航海日誌(2) 私っておいしそう?!

 


 

シャトルは、『ガイア303』から約5km離れていると思われる平地に降りた。気候は地球よりかなり蒸し暑い。でもパワード・スーツを身につけている私達はなんともない。
ガイアは目前に広がるジャングルの向こうに墜落したと思うのだけど道という道もない。なんとか通れるくらいのけもの道くらいで、見つけるには難しそう。

 「武器のチェックは済んだか。何がいるか予想できない。全員、油断しないように。」
「、、、さおり、後ろ!」
キャプテンの声で私は後ろを振り向いた。
なにこれー!!
「きゃーあーーーーっ!!!」
銃で撃つ間もなく、イヤ逃げる間もなく太いツルのようなものが巻きついてきたかと思ったら、宙に逆さづりにされてしまった!
「ちょっとちょっと、冗談じゃあないわよ!!」
下を見ると食虫植物の巨大化したような口がパカッと開いている。絡みついたツルはどうやら私をあそこに入れたいらしい。
ということは、このままいけば食べられちゃうわけぇー?花のように見えた青い丸いも
のは目なのか、なんとなく視線を感じる。
私は蠅じゃあないのよ!おいしくなんかない
わよ!なんて聞いてくれる筈はなく、だんだん口が近づいてくる!!動こうにも2本の
ツルでがんじがらめ。ああ、もうだめーっ!!!目の前真っ暗・・・・・・・・・。

  気がつくと私はシャトルの中。私、気絶しちゃったンだ。ああ、なさけない!これ
でまたダグ・ゴジラにますます馬鹿にされてしまう。
「ハーーー。」
「何を溜め息ついてるんだ?もう大丈夫か?」
えっ?顔をあげると入口にゴードンが立っていた。
「はい、すみませんでした。」
「そう気にするなって。いきなり襲われりゃ誰でもいっしょだ。今、アランとダグが付近を見に行っている。さおりが大丈夫なら戻って来次第出発する予定だ。」
「はい、もう大丈夫です。他の人は怪我は無かったのですか?」
「ああ。」
ゴードンは優しく笑いながら答えてくれた。
「だがなあ、さおりよりダグの方が真っ青だったんだぜ。」
「ええーっ!!あのダグ・ゴジラじゃない、ダグラスが?」
信じられないという顔をした私にゴードンは意外なことを話してくれた。
ダグラスには幼なじみの恋人がいて、安全とされていた惑星に旅行中ダグラスの目の前
で凶暴な生物に殺されたんだって。それも彼をかばったばっかりに!
「さおりは生まれ代わりかと思ってしまったくらい似てるんだそうだ。いつだったかそんなことを言ってた事がある。」
ふーん、あのダグラスが・・・。思いもかけない事を聞かされ、私はしばらく考え込んでしまった。

 −シューン−
ドアが開き、ダグラスが入ってきた。
「おじょうちゃん、もういいのかい?」
「は、はいっ!すみませんでしたっ!」
今あんな話を聞いたとこなので、まともに彼の顔が見れない。
(なによ、私が恥ずかしがる事ないじゃない!)と思いつつ簡易ベッドから飛び起きるとあたふたと支度を始めた。
「外に幾つかこの惑星の生物のサンプルが置いてある。どれも凶暴なのばかりだ。あとはおじょうちゃんの専門だ。よーく調べておくんだな。出発はそれからだ。」
ぶっきらぼうにそう言うとダグ・ゴジラは出ていった。

 外に出ると、あった、あった。キャプテンとダグラスで仕留めてきたんだ。えーと私が食べられそうになったのはこれだ。木の根っこの上に食虫植物が生えたような物、それと下半身は恐竜のそれで上がやはり植物、もう1つのは、んー、なんて言ったらいいのか。球根の変形か茎の変形か、形容しがたいんだけど、とにかく植物と動物が合体してるような生物なのよね。この惑星はこういう種類ばかりなのかしら。ガイアの件が解決したら改めて調査する意義は多いにあるわね。と思いながら私はデータを打ち込んでいた。

 「終わったか、さおり?そろそろ出発するぞ。」
「はい、キャプテン。終わりました。」
キャプテンとダグラスが先導し私とゴードンが後をついて行く事になった。私はハーム銃をぐっと握り2度とあんな風にならないようにと自分に言い聞かせながら一歩一歩進んだ。

 1日目、シャトル着地地点から北へと進路をとった。
でも残念ながら収穫なし。歩きにくいからなかなか進めないし、あの手の合体生命がよくでるし、あれはやっぱりモンスターと言うべきかな。意思の疎通をはかろうと思ってもまるでダメ!知能はすごく低いみたい。自分以外は全て餌だと思っているみたいだ。さすがに皆鍛えられている人達ばかりで、疲れている様子なんて全くない。私は疲れてるのを知られたくなくて必死でついていった。

