★ −[2]邂逅− ★
「ん?」 その日、JJことジェイク・ロバートソンは、スターギルドからの依頼を受け惑星セジュルへ来ていた。 突如、海底に沈み始めた大陸の住人救助がギルドからの依頼であった そして、それも一段落つき、かつてそこからその大陸が見えた海岸、切り立った絶壁の上に立って何気なく海を眺めていたJJは、ふと自分の手を握るものがあることに気づいて手元をみる。 「ガキ・・か?」 JJの手を握っていたのは10歳くらいの子供。ぼろぼろの服にぼさぼさの髪、そして泥まみれに汚れた全身が一目で浮浪児だと判断できた。 「なんだ、坊主?」 振り切ろうとしたその手を、少年はぎゅっと握りしめ離そうとしない。 JJは、ぎろっと少年を睨む。それは、全宇宙にその名の知れ渡ったスターホーク・ギルド、名うてのスターパイロットの猛者たちの中でもその名をとどろかしているJJの睨み。子供でなくてもその睨みには萎縮し震え上がる。 が・・・その子供はそれでもじっとJJを見上げ、微動だにしない。 「オレは、ガキは嫌いなんだよ。」 だが、それでも一歩も引かず、その子供の瞳はただじっとJJを見つめていた。一緒に連れて行ってほしい、そう叫んでいるような瞳だった。まるでそれが少年にとってただ一つ残された道であるとでも言わんばかりに。 「オレの船には、ガキと女は乗せねーんだ。なぜだか分かるか?」 それでも少年は一言も話さない。 「すぐ泣きわめきやがるからな、ガキと女は。」 だが・・それでも、少年は手を握りしめ、真剣な眼差しでJJを見つめ続けている。 その真摯に迫った瞳と全身からの緊迫感から、少年がそうするその背景はただごとではないとJJは感じる。 「オレに付いてくるってことがどういうことか分かってんのか?」 「・・・・ったく、強情だな、お前も。いいか?スターギルドの船に乗るなんざ命を捨てたも同然なんだぞ?いつどこで戦闘に巻き込まれ・・いや、どっちかというとこっちから突っ込んでいくんだが・・・明日なんてもんじゃなく、1秒後の命の保証もないんだぞ?」 それでも、少年は怯まずその態度は変わらない。 「ふん!ガキにはみえるが、どうやらオレの嫌いなガキでも女でもないみたいだな・・いいだろ?連れてってやろう。だが・・・役立たずはいらねー。そう判断したら、即宇宙へ放り出すからな。」 その言葉に静かに頷いた少年に呆れたような表情を作ると、JJは、船へと転移した。 「名は?」 「・・・・ユイ。」 JJの愛機、Jホークのコクピット。 ようやく口を開いた少年をJJは変わらず睨んでいた。 「ユイか。オレはジェイク。JJが通り名だ。いいか?もう一度言っておく。ここにいたかったら、ガキでも女でもないことを証明しろ。必要なのは腕の立つ助手だ。役に立たねーと判断したら、即放り出すからな。それを肝に銘じて仕事を覚えろ。」 冷たく言い放ったJJにユイと名乗った少年はコクンと首を縦に振った。 スターホークギルドの一員であるJJ。名パイロットそして、名ハンターを有するそのギルドの名と厳しい鉄則は全宇宙に知れ渡っていた。そのメンバーである彼が約束を反故にするようなことは万が一にもあり得ない。そして、そのスターシップには、持ち主が許可しない限り、乗船も潜入も不可能である。 (ここなら安全なはず。) 先は見えないが、ここまでは追っ手の追求もないはず。仮ではあったが、ユイはようやく得たその場所に一応の安心を感じていた。 「そうと決まったらさっさとシャワーでも浴びて、その格好をどうにかしてこい。着替えはオートドレッサーにサイズをインプットすりゃ、すぐ出てくる。」 JJはサイドスクリーンに映し出した船内図の船室の1つを指さしてユイに命じた。 「はい。」 コクピットを出ていくユイの小さな後ろ姿を見ながら、JJは己自身を嘲笑う。 確かに一人くらいは助手がいてもいいとも思っていた。が、まさかこんな若い、しかも全く船や宇宙の事に関して知識のないと思われる者を雇うことになるとも思っていなかった。 「なぜ連れてきてしまったんだ?」 JJをじっと見上げていたユイの視線。そうする以外生きる道がないとでも言っているようなその瞳を思い出しながら、JJはあれこれ考えていた。 |