〆〆 その11・坑道は巨大アリの巣? 〆〆

「よーし、OKだ。頑張ったな、ツェナ!」
ヒョイっと先に飛び下りるとピアースは、私を下ろしてくれた。
「あ、ありがとう!」
ようやく地に足がついた。もう手がだるくて・・・足はまだまだ震えてるし。
「はーー・・」
思わず大きな溜め息をついてしまった。
「大丈夫ですか、ツェナ?」
コルピッツが珍しく声をかけてくれた。
「は、はい。大丈夫です。すみません、遅くなってしまって。」
「いいんですよ、誰も気になどしていませんよ。どうですか、歩けますか?何でしたら 少し休みましょうか?」
「い、いいえ、歩けますから。」
返事をしながらホトを探した。
「向こうの方で、何か吸い込むような音や、くちゃくちゃ何かを食べてるような音がす るよ。」
そう言いながら彼女がこれから行こうとしている方から歩いてきた。どうやら 少し様子を見てきたらしい。
「では、行きましょうか?」
コルピッツは再び先頭に立ち歩き始めた。
私はまだ少し足が地についてないような気もしたが、ぐっと足に力を入れるとみんなと一緒に歩き出し た。
さあ、お城の外はどうなっているんだろう?何が待ち受けているんだろう・・。
期待と不安が入り交じっておかしな気分。多分モンスターはまたまた一段と強くなってるんだろう。
私は頭の中で今一度呪文を確認しながら進んだ。

 ホトが「何かを食べているような音がする。」と言った正体は、巨大植物モンスター だった。
前に渓谷の向こうに来たときに見た女の人達のうちの誰かなんだろうか、周り には、折れたスピアだとか、盾、そして、布の切れ端なども散らばっていた。
そして、まだ食べ足りないらしく、私たちも襲ってきた。その長いツルを伸ばし て。
でも、私以外、疲れてもいないみんなは、さっさとそいつを倒し、そこから 少し先にあったE−Z昇降機で、私たちは下に下りた。

トンネルを出るとそこは巨大な渓谷が広がっていた。いくつもの橋が網の目のように谷 の間に渡されている。そして頭上のはるかかなたには、渓谷の真ん中あたりの最も深い 谷から立ち上がる壮大な山の頂きがうかがえる。
「あれが海賊の宝が隠してあるというジャイアントマウンテンだな。道と言えそうな道 はなさそうだな。さてと・・例によって右、右と行くとするか。」
コルピッツの了承を無言で得ると、ターマンがさっさと歩き始める。

「ん?」
目の前をピンク色の物体が通り過ぎて・・じゃなくて、見る見る間に目の前一 面に広がったかと思ったら襲ってきた!!
「ツェナ、そいつはモンスターだぞっ、後ろへ下がれっ、早くっ!!」
自分の形を自由に変え、ピアースの手裏剣もものともせず避けてしまう。
クラゲの様な 形をしていたかと思うとイカのようにもなるし、ゼリー状のへんてこな生き物だ。
こう いうのはやはり魔法の方が効くんだろう、ということで、『FIRESTORM』で倒 し、再び迷路を進んだ。

迷わないように右に沿って歩いているつもりなんだけど、どうも自信がない・・・など ど心配しながら歩いているうちにどうにか採掘場に着く。
どうしようか、と相談したんだけど、中もやはり迷路になっているためこのまま右伝いの方法をとることになった。
結局またすぐ外へ出てしまった。ピアースは先に中の調査をしたいようだったのだけど、、。
そして、ジャイアントマウンテンに続く道への橋があった。

