〆〆 その9・ぐるっと回って・・ 〆〆

 階段を下り付近を探索した。門が4つ・・・でも、どれも開きそうにない。
「どうするぅ?」
ホトが北側の『危険地帯、開門厳禁、常時厳守』の札の掛かっているアーチの 奥を覗き込むようにして呟く。
「しかたないだろ・・・そこしか行く所がないし。」
「なんか悪い予感がするんだけど・・・。」
少し心配そうな顔をして進もうとしているピアースを見つめる。
「行くぞ!!」
そんな2人の間をターマンが当たり前という顔をして通り、アーチをくぐって行く。
「行こう、ホト!」
私はホトの肩に手をかけ笑う。
「でもここ迷路みたいだよ・・・もう、こんな時ツェナの記憶が戻るといいんだけど なぁ・・。あっ、ごめん!別に深い意味で言ったんじゃないよ。」
私と目が合ってきまり悪そうに言うホト。
「気にしてないってば!でも、壁にそって行かない?その方が分かりやすいと思 うんだけど。」
「そうですね。じゃ、右の壁に沿っていくとしましょうか。急がば回れと言います から。」
ハートレーの同意を得、薄暗い道を進み始めた。今にもモンスターが襲いかかってきそ うな気配。

「本当に迷路だねぇ!モンスターも一筋縄ではいかないやつらばかりだしぃ!」
ホトの呟きに、私も同感。
どのくらい進んだだろうか、いったいどっちへ向かっているのか方向もわからなくなっ てしまっていた。壁に沿って歩いているからくるくる回っているような事は、ないとは 思うのだけれど頭の中で道がごっちゃになってしまっている。少なくとも私はそうだっ た。
「まだまだこれくらいは序の口だぞ!!」
うんざりという顔で溜め息をついてるホトにピアースが笑いかける。

「また行き止まりのようですよ。でも何かおかしな気配がしますが、まるで、」
とハートレーが言いかけた。
「うがーーーー!!」
「ゾンビだぁー!!」
悪臭と共にゾンビの軍団が!!
「こいつらって鈍感だから攻撃がそう効かないんだよ!くっさいし、大っ嫌いだっ!」
「ええーい、DISPELL UNDEAD!!!!!」
「それでは私も、DISPELL UNDEAD!」
「真似すんじゃないよっ!!」
どうもホトは何かとハートレーにくってかかっている。
「ですがこれが一番ですよ、こいつらには。」
ハートレーは何を言われても涼しい顔をしている。
「おいおい、夫婦喧嘩はいいかげんにしてくれよ、やるんならこいつらをやっつけてか らにしてくれ!!」
ターマンも攻撃を避けながらFIRE BALLを放った。
『俺は魔法なんかには頼ら ない、この腕さえあれば!』と言っている彼なんだけど、どうやら刀を汚したくないら しい。
(そうだよね、あんなの切れば後が大変だもんね、刀は武士の命って言うくらい だから、ととと、そんな事考えてる間はないや!えっとぅ・・ 私は・・・ん、そうだ!!)
「FIRE STORM!!」
自分でも慣れてきたもんだと思うんだけど、攻撃を交わしながらよそごとを考えていた のだった。この呪文はターマンの放ったFIRE BALLより強力で、ある程度の時 間敵を火炎の嵐に包み込むことができる。
ゾンビは結構団体でくるので、早いうちにこ れをかけると効き目がある。そう、バラバラにならないうちに。
コルピッツはゾンビだという事にも構わずバシバシやってるし、ピアースは百発百中の 手裏剣!!
・・・というわけで、余裕の勝利!!

「どうやらここはモンスターの住処みたいだな。」
ターマンが呟きながら山となって転がっている骨の間を調べ始めた。
(よくやるなー、気持ち悪くないのかな?)
コルピッツが塵の中からまだ使えそうなツルハシを見つける。
「冒険者がこれで道を掘り進んで来のでしょうか?」
「で、モンスターに捕まってここへ引きずり込まれておだぶつって訳か・・・なんとも 言えないな。自分の力もわきまえないからだな。」
「ちょっとそれは少し言い過ぎだよ!死者を冒涜するもんじゃないよ!」
ホトが怒るようにターマンに言った。
私も彼女の意見には賛成だ。何も好き好んで殺された訳じゃなし。相手が強すぎた んだよね、きっと、アーメン!!
そんなもの邪魔になるだけだからというターマンの意見を無視しコルピッツはツルハシ を彼の大きなバッグにしまい込んだ。
そして、行き止まりだったそこを出てまた進む。
別の、これもまたモンスターの住処かと思われる所の骨の中から『ダンジョンのカギ』をみつけた。
「これであの門が開けれるかな?」
そう言いながらバッグにしまうホト。
「多分そうでしょうね、でも今はとにかくこの道がどこまで延びているのか確かめま しょう。」
いつもながらコルピッツ声は辺りに響く、それだけに説得力もある。カギを手に入れて すぐにでも元の所に戻ろうとしてたホトもそれを言いかけたのを止めた。

