航海日誌(8) 任務完了〜!

 


 

 再びリゴンへ降りるシャトルの中。
「不幸中の幸いで階下への道を知ることができた。今回、何としても動力源まで行く。シャトルを出たらとにかく北へ直進する。そして走って走ってつっきるんだ!兵舎をぬければ何とかなるだろう。」
キャプテンも緊張した面もちだ。
「了解!」
全員今度こそという思いで一杯だ。

−プシュー−
ドアが開く。私達は走った。敵が目の前に立ちふさがらない限り、ただひたすら走った。B1、私が撃たれた兵舎のある所だ。でも今回は道が分かっているから横道には目もくれず走り続けた。
「やった、エレベーターだ!」
あの時通路に入ればもう階下へ行けたんだ。

 B2、通路が鍵の手に延びていた。両側には部屋がある。でも私達は無視して奥へと
走った。と、目の前に通路をふさぐドア、カギ穴がない。
「何処かにスイッチがあるはずだ!」
ゴードンはそう言うと来た道を戻りながら壁を調べ始めた。
「あった!」
スイッチを押す。
−ガー−
通路を塞ぐドアの手前に横道が出来ていた。奥に敵がいる!そいつを倒し、鍵を手に入れた。その鍵でドアを開ける。
「行き止まりだ!」
ふー、走り続けてきたので私は壁に寄りかかった。
「あ!スイッチ!」
壁にもたれたおかげで、偶然見つけてしまった。
「よくやった、さおり!」
キャプテンがガッツポーズをしている。
道は横にのび、またドアがあった。ドアを開けると空間が広がっていた。・・・何も無いみたいだ。左にドアがあった。ドアを開ける。また同じ様な部屋。視界の隅に敵も見えたが無視してとにかく走り続ける事にした。次々とドアを開け、私達はいくつかの部屋を走り抜けた。再び細長い通路に出た。

「敵だ!」
通路をロボット兵が塞ぐようにして立っている。ずいぶんしぶとかったが、なんとか倒し進んだ。!またしても通路がドアで塞がれている。
「スイッチは何処だ?」
私達は戻りながら、通路の壁という壁を調べた。が、何処にもない。
「たぶん両側にある部屋のどこかじゃないかな?」
ゴードンの腕にかかっている。時間は惜しいが1部屋づつ調べることにした。その細い通路に出て最初の部屋で横部屋へのスイッチを見つけた。
「鍵だわ!」
「だが、あのドアのじゃないぜ。」
そう、確かカギ穴は無かった。
私たちは他の部屋も調べる。部屋にはそれぞれ敵がいた。倒しては調べ、倒しては調べ
る、この繰り返しだった。
「もうこの部屋だけだわ。」
通路を塞ぐドアの3つ手前の右の部屋。私達は祈るような気持ちで入った。めずらしい、敵がいない。
・・・−ガー−
不意に音がした。遠くで何かが動いたような音だ。どうやら床にスイッチが仕掛けてあったようだ。
「開いたのか?」
ダグが走り出た。
「開いてるぞ!」
「よし!」
再び走り始めた。その先のドアを手に入れていた鍵で開け、私達はエレベーターを見つけた。

 B3、ここは通路にスイッチが仕掛けてあり、次々とドアが開き敵が出てきた。
「立ち止まるな!走れ!」キャプテンが叫ぶ。私達は必死に走り続けた。
「やった、エレベーターだ!」

