航海日誌(5) 臨死体験

 


 

 「ここは?!」
目を開けるとそこは一面、星、星、星。
「わー、私、宇宙にいるんだ。」
後から考えるとおかしいんだけど、その時はそんな事考えもしなかった。ふわふわと宇宙空間に漂い、ただただ綺麗な宇宙にみとれていた。
「さおり、、、、さおり。」
だれかの呼ぶ声に私は振り返った。
「パパ!」
私のパパの名前は宮原悟。今世紀人類最大の発見、『道(ルート)』の発見者でありOSS(アウター スペース オーガニゼーション)の設立者なのです。でもオフィスにいることを嫌い常に最前線へ出て、新しいルート発見に努めてたんです。でも5年前、やはり新ルートの調査に出掛け、行方不明。死亡と伝えられている。でも私はパパが、この宇宙のどこかで生きていると信じている、必ず!ママはというと、私が10才の時、宇宙船事故で死に、それ以来パパが男手一つで育ててくれたの。もっともパパはいつも宇宙を飛び回っていたから、めったに会えず寂しい思いをした事もあったけど、今ではそんなパパの気持ちも理解できるようになって、パパは私の誇り。少ーしファザコンかな、私って。(すごくだったりして)
「パパ、やっぱり生きてたのネ。」
私はパパの胸に飛びついていった。
「さおり、りっぱになったな。」
「パパ、パパも一緒に調査しよう!」
パパはにっこり笑うと言った。
「ママが向こうで待っているんだ。だからさおり、頑張ってパパの分まで調査しておくれ。」
「ママが?!だってママはもう死んじゃって・・・。」
と、遙か向こうに人影が・・・
そして、その人影は、だんだんはっきりしてくる。女の人のようだ。
「さおり、大きくなったわね。」
うそっ!ママ?!私は思わず目を見張った。
「さおり、後を頼んだぞ。人類の為に。」
パパはゆっくりとママの方へ行き始めた。
「待って、パパ!、ママ!」
「さおり、頼むぞ、さおり・・・。」
だんだん遠くなっていくパパ・・・
「さおり、さおり・・・」
ママの呼ぶ声も遠くなっていった・・・。とその声が突然大きくなった。

「さおり!」
目に移ったのはリンダの顔だった。暫く何が何なのかさっぱり分からずぼんやりと宙を見ていた。ここは、、アルゴのメディカルルーム。
ああ、私、私、・・・・・・。みるみる間に目に一杯涙がたまってきた。パパ、パパはもう・・・。
 「さおり、大丈夫?」
リンダがいつになく優しく言った。
「はい。」
それ以上言うと涙がどっとこぼれてきそう。私はシーツをたくしあげ涙をこらえた。リンダはそれを知ってか知らずか、それ以上何も聞かず部屋を出て行った。

 再び目を開けたのは何時間後なのだろう。あのまま寝てしまったようだ。頭がまだぼーっとしている。じーっと天井を睨み、今日起こった事を思い出していた。あれってなんだったのかしら、もしかして臨死体験?!、、。あまりにも私が危なっかしいから、パパとママが活を入れに来たのかな?でもパパ、、本当にもう死んじゃってるんだろうか。・・・・。なんて考えてたらまた涙が・・・。
「あー、もーなにやってんのヨ、さおり!!パパもお前に頼むって言ってたじゃない!
しっかりしなさい!調査はこれからなんだからネ!!元気だけが取り柄のさおりでしょっ!」
そうだそうだ。しっかりしなきゃ!あっ、そうだ!今頃気がついてちゃいけないけど、みんなはどうなんだろう。私のようなドジは踏まないにしてもあれはかなり苦戦してたから。
「ええと、リンダは何処なんだろう。」
私は起き上がろうとした。
「イタッ!」
脇腹がズキンと痛んだ。そっか撃たれたんだっけ。スーツを貫通したんだな。傷痕も無くきれいに治療されてるけど、暫くは痛みが残るみたい。ハハハ、撃たれた事を忘れていた。もう暫く横になってた方がよさそうだ。私は勝手に決め込んでまた横になった。そのうちにはリンダも覗きに来るだろうから。

