〆〆 その16・超巨大蛇とトウモロコシ 〆〆

 「何だ、何だ、何を言ってやがったんだ、あいつは?べらべらしゃべりやがって・・ 済んだら、ほい、さよならってか?」
ピアースは少しいらついているみたい。
「ほんで、この骨がさっきの頭の元身体ってわけだな・・・ええ〜と、何かめぼしい 物は・・・と。」
独り言を言いながら骨に近づいて調べる。
「あった、あった・でもそんなに偉いおっさんならもっとあってもいいのになぁ、 意外としけてるんだな。」
私達は『魔法使いの洞窟のカギ』『WIZARD’S CONE』『魔法使いの指輪』 『STAVE of MISSILES』それと『BOOK of SLOTH』を手に入れた。
「これで入れなかった魔法使いの洞窟へ入る事ができるね。」
ホトがピアースの手から鍵と指輪を取る。
「う〜んと・・ちょっとあたいの趣味じゃないね。ツェナ、 あんたはめてなよ。」
「冗談でしょう?私だってそんな気持ち悪いのやーよ。水晶で、できてるのはいいとし て。・・だってぇ、それ髑髏でしょう?ホトがはめてればいいじ ゃない?」
そう、その指輪は気持ちの悪い髑髏の形。とてもじゃないけど、はめる気にはならない。
「う〜ん・・・あたいもちょっと・・ね。」
ホトは指輪をつまみあげ観察している。
「呪いのアイテムじゃないような気はするけど、まっ、そのうち何か使い道があるだろ うから、しまっておくよ。それともピアース、あんた、はめる?」
彼女はその指輪をピアースの顔へ、くっつけるように差し出した。
「俺はこんな趣味悪くないぜ。鍵と一緒にでもしまっておいてくれ。」
顔を少し後ろに反らせると手でホトの方に押しやった。
「はははっ。そうだね、そうしとくよ。」
SLOTHの本はモンクであるコルピッツが使った。これで1つ呪文が増えたわけ。
後のは使えそうもないので、コルピッツに持っていてもらうことになった。
彼は完全に荷物係りになってしまってたの。
でも紳士的な彼は文句一つ言わない。ドラコンだから怖そうにみえるのだけ ど、外見と違って親切でなかなか好人物みたい。

一旦来た道を戻ってスミッティの所に寄り、少し休憩をとってから魔法使いの洞窟へと向 かった。
右、右へと進み上への階段を選んで行ったら幸運にも洞窟の入口へ辿りついて いた。
奥は採掘場の暗闇の道から出た所に繋がっている。
そして、その一番奥の開けれなかった門を手に入れた鍵で開ける。
中はなんだかじめじめしてあまりいい感じがしない。
私達はいつ何が出て来てもいいように注意を払いながら一歩一歩進んでいった。

と、突然影の中から巨大な蛇が飛び出してきた。
すぐさま攻撃に入ろうとした私達の出端を挫くように彼は人懐っこい、そして、少し甲高い声で 明るく話しかけてきた。
「いやぁ、そろそろ誰かが助けに来てくれると思ってたんだ!」
拍子抜けした私達は返事をするのも忘れてじっと 彼を見つめる。
ゾーフィタスの威厳のある話し方とは違ってえらく軽い。

「どれくらい長いあいだおいらがここに閉じ込められていたと思う?」
「は?」
声に出せば全員そう言っただろう、でもあまりにも意外な展開で誰も返事が出 来きず、ただ唖然としていた。
そんな私達を無視するかのように彼はまた話し始めた。
「エェ?!わっかんねぇだろ?!・・100と20年だぜ!・・・なんてこっ たい!ゾーフィタスの大ボケ野郎にこのしっぽが届くなら、あんちきしょうをぎったん ぎったんにのしてやるのによぉ!・・・
おっと、失敬・・どうもありがとう。おめぇさんのおかげで助かった。 おいら、ミスタファファスっていうんだ。」
鍵を持って唖然として見上げているホトに気づき、彼女を見て話し掛ける。
どうやらただの蛇ではなく、なにか深い訳がありそう。
ホトはそう言われても蛇に睨まれた蛙のようにじっとしていた。
彼女のくりくりした大きな目には、くねくね身体を動かしながら話す ミスタファファスの全身がが一面に映っていた。
私達など一口で飲み込めそうな大きな口、話すたびにチロチロ出てくる 細くて長い赤い舌。その太い胴体で巻きつかれたらひとたまりもなさそう。
彼は暗闇の中に続いていて、どのくらい長いのかわからないほどの胴体を引き寄せ(?)そこ にとぐろを巻いた。
そして、ようやく頭が働き出した私達も彼の前に座り込む。
どうやら彼もまたゾーフィタスと同じように、話したいことが山ほどあるらしい。
その態度から、明らかに話せるのが嬉しくてたまらないらしい。
私達は自己紹介した後、彼の話にじっと耳を傾けた。
「おいら、昔、ゾーフィタスって魔法使いの弟子やってたんだが、ちょっとした事で奴 にここに閉じ込められた、おまけに奴はそのことを忘れちまいやがって!!
ああ、わかってるって。おめぇさんなんでこんなでっかい蛇がすげぇ魔法使いの弟子な んかになれたか、わかんねぇんだろ?教えてやるよ!」
どうやら私達が思ったことの察しがついたらしい。
「おいら本当は蛇なんかじぁねぇんだ!・・って言うか、少なくともあのどーしよー もねぇ呪われたペンが現れるまではそうじゃなかった!!」
遠い昔を思い出すかのように、彼は暫く上を向いていた。
そしてまた私達の方を向き直すと憤慨やりきれないといった感じで、再び話し始める。
「ちっきしょう!!考えただけで鳥肌が立ってくる!・・・おいらちょっと忍び込んで あれを1回使っただけなんだ。お妃のお気に入りにしてもらいたくって、ちょいと『さ っそうと』してて『かっこよく』してほしいって。・・・それと王様にやきもち焼かれな いように『安全』に過ごしたいって書いたんだ。
それがどうだい?!お妃様がことのほ か蛇が好きだっていうんで、おいら蛇に変えられちまったんだ!で、魔法使いの野郎が おいらをここに閉じ込めたんだ。ペットにでもするつもりだったんだろうか?おかげで 王様からも安全だってわけだ!!まったくあのどうしようもない大ボケのペン!!!」

