星々の輝き


星々の軌跡、本編・エピローグ




 「親父さん!!」
「おおーー!ニーナじゃないか!帰ってきたんだな!」
帝国本国での大歓待の後、ニーナはまずカロノス星系のヒアスラ・スターベースへと戻って来た。
バーに入るなり、主人と抱き合って無事だったことを喜び合う2人。
「ニーナならやると思ったんだが・・・勲章までもらっちまいやがって!」
「えへへへ・・・」
胸にかけているゴールデン・サンバースト勲章を、服の中から取り出して主人に見せるニーナ。
「ほうほう・・これが生者に与えられる最高の栄誉か・・・すごいじゃないか?!」
「うん!これもみんなのおかげだよ!」
「ははは!そう言ってくれるニーナが嬉しいね。」
「ちっとも変わってないっていうんでしょ?」
つん!と拗ねてみせるニーナ。
「ははははは!いやいや立派なもんだよ!」
「全くぅ〜」
「呑むだろ?」
「勿論!親父さんのおごりだったよね?」
「まーな!」
「なになに?親父さんのおごり?」
いつの間にかフリッチが横に来ていた。
「お帰り、ニーナちゃん!」
「ただいま!フリッチ!」
「だけど・・まさかニーナちゃんがあんなことになってるとは・・思いも しなかったな〜・・。それでガットがどうのこうの言ってたのか・・」
「まーね。」
「正直にぶっちゃけてくれりゃ〜、俺様だって一肌脱いだのによ!?」
「済んでからなら、何とでも言えるってもんだ、な、フリッチ?」
ビールジョッキを2人の前に置きながら、笑う主人。
「あ?・・・あはははは・・・」
フリッチは頭を掻き、照れ笑いする。
「あははははっ!」
ニーナも主人も共に大笑いした。


「よ〜〜!ニーナ、上手くやったじゃねぇか?」
「はい!ガットさんのおかげです!みんなが協力してくれたから!」
「嬉しいねえ・・勲章なんかもらってお偉いさんになっちまったから、もう 相手になんぞしてくれねぇかと思ったら・・」
「そんなことあるわけないです!」
バスルチ星系のフリーギルド拓殖基地。表向きは貿易商ギルドのヘッド。が、その実、 海賊の大親分であるドロートン・ガット卿。
ここでもニーナの成功とファーアームの平和を喜んだ。
「おい!オマー!オマーはいねぇか?」
「へい!ここに!」
ドアを開けてガットの片腕であるごつい男が入ってくる。
「ニーナがわざわざ挨拶に来てくれたんだ。宇宙の英雄が!」
「おお〜!ニーナ様!!」
「ったく・・調子いいんだから!」
わざと大げさに両腕を広げ驚いてみせるオマーにニーナもガットも大笑い。
「オレたちの宇宙を守ってくれたんだ!これで安心してじゃんじゃん稼げるってもんだ!な、ニーナ!」
「うん!」
「ニーナほどの度胸、貿易商にしておくにゃ、もったいねぇ・・どうだ?この際本気で 海賊業に変更しちゃ?」
「そうだ!それがいい!オレの片腕にってどうだ?」
ガットの言葉尻を受けてオマーが続けた。
「バカ野郎!オレの片腕に決まってんだろ?」
ガットがオマーに怒鳴る。
「ええー?そ、それじゃ、オレは首ですかい?」
「う・・・首にしちゃ〜かわいそうだな・・。じゃー、ニーナが右腕。お前が左腕ということで・・。」
「もう!勝手に決めないでよ!」
「がはははは!」
「それもそうだ!宇宙の英雄が海賊じゃおかしいか?」
「はははははっ!」
「まー、いいさ。オレたちのつきあいは変わらない。そうだろ?ニーナ?」
「うん!おかしな関係だけど。」
「はははっ!そうだな!帝国の英雄とお尋ね者の海賊だからなぁ!」
「一番いいのは、ガットさんたちが海賊止めることだよ!」
「それはそうかもしれんが・・・染みついた生活習慣ってのはなかなか・・・な。」
「うーーん・・そうよね〜。」
「オレはいいとしても、中には海賊としてしか生きていけねぇ不器用な野郎もいるしな。」
ちらっとオマーを見るガット。
「お、親分、それはないですぜ。オレだってその気になれば、いつでも堅気になれますぜ!」
「お前だとは言ってねぇんだが・・・。まー、なんだな、お前もその1人か?秘書の肩書きをやっても『親分』と呼ぶのがいつまでも抜けきらねぇ・・・。」
「親分だって、そう呼ばれて返事してるじゃないですか?」
「ぶっ・・・あははははっ!」
3人は一斉に大笑いした。
「まー、そういうことは、ぼちぼちということで。時間あるんだろ? 食事でもどうだ?」
「はい、ごちそうになります!」
ニーナの嬉しそうな顔にガットが上機嫌でオマーに命じる。
「おい!選り抜きのコックを召集して、ご馳走を作らせろい!最高級のやつをな!ちょっとでもまずかったら宇宙に放り出すから そのつもりで根性入れて作れ!と言っとけ!」
「へい!」
「あ、それから、基地内や近海にいる今商売してねぇ奴らを召集しろ!宴会だ!大宴会を開くぞぉ!」
「へいっ!」
オマーもまた上機嫌で返事をし、ニーナににっこりすると部屋を出ていった。


