Stardust Stargazer
−星屑(ほしくず) 星見人(ほしみびと)−


 
第二部その2・現状把握・ここはどこの宇宙内? 
 


 

 しばらくその場で自己紹介をしあったイザム、まいり、そしてまいな。

「ふ〜〜ん・・・宇宙海賊イガラかー・・カッコいいんじゃない?気に入ったな♪」
「あたしも〜♪」
「ぼく、そのキミたちと同じ魂だっていう麻依霧艦長と一度会ってみたいな♪」

そんな和気藹々とした話し合いの後、双子の宇宙船内に残り、修理をしていた修理ロボから一旦切った船内の空調システムを再作動させたからもう戻ってきても大丈夫だと連絡が入る。

「ねー、どんな具合?あたしたちで修理できそう?」
「そうですねぇ・・・」
双子のスターシップのコクピット。
手動でドアを開け、中に入ると同時に、まいなは船内に一人?残って現状調査していた修理ロボにたずねる。
「まだ細部までは調査が行き渡ってませんが、おおよその被害状態はセンターテーブルの端末にデータを送っておきました。」
3人は広めのそのコクピットの操縦席の後ろにある円形のテーブルへ駆け寄り、データを見つめる。

「セレスは・・全壊?」
モニタを見つめるイザムが気落ちした声色で呟いた。
セレスの頭脳、ブラックボックスはまたしても大丈夫ではあったが、船体は全壊といって良かった。
「ま、また材料揃えて組み立てればいいじゃない?」
「う、うん・・・・そ、そうだね。(セレス・・・2回もぼくの為に・・・ごめんね・・・。)」
まいりの言葉にイザムは苦笑を返しながらも、修理ロボットが手渡してくれたセレスの頭脳、ブラックボックスを抱きしめた。

「で、おおよその被害状況は分かったんだけどさー、データ上ではね。実際、あたしたちがするべき行動は?いくらあんたが優秀だからって、一人でするより、あたしたちが手伝った方が早いだろ?破損箇所の溶接とかさ?」
「それなのですが・・・」
修理ロボは、まいりの言葉に声のトーンを落としてなにやら深刻なことがまだあるということを示唆した。
「ちょっと、被害報告はこのデータで以上なんだろ?」
「そうですねー・・破損箇所はそうなのですが・・・・」
「あのね、もったいぶらないで・・っていうか、ここまでの状況に追いやられちゃ、もう何があっても驚かないからさ?さっさと話してくれない?あんたもロボットのくせに意外と気をつかうんだね?」
「ルーノ兄貴は、ロボットにも人格を!派だった?」
「うーーん、その点はどうだろう?ロボットはロボットらしくが兄貴の主観じゃなかったかな?でも、気遣いシステムはそれなりに組み込みそうだね?」
「あはは♪そうだね♪」
ルーノ兄貴とは、実の兄ではないが、2人が兄のように慕っている科学者である。一応父ブロガルフの配下ということになっている。
「で、その気遣いが必要な深刻な内容は?」
修理ロボは、人間のようにため息をついてから事の次第を説明し始めた。
「たとえ、破損箇所の全部品が揃い、船は修理完了してもですね・・・」
「ふんふん・・・・そうだね、部品一つにしても今のところ把握しているこの惑星の現状では、手に入れられそうにもないけどさ?」
「それってひょっとして、部品が手に入っても、船が発進するだけのエネルギーがないってこと?」
修理ロボの説明の途中に突っ込んだまいりに続いてまいなも鋭く突っ込んだ。
「・・・そうです、お二人の予想通りです。通常システムくらいは、ソーラーシステムを稼働させてますので、太陽エネルギーでなんとか蓄積し、システム稼働できますが、発進エネルギーとなるとそれではどうにも。」
「だけど、リジディシウム鉱石はストックだってあったはずだよ?」
「ちょうど鉱石が保管してあった貨物庫が、惑星不時着前に、つまりセレスと衝突の際、破損し、中に保管してあったものは全て宇宙へ流れ出てしまったみたいです。」
「あっちゃ〜〜・・・・・で、エナジーポットの鉱石も、不時着時に全エネルギーを使い切っちゃったってわけ?」
「はい。」
「予備の鉱石は?サブポットに据えてあったんじゃないの?」
「双方ともワームホール内の航行と不時着時とで使い切ってしまってます。」
「じゃーどうしたらいいんだ?そうだ!通信装置は?通信はできる?できるんならSOS発進してさ?救助を待つって手もあるよ?」
「でもさ、りんちゃん、それってこの惑星があたしたちの次元の宇宙か、イザムの宇宙だったらのことでしょ?」
「・・・・・そ、そうだった・・・ここが別世界ってことも考えられる・・よね?」
「あ!じゃー、まず、その確認をしない?」
「え?確認って・・・できるの?」
驚くようにまいりとまいながハモってイザムに尋ねた。
「うん、でも、それにはセレスと接触しないとならないんだけど・・・・ブラックボックスのままだと・・」
「電子頭脳の起動なら任せておいてください。それ自体が破損していない限り、アクセス環境でしたら、すぐ作れます。」
「そ、そう?じゃ、頼むね、えっと・・・修理ロボさん?」
「かしこまりました。」
名無しの修理ロボは、イザムからセレスを受け取ると、センターテーブルに置き、テーブルの下にあるボックスを開けて、コードをいくつも取り出し、それをセレスに取り付け始めた。