 B4とB5はまさに迷路だった。それに加えて、敵の強さといえば、半端じゃなかった!それもゾロゾロと!弾もシールドももう底をつきそう。敵はより強力な武器を携えてくる。生命維持装置のバッテリーも限度だ。足も棒のよう。「ここまで来たのに、やっぱり私達もダメなのかしら?」
「さおり、気弱になるんじゃないゾ!」
私の気持ちを読んだのかダグが応戦しながら叫んだ。
「そう!しっかりしなくちゃ!」
気をとりなおし、また走り始めた。もう何処をどう走っているのか分からなくなってしまった。
「あの部屋は?」
鍵穴のないドアがまたあった。
「奥を調べよう。」
ゴードンは言うが早いか奥へ入り、調べ始めた。
−ガー−
床にスイッチが仕掛けてあった。
「開いたぞ!」
私達が来た方から敵が来る。
「急げ!」
キャプテンの号令でその部屋に飛び込んだ。
「行き止まりです!」
私は叫んだ。敵がすぐそこまで来ている。向こうのスイッチを踏まなければドアは閉まらない。もう一戦構える覚悟をし、身構えながら奥へ。
「!落とし穴だ!」


 「みんな、大丈夫か?」
キャプテンが全員を見渡す。
「はい、全員怪我はありません。」
私はゴードンとダグを見るとそう答えた。
「よし、行くぞ。」
B6、そこはエネルギー貯蔵庫だった。幸いロボット兵は1兵もいなかった。精製された大粒なユリジストの結晶。もちろん私達は今にもきれそうな生命維持装置のバッテリーに補充した。
「おそらく動力源は近いはずだ。だが少し休んだ方がいいようだ。」
キャプテンがみんなを見渡しながら言った。正直、私はヘトヘトだった。心臓がはち切れそう。足もこれ以上動きそうもない。壁にもたれて座り込んでしまった。みんなも壁に寄りかかっている。
「大丈夫か、さおり?」
ダグが私の肩に手をかけるとしゃがみこみ、じっと私を見た。
キュン、胸が痛い。私はこっくりとうなずいた。ダグは私の頭をポン、と軽く叩くとキャプテン達の所へ行った。

 「そろそろ行くぞ。」
ある程度落ち着いたと判断しキャプテンが言った。再び走る。ここも迷路だ。敵がいないだけいいけど。何度、見慣れた所を行ったり来たりしただろう。道が見つからない。
「あとあやしい所といえば行き止まりの細い道しか思いあたらないぜ。もう1度調べなおしだ。奥が見えてもUターンすべきじゃないな。」
ゴードンが考え込んでいる、
「何処かで見落としているんだ。」
みんな焦り始めている。走る、走る。また十字路ばっかりの所へ出た。確かこの辺は通
り過ぎてしまってよく調べてなかったんだ。横道はなかったんだろうか?
「キャプテン、あそこに行き止まりの道が!」
叫ばなくても、みんな見つけていたらしい。慎重にその道に入る。
!「落とし穴だ!」


 気付くとドームのように広い部屋にいた。壁にそってぐるっと回ってみたが出口もスイッチも見当たらない。と、突然、巨大なロボット(モンスター?)が!!!
「何、あれぇ?カニ将軍?」
私は思わず口にしてしまった。
変形した巨大なカニに人の顔をくっつけたようなロボット。
「おそらくこいつが動力源の番人だろう。やっつけるゾ!」
ダグが叫ぶと同時に攻撃を開始した。もうブラスターもミサイルもきれている。
頼みはレーザーだけだ。
「だめだ。びくともしない!」
ゴードンが叫んだ。
「だが、全く効かないわけじゃあない。続けるしかないぜ!」
ダグは少ないながらも相手がダメージを受けている事を確信してた。
「捕まったら最後だ、気をつけろ!」
キャプテンも注意を促す。
私達はとにかく逃げ回りながら攻撃を続けた。暫く続けると、相手の動きが分かってきた。なんて言ったっけ、ええと、昔の人がよく言ってた、確か『大男総身知恵が回りかねる。』だったか、よく覚えてないけど、まあそんなとこ、そうそう、または『ウドの大木』とも言ったっけ。なんと横歩きしかしないのヨ!私達はそいつの手?足?が、私達に届くぎりぎりの所で撃ち、そして逃げる、という作戦をとった。どの位それを続けたのだろう、何時間、何十時間も、続けているような気がした。一時たりとも気が抜けない。永遠に続くような気がしてきた。・・