「また行き止まりですよ。」
先頭を歩いていたコルピッツが細い道を引き返して来た。
「ちっ、しょうがねぇなぁ・・・。」
ピアースが苦い顔をしながら向きを変えた。
「ちょ、ちょっと待って。」
何かを思い出しそうで私は来た道を戻ろうとしていたみんなに呼び掛けた。
「何か思い出したの?」
ホトが早速近寄ってくる。
「え、え〜と・・・待って。・・何かがこの先にあったような気がするんだけど・・・ ああ〜ん、思いだせな〜いっ!!」
「ちょっと調べてみるとするか。」
頭をかかえて座り込んだ私の頭を軽く叩くとピアースは細い道の先へと進んだ。
「んー・・・別に何もないようだがなぁ・・・、おい、ちょっと待ってくれ!壁が少 しおかしいぞ!コルピッツ、さっき手に入れたツルハシでここんところ掘ってみ てくれないか?」
コルピッツは、バッグからツルハシを取り出すとピアースのいる方に向かった。私達も 彼の後をついていった。
「ここんとこ。ほら一度掘り返して後で石を埋めたような感じだろ?」
「そうですね。やってみましょう。」
彼は大きくツルハシを振り上げると壁を崩し始めた。さすがドラコン、みるみる間に壁 は崩れていく。
「うわー!宝箱だぁー!!」
ホトの目が輝いた。
「もうこのくらいでいいでしょう。後はピアース、お願いしますね。」
几帳面な彼はツルハシを布で拭くとバッグにしまった。
「え〜と、こいつには何が仕掛けてあるんだろ?」
ピアースがその宝箱を慎重に調べる・・・・。
「よ〜し、多分これで上手くいくはずだ・・・よ〜いしょっと。」
カチンと心地好い音がして宝箱は無事に開いた。中からはソードとキラスそれとメイル、 それも重装備用のものばかりだ。
「すっごいねぇ・・売れば結構いい値段になるよ、きっと。ヒールポーションは私が持っ ているね。え〜と、このスクロールは・・・」
「僕が持ってますよ。」
ハートレーがすっと手を出した。ホトは無言で手渡すとコルピッツの方に向き直した。
「でもさすがだねぇ・・やっぱり男はこうでなくっちゃ!!」
「これくらい何ともありませんよ。いつでも引き受けますよ。」
ソードと防具をもバッグに仕舞い込み相当な重みになっているはずなのに軽く肩にかけた。
「さて、先に進みましょうか。」
再びコルピッツを先頭とし私達は先に進む。

 「トンネルがありますが・・・岩で塞がってますよ。」
先頭を行くコルピッツが肩からバッグを下ろしながら言った。
「これは、またあんたの出番だな。これだけびっしりと岩が積み重なってちゃー な。」
ピアースに言われるまでもなく彼はもうツルハシを出している。
−ガラガラガラ!!−
大きな音とともにびくともしないかにみえた大岩も崩れ始める。
「やったー!!向こうが見えるよ!!もう少しだよ、頑張って、コルピッツ!!」
ホトが一人で騒ぎ、ターマンとハートレーそしてピアースは崩したその岩を退ける。
「ふーーーー、なんとか通るだけの道はできたな。」
「いつも偉そうな事言ってるわりにゃ、かよわいんだねー」
「お前達は何にもしてないだろ?文句言われる筋合いはないな。」
どうもホトとターマンはいつも喧嘩ごし。でも原因は私なんだろうけど・・・そう、 つまりホトはいつも私を庇ってくれてるから。
私もどうもターマンは苦手と言お うか・・どうも好きになれない。
「おい、ぼやぼやするな、ツェナ!!」
「は、はい、ごめんなさーい。」
いけない、いけない、一番怖いターマンに言われてしまった。どうも彼に何か言われる と蛇に睨まれた蛙のようになってしまう。実際彼はきつい目をしてるけど・・・そう、 震えあがってしまう位の怖さ。いつも睨まれているみたい。
「あれ?誰か向こうにいるのかなぁ?」
先頭に立ってトンネルを歩き出したピアースが言った。
「どれどれ?モンスターかなんかじゃないの?」
ホトが耳をピクピクさせながら覗き込む。薄暗いところを見るには彼女は折り紙付の 目をしている。
「へんてこな恰好した・・・女、だろうねぇ・・黒い肌の・・・えっとー・・・顔に白 い模様を施して、げげーっ、スピアと楯を持ってるよ!!私と同じバルキリーかな? でも、あんな変な恰好したのなんて今まで見たことないよ。怖そうな感じだよ。 あれっ?・・」
「どうしたの?」
私も彼女の脇から覗き込んだ。確かに女の人のようだ。その中の1人がこちらを指差し ているのが見えた。何やら話しているかなと思ったら一斉に左の通路に消え去った。
「追い掛けようよ!」
そう言うが早いかホトは走り出した。
「ホトっ、ちょっと待ってぇ!」
私もホトの後を追い掛ける。
−ドシン!!−
「痛ぁ!ホトったら、急に止まんないでよ!」
慌てて駆けていったせいか、急に立ち止まったホトにぶつかってしまった。