ここには、ドクトル・ミーナのメディカルシステムもない、セレスとの精神交流にもずいぶん慣れてきているとはいえ、イザムの精神に負担がゼロというわけにはいかない。
が、出来ることはするべきだった。この惑星がイザムの宇宙にあるのかないのか、それだけでも1つ解明でき、もしも、イザムの宇宙に存在する惑星なら、少なくとも救助の手は期待できる。いつ来るか、いつ救助の応答が入るかは分からないにしても。

「セレス・・聞こえる?・・・キミは、大丈夫だった?」
無事起動したセレスに、頭部に取り付けたコードを通して話しかけるイザム。
「・・・イザム、マスターよ・・・・・部分的に破損箇所もあったが、そこは、自動修復システムで破棄又は修復済みだ。」
「良かった、セレス・・・で、さっそくで悪いんだけど・・マイを探せる?マイの思念派を遠くてもいいから、かすかでもいいから、宇宙のどこかに感じない?」
「いかに制作者マスターが特異体質とはいえ、人の思念派を私が感知するのは難しい。今マスターがしていてくれるように私と部分的に通じていれば可能だが。」
「だから、ぼくの思念派とキミのデジタル派を合わせて探知してみるんだよ。リオが言ってたんだ、人の思いは無限だって、過去にも未来にも・・そして・・・・・宇宙にだって。」
「ふむ、理解不能な仮定だが、その種の思いつきとやらも、やってみないで諦めるのは愚の骨頂だと制作者マスターは良く言っていた。」
「マイが?」
「そうだ。論理的でなかろうと、限りなく100%に近く不可能な事だろうと、挑戦もせず諦めてはいけないと、私を制作中によく呟いていた。」
「あはは、そ、そうなんだ・・・・じゃー・・」
「こういった状況下の場合、思いついた事は全てやってみるのが道理だろう。」
「うん!そうだよね!」
「しかし、マスターの今の精神状態は、疲労度がかなり高いようだが、大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ!それだってやってみないことには結果はわからないよ?」
「私はマスターの指示なら従うだけだが、ドクトル・ミーナが一応のプロテクトを私に組み込んだらしいのだ。」
「え?」
「マスターの今の精神疲労レベルでは、YesかNoかの分岐点なのだが?」
「分岐点・・かぁ・・・・・・・」
不安要素がなかったわけでも、その点に気づかなかったわけでもないが、イザムは少し考えてからセレスに明るく言った。
「大丈夫だよ!人にはそれを越える意思があるから!」
「そうか。では、始めるとしよう。」


セレスのデジタル精神に、セレスの心の奥の奥へと入っていく。無限に飛び広がるそのデジタル派(精神)を自分の心を、意思を合わせ、マイの思念派を探す。
船外へ出、惑星の大気圏を飛び出し、無限に広がる宇宙に。



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