Stardust Stargazer
−星屑(ほしくず) 星見人(ほしみびと)−


 
その31・クロス航路上 
 

 「今回の惑星はどうだ?終着点か、あるいは、まだこの先があるのか?」
「難しいわね。」
「難しいとは?リオがドーシュの叔父のPCに仕込んできたプログラムのおかげで、リカルド・ビューラーの元にいるクローンの示す航路図が入手できたのだろう?それとこっちの航路図と比較すれば、一方向からのデータでなく二方向からだから、判断しやすいじゃないのか?それとも?」

イザムの姉、マイレリアのいる星までの軌跡・・・クローンであるリオから読み取ったものだが、それはまっすぐ本体であるマイレリア本人から発せられた思念派ではあったが、簡単には到達できそうもなかった。
というのも、そのガイドが思念派だからである。
その途上は、宇宙空間だけではない為、隕石などがあった場合、その先は途切れているのである。その都度またリオの検査が必要となった。
もちろん、思念派そのものは、それらを通り抜けては来ているが、正確な航路ではなく、飛んできた方向から割り出した航路の為、それらは、確かな遮蔽物となり、その先があるのかどうかは不明なのである。
そして、その遮蔽物が隕石や宇宙船の残骸などならまだしも、惑星となるとやっかいだった。そこが終着点ということも考えられる。
初めてとある惑星に着いたときは・・・・期待しただけに違うと分かったときの衝撃はイザムにとってしばらく落ち込むに十分だったが、もちろん、持って生まれた性格らしい不屈の精神と周囲の無言の励ましで回復はした。
そして、今回、現在ヨルムガドがその周回軌道を回っている惑星は・・・イガラ側、リカルド側、両方の航路が、現在時で指し示していた終着点だった。
果たしてその先にまだ路はあるのか、どうか、必死で思念派の抽出と解析をしているところだった。

「そう、その”それとも”なのよ。つまり、今回、この惑星で2つの航路はクロスしてるのよ。つまり2つのデータの現時点の終着点は・・ココ・・・なのよ。」
「やっかいだな。リオからはまだ結果がでないのか?」
「ええ、彼女から本体からの思念派のみ抽出できるようなシステムを作ったから、以前のようにデータ抽出や解析に時間は取らなくていいようにはなったけど、思念派を感じられない状態なの。」
「本体が止めたか?」
「さあ?」
「で、リカルトの方はどうなんだ?そろそろこの空域に到達するだろう。」
「そうね、そろそろワープ航路から抜け出て姿を現すでしょうね。私たちの方が少し速かったくらいだから。」
「向こうは中型だが、ドーシュ本家の資本力と人脈を使った最新鋭スターシップだからな。」
「戦闘力もあるでしょうね。」
「まーな。それなりにはあるだろうが・・・・」
海賊船ヨルムガドの、そして、宇宙海賊イガラの精鋭クルーの敵じゃないだろう・・・という自負は口にこそしないが、当然のように続くはずだとミーナは同感の意を笑みでしめした。
もちろん相手が弱いと油断はしない。常に敵に対しては全力で戦闘に挑むのがイガラの方針である。
「しかし、無理にこっちから攻撃する必要もないが・・・坊主は・・・」
「囚われている彼女を助けたいでしょうね。たとえクローンと分かっていても。」
「そうだな。とにかくココにいたのでは確実にご対面になるだろう。」
イガラは通信機のボタンを押した。
「コクピット、シャムはいるか?」
「はい、艦長。」
航海士シャムの返事が聞こえた。
「周回軌道離脱。右後方の小隕石群へ待避。待避完了と同時に全システムをレベル2までダウンしろ。」
「了解♪」
小隕石群を隠れ蓑とし、システムダウンは、敵レーダーによる発見を防ぐ為である。

−シュン!−
と、2人が予想していたとおり、ドアが開く音と共に、イザムが勢いよくメディカルルームへ駆け込んできた。
「艦長!リカルドの・・・マイのクローンが・・ぼくとずっと一緒だったマイを乗せた船が来るってホント?」
「イザム・・・・・」
息をきらし、期待に目を輝かせ、今にも助けに行く!という言葉が飛び出てきそうなイザムの興奮した顔を2人は見つめていた。



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