同じ様な愚痴を永遠と聞かされそうな感じがしてきた私達は何か話題を変えなくてはと 思っていた。
でも、彼はゾーフィタスや王や王妃のこと、このお城の事を聞いても自分に 関する事しか言わなかった。
蛇にされたのがよほど頭にきているんだろうけど、その『ペン』とかいうものについても あまり知らないみたいでほとんど話にならなかった。
かといって立ち上がってここを出ようとすると又すぐ話し出し、そうもさせてくれなかい。
でも、いつまでもこうしているわけにもいかないので、なんとかしようとコルピッツが、 そっと彼に『MIND READ』の呪文をかけた。
「なんだって、あいつ?」
そぉっとホトがコルピッツの耳元に囁いた。
目を瞑り彼の心を読んでいたコルピッツはぽつりと言った。
「『何か食べたい・・・腹へった。』・・どうやら空腹感しかないようですよ。」
「げ、げぇっ!もしかしてあたい達を?!」
「そのつもりはないみたいですが・・。」
2人の会話を聞いていた私ははっと閃き、2人に小声で言った。
「ねぇねぇ、この焼きとうもろこし、どうかなぁ?」
「えーっ?焼きとうもろこしなんて蛇が食べる?」
ホトが少し驚いたように、でもやはり小声で言った。
「でも他に手持ちがないから。・・それに本当は人間でしょ?」
「ん?・・・なんかいい匂いが・・・?」
私がバッグから1本出したのでどうやら匂ったみたい。ミスタファファス がクンクン匂いを嗅ぎ始めた。
「どうやら、食べてくれそうだね。そいつでもやっておさらばしようよ。」
ホトはそう言うと私に早くやりなとでも言うように親指でミスタファファスを指した。
「あのぉ・・こんなのしか持ってないんだけど・・。た、食べられます?」
そう言いながら恐る恐る彼に近づき、私は勇気を出して差し出した。
「わあ!サンキュウーっ!」
そう言ったかと思うとぱくっとその大きな口で飲み込んだ。
手まで食べられそうな気がした私は、思わずとっさに手を引いた。
「何よぉ、笑うことないでしょ!?」
その私の態度がよほど面白かったみたいで、ホトは後ろでくすくす笑っている。
恥ずかしさもあって、私は思わず睨んでしまった。
「だってぇ・・・」
そう言いながらまだくすくす笑っている。
「うぅぅ〜ん、、なんてうめぇんだ!」
「あ、あ、あの・・あと2つあるんだけど・・・これで最後よ。」
そう言いながら別に聞かれもしなかったのに、ついつい彼の方を振り向きざま 残りのとうもろこしを慌てて私は差し出した。
「ぎゃ〜っ、はっはっは!!」
ホトがもう堪えれないといった感じで大笑いし始める。
他の人も笑っているだろうと思った私はもうみんなの方を向きもしなかった。
恐いものは、恐いんだから仕方ない。だって、大きさが違うんだから・・・。
「う〜ん・・・うまかったあ!!」
ぺろっと食べてしまうと私を見つめた。
ぎくっ!もしかして今度は私を?そんな考えが一瞬頭に閃く。
でもそんな恩知らずじゃなかった。
ついそう思ってしまった自分が恥ずかしく思え、真っ赤になってしまった。
「こいつはお礼をしなくちゃいけないねぇ!・・・と言っても、おいらあんまり知らな いけど。・・・そうだなぁ、魔法使いの住処をさぐって、それから『眼』をどう にかするんだ。・・・こんくらいしか思いつかないや。じゃぁ、頑張りなよ!!」
そう言い終わるとさっさと奥へ戻って行く。
慌てて私はその後ろ姿に叫んだ。
「どこにあるの、それ?・・眼って?」
聞こえたのか聞こえなかったのか分からないけど、返事は無く、 いくら呼びかけても、待っても、そのまま出てこなかった。

 


〆〆to be continued〆〆


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