Stardust Stargazer
−星屑(ほしくず) 星見人(ほしみびと)−


 
その35・リカルド船へ 
リカルド船+宇宙byくずは、セレスbyCOSMOSさん

 リカルド船が航行しているNスペースへとワープアウトする。
一応攻撃、もしくは拿捕しようとする戦闘機の待ち伏せも予測していたが、それだけはなかった。が、レーダーエリアにこそリカルド船の船影は写らないが、付近のエリアをクエリーしてみると、一応その宇宙座標内で船影を捉えることができた。
それは、ともすれば、イザムの捕獲とリオ船の破壊を目論んでいることが明らかとも言えた。

「イザム、あんまり無茶するなよ?」
「分かってる!リオもね!」
ワンポイントボタンの無線でそう言葉を交わしあうと、リオは再びワープ航路に突入した。
祈るような気持ちをイザムの元へ送って。

「リカルド・・傍受してるよね?」
追跡戦闘機がリオの船を追わないうちにと、イザムは慌てて通信チャンネルをフルオープンして、リカルドの船に問いかける。
「こちら、セレナーデ。パイロットのイザムです。現在宇宙座標2・45、ポイント3を航行中。リカルド船、応答願います。こちらイザム、貴船へのドッグ入りを希望。こちらに敵意なし、戦闘システムオフ状態を確認されたし。こちら、イザム・・・」
「イザムか?ずいぶん短期間でいっちょ前になったんだね?海賊船でしっかりしごかれたってことかな?」
「リカルド?リカルドだね?」
待っていたかのように、数回の呼びかけでリカルドからの応答があった。
「リカルド、マイは・・マイは・・・・無事なの?」
「ああ・・・・・ぼくの横にいるよ。マイ・・キミのイザムだよ、かわいい弟の。」
「・・・・イ・・ザム・・・・・・・」
「マイ!やっぱりリカルドの船にいたんだね?大丈夫だったんだね?」
元気のない低い声だったが、マイレリアの声と確認し、イザムは思わず叫ぶ。
「ま、通信でより、直に会ってからの方がいいだろう。ちょっとマイは疲れ気味でね。」
「え?・・大丈夫なの?」
「ああ、心配はいらない。会ってみれば元気だってことも分かるさ。」
「分かった。じゃ、ドッキング座標を指定願います。」
「了解、こっちから座標を送ろう。肉眼で補足できる近距離になったらエンジンオフして待機していてくれ。こちらの誘導ビームで貴船を格納する。」
「了解。」


「それにしても、少年とは思えないくそ度胸だね?楽しませてもらったよ、一連の事件。」
リカルド船の一室。テーブルを挟み、イザムはリカルドの前にいた。
テーブルにはイザムの好きな飲み物やスイーツがどっさり置いてある。
「一連の事件っていうと、ひょっとしてぼくが軍施設からセレスを盗んだことから?」
「ああ。」
にやっと笑って頷くリカルド。
「マイが気にしてそうだから、キミの無事を教える為に、一応追跡しててね。しかし・・・後悔したよ。」
「え?」
「こんなことになるなら、最初からキミも一緒に連れてこればよかったってね。あるいは、海賊に拾われる前にぼくが拾い上げるべきだったってね。まさかマイが偽物だなんて思っていなくてさ?」
「リカルドは・・偽物じゃイヤなの?」
当然だろというように両手を広げ、肩をすくめてリカルドは言う。
「ま、偽物でもキミにとっては自分を育ててくれたやさしいお姉さんなんだろうけどね?ぼくにとっては、偽物はあくまで偽物であり本物じゃーない。ぼくが心底愛してるのは偽物なんかじゃなく本物なんだからね?」
「でも、姿形だけじゃなく本物の記憶もそっくりあるんだから、本物と一緒でしょ?」
「そこはそうだけどね、じゃー、キミはなぜ、本物を探し始めたんだい?」
「あ・・・・・」
リカルドに突っ込まれイザムは言葉を失う。
「ま、ともかく、マイに会うかい?さっき通信室まで歩かせたから疲れちゃってね、メディカルルームで横になっているんだけど。」
「え?そのくらいで?・・・リカルド、マイに何かしたの?」
きつく問いただすような瞳で睨んだイザムを、リカルドは軽く笑い流す。
「ぼくが?まさか?偽物とは言え、心から愛してる娘(こ)のクローンなんだ。ぼくがそんな酷いことできるわけないだろ?」
「じゃー、どうして?マイは元気だったんだよ?リカルドに連れて行かれるまで。」
「そうだね。どうしてか・・それは、な〜〜んにもしやしないのに、ここから逃げようとしてね?誤ってセキュリティガードにひっかかってしまってね?」
「え?セキュリティガード?」
「そう、格納庫の入口には、許可なしで出入りしようとする者にはレーザービームのガードシステムが反応してね・・」
「マイ、レーザーを浴びたの?撃たれちゃったの?」
がたん!とイスを蹴るようにしてイザムは思わず立ち上がっていた。
「だからさ?ぼくはキミに責められるようなことはしてない。むしろ感謝してほしいね。瀕死の彼女を治療して命を救ったんだからさ?」
「あ・・・・・・・・・・そ、そうなんだ・・・・・・・」
その言葉をそのまま言葉通りに受け止めたわけではなかった。が、イザムはゆっくりとイスに腰を落としながら礼を言った。
「あ、ありがとう、リカルド。」
「いや、いいんだ。当然のことをしたまでさ。」
素直に礼を言ったイザムのその態度に満足し、リカルドは言葉を続けた。
「じゃ、メディカルルームに案内しよう。眠っているかもしれないけど、無事だってことだけは分かるだろ?」
「はい。」
それは故意に眠らせている状態だということは、イザムに話すつもりはなかった。
アンドロイドとして復活させたマイは、本体に対し、悪意と憎悪のみを増幅させ、敵対心しか持ってないクローンのオリジナルとは似ても似つかない者となりはてていた。
本体の探索にはもってこいだったが、その憎悪は本体サイドの人物とも言える、いや、もっとも本体が大切にしている人物であるイザムに対しても向けられていた。
ここで、アンドロイド・マイにイザムを傷つけられでもしたら、イザムを手みやげに本体と逢おうとしているリカルドにとっては大ダメージなのである。いや、手加減を知らないとも言えるアンドロイド・マイは、気を許せば、イザムを殺してしまうかもしれない。
その懸念を回避する為に、リカルドはアンドロイド・マイを眠らせておいたのである。


メディカルルームの一室で、安らかな寝息をたてて寝ているマイレリアを確認し、安心したようなイザムを彼用のキャビンに案内すると、リカルドは一旦イザムの元を離れた。
「ここにいればいつでも会える。目が覚めたらキミに連絡するようドクターに頼んであるから安心してていいよ。お風呂でも入ってゆっくりしていれば?疲れてるだろう?」
そう言い残して立ち去っていったリカルドの言うとおりにするのも面白くなかったが、疲れていたことは確かだった。
イザムは軽くシャワーを浴び、部屋に設けられているドリンクサーバーで大好きなピーチジュースを選ぶと、それを口に運びながら、今後のことを考えていた。

「リオは・・今頃どうしているだろう?今この船はどこを飛んでいるんだろう?マイは・・・本当に大丈夫なんだろうか?」



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