「よーし、今日はこの辺でテントを張ろう。」まるで私がくたくたなのが分かっているように私の方を見ながら、キャプテンが言った。(今日はテント泊りか、狭いからあまり好きじゃないけど、贅沢は言ってられない。)
私には休んでいるように言うと、キャプテンはゴードン達とてきぱきとテントを組み立て始めた。伸縮自在のそれぞれのパーツを差し込んでいくだけで簡単に出来上がる。テントとは言っても地上から約2mの高床式のコテージのような物だ。これなら仮に例のモンスターがやって来ても大丈夫だろう。テントの中はあまり広くない、はしごを上がり入口から入ると両サイドに2段づつ括り付けのベッドがあり、奥に窓があるだけだ。

 私達は下で軽く食事を取るとテントに上がった。
「おじょうちゃんは上だ、落っこちんなよ。」
ダグ・ゴジラは言いながら大笑いした。私はそんな彼をちょっと睨むと無視してベッドに入った。(さあ明日のためによーく寝ておこう!)と私は横になった。
でもみんながいると思ったらなかなか寝つけれない。暫く寝返りばかりうってたけど昼間の疲れがでたのか、いつとはなしに眠りについていた。後で分かったんだけど、キャプテン達は交代で見張っていたようだった。考えてみれば当たり前の事だ。ダグ・ゴジラに子供扱いされるのも当たり前かと思う私だった。

 2日目、随分シャトルから離れた所まで来た。距離的にはもうそろそろガイアが見つかってもいいんだけど。方向が違ってるのだかまだ破片さえも見つからない。銃の扱いも随分慣れてきたと思う。訓練と実戦とではやっぱり違う。始めはなかなか撃てれなくって、ダグ・ゴジラに睨まれたっけ。
「自分の身は自分で守れ!それが宇宙の掟だ。」
なーんて。でも結構助けてくれた。でもでも、頼ってばかりいてはいけない!(お荷物にならないよう頑張らなきゃ!)と私は思いつつ足を進めた。結局この日は話し合いの末、一旦シャトルへ帰ることになった。一度道を作って進んできたので帰りは難無くシャトルまで行けた。

 3日目、今度は着地地点から西に進路を取ることにした。
(今度こそ見つかりますように)と私は祈るような気持ちで進んだ。
この道はモンスターの通り道なのか頻繁に出てきた。例のモンスター以外にもまた新しい生命体に出会った。手が4本もある猿によく似た2m程の動物。目が真っ赤に光っていて気持ち悪かった。それと今1つ同じように猿に似てるんだけど、こちらは手は2本でそのかわりこうもりの翼みたいなのがついてる。両方とも凶暴性極まりない!それがまた集団で襲って来るもんだから、さすがのキャプテン達も疲れ気味の様子。私?もうダメ。ぶっ倒れそう!シャトルへ帰る気力ももう無い。ダグ・ゴジラになんて言われてもいい。もう動けない!!

 「あれは?」
今にも倒れそうだった私は、そのキャプテンの声でハッとして前方を見た。ガイアの船体?この惑星には建造物は無いはずだ!そうだ、きっとガイアに違いな
い!
皆の思いは同じだったみたい。重くなっていた足取りが急に軽くなった。ガサガサ、バ
キバキバキ、枝を払い疲れも忘れ、懸命に走った。

 「やっぱりそうだ。ガイアだ!!」
先頭のキャプテンが叫ぶ。
すぐさまゴードンが船体を調べ始める。
「どうやら大気圏突入の際、降下板に異常が発生したようだな。」
「異常は外壁だけか、ゴードン?」
「ああ、アラン、そのようだ。」
「よし、メモリデータをアルゴに持ち帰ろう。」
キャプテンは通信機を取り出した。
「ピピピッ」「アランからアルゴへ、アルゴ応答願います。」
「はい、こちらアルゴ。リンダです。」
「任務完了。帰艦する。」
「了解。転送します。」・・・・・・・。

 アルゴのブリッジ。メモリデータの分析は私の仕事。
ガイ(コンピュータの事)頑張って!私も頑張ってるから!・・・・・なるほど。・・・・えっ!・・
「変だわ、キャプテン、このメモリデータ、書き換えられています!」
「そんなばかな!」
キャプテンより先にダグ・ゴジラが言った。
(わたしに間違いは無いわよ。ことこういう事に関しては!)と私は心の中で叫んでいた。
「この惑星の生物には不可能な事だわ。」
リンダも不思議そうに言った。
「という事は、何か他の知的生命体が介入してきたという事か・・・・」
キャプテンも腕を組んで考え込んでいる。
「ピッ」
ガイが何か見つけた!なるほど。
「どうやらそのようです、キャプテン。ガイアの信号波はここから延びている『道(ルート)』の先の星系に向かっているようです。」
私は興奮を抑えながら努めて普通に言った、
「データによるとその星系はバーナードと呼ばれています。」
「バーナード星系か・・・未確認の星系だな。そしてこのルートも。」
とメインスクリーンをじっと見ながらキャプテンが言った。
「・・・よし、アル、周回軌道離脱!コースセット、目的地、バーナード星系!」
キャプテンが自分のシートに着きながら言った。
「リョーカイ!」
アンドロイドのアルが応える。
こうしてアルゴは次の目的地『バーナード星系』へと旅立った。

 


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