「おいら、通行料金を取るトロール、TOOL TROLLだ。」
橋を渡ろうとしたら突然大きくて醜いトロールが下から出てきて目の前に立ちはだかった。
辺りに響くような大きな声、少し頭が足らないかなと思わせるようなのんびりとした話し方で言った。
「料金を払わないとお前の頭をとるぞー!!・・料金払うかあ?」
「お払いしますよ。いくらでしょう?」
先頭のコルピッツが財布をだした。トロールはそれをひったくるようにすると少しばかり残してあと殆ど取ってしまった。
「お前は賢い。通っていいよ。」
彼はそう言い残すとさっさと姿を消してしまった。
ピアースとホトが文句を言ったのは言うまでもない。
「なんだよう、コルピッツ!!あんなのにやることなかったのに!」
「そうだよ、もったいない!!図体がでかくてもあんなやつ一発でやっつけれたのに! もうホントにあんたは紳士的すぎるんだよ!!」
「ですが、不必要な戦闘は極力避ける主義でして。」
・・・コルピッツと争う気など彼らも元々ないので、それ以上は言わなかった。
「おい、今度はそうもいかないみたいだぜ。」
が叫んだ。橋の向こうをみると巨人が立っている。 恐ろしく大きなハンマーを持っている。
「ゲ、ゲーー、あんなので叩かれた日にゃ、命がいくつあってもたまんないよ!!」
ホトがさっと身を引いた。
でもそこはもうそんなに苦戦しない。魔法でさっさと倒して(勿論私よ!)先に進んだ。

その道は山へと続いているようだった。
「でもこれが道って言えるのか?俺様はいいとして。」
少し心配そうにピアースが私を見た。
なるほど細く険しい。誰か少し前に登っていったのか小さな足跡が残っているけど。
「大丈夫です。なんとか登れますから。」
その私の一言で決まり、半分足を滑らせながらそれでも何とか登ることができた。
でもそこは、大きな岩が辺り一面に転がっていて、他に道というようなものもなく、また来た 道を戻ることになった。多分、最近地滑りでもあったんだろう。

「下りる方が苦労しそうだねぇ・・・」
ホトが下を見ながら呟いた。
「足を滑らすとひとたまりもないよ。どこまで落ちていくか分からない。こりゃぁ、怪我をするの は覚悟で降りるしかないね。他に道もないようだし・・・。」

予想通り、降りたというよりも滑り落ちたという方が正しかった。
麓でヒールの魔法で回復させて少し休憩を取った。
もっとも HILL−GIANTやMINER−DWARF等が襲ってきたのは言うまでもなく、 身体を休めてたのか戦闘訓練をしていたのか分からないような状態だったけど。
そうしてまた右伝い方法で進むと再び採掘場への階段が見えてきた。
中は本当に迷路だった。本当に右の壁伝いに進んでいるかも分からなくなってくる。
右、右・・と自分に言い聞かせながら進んだ。

「何だかこのドア開けたくないんだが・・・。」
ピアースが独り言を言いながらそれでもドアを開ける。
中にいたのはなんとGIANT−ANTの軍団。アリもここまで巨大化してるとばけもんなんてもの じゃない。
大きく鋭い口で挟まれたら、即真っ二つにだろう!
しかもそれを意図して彼らはそれを大きく開けて襲って来た!
「しまったっ!!」
ターマンがその鋭い口で腕を噛まれた!
なんとか切り落としてそれ以上の深手は避けたが、顔色が見る間に悪くなってきた。
どうやら毒に侵されたらしい。それもどうやら相当強い毒らしい。
「ターマン、大丈夫ですか?!」
ハートレーが、なんとか彼のところに行こうとしている、自分も攻撃を交わしながら。 でも、なかなか近づけない・・・早く毒を消さなくては!
ターマンの顔色が益々悪くなってくるのがはっきりわかる。彼はなんとか攻撃を交わしている状態。
ううん、全員そんな状態。
なんとかしなくては!・・でもこの数では呪文を唱えている時間もない。
私はポケットにポーションがいくつか入っていたのを思い出した。
もしキュアーポイズンのがあればハートレーの呪文に頼らなくてもいいはず。
ととっ、
そんなことを考えていたら、目の前に敵が大きく近づいてきていた。
私は慌てて呪文を叫ぶ!
「FIREBALL!!」
危ない、危ない・・・油断してるとこっちまで噛まれてしまう!
「あった、あった!・・ターマン、これっ!!」
襲ってきたアリを火だるまにすると彼の位置を確かめ投げる。
攻撃を交わしなんとか瓶を拾い上げるターマン。
「もう一個っ!今度はヒールポーションっ! 」
私がターマンに投げた時だった・・・
「ツェナ、後ろっ!」
ターマンが叫んだ。



〆〆to be continued〆〆

 
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