 「さおり、起きてる?。」
リンダが食事を持って入ってきた。
「あっ、はい、すみません。」
−クュイクュイクュイクュイ−
リンダがベッドに備付けのメディカルコンピュータで私をチェックした。
「もう痛みは完全に無くなってるはずよ。」
リンダがベッドの上にテーブルを出しながら言った。起き上がってみた。
ん!何処も痛くない。
「あの、キャプテン達は?」
「少し前まで、全員そこのベッドにいたのよ。気付かなかった?」
全員!。そうそう、ここには五つベッドがあったんだっけ。自分の事ばかり考えてて目に入らなかった。恥ずかしいったらない!。
「最近ではこれほどのダメージを受けてきたことはないわ。おかげで私は大忙しだったけど、もうみんな治療は終わっているから、心配しないで。」

−ヴィ、ヴィーー!−
インターフォンが鳴る。リンダがスイッチを押す。
−ピッ−
「アランだ。リンダはいるか?」
「はい、リンダです。」
「さおりの様子は?」
「はい、もう動いても大丈夫です。」
「そうか。じゃあ、いっしょにブリッジに来てくれ。」
「わかりました。どうやら食べ損なったみたいね、さおり。」
リンダは食事とテーブルをさっさと片づけた。
「はい。着替えたら来て。先に行ってるわ。」
クローゼットから服をだして私に渡すと出て行った。

 アルゴは第3惑星の周回軌道に乗っていた。
「さおり、もういいのか?」
ゴードンが真先に私を見ると言った。
「はい、もう大丈夫です。」
と私は答え、自分のシートに着いた。
メインスクリーンを見ていたキャプテンが振り向き、皆を見渡してから口を開いた。
「今の状態で第7惑星の調査続行は無理だ。おそらく同じ結果だろう。リンダと相談した結果、他の惑星の調査にあたることにした。まずここ第3惑星だ。同じ事も予測されるので慎重にいく。とにかく調査を進めなければなにも始まらないからな。」
「さおり、パワード・スーツと生命維持装置の改良は?」
「はい、まだ試作段階なのですが、一応できています。」
「使えそうか?」
「はい、確信はあります。」
「そうか。」
「リンダ、早急に全員分作ってくれ。出来次第出発する。」
「わかりました。10分もあれば大丈夫です。」
「他のものは上陸準備をしてくれ。」
私達はブリッジを出ると準備にとりかかった。


 第3惑星、地上は第7惑星同様完全に破壊されていた。私達は地下道で、只一箇所降下可能な場所に降りた。そこは武器類の宝庫だった。加えてロボットの残骸と死体。戦闘が終わってまだ間もないんだろう。通路という通路、部屋という部屋には無残な死体が横たわっていた。
「うー、もう当分お肉は食べれそうもない!」
他の人はというと、さすがに慣れているらしく平然と半白骨化した死体を調べている。
そう、この星の知的生命体は私達と同じ人類だった。宇宙生物学を専門としている私にとってこれは大発見!何としても生存者と会ってみたい。でもこの状況では無理のようだ。
「さおり、この武器も使えそうだ!」
キャプテンが死体が握っていた銃を、私に手渡した。私は早速アナライザーで調べる。
「そうですね。多少の修理を要しますが、使用可能です。」
ここではその繰り返しだった。もちろん例のロボット兵も出てきた。が、第7惑星で出会った物より弱かったのと数が少なかったのが救いだった。
エンジンルームで寝ているのを見つけてからちょっと幻滅していたゴードンがここでその本領の一部(だと思う)を発揮した。行き止まり、開かないドア、他のクルーが諦めて戻ろうとするところを彼が一人頑張って、隠しドアやスイッチを見つける。その気の長さというか慎重さというか、本当に感心してしまった。
「いい加減に諦めたら?きっとそこには何にもないわよ。」
と言いそうなのを堪えて見守っている。すると数分後には見つけちゃうのよね。多分、感もいいんだわ。
ダグ・ゴジラは向こう(第7惑星)でやられたのがよほど頭にきていたのか、ロボット兵を見つけると辺り構わず、攻撃を仕掛けていた。戦闘員としてのプライドを傷つけられたからかな?と勝手に私は解釈した。
さすがにキャプテンはそんな事も無く、いつもの通り沈着冷静な(フリータイムの時では考えられない)行動をとっていた。
私?私は・・・・・「ギャーー!」と叫びそうなのや、込み上げてくる吐き気を必死に抑え、気を失わないようひたすら調べ続けていたの!何処をどうやって行ったのか全く記憶がない!(威張って言える事じゃないわ。)

