう!ベッドの上でゆっくり休みたい!と誰もが思ってるは ず。それに、普通の食事がしたい!
「冷たいビールをぐ、ぐ〜っとやりたいしなぁ・・・」
考えてる事はどうやら同じみたい。ピアースがついうっかりというんだろうか、歩きながら呟いた。
「あたいは肉をたらふく!」
ホトがピアースを振り返って大声で言う。
「俺もビールがいいなぁ・・・つまみは・・好物のホルモン焼き、牛舌、ない なら豚でもいいな。」
珍しくターマンが話にのった。それだけ口には出さないけどターマンも普通の食事などが恋しくなってる証拠だ。
「食事もいいけど、私はやっぱりゆ〜っくりお風呂に入りたいなぁ。」
「おっ、そいつもいいな、なんなら背中流してやろうか?!」
「べーっだ!結構ですよぉ!」
後ろを歩いているピアースを振り返り、私は思いっきりあっかんべーをした。
こんな雰囲気も久し振りのような気がする。 みんな外に出れるかもしれないという期待で心持ち浮かれているみたい。
そうそう、『でも』ということはこの際考えないことにして。洞窟ばかりのせいか気持ちも沈みがちだったから、たとえ出れな いとしても今はそれを考えるのは止めて。

そんなこんなで、スミッティのところにつくまでみんなそれぞれ好き勝手な事を言いながら歩いていた。
おかげで途中モンスターに襲われた時笑いながら唱えたものだから、FIREBALL がバックファイアしてしまった。
え?そ、そう・・勿論私の話・・。
まぁ、あの程度の呪文でよかったんだけど、(ちょっとお焦げには、なっちゃったけど)高等呪文だったら、 ひとたまりもなかったはず。外へも出れずに、さしずめゲームなら、『GAMEOVER』ってとこかな?
呪文を唱える時は気をつけなくっちゃと自分に改めて私は言い聞かせた。


 スミッティのおやじさんとこで歯車と重い岩を受け取り(と言っても勝手に置かして もらったんだけど。)食料に焼きとうもろこしを少し買うと、私達はカタパルトへとや って来た。
「やっぱり正解だな。重い岩がこのカタパルトの弾に丁度いいようだぜ。だけど・・・ 1個かぁ・・失敗するとまた取りにいかなくちゃならないなぁ。」
歯車を組み込んで伸びきったゴムバンドも取り替えたピアースが独り言のように言った。
そのゴムバンドは、ピアースのひらめきで、モンスターから手に入れたゴム糸を寄り合わせてゴム紐を作り、そのゴム紐2つでできたものだ。
「頼りにしてるよ、ピアース!!失敗は許されないんだ、頑張っておくれよ?!」
ピアースの緊張など気にせずホトは側に座り込んでわざとプレッシャーをかけた。
「・・・失敗すると・・・。そん時は、上手い具合にHILL−GIANTでも 出てきてくれりゃいいんだがなー。」
「出てきてくれても岩を持ってるかどうかわかんないよ?」
冗談っぽくいるが、ピアースは、今まで見たことのないほど真剣な顔をしている。その緊張が伝わってきて、こっちまで真顔になってきてしまう。
「うーーん、結局、向こう側から登って岩のごろごろしてたとこに行くしかないのか・・こりゃ〜、 責任重大だなぁ・・よっこらせっと・・・。」
受け皿に岩を乗せる。それをかけ金にかけ外す。
対岸の的に狙いをつけながらバンドを引き絞る。
みんな息を飲んでピアースのする事に注目していた。

−ギリギリギリ・・・・・シューッン!!・・・−
−バンッ!!−
「あたぁーりぃーー!!」
さっきまでの真顔は何処へやら、ピアースがみんなの方を振り向き、「やったぜ、どうだい!」とでも言いたそうな自信満々の顔をして親指を立て て勝利のポーズ!
「さっすがぁ!!」
ホトが指をパチンと鳴らした。みんな顔を見合せほっとしている。
「じゃ、行こうか。」
そして、私達は谷間にかかった橋を渡り先を進んだ。

「どうしても山に登らせたいってわけ・・・か。上等じゃん、登ってやろう じゃないの!!」
今までの山道も結構きつかったけど、今度の道はより一層険しさが増している。 というよりも登れるような道じゃない。滑り落ちるのが関の山ってとこみた い。
さすがのホトも道を見上げて立ち止まってしまった。
「行くしかないんだよねー。でもちょっとここで休んでからにしない?」
「そうですね。」
いつものごとくハートレーがホトに相づちを打った。

 「へぇーーーーーーーえ・・・やっと頂上みたいだぜぇーーーー。」
休息を終え、必死の思いでその急な斜面を登ること、数時間、ようやく頂上についたピアースが、 息を切らせながら道に転がった。
私ももう息が切れ切れ。それでも、意地でなんとか登り終え、その途端、へたへたと座り込んでしまった。
他のみんなも同じみたいで、座り込んでいる。
ここまで来るのに何度滑り落ちただろう。その度に呪文で回復させ、時には休憩をとってようやく着いたんだから。
勿論HILL−GIANT等のモンスターも頻繁に襲って来た。
回復の為に休憩を取っていたのか、はたまた、戦闘の為だったのか分からない状態。

ここは、今まで登ったところより一段と高く、どうやらジャイアントマウンテンの本当の頂上と言えそう。
とにかくもうこれ以上、上に続く道はない。それを確認して、情けないけど私はほっとした。
道の先に見えるのは、1件の山小屋のみ。
でも、はたしてこんなところに誰かが住んでいるのだろうか。
HILL−GIANTの家なのだろうか。
他に道は見つからないので、そこへ行くしかないみたいなんだけど。
GIANTの家だとしたら休憩させてもらうどころではない。戦闘になることの可能性 の方が多い。
とにかく登ってきたところで暫く休息を取り、それから山小屋に行くこと にした。
すり傷等を呪文で治し、岩陰に身を寄せ眠りにつく。勿論、交代で見張りをたてているよ。
もうこの頃になると特技と化して、どこででも眠れるようになってしまっていた。すごく硬い岩のベッドなのに・・。
(・・・でも、ホントは普通のベッドが恋しい・・・。)
ここから出る道が見つかることを祈りながら、村でゆっくり骨休みしている様子を思い描きながら 私は眠りについた。




〆〆to be continued〆〆


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