「ごめん、ごめん・・だって、これじゃ止まらなきゃおだぶつだよ!!」
見るとその先は、見下ろしただけで、気が遠くなるような断崖絶壁。
「うわー!すっごいっ!!下が見えない!!」
まるで底無しの落とし穴のような巨大な渓谷が広がっている。目眩がしそう。
谷の向こうでは先程の女 達がつる草でできたロープを引っ張りながら先を争って崖っぷちから立ち去ろうとして いた。
「おおーい、あたいたちは敵じゃないんだよーっ!!」
・・・・・「敵じゃないんだよーっ!!」・・・・「敵じゃないんだよーっ!!」・・・「敵じゃないんだよーっ!!」・・・
でも、返事も何もなく、辺りにはホトの声のこだまが聞こえるだけ。
「チッ、ないだい、なんだい・・・あたいたちがモンスターにでも見えたっていうのか い?全く怒れるったら!」
私の方を振りかえるとホトはぶつぶつ文句を言った。
「でも仕方無いんじゃない?だってここはモンスターの巣窟だもん。それに私達は敵じ ゃないつもりでも、向こうはどう思ってるか分かんないし・・・」
「そうだぜ、むやみに近づかない方がいいと思うぜ。」
ピアースももっともだという顔をしている。
「それにこの谷はとてもじゃないが渡れないぜ。他にロープはその辺には転がって無い みたいだし。まっ、城に戻って何処かで見つけるしかないな。クイークエグにでも 聞いてみれば、案外持ってるかもしれないしな。」
「しかし余程丈夫なロープでないとだめだろうな。それに向こう側に引っ掛けるか なんとかしないとなぁ・・・まぁ、そのうち何か閃くだろうな。さ〜て・・じゃ、 こっちの道を進もうぜ!」
楽天的と言おうか、何と言おうか、とにかく一人でぶつぶつ言ってさっさとピアースは先を歩き始 めた。
「そうだね、そっちに行ってみようよ。」
ホトがすぐ後をついて行く。もちろん私や他の人達もそれに続く。
もう片方の道、つまり右に曲がる道なんだけど、そこは行き止まり。洞窟は、なんと真上に延びていた。
「これじゃ登れないぜ。また戻るしかないな。」
ピアースが仕方無いというように呟きながら天井へと延びた真っ暗な洞窟をじっと見つ めていた。
「カギがありますよ。」
そう言いながら足元の骨かけらの中からハートレーが拾い出す。
ここでは、死体など骨の中をかき回すなんて、もう、日常茶飯事。
もっとも私は、まだできないでいる。そんなこと慣れるわけはない!
そのカギには、『BELL』と刻んであった。
「はい、鍵はあなたが持つんでしたね。」
そう言いながらホトに手渡し、彼女は黙って受け取るとバッグに入れた。

結局何も新しい展開はなくアーチの所に戻ってきてしまった。でも、ダンジョンのカギ を手に入れていたので、開かなかった門は全て開けることができた。
牢屋の一部屋 では囚人の骨のなかから『J.R解読指輪』を見つけ、先に手に入れていた死者の日誌 をそれで読むことができた。
クイークエグの知りたがっている宝の隠し場所はジャイア ントマウンテンらしい。
これを教えれば船長の部屋への合言葉を教えてもらうことができ、また何か新しい情報 を手に入れれるはず。
スケルトンにいきなり襲われたり、モンスターも手強いやつが 潜んでいたけど、なんとか倒すことが出来て、気がつくとぐるっと一回りして私達は地下 1階への通路に出てきていた。




〆〆to be continued〆〆


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