航海日誌(1) どきどきわくわく♪

 


 

 −ヴィー、ヴィーー!!!−
「うーん、ウルサイナー。やっと寝ついたのにぃ。」
私は、目をこすりつつ、枕元のインターフォンのスイッチを押した。
「さおり、起きてる?ブリッジに来て頂戴!」
わー、しまった!寝過ごした!αケンタウリが見えてきたら興奮してなかなか寝つけれなかったんだ。
「はい、リンダ!すぐ行きます!」
慌てて着替え、キャビンを飛び出した。

 あっ!私、宮原さおり。これでも一応科学者です。宇宙考古学、宇宙生物学を主に専門としています。私がこのアルゴ号のクルーに選ばれたのはラッキー中のラッキー。はじめはキャプテン以下4名の予定だったのだけれど、今度の調査では今までに予期しなかった宇宙生命体との遭遇もあり得るとして追加人選があり科学アカデミーの推薦で私が選ばれたわけ。他の4人は今までにいろいろな功績があり名実ともに優れた人ばかり。
私はっていうと博士号は取ってはいるものの実際に調査するのは今回が初めて。だから興奮しちゃって!

 さっきのはサブ・キャップのリンダ・A・ウォーレス。ちょっと冷たい感じがしない
でもないけど美人で、常に艦にとどまって、情報の収集、分析などをして作戦のサポートをしてくれるんです。それに彼女は、ドクターでもあるんです。それと新兵器の開発なんかもしています。

 キャプテンは、アラン・カート。OSSの若手No.1の実力の持ち主なのだそうです。
えっ?なんか気のない言い方だって?だって今のところそんな風には見えないんですもン。軽ーいプレイボーイっていう感じ。私、そういうの好きじゃないんです。

 で、エンジニアはゴードン・川島。そーですね、辛抱強くってコツコツ型、無口なん
だけどやさしいお兄さんっていう感じ。エンジニアとしての経験も長くってクルーの中では一番の年長者。

 それと、なるべくなら関わり合いたくないのが戦闘員のダグラス・マッコーラム。
なんでもOSSの戦闘実技訓練で、毎回記録を更新していくというタフな人なのだそうです。この人とは苦い経験がありまして、どうも苦手なんですよネ。(上陸班として一緒に行動するのだからそんなこと言っててはいけないですが。)どうしてかって?それはアルゴへ乗船するために行ったステーションR23の宙港での出来事のせい!もう思い出しただけでも怒れてくる!まるっきり子供扱いなんですよね。分からない気もしないではないけど、でもでも、これでも一応戦闘訓練も受け、終了試験にもパスしたんだから、それに今回の調査にはなくてはならない専門家なんですよぉっ。なにが『おじょうちゃん、君の乗る船は向こうのポートだよ。』っだ!うー、意地でも頑張る!死んでも調査は続けるゾ! 
とと、一人でそんなことにカッカしてるうちにブリッジのドアが目の前にあった。
「ダグ・ゴジラ(だれだか分かりますよネ。)がまだ来ていませんように。」
私は祈りつつブリッジに入った。

 ボスッ!
「痛っ!」
誰よぉ、ドアの所に立っているのは!見上げた私の目に写ったのは他ならぬダグ・ゴジラ!
「す、すみません!」
目の前のダグ・ゴジラの影の向こうに見えるのはαケンタウリを写しだしたメインスクリーン、その中央にキャプテンとリンダ、操縦席にはアンドロイドの『アル』その隣にゴードンがいる。
もう周回軌道にのっているんだ!
「遅くなってすみません!」
「そのまま寝てても良かったんだぜ、おじょうちゃん。」
ちらっと私の方を見るとダグ・ゴジラは、ブリッジを出て行った。私は、思いっきりアカンベーをしてから(心の中で)スクリーンの方へ歩み寄った。
「気にしなくていいよ。ダグはダグなりに君のことを心配してるんだよ。」
キャプテンが笑っている。が、どうにもおさまらない私ではある。
「でもさおり、一瞬の油断が命取りになるのよ。もう少し気を引き締めてね。」
相変わらずリンダの言うことはきつい。でも本当の事だから耳に痛い。
「はい、気をつけます。」
 なんかいつもと雰囲気が違っているような気がすると思ったら、キャプテンだ。いつものちょっとにやけたアランではない!ピーンと張った琴の弦みたい!空気までもはりつめてるっていう感じ。
「さあ、しっかりするのよ、さおり!これからが、本領発揮!あなたの実力をみせなくっちゃ!」
私はαケンタウリを見ながらカチンコチンになってしまった自分に言い聞かせた。
「さおり、分析結果は?」
そうだそうだ、確か寝る前にだしておいたんだっけ。慌ててコンピュータ『ガイ』(私
が勝手にそう呼んでるだけ)に向かった。
「はい、キャプテン、αケンタウリは地球の原始時代に近い状態のようです。ですが、生物の進化過程は異なっていて生物形態は明確ではありません。又、地上に金属反応があるのですが磁場の関係で位置の特定は不可能です。ガイア墜落地点もある程度は絞れますが正確には不可能です。」
「とすると、やはりシャトルで降下するしかないな。リンダ、墜落地点付近で降下可能な場所を割り出しておいてくれ、、、武器も必要だな。」

「さあて、おじょうちゃんに使える武器があるかな。」
いつ来たのかダグラスが後ろに立っていた。その手には今まで見たこともないおかしな形の銃らしきものが。
「それが例の銃か。」
キャプテンはダグラスから銃を受け取ると、あちこち調べた。
「このては2丁出来てるんだったな、リンダ。」
「はい。ハーム銃は対生物用兵器としては相当な効果を発揮すると思います。ただ照準が少し合わせづらいのが欠点ですが。」
察するところこれはリンダの開発した新兵器ってところらしい
「軽くて使いやすい。これならいいだろう。さおりと、それからゴードン、このハーム
銃を。俺たちは今までどおりミサイルとレーザーを装備していく。」
キャプテンから手渡された銃は結構ずっしりしている。軽いとは言ってもやはり銃は銃よね。でも私は体力にも自信あるんだ。それにまだ他にも必需品があるし。こんなんで重いなんて言ってられない!!
「各員、20分後にシャトルに集合。以上。」
「了解!」

 20分後、私達5人はシャトルで顔を合わせていた。結構重装備なのよね。まずPS(パワード・スーツ)、SG(シールド・ジェネレーター、これでスーツの周りにバリ
アをはる。)、BATT(生命維持装置のバッテリー、これが0に近くなったり負傷が
ひどい時は、アルゴに残り常に上陸班の位置を把握しているリンダにより、直ちにアルゴに強制転送されることになっている。鉱石ユリジストで充電可能ではあるけど)、それと科学者である私は、小型アナライザー(解析装置)を携帯している。

 「よし、全員そろったな。ゴードン、降下開始!」
全員各々の席につきシートベルトを装着したのを見届けるとキャプテンが命令した。
「降下開始!」
ゴードンが復唱し、リンダの「Good luck!!」に送られ、ゆっくりとシャトルは降下し始めた。
さあ、いよいよだ!どんな植物や生物が生息しているのか、意思の通じる生物はいるのか、そして「ガイア」はすぐ発見できるのか。うーん、興奮!!

 


Index Next