 とにかく、今は調査も無事済みアルゴは再び第7惑星に向かっている。クルーは回収してきた武器やその他いろいろなアイテムの修理、改良等で忙しい!武器も随分威力の有るものばかり。シールドや生命維持装置の強化も難無くできる。どうやら相当科学の発達した文明だったらしい。それでもこの有り様・・・、私達たった5人で何とかなるものなんだろうか。心配だ。何と言っても相手はこの星系全部を滅ぼしてしまったんだから。それにあれだけのロボット兵を繰り出してくる。おそらくとんでもないやつらなんだろうと思う。


 再び第7惑星、地下道。私達は前回と同じように例の場所でやはり挟み打ちにされてしまった。でも今回は前の様にはいかない。全ての装備は前の二倍、三倍と強化されている。またたくまに敵のロボット兵を蹴散らし奥へ奥へとどんどん進む。
奥に進むたびに敵は強くなっていった。でもそれに怯む私達ではない。中にはレーザーの全く効かないものもいた。(もちろんレーザーもかなり強化されてるんだけど)ミサイル砲の弾が失くなって一時帰還しまた行く、ということもあったけれど、なんとか無事に調査を終わらせる事ができ、鉱石ユリジストも十分蓄えることができた。ただ、最初にあった生命反応がなくなっていて何処を探しても見つからなかったという事が只一つの悔やむべき事だ。

 そして現在、アルゴは第5惑星の周回軌道に乗っている。ここには生命反応がまだある。何としても生存者と会い、この戦いの原因等を聞かなくては。事は私達にも及ぶだろうから。

 1回目の調査、武器とユリジストが少し見つかったのみ。何処かに隠しドアがあるはずなんだろうけど見つからない。一か所見つけたのだけどそこは只の小部屋に続いているだけだった。

 2回目の調査、またしても一つ隠しドアを見つけて、今回は随分奥まで行った。でも結局、行き止まり。でもどこかにもっと地下に繋がる入口があるはずだ。探知機は依然として生命反応を捕らえている。

 「あったぞ!スイッチだ!!」
根気よく探し続けていたゴードンが叫んだ。やっぱりあったのだ、隠しドアが!そして私達は奥へと進んだ。

1階、2階、3階と下りていった。ここは地下4階。ここまで来る途中新しい武器など一段と強力な物を手に入れた。もちろんロボット兵も強者ぞろい。何度弾の補充に艦に戻ったかわからない。トリックにひっかかって遠くに飛ばされた事もあった。(2回位かな?)でもこれ以上地下はないはずだ。探知機の生命反応は確かにこの階を示している。いよいよ生存者に会える!私は、並みの強さでないロボット兵の攻撃に応戦しながら、益々興奮していくのを抑えられなかった。
「これは?」
キャプテンが目の前に固く閉ざしたドアの前で立ち止まる。スイッチがまたしても見つからない!
「キャプテン、敵の一団が後ろから!」
絶対ここが怪しいのに、と私は思いながら叫んだ。このドアさえ開けば生存者に会える、でももう弾は尽き、シールドももう限界だ。
ここの敵兵は今私達が持っている武器では全くと言っていいほど効き目がない。緑色の猿もどきの物、小腸に目をくっつけた様な気持ちの悪い物、巨大蟹風、はたまた巨大むかで風の物。全くこれらの生命体は何なんだろうと思ってしまう。どうすればこんなグロテスクなモンスターができるんだろう。レーザー光線など吸収してしまうし、ダブルミサイル砲の弾はきれている。
「せっかくここまで来たのに、、もうだめだ!」
と思った時、ゴードンが叫んだ。
「あった!鍵だ!」
通路のもう一方の奥の小部屋にあったらしい。ゴードンがドアを開けにかかった。私達は必死になって応戦する。倒しても倒しても次々と来る敵兵。
「急げ!」
キャプテンも珍しく焦っている。それもそのはず。向こうはしぶとい。私達はというと何とか戦っているという状態。もう気力だけ。倒れるのは目に見えている。
アルゴに残っているリンダも強制転送の準備をしているんだろう。
−シューン−
「やった!開いたぞ!」
ゴードンが叫ぶ!
私達は敵の攻撃を必死にかわしながらドアの中へ。そしてしっかりとロック。(当たり前だ!)
そこで私達が見たものは・・・・・・。

 


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