−シューーーゥゥゥ・・・・・−
「やった!動きが止まった!やっつけたんだ!」
「キャプテン、あれは?」
気がつくとカニ将軍の後ろに通路が見えた。
「いくぞ!」
再び走り始めた。きっと近い!たぶんこの先のはずだ!みんな考えていることは同じみたいだった。
ドアだ!スイッチがある!通路に同じ様なドアが2つ3つ続いていた。

 「あった!これが動力源だ!!」
惑星の中心から延びているだろうと思われる巨大なマシーン。息がきれて暫く全員その前で立ち止まっていた。
「こいつが動力源か、これをぶち壊せばいいわけだな。」
全員その巨大さに圧倒され、見つめたままだったが、ようやくダグが言った。
「よし、撃てっ!」キャプテンの合図で一斉に撃つ。
−ボンッ!バチバチバチッ!!シュゥーーーーー!!−
その巨大な機械のあちこちに次々と亀裂が走り、爆発と共に火を吹き出した。
それと共に惑星の機能が停止し始めた。もう通信も可能なはずだ。長居は無用、一刻も
早く脱出しなければ危険だ。キャプテンが通信機を取り出した。
−ピピピ!−
「アランからアルゴへ。」
待ち兼ねたようなリンダの声がする、
「こちらアルゴ。リンダです。」
「任務完了!転送だ!」
「了解!」・・・・・・・。

 景色が変わった。アルゴの転送ルームだ。「ふう。」思わず私は溜め息をついてしまった。
「助かったな。」
ダグが私を見て笑っている。
「なんとか生きてますね。」
ゴードンもほっとしたようだ。
リンダが近寄ってきた。
「お帰りなさい!」
「ああ、ただいま。」
キャプテンもにっこり笑って答えた。

転送ルームのサイドスクリーンにはリゴンがどんどん遠くなっていくのが見える。転送終了後ただちに周回軌道を離れ、爆発の影響が無いところまで脱出するよう手筈は整っていたみたいだ。(当たり前よね。)

私達は全員一言も口にしないでじっとリゴンを見ていた。・・・

 ・・・・リゴンが大爆発した・・・・。音が聞こえないっていうのはなんか不思議な気分。・・・とにかく助かったんだ!宇宙はこれで救われるんだ!そう思った途端、みんなが見えなくなってきた。(えっ?えっ?これってもしかしてグレイ・アウトとかいうやつ?視野が狭くなるっていう・・・、うそー!)と思っている間にもますます見えなくなっていく、みんなの声も聞こえない、・・・・・・次の瞬間、ブラック・アウト・・・・・・

 52時間後、約束通りリゴンを破壊した私達はユリアを訪れていた。
「では、『道(ルート)』の作成方法を教えていただけるのですね。」
キャプテンが目を輝かしている。
「ええ、あなたたちなら私達の過ちを決して繰り返さないでしょう。」
ユリア人も嬉しそうだ。
「やったぜ!」
ダグも嬉しそうな顔をしている。
「苦労が報われましたね。」
ゴードンもほっとした表情で微笑む。
「よかった。」
私もユリア人に微笑み返した。
「私の消滅がキーとなってここの下にあるユリジストにデータの映像が現れます。それをお持ちなさい。」
彼女は今一度微笑みながらキャプテンの方を見た。
「でも、そうするともうあなたは実体化できないのでは・・・。」
意外な言葉に私たちは動揺した。
「いいのです。銀河の未来を人類の手に委ねるのが私の仕事。どうか、私達の二の舞を
しないようお願いします。」
そう言うとユリア人はスーッと消えていった。
「ありがとう。」
私は涙が溢れ出てくるのをこらえながら、もうそこにはいない彼女に言った。

 こうして道の作成法のデータと共に私たちは帰途についた。
OSSの的確な運用のもと、人類はその宇宙への好奇心を満たし栄えていく、過ちは
2度と繰り返されないと思う。ううん、繰り返してはならない!
   

---Fin---


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