Stardust Stargazer
−星屑(ほしくず) 星見人(ほしみびと)−


 
その27・本体救出作戦開始 
 

 「坊主はどうしてる?もう狩りはすんだんだろう?」
「ええ、はしゃいで帰ってきたと思ったら、着替えもすまさないうちに夢の中よ。」
「ははは。坊主らしい。」
「で、イガラ?そんなことを聞きたくてわざわざ私を呼んだわけじゃないわよね?」
神妙な面持ちでイガラと向き合ってソファに座っているリオを認めるとミーナは真剣な眼差しをイガラに向けた。


 そのころリカルドが仕切っているスターシップでは、いくつものコードが取り付けられた状態で浮遊している培養カプセルの中のマイレリアのクローンの脳を薄気味悪い笑顔で眺めているリカルドの姿があった。
イラストbyくずは

「ぼくの話し声は聞こえてるよね?」
リカルドはカプセルの操作パネルにあるマイクに向かって話しかける。
「自由になりたいかい?それなら、キミがなぜこんな扱いをされなくちゃいけないのか、よく考えるんだね。本来クローンであれ1個の人間なんだからキミは自由であるべきなんだ。だけど、そう・・キミがぼくの愛しいマイレリアの姿を模倣するのは許さない。そして、レーザーでぐしゃぐしゃに焼けこげてしまった身体はいくらこのカプセルに入れても、もはや復元はしない。できるとしたら、本体に肉体を作ってもらう。それしかできない。だから、キミは、ぼくに本体の居場所を教えるべきだ。そうしたらキミは自由になれるんだよ。ぼくがもう本体の指令なんか聞かなくてもいいようにしてもらってあげる。いい取引だろ?だから、しっかり道案内をするんだよ。変身したとき、どの方向からキミが影響を受けたか。しっかりと思い出すんだよ。ただそうするだけでいい。後は取り付けてある機械が読み込んでくれるから。」

クローンの脳は、執拗なまでのリカルドの言及と、重度の精神病患者に使う機器を改良?した性格改善装置の使用とでおかしくなり始めていた。
そう、普通なら生じるはずのない敵意?いや、本体に対する憎悪というものが、コードを通して流れてくる精神改良波とリカルドの言葉との相乗作用で植え付けられ、彼女の中で大きく膨らんできていた。

「いいよ、いいね、この反応。キミはもしかしたらマイレリア本体より従順なのかもしれない。」
脳の状態を映す計器を見ながら、リカルドはほくそ笑む。
「もっともっと本体を憎むんだ。その感情が大きくなればなるほど、本体もそれを感じ、何か反応があるはずだよ?キミがマッチョになったときのようにね?そうしたら本体からの反応を辿ってマイのところへ行ける。」


海賊船ヨルムガド・イラストbyCOSMOSさん
 「・・・・・そう・・・・・・・・」
イガラから説明を受けたミカエラはしばらく真剣なまなざしでリオを見つめて考えていた。
そして、にっこりと笑みを投げかけ、イガラに視線を移す。
「面白そうじゃない。こんな面白い話に乗らないって法はないわ。私でできることは協力するわ。でも、そうね、イザムには・・・・どうしたらいいかしら?お姉さんの情報が入ったですますか、それとも、本当の事を話すか?」
「坊主なら本当の事を話してもらいたいんじゃないか?」
「イガラ?」
なんてことを!と責めるようなリオ(マイ)の視線をイガラは目で一蹴する。
「坊主はあんたが思ってるよりうんと成長してるぞ。それに最初からこうなった原因をつきとめたいという思いがあった。オレたちが今計画している次の展開に行くには、きちんとした説明を要求してくるんじゃーねーか?訳も分からず、自分を守って宇宙に散ったクローンの死に一種罪悪感を持っているような節もある。」
「イザムが?・・そんなことイザムが感じなくてもいいのに?」
驚いたような表情をしたマイレリア。が、イガラのその言葉にミカエラが付け加えた。
「私もその方がいいと思うわ。あの子を子供だと思わないことね。いえ、子供にだって状況説明は必要よ。純粋にお姉さんを助け出そうとしているあの子をきちんと納得させる必要があるわ。」
「作り話では信憑性がない?」
「感がとても鋭いの。おそらく作り話では・・・100%信じないと思うわ。どこそこおかしいと感じて、無意識のうちに事実の追求をするでしょうね。」
「でも・・・・。」
「それにあなたから本体からの脳波の軌跡を引き出す作業は簡単にはできないと思うわ。私もつきっきりになる。あの子に内緒では、まず無理よ。メディカルセクションの一室で部外者立ち入り禁止にしても、あの子のことだからクルーの誰かが悪いんだろうと心配して絶対お見舞いするといって聞かないでしょうしね。」
ミカエラの苦笑につられ、マイレリアも思わず苦笑する。

一度に説明しても混乱してしまうかもしれない。イザムにはミカエラから少しずつイザムにとって必要な事を彼の精神状態をみつつ話してもらうことにし、彼らはリカルドも目指しているだろうと容易に予想できる本体救出作戦に取りかかることにした。



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