Stardust Stargazer
−星屑(ほしくず) 星見人(ほしみびと)−


 
その36・リカルド船脱出! 
リカルド船+宇宙byくずは、セレスbyCOSMOSさん

 それは、ある程度は口答えもするが、どちらかで言えば従順で自分の思い通りに運ぶと思いこんだリカルドのスキに起こったハプニングだった。
完全に従順だったらリカルドも少しは疑ったかもしれなかったが、適度に反抗と素直さをみせるイザムにすっかり信じ込まされてしまったのである。
”共に、仲良く、本体探索をしよう♪”その提言を文句を言いつつも受け入れたイザムのその態度に。


「マ・・・・イ・・・・・」
ドクターに連絡してもらったイザムは、目覚めたマイとはメディカルルームで、ドクターとリカルド立ち会いの中、二言三言話した。だが、それは通常よりかなり多めの精神安定剤を打たれ、おとなしくなっていた状態のマイだった。
そして、メディカルルームから自分のキャビンに戻ったと聞かされたイザムは、明日会わせてあげるから、今日はゆっくりお休み、というリカルドの言葉を聞けばこそ、マイのキャビンを探し、侵入したのである。
もちろんドアにはIDロックがかかっていたが、リズにもらったミラーカードにリカルドのIDをこっそりコピーしたそれで、堂々とイザムはキャビンの中に入ったのである。
そして、そこで見たのは・・・・
「マイ・・・・・やっぱり、キミは、ぼくの知ってるマイじゃなくなってたんだね・・・・船長さんやみんなが言ってたように・・・・・」
イザムの目の前には、彼の入室を敏感に感じたアンドロイド・マイが鬼のような形相で立ちはだかっていた。
が、彼女が拘束帯でがんじがらめ状態だったことがイザムに油断させていた。まさか拘束帯をぶち切って襲いかかってくるとは思いもしなかった。
全身から放っているとげとげしさを感じるほどの憎悪は感じても、そこまで激しい憎悪だとも、イザムは思っていなかった。

「イザム!」
「え?リオ?」
いつの間にリカルドの船に?と思う間もなく、襲いかかってきたアンドロイド・マイのその攻撃を受け止めていたのは、まぎれもなく宇宙空間で別れたリオだった。
「ぐ・・・こ、このぉ・・・・・化け物!!」
「リオ!」
「逃げろ、イザム!オレのことは大丈夫だ!ここはキミのいる場所じゃない!キミは、リカルドといちゃいけない!」
「でも・・・」
「大丈夫だ!ここまで無事に侵入してきたオレだぜ?後から追いつくからキミはセレスで先に逃げろ!」
「逃げろってどこへ?」
「セレスが教えてくれる!」
「え?」
「いいから、早く行け!」
苦しさを押さえ、リオは叫んでいた。
全身をアンドロイド・マイから放たれる強烈な電磁波がむしばんでいた。
「分かった!絶対追いついてきてよ!」
「ああ!」


リオが心配だった。どうみても大丈夫そうではないと思えたが、ここはリオの言葉に従うべきだと悟り、イザムはひたすら格納庫へと走り始めた。
その走り去るイザムの後ろ姿を確認すると、苦痛の中、リオはにっこり笑った。

「さー、これで思い残すことはないわ。あの子なら大丈夫、きっとセレスでここを脱出する!そして、私は・・・・・・この悪魔を消滅させる!私の存在をかけて!だから、力を!私に力をちょうだい!」
本体にそう呼びかけ、必死の思念派を飛ばすと、リオ、いや、クローンのマイネリアは、アンドロイド・マイと握りあっている手に力を一段と込め、彼女を勢いよく引き寄せた。

・・・共に自爆する為に。


船内のどこかで爆発音がした・・・まさか・・・と思いつつ、イザムはリオの無事を信じ、いや、願い、格納庫への通路を走っていた。
キャビンの一室が爆発しても船全体にその衝撃が回ることはない。事故のあったエリアは防御壁で区切られ、船の航行は何事もなかったように続く。が、船内はそうはいかない。
要所要所に設置してあるアラーム灯が点滅し、異常事態発生を知らせるアラームが鳴り響く。

「くそっ!あのガキ、やってくれたぜ?」
警報が鳴り響き始めると同時に、苦虫を噛み潰した怒りに満ちた表情でリカルドも自室から飛び出る。


「待て!格納庫へ入るんじゃない!レーザーがお前を襲うぞ!」
格納庫のドアの手前のイザムをコクピットにある船内用スクリーンで発見したリカルドが通信機を通してイザムに向かって叫ぶ。
「死にたいのか?」

危ないところをリカルドのその声で免れたというのは事実だった。
格納庫に急いでいたイザムの頭からは、セキュリティシステムのことなど消え去っていたからである。
ドアを開けるところだったイザムはそれを思い出し、心の中で叫んだ。念を込め言葉を飛ばす。
「セレス!聞こえてるよね、セレス!緊急発進して!転送ビームをぼくにロックオンして近距離収容!同時進行だよ!邪魔なものは全部破壊していいから!」
『了解、マスター。同時進行による緊急発進、マスターの位置補足。発信と同時に収容する。』
戦闘機をテレパシーで動かすことができるとは、海賊船ヨルムガドのクルーでなければ知り得ることではなかった。
格納庫の中でも特殊な擁壁に区切られた一角へ入れられていたが、進行を妨げているものはイザムの命令に従って全て破壊し、セレスは堂々とリカルド船から離脱した。


「ねー、セレス、リカルド船の生命反応の分析はできるでしょ?リオを探せない?見つかったら転送収容してほしいんだけど。」
セレスにそう言いながらも、イザムは、リオが無事に船外へ逃げ出せていることを祈り、近海をクエリーする。
が、近域には、リカルド船の船影しか映らない。
「・・リオ・・・・・・・まだリカルド船にいるの?」
『生命反応、分析終了。リオと思われる反応なし』
「え?そんなセレス?見落としてない?もう一回してみて?」
『リオの生命反応は特殊だ。制作者マスターのそれと酷似していた。その反応はどこにも見られない。船内外どこにも反応なしだ。』
「え?セレス?」
しばらく思考が止まっていた。いや、イザムは思考を巡らしていた。それまでのリオとのことを辿っていた。
「それって、それって・・・セレス・・・・・リオも、リオも・・・マイと一緒に?」
『断定はできないが、可能性はある。』
「そんな・・・・じゃー・・・・・・またぼくの為に?・・・・」
絶望を感じつつも、戦闘機を発進させ攻撃を仕掛けてきたリカルドとの攻防状態に、イザムは嫌がおうにも引きずり込まれていった。



イラスト by COSMOSさん、  色調反転加工byくずは




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