〆〆 その14・船長のお宝 〆〆

 橋を渡り進んだ道の先はジャイアントマウンテンがそびえ立っていた。
「なんとかここから登れそうだが・・・おっそろしいほど急だなぁ。・・おい、 どうする?」
ピアースが道を調べてこっちを振り返った。と、彼の後ろから巨大なおのを持った巨人が襲って きた。
「ピアース、危ないっ!」
私が叫ぶのと同時に(一瞬早かったかとも思われるけど)すっと飛びのけた。
「HILL−GIANTSだな。」
今まで冗談ばかり言ってたみんなの顔がキッと締まる。すでに条件反射で戦闘体制を取っている。
−ズシーーーン!ズシーーン!−
その大きな足で踏まれたらひとたまりもない!
散りぢりになり敵を囲んだつもり・・・なんだけど・・踏み潰されないように逃げ回ってるだ け・・・みたいな気もする。
なんとか呪文を唱えたいんだけど、精神集中する暇なんて・・・ありそうもない〜・・・ とととっ!潰されてたまるかあっ!!
「ツェナっ!そっちは崖っ淵だよっ!!」
「わおぅっ!・・とととっ!」
もう少しで絶壁から落ちるところだった。
ホトの掛け声で止まったのはいいけれどGIANTSのおじさんは止まらないーっ!
振り向くと目の前に、じゃない・・・頭の上にその大きな足がっ!
(もうだめぇーっ!)そう思って頭を抱えてしゃがみこんだ。
・・・・・
(あれ?・・・潰されない?)
恐る恐る見上げると私を踏みつぶすはずのその大きな足が・・・じゃなくてGIANT のおじさんは石になっていたのだった。
片足で立っている彼は、見ているうちにそのバランスを崩し、崖の下に真っ逆様に落ちていった。
「ふ〜・・・助かった!!」
どうやらもう1匹も既に倒したようだ。
「よっ、危なかったな、ツェナ!ターマンが呪文を唱えなかったらやばかったぜ!!切 りかかったくらいじゃ効き目がないからな。」
落っこちていった先を見てから、ピアースが振り向きウィンクをした。
「ターマンが・・。」
そう呟きながら私は彼を見た。
そんな私に気づいているのか気づかずにいるのか分からないが、ターマンは素知らぬ顔で山への道 を調べているようだった。

「険しいようだが何とか登れそうだ。行くか?」
「そうですね、とにかく行けるところまで行ってみましょう。それと今のGIANTが 落としていったこれなんですが、何かの役に立つんでしょうか?」
ハートレーが何やら岩のような物を抱えあげようとしている。
「役に立つのでしたら私が持って行きますが。しかし、この山道では無理でしょ う。こんな重いものは誰も持っていかないでしょうから、ひとまずここに置いておきま せんか?」
「そうですね、そうしたほうがいいようです。」
コルピッツに言われハートレーはそう答えると岩にまわした手を離した。
「でもこんな重いもの持っていって何かになるんでしょうか・・・?」
「ここでは何が役に立つか検討がつきませんので、手に入れたものは一応持っていくべ きじゃないでしょうか?私なら大丈夫ですよ。それくらいはまだ持っていけれます。」
「そうですね、じゃ、山から下りてきたら、お願いするとして、そろそろ登りましょう か。」
ハートレーは一端その険しい道の先を見上げると登り始めた。続いてコルピッツ、ター マン、ピアースと続いた。

「う〜ん・・こういうのってだ〜い好き!!」
ホトはにこにこしている。
「大好きぃ?こんな滑り落ちそうな道が?」
私は呆れて彼女を見つめた。私は半分息が上がっていた。
「そうよ!面白そうだもん!!」
目をくりくりさせながらじっと私を見る。
「あっ、そっか!ツェナはこういうの苦手だったねぇ・・よ〜し、しんがりはあたいが なるよ!落っこちないように見ててあげるから。ネッ!!」
急に閃いたようにそう言うと、早くも私を押し始めた。
「大丈夫だって!何もそこまでしてくれなくてもぉ。」
「あははっ、いいから、いいから!」
何だかんだ言いながら気がつくと頂上についてしま っていた。

「他に道はないようだ、来た道を引き返すしかないが・・・何かその辺にあるか手分け して少し調べようか。」
ターマンはそう言いながら既にあちこち調べ始めている。
「何かないかなぁ・・・折角登ってきたんだから・・。」
そう思いつつ辺りを探った。
「あれ?」
岩壁に何かあるような気がして探った。隠しボタンだった!
「ねぇ、押していいかなぁ?」
何が起こるか分からないので私はピアースに聞いた。それと言うのもボ タンの横にはこんな事が書かれていたからだった。
『この宝箱の所有者はJR船長とその仲間である。汝に呪いあれ!』
「う〜ん・・まっ、いいようだな。これといった仕掛けもないようだし。だいたい、こ んなこと言われりゃ、余計開けたくなるってもんだ。」
笑いながらピアースは私の肩ポン!と叩いた。
(よ〜し!)意を決して押してみる。
カチャッ、カチャッと軽い音がするとなんと宝箱が出てきた。鍵もかかってな いようなのですぐ開けみる。
「あれ〜?・・・こんなもんが1つだけだよぉ。」
大きな宝箱にしては、しけていて、胸にでもつけるアクセサリーなんだろうか、 あんまり大したものでもないようなのが入っていただけだった。
「どれどれ?」
ホトが身を乗り出して覗き込む。
「ほんとだねぇ・・こんなものそう大したものじゃないよ。なんでこんなのが たった1つだけ・・」
そこまで言ってはっと気づいたようだ。
「そうか!!これが船長のお宝ってわけだよ!来る道々足跡があっただ ろ?あれはきっとクイークエグの足跡だよ。あたいたちより先に取りにきたんだよ、き っと。」
「でも、あの跳ね橋は?」
「んー、きっとあたいたちが下でごそごそしてる時に追い越してったんだろ? おおかたGIANTのおっさんたちと遊んでいるうちにそっと登ってきたのかもしれな いよ。」
「多分な、でも例え1個でも義理堅く残しておいてくれたじゃないか。なかなかでき ないぜ。まぁ、一番安っぽいものなんだろうがな。」
ピアースは箱の底から1枚の紙を取り上げうなずいた。
「『情報ありがとう! *クイークエグ* 追伸、感謝のしるしと 思ってこれを受け取ってくれ』だとさ。」
ピアースとホトと私は3人顔を見合わせるとくすっと笑った。
「他にはないようだ。下りてまた採掘場行きだな。」
ターマンが自分に言い聞かすように言った。
「そうですね、それしかないようです。」
コルピッツも同意し、私たちは再び採掘場へ向かった。
勿論登るより下りるほうが難しく何度も滑り落ちてしまった私達だった。
何とか麓まで来ると「そんなもん」とみんなが言うのも無視してコルピッツは重い岩を自 分のバッグに入れると再び歩き始めた。
でも歯車と重いロープ、その上に加えたものだから、 さすがの彼も少し足取りが重いようにみえる。

何とかスミッティのおやじさんのとこにくると1000GPで歯車を直してもらった。
その間おやじさんの焼きとうもろこしを食べ、腹拵えすると、私達はそこで休ませても らうことにした。
ここならモンスターも襲ってこない。
本当に久しぶりに眠ったなぁと私は感じていた。他の人は知らないけど。




〆〆to be continued〆〆


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