ニーナはしばらく商売そっちのけでファーアーム中の世話になった人たちのところに 顔を出していた。
勿論どこでも大歓待を受け、無事を喜び合った。
まだまだ未開拓地のファーアーム。全てよし!とはいかないものの、今は、この平和を かみしめて。
シシャザーンのボルフの言ってた未知のモノに対しての不合理な恐れ。それが引き起こす誤解と悲劇。
その過ちを二度と繰り返さないよう、前向きに物事に対処していく。
それが、ニーナたちの、そして、ファーアームの未来を明るいものにしてくれるはずなのだから。

ただ・・・ボルフに逢うのは、ニーナにとって、やはり勇気が必要だった・・。
逢うつもりはなかったのだが・・・向こうから来るようにとの連絡が入っていて・・仕方なく・・・。
それでも、彼は人間のチビにしてはよくやったと褒め称えてくれた。どうやらニーナは彼にとっても お気に入りの人間となったらしい。時々顔を見せることを約束させられてしまった。


そして・・・・
「マシュー!オマス牧師っ!」
グリフォン星系の採掘ステーションにやってきたニーナは、ステーション中を探し、最後に教会の裏手でしゃがみこんで何やら話し込んでいる2人を見つけ、手をふって駆け寄った。
「お、ニーナ、お、おめー・・えれーことしたんだってな?」
マシューが目を丸くして、が、最高に嬉しそうな笑顔で言う。
「あ、ええ・・・・でも、私一人でやったんじゃないわ。みんなが助けてくれたから・・それに、これ・・」
ニーナはオマスに、彼からもらったサイオニクスシールドを差し出す。
「これがあったおかげでマンチー女王の卵を、王女様を助け出すことができたの。」
「おお、ニーナ・・・・そ、そうかサイオニクスシールドか・・・・それで、あなたはビラニーの悪意から逃れることができたのですね。」
「ええ、そうよ。本当にありがとうございました。牧師様からこれをいただいていなかったら・・・・」
「はは。いいんですよ。」
それを返そうとするニーナの手をそっと押さえ、オマスは微笑んだ。
「あなたが持っていてください。私には必要のないものです。持っていて邪魔にはならないと思いますよ。」
「ありがとうございます。じゃ、いただいておきますね。」

「そうだ!記念写真撮らねーか?オレな、デジカメ買ってみたんだよ。」
「え?買ったの?」
「ああ。いいんじゃないか、記念にさ?撮らせてくれよ、宇宙の英雄ニーナの写真。」
「やーね、そんな言い方しないでよ。英雄なんてもんじゃないんだから。でも、そうね、じゃ、マシューも牧師様も一緒にどう?」
「へ?オレも?」
そうよ、とニーナはにっこり笑う。
「私も・・・ですか?」
「そうよ。マシューの言うその宇宙の英雄が今こうしていられるのも、オマス牧師のおかげなんだもん。」

遠慮するオマス牧師を説得し、マシューは、デジカメのタイマーをセットすると、2人を引き寄せてそこに立った。

「はい、ポーズ(チーズ)♪」
  

COSMOSさんが描いて下さいました。
いつもありがとうございます。

 
バスルチ3の怪物に対しては・・・どうあっても不合理な恐れではなく・・・ 解決まではまだまだかかりそうだが、タルゴン隊長に関しては、プロスク博士がNSBの研究に 入ってくれたため、近い将来一時的と言わず、完治できるかもしれない。そう期待したいものだ。
そして、ワープエンジンも徐々に完成に近づいてきている。1度でなく2度、そして 複数回もしくは何度でもその使用が可能になるのも、そう遠い事ではないはずだ。
とにかく往復可能になった時点で、マンチー国へ行くことにもなっていた。
女王自筆の招待状を送ってきたのだから。
そして、まだ民間レベルではあるが、バーキリの貿易商の協力も得て、彼らマンチー人との相互理解も徐々に深まってきている。
ということで、各基地においてあるテレビゲーム『HIVE』は禁止となった・・・。
が、唯一大被害を被ったそのゲーム会社は、したたかにも、蟻形態の生物の代わりにバスルチの怪物でリニューアルした。
(・・まだ最高5面までしかクリアしてない・・・。(T-T
ひょっとしてゲーム本編より難しい?! すぐ蟻にその鋭い口で切り裂かれてしまう・・・。(笑
なんと言っても多勢に無勢・・できっこない!/^-^;)



中で何が起こっているのやら・・
いついかなる時でも、ファーアームの星々は、変わらぬ輝きを放っている。
そこにいる人々を包み込むように。元気づけるように。


<<THE END>>

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